ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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連続投稿です!


8話 上級悪魔を目指して!

上級悪魔昇格の試験会場と中級悪魔昇格の試験会場は違う場所にある。

 

木場と朱乃と別れた俺はレイヴェルの案内のもと、上級悪魔昇格試験会場へと向かった。

 

廊下を渡って先程受付を済ませた場所とは違う棟へと移動。

それから少し進むと、悪魔文字で『上級悪魔昇格試験・筆記試験会場』と書かれた立て札が見えた。

 

レイヴェルとはここで一旦お別れだ。

 

「それでは、私は一度ホテルに向かいますわ。試験終了一時間前には再びお迎えにあがりますので」

 

上級悪魔の試験は試験科目数も多いため、中級悪魔試験よりも終わるのは遅い。

そのため、木場と朱乃は先にホテルへと向かうことになっている。

 

「悪いな、レイヴェル」

 

「いえ! 私はイッセー様のマネージャーですから、当然のことですわ!」

 

「ハハハ。ありがとう。それじゃあ、行ってくるよ」

 

「はい! 頑張ってください!」

 

レイヴェルの応援を受けて試験会場の扉を開ける。

そこは長机が並ぶ室内だった。

 

以前、駒王学園の大学部の見学に行ったことがたるんだけど、正にそんな感じだ。

 

俺の受験番号は「001」。

ってことは一番前の席か。

 

俺が席につくと隣の席からヒソヒソ声が聞こえてくる。

 

「あれって・・・・・赤龍帝か・・・・?」

 

「ああ。噂には聞いてたが、昇格推薦の噂は本当だったらしい」

 

「でも、赤龍帝はまだ下級のはず・・・・・・飛び級か!」

 

なんか、スゲー言われてるな。

 

今、部屋にいるのは俺を含め四人。

その内、三人がヒソヒソ話に参加とか・・・・・・。

 

俺も混じってやろうか?

 

『うふふ。寂しいのならお姉さんが出てあげましょうか? 抱き締めてあげるわよ?』

 

嬉しい申し出だけど、それは後でな。

流石にそれをこの場でされると浮くから。

 

『既に浮いてるだろ』

 

うるせーよ。

 

てか、ドライグさんよ。

調子はどうなんだよ?

 

この間、精神崩壊しそうになってただろ。

 

『うっ・・・・・。ま、まぁ、大丈夫だ。処方された薬が効いているのだろう』

 

あの精神安定剤ね・・・・・・。

 

エルシャさん達の悲鳴を聞いた後、神器に潜ってみると、ドライグが泡吹いて倒れてた。

白目を向いて。

 

どうにも、オーフィスとイグニスのダブルパンチはドライグの精神に多大なダメージを与えたようだ。

 

殆どイグニスのせいだと思うが・・・・・・。

 

イグニスのせいでドライグが薬づけになっちまったじゃねぇか。

 

『だって、ドライグ弄るの楽しいし』

 

やめなさい!

ドラゴン愛護団体に訴えられるぞ!

 

『そんな組織があるのか? だとしたら、保護を願いたいんだが・・・・・』

 

知らん!

つーか、赤き龍の帝王が保護を求めるってどんだけ!?

 

そうこうしていると試験官が入室して、レポートの提出を促してきた。

 

俺は試験官の先導のもと、レポートを提出。

配られた試験用紙を前に準備を整える。

 

さて、どんな問題が出るのか・・・・・・。

色々不安なところはあるが、必ず結果は残す!

 

「時間です。開始してください」

 

 

 

 

 

 

「あー、あんな問題ありかよ・・・・・・。んだよ、『レヴィアたん』の第一クールの敵幹部の名前とか・・・・・知らねーよ」

 

試験会場の下の階には食堂がある。

 

俺は一人、テーブルに突っ伏していた。

 

数時間に渡る筆記試験は無事終了。

 

悪魔についての基本問題やら応用問題、苦手としていた政治や経済などの分野も一応は埋めた。

分からない問題もそれなりにあったけど、空欄にはしていない。

そこは神頼みだ(悪魔だけど)

 

・・・・・社会学の問題として、セラフォルーさんが製作している魔女っ子番組『レヴィアたん』についての問題が出てきた。

当然、そんなもんは分からないので俺は迷わず次の問題に進んだ。

 

他にも『乳龍帝おっぱいドラゴン』についての問題も出てきたけど、こっちは余裕だった。

なんせ、主役ですから!

