ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

158 / 421
第十一章 進級試験とウロボロス
1話 朝から賑やかです!


[アザゼル side]

 

 

それは学園祭が終わってすぐのことだった。

 

ヴァーリから俺宛にプライベート回線が開かれた。

 

「それは本気なのか、ヴァーリ」

 

通信用魔法陣を介して奴の元気そうな顔が見える。

 

『ああ、彼・・・・・いや、今は彼女か。彼女はそれを望んでいてね。俺としても興味があるので便宜を図りたい』

 

その提案を出されたとき、俺はかなり間の抜けた顔をしていただろう。

 

だが、それほどのものだったのだから仕方がない。

 

正直、勢力図が塗り替えられてもおかしくないほどのレベルだ。

 

「・・・・・・お前の事だ、それだけじゃないんじゃないか?」

 

『相変わらず鋭い。ゆえに他の勢力からも疎まれているわけか』

 

「余計なお世話だ」

 

『その「余計なお世話」を振り撒きすぎて、色々と思われていると聞くが?』

 

・・・・・こいつに言われなくても分かってる。

 

俺は各勢力の上層部には疎まれているだろうよ。

 

「堕天使の総督」って胡散臭い肩書きを持ったやつが「和平」だの「和議」だのを謳い出したわけだからな。

 

「・・・・・・・まぁ、これも性分だ。それで背中を狙われるなら、それで受け入れるさ」

 

『相変わらずだな』

 

「うるせーよ」

 

ヴァーリは苦笑すると、ふいに呟いた。

 

『・・・・・彼女を狙うものがいてね』

 

「当然だろうな。それこそ星の数だが、滅すること叶わずだからどいつも歯がゆい思いをしているんだがな」

 

『それはそうなんだが、身内から出そうでね。いや・・・・・仕掛けてくるかな』

 

俺の脳裏に浮かぶのは聖なる槍を持った若造。 

 

なるほど・・・・・。

 

「いぶり出す気か?」

 

『俺の敵かどうか、ハッキリさせるだけさ。まぁ、敵だろうけどね』

 

ヴァーリは楽しそうな笑みをして―――。

 

『ケリをつけるには頃合いだな』

 

こいつは、どこまでいってもバトルマニアか。

 

イッセーみたいに女でも作れば良いんだが・・・・・・こう思うのも「余計なお世話」なのかね?

 

 

 

[アザゼル side out]

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、俺が目を覚ますと目の前にアリスがいた。

 

反対側には美羽がいて、二人とも穏やかな寝息を立てている。

 

いつもなら、リアス達もいるんだけど・・・・・・他の皆の姿がない。

 

ってか、ここ俺の部屋じゃなくね?

 

ピンク色のカーテンに机の上には女性向けの雑誌。

家具の位置や置かれている物からして、ここはアリスの部屋か。

 

なんで、俺、アリスの部屋で寝てるんだ・・・・・・?

 

それに美羽までいるのは・・・・・・。

 

「起きた?」

 

俺がうーむと昨晩の記憶を探っていると美羽が目を覚ました。

 

「おはよう。なぁ、俺ってなんでここで寝てるんだっけ?」

 

「忘れたの? 昨日はボクとアリスさんでお兄ちゃんにお願いごとがあるって言って、ここに呼び出したんだよ。それで話しているうちに眠たくなって、ここでそのまま」

 

あー、そっか。

 

思い出したわ。

 

昨日、二人に呼び出されてあることをお願いされたんだが・・・・・・。

 

俺としては嬉しい申し出だったし、心強いんだけど・・・・・。

それはいつになるか分からないからなぁ。

 

美羽はまぶたを擦って一度上体を起こすと、体を寄せて俺に密着してくる。

 

そして、フフフと微笑みを浮かべた。

 

「お兄ちゃんの体温かいね。もう少し・・・・・こうしていてもいいかな?」

 

朝一番から可愛いこと言ってくれるぜ!

