ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

166 / 421
9話 英雄派、再び

「ぷはー、やっと終わった・・・・・・」

 

試験を終えた俺はホテルに向かう前に美羽、アリス、レイヴェルと共に昇格試験センターの食堂で一息ついていた。

 

なんか、ずっと食堂に来ているような気もするが、まぁいいや。

とりあえず俺はゆっくりしたいんだ。

 

何時間にも及ぶ試験だったんだから、これくらいは許してくれ。

 

「イッセー様、お茶のおかわりをいただいてきましたわ」

 

「サンキュー。助かるよ」

 

レイヴェルがお茶のおかわりを持ってきてくれた。

本当に気の利く子だ。

流石はマネージャー!

 

アリスが食堂で注文したプリンを食べながら言う。

 

「にしても試験会場の壁に大穴開けるとか、やり過ぎよ」

 

「君ね・・・・・さっきと言ってることが真逆だぞ」

 

「何のことかしら~?」

 

おい、目を合わせろよ。

 

いや、加減をミスった俺が悪いんだけどさ。

ってか、あんなに飛んでいくとは思わなかったもんで・・・・・。

 

あれでもかなり加減はしたんだが・・・・・・。

 

「壁に開けた穴の修理費っていくらくらいするんだろう・・・・・」

 

「それはリアス様と相談するしかありませんわ」

 

俺の呟きにそう返すレイヴェル。

 

美羽が俺を励ますように言う。

 

「ま、まぁ、お金のことは後で考えようよ。今は試験が無事に終わったんだし、ゆっくりしよ?」

 

「そうだな。流石にもう疲れたよ。こういう試験って戦闘よりも消耗するよなー」

 

学校のテストにしかり、こういう試験にしかり。

頭を使う試験ってのはどうしてこうも疲れるのかね?

体動かす方がよっぽど楽だぜ。

 

「もう少しゆっくりしてから、ホテルに向かうとしましょう」

 

「賛成だ。と、そのプリン少しくれ」

 

レイヴェルの意見に俺は頷き、アリスのプリンを少しもらった。

 

 

 

 

この時、俺達は知らなかった。

 

 

 

 

事態は既に動き出していたことを―――――

 

 

 

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

 

時は一時間ほど遡る。

 

 

イッセー君よりも先に試験を終えた僕と朱乃さんは先にホテルに到着していた。

 

「おー、来たかおまえら。試験お疲れさん」

 

先生は転移してきた僕達を見てそう言うと注がれたグラスをあおっていた。

 

昼間からお酒を飲むんですね・・・・・・。

 

ホテルの貸しきりレストランには僕達のもとを一旦離れているギャスパー君とロスヴァイセさん、現在も試験を受けているイッセー君。

そして、僕達と入れ違いで試験会場へと転移していったレイヴェルさんと美羽さん、アリスさん以外が揃っていた。

 

美羽さんとアリスさんはイッセー君の試験がとても気になっている様子だった。

 

彼女達はもしかして・・・・・・・。

 

部長が僕達のもとへと歩み寄る。

 

「朱乃、祐斗。試験お疲れさま。どうだった?」

 

「どちらも手応えがありましたわ」

 

「僕もです」

 

筆記試験も問題なく解けたし、実技も相手を倒して終わらせることができた。

 

おそらく僕も朱乃さんも合格しているだろう。

それくらいの自信がある。

 

ふと見るとレストランの隅ではオーフィスがもぐもぐとパスタ料理を口に運んでいた。

あの姿だけを見るとテロリストのトップだなんて思えない。

 

黒歌さんやルフェイさんも甘い物を食べているようだ。

 

フェンリルの姿がないが、ルフェイさんの影の中に潜んでいるらしい。

ホテルはペット禁止だからね。

 

まぁ、最強の魔物がペットというのも反応に困るけど・・・・・。

 

黒歌さんははぐれ悪魔であり、冥界では指名手配中のため、猫耳と尻尾をしまい、服装もルフェイさんと似たようなローブを着込んでいた。

一応、サングラスもつけている。

 

さらには気の質も変えて、バレないようにしているらしい。

 

酔った先生が僕に言う。

 

「木場。前回のバアル戦でも思ったが、おまえの才はとんでもないな。破格と言ってもいい」

 

「破格・・・・・ですか?」

 

僕の言葉に先生は頷いた。

 