一応チェックはしてるんだぜ!

 

あとは『禍の団』についての問題も。

これも余裕だった。

ってか、実際にあいつらと戦ってきてるから、その辺は下手な上層部よりも詳しいだろうさ。

 

筆記試験の出来具合としてはそこそこって感じだな。

ベストは尽くしたが、やはり難しい問題だっただけに不安な箇所はある。

 

まぁ、終わったことだし言っても仕方がないか。

他の試験で点を稼ぐとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の試験は個室で試験官とチェスだ。

その後に口頭試問が行われる。

 

俺は立ち上がり、次の会場へと向かった。

 

案内板に従って辿り着いたのは木製の扉の前。

 

うん、ちゃんと『戦術試験会場』って書いてあるな。

 

俺がノックをすると、扉の向こうから『どうぞ』と返ってきた。

 

「失礼します」

 

入室すると、部屋の中には円卓とその回りに椅子が二つ。

円卓の上にはチェス盤と駒が置かれている。

 

部屋の奥には大きなテーブルがあって、側面に何やらスイッチのような物が取り付けられていた。

 

「お待ちしておりました。兵藤一誠様。私があなたの試験を監督させていただきます」

 

と声をかけてきたのはビシッとスーツを着たお姉さん。

 

眼鏡をかけた黒髪ロングの美人さんで、いかにも仕事が出来そうな女性だった。

雰囲気としては副会長に近いかな?

 

「今日はよろしくお願いします」

 

俺が頭を下げると女性はにこやかに微笑んだ。

 

「そこまで固くなる必要はありませんよ。確かにこれは上級悪魔への昇格がかかった試験ですが、あまり気を入れすぎると空回りしてしまいます。チェスくらいはお茶を飲みながら、楽しんでください」

 

あ、なんか優しい感じの人だな。

試験官を務めるくらいだから少し厳しい人なのかなと思ってたんだけど。

 

女性はティーカップを二つ用意すると、そこへ茶を注いでいく。

 

「どうぞ、席におかけください」

 

「はい」

 

女性に促され、椅子に座る。

 

俺の前にティーカップが置かれ、女性も俺と向き合う形で椅子に座った。

 

「それでは、試験の概要を説明しますね。この戦術試験ですが、まずは私とチェスをしてもらいます。勝敗は問いません。ここで見るのは駒の配し方、勝敗までの過程を見ます」

 

なるほど。

 

まぁ、負けたらそこで点数ゼロとかだったらかなり厳しいよな。

過程を見るってことは相手の戦術を読む力が試されるのか。

 

「チェス終了後はあちらのテーブルにて、口頭試問を行います。あのテーブルに様々な地形のフィールドを映し出しますので、私が出した条件下で、あなたがどう行動するのかを聞かせてもらいます。簡単に言えば、レーティングゲームのシミュレーションのようなものです」

 

へぇ、あのテーブルはそのためのものなのか。

そういや、ライザーとのレーティングゲームの時にリアスが地図を用意して戦術を練っていたけど、そんな感じなのかな?

 

「概要は以上です。適宜質問は受け付けますが、今質問することはありますか?」

 

「いえ、特には」

 

「わかりました。それでは試験を始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

それから更に数時間が経った。

戦術試験も終えた俺だが・・・・・・俺は再び食堂のテーブルに突っ伏していた。

 

「つ、疲れた・・・・・・」

 

体力というより、精神が疲弊してる。

 

 

結果を言えばチェスは俺の敗けだった。

 

あのお姉さん、チェス強すぎ・・・・・・。

 

俺もリアスやレイヴェルに相手をしてもらっていたから、なんとか食らいついてたんだけどね。

最終的にはお姉さんの策略にはまり、王を取られてしまった。

 

勝ち負けは関係ないと言っていたけど・・・・・・やっぱ、気にするよなぁ・・・・・・。

 

過程だけなら悪くないと思う。

俺だってやられっぱなしじゃなかったわけだし。

 

でもなぁ・・・・・・どうせなら勝ちたかった。

 