 

俺も美羽の温もりを感じられるように美羽の温もりを背中に手を回してギュッと抱きしめた。

 

温もりだけでなく、美羽の鼓動も伝わってくる。

髪から良い香りもするな。

 

ああ・・・・・安らぐなぁ。

 

久しく美羽とこんなことしてなかったから、ずっとこうしていたくなる。

 

ふいに美羽が顔をあげた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

「ん? どうした?」

 

俺が聞き返すと、美羽は頬を染めてモジモジしながら言った。

 

「朝の・・・・・おはようのキス、してほしいな」

 

少し前までは俺が美羽を起こした後、美羽が俺のほっぺにチューすることがあったんだが・・・・・・(それ、逆じゃない? という意見は受け付けないぞ)

 

修学旅行での一件の後は美羽から求めてくるようになった。

 

まぁ、自分からキスをするってのは少し気恥ずかしくもあるんだが、美羽のお願いだから断るはずもない。

 

求められた時は俺が美羽にキスをすることになっている。

 

「いいよ。・・・・・美羽」

 

「・・・・・お兄ちゃん」

 

お互いの顔が近づいていく。

 

そして、唇を重ねた。

 

もちろんディープなものではなく、本当に重ねる程度だ。

 

それでも、離れた後は幸福感に包まれていてだな。

 

「エヘヘ・・・・・。やっぱり、いいね・・・・こういうの」

 

天使のようなスマイルを見せる美羽に癒される。

 

あぁ、朝から幸せだなぁ。

 

やっぱり平和が一番だよね!

 

 

 

「二人とも・・・・・・朝からしちゃうんだ」

 

 

「「っ!?」」

 

その声に慌てて振り向くと、アリスが起きていた!

 

いつの間に!?

 

頬を赤くして、俺達と視線を合わせてくれないんだけど・・・・・・・

 

見られた!?

今のシーン見られましたか!?

 

「・・・・・み、見た?」

 

恐る恐る尋ねると・・・・・・・

 

「二人とも凄く良い雰囲気でするんですもの・・・・・・。声をかけづらくて」

 

バッチリ見られてたぁぁぁあああ!!

 

恥ずかしい!

 

「あ、あ・・・・はぅぅぅぅ」

 

流石に美羽ちゃんも顔真っ赤だよ!

 

「・・・・・な、なんか・・・・・ゴメン・・・・・」

 

「謝らないで! こっちが申し訳なくなるから!」

 

アリスは悪くないよね!

 

悪いのはタイミングだよ!

 

はぁ・・・・・人にキスしてるところ見られるのってこんなに恥ずかしいものなのか・・・・・・。

 

うん、ここはさっさと起きてリビングに行くか。

 

少し時間を空ければ気まずさもなくなるだろうし。

 

そう考え、ベッドから降りようとすると―――――

 

「待って」

 

アリスが背中から抱きついてきた。 

背中側から前に手を回してしっかりと。 

 

え、えーと・・・・・・

 

な、何事・・・・・?

 

「私も・・・・・おはようのキス・・・・・してあげる・・・・・」

 

いきなりの展開に俺は思考が停止した。

 

「えっ?」

 

思わず聞き返してしまうが、アリスは視線を外しながら言った。

 

「だ、だって・・・・このままだったら、仲間はずれみたいで嫌だし・・・・・・。ほ、ほら! 私がしてあげるって言ってるんだから、顔こっち向けなさいよっ」

 

アリスは俺の顔を掴むと強引に引き寄せる。

 

互いの鼻が当たるくらいに近い!

 

アリスは瞳を潤ませながら、

 

「そ、それとも、私じゃ・・・・・・イヤ?」

 

ぐっ・・・・・なんで、急にそこまで雰囲気が変わるんだ!?

 

可愛いじゃないか!

 

そんなこと言われたら・・・・・・・俺だって我慢できない・・・・・・ッ!

 

「・・・・・アリス」

 

「っ!」

 

俺はアリスを引き寄せて、その唇に自分の唇を重ねた。

 

アリスは驚いた表情を浮かべて体を強ばらせる。

だけど、それは一瞬のことで直ぐに体も柔らかくなっていく。

 

離れると、アリスは口元を抑えて俺から視線をそらす。

 

「・・・・・あ、あんた・・・・・いつからこんな、積極的になったのよ・・・・・・」

 

「ハハハハ・・・・・・」

 

積極的になったというか・・・・・積極的にさせられたというか・・・・・・。

 

あんな風に言われたら俺でもああなるって。

 

「・・・・・アリスさん」

 

美羽が呟いた。

 

し、しまった!

