ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今年も明日で終わりですね。
一年が早かったなぁ。

本作も今年の三月に書き始めて、もう160話を超えました。
よくもここまで続いたなと自分でも感心しています(笑)


13話 脱出作戦開始!

ホテルの一室から窓の外を覗いてみる。

 

黒いローブを着込んだ奴らが大勢。

そいつらはこのホテルを取り囲むようにして、こちらを見上げている。

 

フードを深く被っているせいで、どいつもこいつも顔は分からないが、眼光だけはギラギラ輝かせているのが分かる。

敵意、殺意がむんむんしてやがる。

 

手には装飾が施された大鎌。

まぁ、死神といえばあの大鎌が浮かぶよね。

 

 

・・・・・にしても、かなりの数を連れてきたもんだな。

視界に映るのは黒一色。

数えるのが馬鹿らしく感じられるほどだ。

 

あの骸骨神様がテロリスト・・・・・・英雄派に手を貸していた、か。

 

ハーデスの行動はどう見ても越権行為。

いや、テロリストに手を貸してる時点でそれどころじゃないか。

 

ま、それを問い詰めるにもまずはこの状況から脱出することを優先させないとな。

 

ゲオルクによって作られた疑似空間を抜け出す方法は三つ。

 

先生がその説明をくれる。

 

「三つの方法だが、一つは術者であるゲオルクが自ら空間を解除すること。これは京都での戦闘が例だ。二つ、強制的に出入りする。これはルフェイや初代孫悟空と玉龍(ウーロン)がやってのけたことだ。こいつは相当な術者でなければ不可能。現在、ここにいるメンバーで出来るのはルフェイのみだ。ルフェイがここから連れ出せるメンバーは限られるし、一回限りになる。――――ゲオルクが結界を更に強固にするだろうからな」

 

高位の魔法使いは美羽もいるけど、空間制御の術式は難しく、ルフェイと合わせようとするとなると即席では難しいらしい。

 

下手に合わせようとすると、互いの術式が乱れて上手く発動しないそうだ。

 

ここにいるメンバーでルフェイに合わせられるのは黒歌のみ。

だけど、今のあいつは消耗が激しいから術を発動するのは無理だろう。

 

というわけで、美羽には最後の方法で力を振るってもらうことにした。

ちょうど新しい技を開発したらしいしな。

 

「そして、三つめ。こいつは単純明快だ。術者を倒すか、この結界の中心点を破壊することだ」

 

つまりはゲオルクを倒すか、美羽が見つけてくれたあのウロボロスの像を破壊するということ。

そうすれば、この空間は崩壊する。

 

で、その問題の結界装置は駐車場に一つ、ホテルの屋上に一つ、そしてホテル内部の二階ホールに一つが置かれている。

 

先生が顎に手をやりながら言う。

 

「三つもあるってことは相当大掛かりな仕掛けってことだ。当然向こうの守備も固いだろう。それで美羽、死神数は増えているか?」

 

「うん。どの結界装置にも死神の人達がかなり集まってるよ。というより、僕が結界で覆っている階以外は死神の人がいるみたい」

 

「向こうもオーフィスの抵抗を考えてか相当な人員を割いてるらしいな。どこに一番集まってる?」

 

その問いには美羽ではなくルフェイが答えた。

 

「駐車場が一番多いです。曹操様はこの空間からすでに離れていますが、代わりにジークフリート様がいらっしゃいますし、ゲオルク様も駐車場にいらっしゃいますね」

 

「なるほどな。三つある中で駐車場にあるやつが一番の機能を発揮しているだろう。それを直ぐに破壊できれば良いんだが・・・・・・これだけの数だ。抵抗も半端じゃない」

 

「それじゃあ、作戦通りにいきますか」

 

俺がそう言うと先生は頷いた。

 

「だな。おまえに一番負担をかけちまうが・・・・・・すまんな」

 

「何言ってんすか。こういう時に俺の力があるんでしょう? 任せてくださいよ」

 

俺は不敵に笑むと皆に視線を移した。

 

全員覚悟は決まってるな・・・・・・・。

 

「よし! 必ずここを突破してやろうぜ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

こうして、脱出作戦はスタートした!

 

 

 

 

 

 

 

 

美羽の結界で覆われたホテルの階層。

 

その内、大きな窓があるホール。

その窓際に俺は立っていた。

一応、窓の外から内側が見えないようにしてある。

 

俺の側には美羽とアリスと朱乃。

それから小猫ちゃんがいた。

 

近くにはルフェイとイリナとゼノヴィアが待機している。

そこでは脱出用魔法陣の準備が進められていた。

 

イリナは天界に英雄派の真意とハーデスのクーデターを伝える役目で、ゼノヴィアはそれの護衛役だ。

英雄派の構成員や死神がこの結界の外で待機している可能性もあるからな。

 

加えて、曹操に破壊されたというエクス・デュランダルの修理もするらしい。

さっき、ルフェイがアーサーから預かっていたという『支配の聖剣』をゼノヴィアに渡していたから、それも加わるんじゃないかな?