『だが、その後の口頭試問では良い感じだったではないか』

 

ドライグの言う通り、口頭試問はそこまで難しいものじゃなかった。

 

実践経験はかなり積んできてるから、わりとスラスラ答えられたと思う。

お姉さんも時おり、感心しているようだったし。

 

『まぁ、泣いても笑っても次が最後の試験よ。頑張りなさい』

 

だな。

 

えーと、次は屋内闘技場だったか。

二十分後にジャージに着替えて集合だ。

 

そういや、木場と朱乃は試験がとっくに終わってるのか。

二人は先にホテルに行ったと思うけど・・・・・・二人の試験はどうだったんだろう?

 

あの二人なら試験は余裕だろうけど。

悪魔の知識は元々持ってるし、頭も良い。

戦闘だって中級悪魔レベルならとっくに超えてるしな。

受験者が相手なら手加減がいるレベルじゃないかな?

 

そんなことを考えていると向こうの方から声が聞こえてきた。

 

「イッセー様。こちらにいらしてたのですね」

 

レイヴェルだ。

 

「お、レイヴェル。もう来てくれたのか?」

 

「はい。既に試験終了の一時間前ですので」

 

「あれ? もうそんな時間?」

 

まだ実技が残ってるんだけど・・・・・・。

 

あ、でも本当だ。

壁にかけられた時計を見ると終了予定時間まであと一時間だ。

 

「実技試験は受験者同士で競い合いますが、上級悪魔試験では受験者が少ないので、すぐに終わりますわ」

 

そっか。

確かに俺含めて四人しか受けてないもんな。

 

そりゃ、直ぐに終わるわ。

 

「お兄ちゃん、お疲れさま」

 

「試験はどう?」

 

と、現れたのは美羽とアリスだ。

 

この二人はホテルで待っておくはずでは?

 

俺が二人の登場に怪訝に思っているとレイヴェルが答えてくれた。

 

「美羽さんもアリスさんも先程までホテルにいたのですが・・・・・私がイッセー様の元に戻ると言ったら付いてくると仰いまして・・・・・」

 

「ゴメンね、レイヴェルさん。わがまま言っちゃって」

 

「いえ、そこまで大したことではありませんわ。私と一緒に行動するのでしたら、この場に来ることは問題ではありませんので」

 

レイヴェルの話を聞いた後、俺は美羽達に尋ねた。

 

「でも、どうしてここに? どうせホテルで会うんだし、態々ここまで来ることはないだろ?」

 

美羽は少し申し訳なさそうな表情で答えた。

 

「う、うん・・・・・そうなんだけど・・・・・。やっぱり気になっちゃって」

 

「そうそう。あんたの昇格は私達にとっても重要なことなんだから、気にならない訳がないでしょ?」

 

アリスも自身の胸に手を当てて言う。

 

そうだったな。

俺の昇格は二人の人生にも大きく影響するんだった。

 

この間、二人からされたお願い。

まさかこんなに早くその願いを叶える機会が巡ってくるなんて思ってもなかった。

 

アリスが俺に訊く。

 

「それで? 試験の出来具合はどうなのよ?」

 

「う、うーん、そこそこ・・・・・・かな?」

 

「そこそこって・・・・・・しっかりしなさいよ」

 

ベストは尽くしてるよ?

おかげで既に精神力はヘトヘトです。

 

「それじゃあ、次の実技試験。あんた、全力でいきなさいよ? 周りにあんたの力を魅せやりなさい」

 

「無茶苦茶言うな・・・・・・」

 

俺が本気出したら試験会場が崩壊するぞ?

 

そうなったら試験どころじゃなくなるって。

 

そうこうしている内にもうすぐ次の試験が始まる時間となっていた。

 

「次でラストだ。気合い入れますか!」

 

 

 

 

 

 

ジャージに着替えた俺は屋内闘技場にいた。

 

他の受験者は既に体を動かしているようだった。

俺も軽いストレッチはしておこう。

 

それから数分経つと試験官の方々が集まり、俺達の点呼をとっていく。

四人しかいないんだから、見てわかると思うんだけど・・・・・・。

 

試験官は俺達受験者に受験番号のバッジをつけると、説明を始めた。

 

「実技試験は中級悪魔試験と同様でシンプルなものです。受験者の皆さんで戦闘をしてもらいます。対戦相手はクジによって決めてもらいます。戦闘は総合的な戦闘力を見るので相手に負けたとしても合格の目はなくなりません。出来るだけ良い試合をするようにしてください。ルールは持てる力で相手と戦ってもらいます。武器の使用も許可していますが、相手を死亡させた場合は失格となります。事故による死亡は我々試験官による審議によって是非が決まります」

 

ルール説明はそれからも続いていくが・・・・・。

 

良い試合って何!?