 

美羽がいるのに、俺・・・・・・あんな・・・・・・。

 

アリスも慌てたように手を振る。

 

「み、美羽ちゃん! ご、ゴメンなさい! わ、私・・・・」

 

アリスが謝るが美羽は首を横に振った。

 

「ううん。アリスさんだって、ボクと同じ気持ちだってことは分かってるから」

 

美羽はだから、と続ける。

 

 

 

 

「今度は・・・・・三人でしたいな・・・・・」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「「ええええええええええええっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

美羽の衝撃発言の後、俺は一階のリビングで朝食を取っていた。

 

今日は卵焼きと味噌汁と焼き鮭。

和食の定番だ。

 

「うん、美味い。皆が家に来てからは食事の時間が楽しみなんだよ。皆、料理が上手いから美味しくてなぁ。『男は胃袋をつかめ』って女性は言うらしいけど、わかるだろう、イッセー?」

 

しみじみと朗らかな笑顔で言う父さん。

 

俺もそれに頷く。

 

「うんうん、わかるよ」

 

美少女達に囲まれて、美少女が作った料理が食べられて、美少女と談笑しながら食事をする!

理想だよね!

 

毎日が最高だぜ!

 

「イッセーのお弁当はこれね♪」

 

満面の笑みを浮かべながらリアスがお昼のお弁当を俺の前に置いてくれる。

 

昼の弁当は当番制で、台所に立つメンバーが日替わりで作ってくれる。

 

そんでもって、今日の担当はリアス。

 

リアスの料理も一段と磨きがかかっているから、今から楽しみだぜ!

 

「ありがとう、リアス」

 

と、お礼を言ってる俺の視界にレイヴェルが映り込む。

 

弁当箱に料理を詰め込んでいるんだが・・・・・レイヴェルの弁当箱じゃない。

 

「なぁ、レイヴェル。その弁当箱は?」

 

「これはギャスパーさんへの差し入れですわ。お一人で朝練をしているそうですから」

 

「朝練!? ギャー助が!?」

 

ギャスパーが一人で朝練!?

 

そいつは驚きだ!

 

リアスが俺の隣の席に腰を下ろしながら言う。

 

「先日の一件で、自分の力不足を強く感じてしまったと言って、普段のメニューとは別に自主メニューをこなし始めたのよ。ハードワークにならない程度に体を一から鍛え始めたみたいなの」

 

先日の一件――――バアル戦のことか。

 

朱乃もそれに続く

 

「今の力を使いこなして、あの領域に至りたいと気合いを入れていましたわ」

 

あの領域――――禁手か。

 

力不足を感じた、か。

 

確かに今のギャスパーは弱い。

だけど、この間の試合では立派に戦って男を見せたと俺は思う。

 

あいつが自分の意思で強くなろうとするなら、俺はそれを見守ってやりたい。

 

あいつなら絶対に強くなれるさ。

 

ま、まぁ、ムキムキのあいつは想像したくないが・・・・・・。

 

「小猫さん? 顔色が優れませんわよ?」

 

レイヴェルが小猫ちゃんの顔を覗き込んでいる。

 

レイヴェルの言うように小猫ちゃんの顔色が優れていない。

顔が赤くて、少し辛そうだ。

 

「・・・・・なんでもない」

 

小猫ちゃんは簡素に返すが、レイヴェルはそれでも心配そうに小猫ちゃんの額に手を当てる。

 

「でも、お顔が赤いですわよ。風邪ではなくて? そうですわね・・・・・。フェニックス家に伝わる特製アップルシャーベットを作ってあげますわ。実家から地元産のリンゴが届きましてたの、それを使って特別にこの私が作ってあげますわね」

 

小猫ちゃんはレイヴェルの手をのけると一言。

 

「・・・・・・ありがた迷惑」

 

「んまー! ヒトの好意を即否定だなんて!! 猫は自由気ままでいいですわね!!」

 

「鳥頭に言われたくない」

 

「と、鳥頭? えーっと、日本語で鳥頭とは、物忘れの激しい方をさしましたわよね?」

 

「・・・・・よく勉強しているようだから、ほめてあげる」

 

「んもー!! この猫娘は!!」

 

ハハハハ・・・・・。

 

この二人の口喧嘩はもう日常の一部だ。

ことある度に言い合いをしている。

 