「とんでもない可能性を持った若手悪魔ってことだよ。おまえは後付けに得たものがあったとは言え、禁手を二つも目覚めさせている。信じられんほどの才だ。しかも、まだ発展途上中ときたもんだ」

 

「ですが、破格と言えばイッセー君の方では?」

 

イッセー君だってあれほどの力を持っておきながら、その力はまだまだ伸びる可能性を秘めている。

僕から言わせれば彼の方がよっぽど破格だ。

 

「確かにあいつも破格だな。つーか、禁手の更に上の次元に立つなんざ聞いたことがねぇぜ。ま、あいつが色々とおかしいのはそれだけじゃないがな」

 

先生はこれまでイッセー君が体験してきたことを言っているのだろう。

 

異世界に飛ばされたと思えば、そこで力を付けて勇者と呼ばれるまでになり、最終的には魔王を倒してしまった。

そこに至るまでにイッセー君が歩んできた道程は凄まじいものだ。

 

・・・・・・まぁ、禁手に至ったきっかけもおかしいとは思うけど。

 

「僕は恵まれています。すぐ近くにイッセー君がいますから」

 

「ああ。あいつはスケベでバカだが、どこまでも真っ直ぐなやつだ。目標にするには良い男だと思うぜ?」

 

「ええ。彼は僕にとって最高の目標です」

 

本当にそう思う。

 

いつかは彼と本当の意味で肩を並べられる男になりたい。

力だけでなく心も。

 

「そういえば、木場よ。もう一つの方はどうなんだ?」

 

もう一つの方・・・・・。

 

先生が聞いているのは僕に出来た新たな可能性の一つ。

二つあったうちの一つは実現できた。

 

『聖剣創造』を禁手に至らせることだ。

 

だけど、もう一つの方は―――――

 

僕は首を横に振った。

 

「そうか・・・・。だが、気にすることはない。そいつは元々、俺が立てた仮説に過ぎん。おまえが至れるなんて保証はどこにもないからな」

 

先生はそう言うけど・・・・確かにそれは存在する。

 

あとは自分次第だと僕は思っている。

 

自分には何かが足りない。

それが何なのか・・・・・まだ僕には分からない。

 

と、悩む僕の視界に何やら考え込むアーシアさんが映った。

食事もあまりとらず、ジュースの入ったグラスをじっと見つめていた。

 

「アーシアさん、何か考えごとかい?」

 

「私も神器についてもう少し深く知ろうかと思いまして・・・・」

 

「それは・・・回復を強化するということかい?」

 

僕の問いにアーシアさんは頷いた。

 

そして、アーシアさんはいつにない真剣な表情で先生に問うた。

 

「先生、私の『聖母の微笑』は禁手になる可能性はあるのでしょうか?」

 

その問いに先生はお酒を一口あおった後、口を開いた。

 

「ああ。おまえが禁手に至る可能性は十分ある。色々なイレギュラーな現象を起こしているイッセーの傍にいるわけだしな。修行しだいでは至れるだろうし、亜種の禁手に至れることもセンス次第では可能だ。いや、おまえにもイレギュラーな変化は起きてるか・・・・」

 

先生の言葉に首を傾げるアーシアさん。

 

「私に・・・・ですか?」

 

「そうだ。本来、『聖母の微笑』は傷の治療は可能だが体力や乱れた気を整える力は無い。だが、今のおまえはそれができる。こいつはかなりイレギュラーな現象だぜ?」

 

先生の言う通り、アーシアさんの力にも変化は起こっている。

 

傷の回復速度が上がっていることもそうだけど、体力、気の回復が出来るようになってきているんだ。

この二つの回復速度はさほど早くは無いし、ほんの僅かな回復しかできない。

 

それでも、過去にこのような現象は無かったと先生は言う。

 

僕とアーシアさんの神器の力が上がったのは―――――――異世界に行ってからのことだ。

 

「だが、そう考えると説明がつくか・・・・? イッセーの力、木場達の力の上昇・・・。これらを考えればやはり・・・・・」

 

先生は顎に手を当て、ブツブツと呟き始める。

 

「先生・・・?」

 

「ああ、すまん。それで回答の続きだがな。アーシア、おまえの回復は既に一級品だ。遠距離からの回復も予想以上の数値を叩きだしている。だから、おまえが考えるべきなのは自分の身を守る方法だ」