 

もしそうなれば、デュランダル+完全なるエクスカリバーというとんでもない組み合わせになるわけだ。

 

また、他のメンバーも俺と同様にこのホールの窓際に立っている。

 

「美羽先輩、朱乃さん、アリスさん。そことそこにあります」

 

小猫ちゃんは床の一点と天井の一角を指差さしながら言った。

 

「分かった。ボクは準備OKだよ」

 

美羽は頷き、小猫ちゃんが指を向けていた床へと手をかざす。

 

「朱乃さん。落ち着いて。私と呼吸を合わせて」

 

「はい」

 

アリスは朱乃の背後から両肩に手を置き、朱乃は瞑目し集中している。

二人の呼吸が次第に一つになっていくのが分かる。

 

俺もそろそろ準備をしとかないとな。

鎧を纏い、その時を待つ。

 

 

・・・・・・黒歌の休んでいた部屋から飛び出していった小猫ちゃん。

追いかけていったレイヴェルと口喧嘩でもしたのか、その後は多少すっきりして帰ってきた。

 

こういうとき、レイヴェルの存在は大きいと思う。

後腐れなく喧嘩が出来る仲っていうのも大事だよな。

 

俺は小猫ちゃんに問う。

 

「小猫ちゃんは黒歌のこと嫌いか?」

 

いきなりの問いに小猫ちゃんは少し体をピクッと震わせる。

そして、俺の顔を見上げてきた。

 

「俺さ、今までのあいつを見て、あいつと話して思ったんだ。あいつは小猫ちゃんのお姉さんなんだって」

 

「・・・・・・姉さまのせいで私は辛い目に遭いました」

 

どんな理由であれ、黒歌が主を殺して「はぐれ悪魔」になったことは変わらない。

悪魔の世界は「はぐれ」と化した者に厳しい。

それはその家族にも及ぶ。

小猫ちゃんは「はぐれ」となった姉の罪を一身に浴びて心を深く傷つけられた。

 

「・・・・・私は姉さまを恨んでいます。・・・・・姉さまが嫌いです。――――でも、私をさっき助けてくれました」

 

小猫ちゃんは強い眼差しで言った。

 

「今だけは信じようと思います。少なくともここを抜け出るまでは」

 

「――――っ。そっか・・・・・」

 

どうやら俺がしようとしてたことは余計なお節介だったらしい。

俺が心配するまでもなかったってことだ。

 

小猫ちゃんは強くなっているんだ。

体だけじゃない―――――心も。

 

俺は小猫ちゃんの頭を撫でてあげる。

 

小猫ちゃんが俺に抱きついてきた。

 

「・・・・・先輩のおかげで強くなれたんです。ギャー君だって強くなれた。だから、私も強くなろうと思って――――」

 

「なれるさ。俺でもなれたんだ。小猫ちゃんならすぐだよ」

 

「・・・・・大好きです、先輩。どれだけ先輩が先に行こうとも必ず追いかけていきます。先輩のお役に立てるように頑張ります。他の皆が先にいても決して諦めません。だから―――」

 

小猫ちゃんは真っ直ぐに俺を見上げて言った。

 

「おっきくなったら、お嫁さんにしてください」

 

「「「「「えっ!? そこで逆プロポーズしちゃうの!?」」」」」

 

小猫ちゃんの言葉に俺が反応する前に仰天してる女性陣!

 

おいおいおい!!

 

君達、聞いてないふりしてバッチリ聞き耳立ててたのかよ!?

 

つーか、美羽にアリスに朱乃!

君達、ついさっきまでメッチャ集中してたじゃん!

今の一言で集中切らしてんじゃないよ!

 

って、お嫁さんときましたか!

まさかまさか、小猫ちゃんに逆プロポーズされる日が来るとは!

 

ま、答えは考えるまでもないだろう!

 

「ああ! 小猫ちゃんは俺が嫁にもらう! 誰にも渡さないさ!」

 

俺の答えに小猫ちゃんは――――

 

「はい・・・・・!」

 

目元を潤ませながら強く頷いた。

 

すると、窓際の方から女性陣から何やらボソボソと相談するような声が・・・・・・。

アリスと朱乃も複雑そうな顔でこっち見てるし・・・・・。

 

木場は苦笑してるし、アザゼル先生もやれやれと言った表情だ。

 

唯一微笑んでいるのは美羽くらいだ。

 

美羽とは将来のことをそれなりに話してるし、それでかな?

 

「術式、組み終わりました」

 

そうこうしている内にルフェイが転移魔法陣の完成を告げる。

 

ルフェイ、イリナ、ゼノヴィアの足元に光が走り、魔法陣が展開。

これで三人は外に出られる。

 

小猫ちゃんもリアス達の方へと移動。

 

俺は美羽とアリス、朱乃に合図を送った。

 

「三人とも、やってくれ!」

 

俺がそう言うと、美羽の手元には七色に輝く光が収束していき、朱乃とアリスはその身に黄金に輝く雷光と白く輝く雷を纏わせていく。

 

 

 

そして―――――

 

 

 

「スター・ダスト・ブレイカァァァァアアアア!!」

 

「「白式雷光龍!!」」

 

美羽から放たれる極大で七色に光る輝きは床を突き抜け、朱乃とアリスからは黄金と純白のオーラで形成された巨大な龍が天井を突き破り、天へと昇っていく!