どんな試合なの!?

そのあたりを詳しく教えていただきたい!

 

ルール説明が終わり、俺達の前には箱が置かれる。

その箱にクジが入っていて、俺はそれを引く。

 

番号は「1」。

 

受験番号と変わらねー。

 

「試合は一組ずつ行います。まずは「1」の方と「2」の方が試合です」

 

試験官にそう言われた俺と対戦相手は魔力で円形に描かれたバトルフィールドに入っていく。

 

うーむ、良い試合か・・・・・。

 

どうすれば良い試合になるんだ?

 

『まだ考えているのか』

 

まぁね。

 

試験官が間に入り、俺達を交互に見てくる。

 

「どちらも準備は大丈夫ですね?」

 

頷く俺と対戦相手の男性。

 

試験官の手が上げられ――――下ろされた!

 

それと同時に男性から炎の魔力が俺めがけて放たれた!

 

開幕速攻かよ!

 

俺は右手を薙いで炎の魔力弾を弾き飛ばす。

 

「ちっ!」

 

男性は舌打ちすると、大きく後ろに跳んで魔力を練りはじめる。

 

すると、男性の背後に現れたのは炎で形成された大蛇。

 

大きいな・・・・・・十メートルくらいか?

 

「いけ!」

 

男性の号令に従い、大蛇は勢いよく飛び出してくる。

その大きな顎を開いて俺を丸のみにしようとするが――――

 

 

バァァァァンッ!!

 

 

俺が放った気弾で大蛇は弾けた。

辺りに火の粉が飛び散る。

 

えらく手応えがないが・・・・・・。

 

 

 

・・・・・・なるほど、そういうことか。

 

 

 

大蛇が俺の視界から消えたと同時に男性も消えていた。

 

おそらく今の大蛇は俺の注意をそらすための囮。

その間に男性は自分の姿を魔力か魔法かで消したってところか。

 

流石に上級悪魔の昇格試験を受けるだけはある。

 

感心していると、俺の背後から炎が飛んできた。

俺は体をそらしてそれを避ける。

 

それから四方八方から炎が俺めがけて飛んでくるが俺は体捌きだけで全てを避けていく。

 

「ちぃっ! なぜ当たらん!」

 

男性の苦渋の声が聞こえてくる。

 

なぜ当たらんと言われても・・・・・・姿消しても気の位置は把握できるからどこにいるのか直ぐに分かるんだよね。

 

『ぼちぼち反撃した方がいいんじゃない?』

 

『あまり時間をかけるのもな』

 

それもそうだな。

 

俺は二人の意見に頷くと、地面を蹴って飛び出した!

 

真っ直ぐに男性に向かっていく!

 

「なぜ俺の位置が――――」

 

 

ドガンッ!

 

 

男性が言い切る前には俺の飛び蹴りが炸裂!

 

男性は会場の壁に大きな穴を開けて、会場の外にまで飛んでいってしまった。

 

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 

静まる会場。

 

試験官までポカーンとしてる。

 

「あの・・・・・・終わったんですけど・・・・・」

 

俺が声をかけると試験官の一人が慌てて吹っ飛んでいった男性を追いかけた。

 

試合を見ていた残りの受験者二名の声が聞こえてくる。

 

 

「・・・・・俺、赤龍帝と当たらなくて良かった。神器使わずにあれかよ・・・・・・」

 

「ですね。今日の私達は冥界で一番運が良いのかもしれません」

 

 

そんなにか!?

 

言っとくけど、手加減はしたよ!? 

死なせるわけにはいかないし!

 

 

そんなこんなで実技試験は終わり、長かった俺の上級悪魔昇格試験は終わった。

 

 


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