 

それはライザー・フェニックスとのレーティングゲームに向けて修行した時にイッセー君も指摘していたことだ。

 

アーシアさんは僕達グレモリー眷属の要。

貴重な回復要員だ。

 

しかし、それは僕達と戦う相手もそのくらいはすぐに気付く。

そして、まず最初に狙ってくるだろう。

 

先生は続ける。

 

「おまえが回復に専念するためにも、イッセー達が戦闘に集中するためにも、おまえは自分を守る能力を得るべきだろう。美羽に簡単な魔法障壁を習ったそうだが、それでは防ぎきれないものもある。そこでだ。おまえには強力な壁役となる魔物と契約する術を覚えてもらおうと考えている」

 

「強力な魔物?」

 

「強力な魔物だ。リアス、アーシアは気難しい『蒼雷龍』と契約を結んでいたな?」

 

先生の問いに部長は頷く。

 

「ええ、アーシアの使い魔になっているわ」

 

使い魔の森でアーシアさんが契約に成功した上位ドラゴンの子供。

部室で遊んでいるのをよく見かけるよ。

家でも一緒にいるそうだ。

 

「アーシアは魔物を使役する能力が高いのかもしれん。あんがい伝説級の魔物とでもすんなり契約できるかもしれないな。壁役になる魔物と言うと・・・・」

 

先生は再びブツブツと呟き始めた。

 

でも、アーシアさんを守る壁役の魔物がいてくれれば、僕たちも後衛に回る必要もなくなるから戦術的にかなり幅が広がるだろうね。

 

いったいどんな魔物と契約するのか今から気になって来たよ。

 

 

 

その時だった。

 

 

ぬるりとした嫌な感覚が僕を襲った。

 

この感覚は―――――――

 

「ありゃりゃ、ヴァーリはまかれたようにゃ。―――――こっちに本命が来ちゃうなんてね」

 

黒歌さんがそう言った瞬間――――――――

 

見覚えのある霧が辺りに立ち込めていった―――――――――

 

 

 

 

 

 

ホテル内のレストランを飛び出していく僕達。

 

建物内の人の気配がなくなっている!

京都で体験したものと同じだ!

 

僕達はまた強制的に転移させられたのだろう。

僕達のいたホテルと全く同じものを作り出して、僕達だけをそこに転移させたんだ。

 

こんなことが出来るのはあの霧使いしかいない。

 

レストランから広いロビーに到着すると、そこには黒いソファに座る二人の男性。

 

それを確認したと同時に僕達のもとに火球が飛び込んできた!

狙いはアーシアさんとイリナさん!

 

しかし、その火球は二人に届くことはなかった。

 

オーフィスが二人の壁となって火球を難なく打ち消したからだ。

 

・・・・オーフィスが二人を守った?

 

「あ、ありがとうございます」

 

「・・・・・」

 

アーシアさんのお礼にオーフィスは無反応だが・・・・。

 

僕はソファへと視線を戻した。

 

見覚えのある二人。

学生服にローブを羽織った青年と同じく学生服の上から漢服を着た黒髪の青年。

 

漢服を着た青年は槍を肩でトントンとすると僕達に向けて言った。

 

「やあ、久しいな。アザゼル総督、それにグレモリー眷属。京都以来だ」

 

「ちっ・・・。このタイミングで仕掛けてきやがったか―――――曹操」

 

先生が舌打ち交じりにその男の名を呼んだ。

 

最強の神滅具を持った英雄派のリーダー。

京都では九尾を攫い、僕達とも戦ったあの男。

 

イッセー君が負わせた目の傷が無くなっている・・・・?

傷が深すぎてフェニックスの涙でも回復してなかったはずだが・・・・・。

 

曹操はソファから立ち上がると僕達を一度見渡す。

 

「おや? 赤龍帝はいないのかい?」

 

「残念ながら今はな。それで? こうして俺達をこんなフィールドに転移させた理由はなんだ? まぁ、ろくでもないことは確かだろうがな」

 

先生がそう訊くと、曹操はオーフィスの方へと視線を移した。

 

「やあ、オーフィス。ヴァーリとどこかへ出かけたと思ったら、こっちにいたとはね。少々虚を突かれたよ」

 

すると、オーフィスの前に黒歌さんが立った。

 

「にゃはは、それはこっちの台詞にゃ。てっきりヴァーリの方に向かったと思ったんだけどね―」

 

「ヴァーリの方には別働隊を送ったさ。今頃やり合ってるんじゃないかな?」

 

一体何の話をしているんだ・・・・・?