 

 

ズアァァァァァァァァァアアアアッ!!!

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

爆音と地響きが共に生じるだけでなく、窓の外に煌めくものが見える!

この空間そのものが激しく揺れ動き、それと同時に相当数の気が消えたのが感じられるた!

 

流石は美羽の新必殺技とアリスと朱乃の合わせ技だ!

 

瞑目していたルフェイが告げる。

 

「屋上とホールに設置されていた結界装置と周囲にいた死神の方々がいなくなりました! これで残るは駐車場の一つだけです!」

 

よし!

 

これで相手は相当動揺するはずだ!

ここから更に畳み掛ける!

 

俺はルフェイの言葉を確認すると同時に鎧を変化させた!

 

「禁手第二階層・砲撃特化――――天撃!!」

 

俺は天撃の状態でガラス窓を突き破り、結界の外へ。

 

待ち受けるのは大量の死神共!

飛び出した俺へ視線が集まる!

 

「てめぇら! 舐めた真似してくれるじゃねぇか!」

 

俺はそう叫ぶと同時に翼と籠手、腰にあるキャノン砲全てを展開。

それぞれ、死神達へと狙いを定める!

 

 

俺達の作戦はこうだ。

まず、美羽とアリス、朱乃が強大な攻撃を放つことで結界装置の破壊と死神の数を大きく減らす。

 

美羽のは全属性の魔法を一点に集め、それを一気に解き放つという、広範囲への滅却力と貫通力を併せ持つ現時点で美羽が放てる最強の一撃。

 

アリスと朱乃のは二人の白雷と雷光を掛け合わせて、通常の雷光龍よりも遥かに威力を上げたものになっている。

こちらも高威力なうえに広範囲への攻撃ができる。

 

三人の技は威力もさることながら、その見た目は超がいくつも付くほどド派手なものだ。

こいつでホテルを囲んでいる死神達の動揺を誘う。

 

そこを俺が天撃で一気に殲滅するという、ほとんど急襲に近いような作戦だ。

 

まぁ、仕掛けてきたのは相手だ。

文句は言わさねぇ。

 

ちなみに、俺が外の死神共を相手している間に他のメンバーが駐車場を攻めることになっている。

 

 

さぁ、ドライグ!

さっさと終わらせるぞ!

 

『応ッ! 我らを敵に回したこと、奴らに後悔させてやろうではないかっ!』

 

『Accel Booster!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

 

ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 

倍増によって瞬間的に高められた俺の気と魔力が混ざり合い、鳴動する!

 

「覚悟しやがれぇぇぇええ!! ドラゴン・フルブラスタァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

『Highmat Full Blast!!!!』

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドオォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!

 

 

六つの砲門から放たれた莫大なオーラの砲撃。

 

連続で放たれるそれは死神共を周囲の光景ごと消し飛ばしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後。

 

 

 

バチッ! バチッ!

 

 

 

疑似空間が再び悲鳴をあげていた。

 

空間の所々が歪んでいるようにも見える。

 

美羽達の強烈な攻撃に加えて天撃状態の俺の砲撃を食らったんだ。

こうなるのも当然か。

 

だけど、その空間の歪みもすぐに治っていく。

 

流石はオーディンの爺さんでも解除できない結界を造り出すだけあって、かなり頑丈だ。

それに、結界が崩れていないってことはまだ装置は壊せてないんだろうな。

 

ゼノヴィア達は無事にこの空間から脱出出来たみたいで、そこは安心した。

後は外に出てからのあいつらの無事を祈るしかない。

 

俺の方はと言うと、ホテルを包囲していた死神の大群は完全に消し飛ばした。

 

『下級の死神であっても、下手な中級悪魔よりはよっぽど強いんだがな』

 

そうなのか。

 

でも、そこまで強くなかったぞ?

数は無駄に多かったけどさ。

 

『それはそうだ。相棒があの程度の死神共に遅れを取るはずがない』

 

ドライグの声はどこか誇らしげに感じられるのは気のせいだろうか?

 

そういえば、死神の鎌に斬られれば生命力を削られるらしい。

斬られる前に吹き飛ばしたので問題なかったけど。

 

・・・・・・なんか、ゼノヴィアみたいだな、俺。

 

ま、まぁ、それは置いておこう。

 

とりあえず、こちらに転移してくる死神もいないし、俺も駐車場の方に行くとしよう。

 

皆もまだ戦ってるみたいだし―――――――

 

 

「っ! また何か転移してきやがったな・・・・・」

 

 

いきなり現れた不気味な気配。

 

この感じから察するに死神か・・・・?

だとしたら、俺がさっきまで相手していた奴よりも明らかに別格だぞ・・・・。

 

嫌な予感がした俺はドラゴンの翼を広げて、駐車場へと向かった。

 

 

 

 


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