でも、仲が悪いわけではなくて、良いケンカ友達って感じだ。

 

小猫ちゃんはまだ人間界に馴れないレイヴェルを助けてるし、レイヴェルも小猫ちゃんを頼っているようだしね。

 

そんな二人の微笑ましい光景を見ていると向かいの席に座るイグニスが言った。

 

「昨日、イッセーと美羽ちゃんはアリスちゃんの部屋で寝てたみたいだけど、何をしてたのかな~」

 

「な、なんだよ・・・・・その意味深な顔は・・・・」

 

「いえね、今度は三人で合体したのかな~って」

 

「ブフゥゥゥゥゥウウウッ!!!」

 

霧状に噴き出される口の中の水!

 

な、ななななんつーこと聞きやがる、この駄女神!

 

「してねーよ! なんでそんなこと聞くんだよ!?」

 

「だって、イッセーのお父さんとお母さんは孫の顔を今か今かと待ってるみたいだし」

 

そうなの!?

 

父さんと母さんの方を見ると二人ともうんうんと頷いていた。

 

「イグニスさんの言う通りだ。早く美羽と子供作れ」

 

「私達に孫の顔を見せてちょうだい」

 

 

 

実は両親には美羽とのことは知られている。

 

修学旅行から帰ってきた俺は美羽と共に父さんと母さんの前に正座。

 

俺が美羽の初めてを貰ったんだ、ここは男として筋を通さなければと、全てを打ち明けた。

 

そして、俺は二人に土下座しながら、

 

「娘さんをくださいっ!」

 

と言ったんだ。

 

まぁ、本当ならシリウスに言うのが一番なんだけど、あの人はもういないし・・・・・・。

というわけで、美羽の親としてうちの両親に挨拶(?)をした。

 

すると、父さんは

 

「娘をよろしくお願いします」

 

と返してきた。

 

美羽と母さんは感動の涙を流していたが・・・・・・周りから見ていた皆からは何とも言えない光景だったそうだ。

 

義理とは言え、元々親子だしね・・・・・・。

 

まぁ、そんなわけで、俺と美羽の関係は親公認となっている。

 

 

 

でもね・・・・・・

 

 

 

「孫は早すぎね!?」

 

間違ってはない。

 

俺達、学生だし・・・・・・、その・・・・・孫は少し早いかなと思うんだ。

 

しかし、両親は首を横に振った。

 

「悪魔の世界ではどうかは知らないけど、日本の法律では二人は結婚できるわよ?」

 

「イッセーは二十歳で美羽は十七歳だしな」

 

うっ・・・・・それはそうなんだが・・・・・。

 

 

いやいやいや、戸籍上は十七歳だし!

 

あんたら、二十歳二十歳言い過ぎて完全に忘れてるだろ!

 

「確か・・・・・悪魔の世界では一夫多妻制だったな」

 

「となると、孫の顔もたくさん見られるわけね! うふふ、今から名前を考えないと!」

 

早い!

早すぎる!

 

なんで、家の両親はこうも行動が無駄に早いんだ!?

 

「と、とにかく! 孫に関しては先の話だから! 勝手に盛り上がらないで!」

 

「分かった分かった。じゃあ、ひっそり名前だけ考えておくよ」

 

分かってないじゃん!

孫の顔見る気満々じゃん!

 

「赤ちゃんの名前かぁ・・・・・・」

 

美羽も真剣に考え始めたぁぁああああ!?

 

もう少し待とうか!

 

その時に改めて一緒に考えよう、な?

 

父さんが母さんからお茶を受け取りながら言う。

 

「まぁ、あれだ。女の子を泣かせるようなことだけはするんじゃないぞ? それさえしなければ俺達は何も言わないさ」

 

「イッセーのことだから、そんなことはないと思うけどね」

 

母さんもそう言ってキッチンの方へと食器を運んでいった。

 

俺は苦笑しながら答えた。

 

「ハハハハ・・・・・・。それだけは絶対にしないよ」

 

 

と、俺と小猫ちゃんの視線が合った。

 

途端に小猫ちゃんはうつむいてしまう。

 

「・・・・・・孫・・・・・・赤ちゃん・・・・・・」

 

そんなことをぼそりと呟いている。

 

やっぱり元気がないようだ。

 

後で体を診てあげようかな?

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。