 

状況が呑み込めない僕達を前にルフェイさんが挙手した。

コホンと咳払いすると、説明を始めた。

 

それと同時に彼女の陰からフェンリルが現れ、曹操達を鋭く睨みつけた。

 

「えっとですね。事の発端は二つありました。一つはオーフィス様がおっぱいドラゴンさんに大変ご興味をお持ちだったこと。二つ目はオーフィス様を影で付け狙う存在にヴァーリ様が気付いたことです」

 

ルフェイさんは指を二本立てて説明を続ける。

 

「そこで、ヴァーリ様は確証を得るため、いぶり出すことにしたのです。今回、オーフィス様をおっぱいドラゴンさんのお家にお連れしたのはこの二つを叶えることが出来ると考えたからなんです。運が良ければオーフィス様を囮にして私達のチームの障害となる方々とも直接対決が出来る、と。つまりですね・・・」

 

遠慮がちにルフェイさんは曹操達に指を突き付けた。

 

「そちらの方々がオーフィス様を狙っていたので、オーフィス様をヴァーリ様がお連れして動けば、そちらも動くでしょうから、狙ってきたところを一気にお片付けしようとしたのです。そこで、ヴァーリ様はオーフィス様をおっぱいドラゴンさんのお家に送ると同時に、偽物のオーフィス様をヴァーリ様がお連れするという作戦を立てられたのです。ちなみに偽物のオーフィス様は美猴様が変化されたものです♪」

 

僕はルフェイさんの言葉に驚愕した。

 

曹操がオーフィスを狙っていた!?

 

どういうことなんだ!?

 

オーフィスは英雄派が所属する『禍の団』のトップだろう!?

 

なぜ狙う必要がある!?

 

ルフェイさんの説明を聞き、曹操はうんうんと頷く。

 

「ま、ヴァーリのことだから何かしら策は講じてくるだろうとは踏んでいたさ。それにオーフィスが今世の二天龍に興味を抱いていることも知っていたからね。もしやと思って赤龍帝の方を探ってみれば案の定だった。こういう形でご対面を果たすことになったのは、そういうことだ」

 

曹操は槍を肩でトントンとしながら笑みを浮かべる。

 

オーフィスが静かに口を開く。

 

「曹操、我を狙う?」

 

「ああ。俺達にオーフィスは必要だが、今のあなたは必要ではない」

 

「わからない。けど、我、曹操に負けない」

 

「そうだろうな。正面からやり合ったのでは手も足も出ない。それほどにあなたは強い」

 

それはそうだろう。

 

いくら曹操が強いと言っても無限と称されるオーフィスを倒すことは無理だ。

各勢力のトップ陣でも容易に手を出せないというのだからね。

 

しかし・・・・なんだ、あの余裕の表情は・・・・・?

 

まるで策があるような表情をしている・・・・・。

 

禁手・・・?

 

曹操はまだ一度も禁手を見せていない。

最強の神滅具、その禁手を使えば勝てるのだろうか・・・・?

 

いや、先ほど正面からやり合っては勝てないと自分で言っていた。

ということは彼が禁手を使っても無理だということだ。

 

そうなると何か別の手が・・・・・?

 

疑問の尽きない僕の視界に眩い光が映り込む。

 

見ると黒歌さんとルフェイさんの足元に魔法陣が展開されていた。

二人が発現させたものだろうか?

 

黒歌さんがニンマリ笑みを浮かべる。

 

「にゃはは、そっちがそう来るならこっちも見せてやるにゃ。いくよ、ルフェイ。こうなったら、あいつをこっちに呼んでやらにゃーダメっしょ♪」

 

魔法陣の中心にフェンリルが位置すると、魔法陣の輝きが一層強くなっていく!

その輝きが弾け、周囲を光が覆った!

 

光りが止んだ時、そこにはフェンリルの姿は無く―――――――――

 

 

 

「ご苦労だった、黒歌、ルフェイ。―――――――こうして会うのは久しいな、曹操」

 

 

 

白龍皇、ヴァーリ・ルシファーが不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

[木場 side out]




というわけで、英雄派が再び現れました!

次回も木場視点で話が進むと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。