ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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17話 全力VS全力

俺とリアスは団体戦―――最終決戦のフィールドとなる広大な平地に立っていた。

 

辺りには本当に何もない。

 

思いっきりやれるってことだな。

 

実況がマイクを震わせる。

 

『さぁ、これまで激闘を繰り広げてきたバアルVSグレモリーの若手頂上決定戦もついに最終局面となります! サイラオーグ選手によってもたらされた提案により団体戦となった最終試合! バアル側は王、サイラオーグ選手と謎多き仮面の兵士、レグルス選手! 対するグレモリー側は真のスイッチ姫となった王のリアス選手と皆の味方おっぱいドラゴンこと兵士、乳龍帝・・・・もとい赤龍帝、兵藤一誠選手!』

 

こっちの紹介酷くない!?

 

リアスの顔真っ赤だよ!

 

『乳龍帝・・・・・素で間違えただろ、あの実況・・・・・グスンッ』

 

うちのドライグさんなんて泣いちゃってるよ!

 

どうやら、俺達は乳龍帝が定着してしまったらしい!

 

『ずむずむいやーん!』

 

『おっぱい!』

 

観客席の子供達はおっぱいドラゴン的な応援をくれた。

 

『二人とも、ファイトだよ!』

 

『油断しないでよ!』

 

『イッセー君とリアスさんに天のご加護を!』

 

美羽達も声を大にして応援してくれている。

 

イリナよ・・・・・天の加護はいらないかな。

 

俺達、悪魔だから。

 

ちなみにアーシアは陣地に置いてきた。

 

理由は回復役は真っ先に狙われるからだ。

 

相手はサイラオーグさんと駒消費7の謎の兵士。

 

アーシアの防御魔法では二人の攻撃が飛んできても防ぐことは出来ない。

 

サイラオーグさんはアーシアを狙うようなことはしないだろうけど、流れ弾的なものは十分にありうるからな。

 

回復役がいてくれれば安心はできるが、相手が相手だ。

 

今回は控えに回ってくれ、アーシア。

 

『さて、最終試合を始めようと思います』

 

審判が両チームの間に入り、俺達の準備が出来ていることを確認する。

 

『・・・・・では、最終試合! 開始してください!』

 

ついに最後の試合が始まる。

 

俺達の視線が交錯し、漂う空気に緊張が走った。

 

すると、サイラオーグさんがフッと小さく笑んだ。

 

「リアス。お前の眷属は素晴らしい。妬ましくなるほど、お前を想っている。それ故に強敵ばかりだった」

 

この人がそう言ってくれるならリタイヤしていった木場達も戦ったかいがあったというもの。

 

「この場にいるのは互いに王と兵士のみ。終局に近いな」

 

サイラオーグさんは真っ直ぐに言うと、次に俺の前に立った。

 

「兵藤一誠。ついにここまで来たな」

 

「ええ。以前、グレモリー城の地下でやり合って以来ですね」

 

修学旅行の直前。

 

あの時は互いに本気ではなかった。

 

「今回は全力でぶつかり合おうか」

 

「そのつもりです。ここには俺達の戦いを遮るものはありません。だから全力であなたと殴り合いができる。――――リアス、少し下がっててくれ」

 

「レグルス、おまえもだ」

 

俺が視線をリアスに移してそう言うとサイラオーグさんも仮面の兵士に下がるように告げる。

 

俺の意図が伝わったようだな。

 

「「まずはあの時の続きからいこうか」」

 

俺達はニッと笑みを浮かべると――――体からオーラを解放した。

 

 

ドオォォォォォォォォッ!!

 

 

俺の赤いオーラとサイラオーグさんの白く輝く闘気が膨れ上がる。

 

足元の地面を深く抉り、そこを中心にして地面にヒビが走っていく。

 

激しく衝突するオーラとオーラ!

 

それにより巻き起こる突風!

 

リアスも相手の兵士も巻き込まれると判断したのか更に後ろへと下がった。

 

『おおっーと! いきなり激しい衝突が始まりましたっ! 互いのオーラをぶつけ合って力比べをしているようです!』

 

『二人ともかなり濃密なオーラを放ってやがるな。並の奴じゃ近づくだけで焼かれて死ぬぞ』

 

実況に続き、先生が解説を入れる。

 

まずはと思って誘ってみたんだけど、こいつは想像以上だわ。

 

結構な力入れてるのに向こうは平然としてるぜ。

 

『前回の手合わせから相当実力を伸ばしたとみえる。タンニーンに修行をつけてもらっただけはあるな』

 

だな。

 

まだまだ底は見せてくれそうにない、か。

 

それじゃあ、そろそろ動きますか!

 

俺がオーラを放つのを止めて、構えるとサイラオーグさんも俺と同じようにして構えをとった。

 

俺達は一瞬、睨み合い―――――

 

同時に駆け出した!

 

「だああああああああっ!!!」

 

「おおおおおおおおおっ!!!」

 

 

バキィッ!!

 

 

互いの渾身の右ストレートが炸裂!

 

衝撃が空気を揺らし、地面にクレーターが咲く!

 

拳を通してサイラオーグさんの力がビリビリ伝わってきやがる!

 

互いにバックステップで一度距離を取ると、俺は地面を蹴ってフィールドを駆けた。

 

錬環勁気功で気を足に溜めて一気に初速を上げることに主眼を置いた瞬発だ。

その状態で地面を蹴り続けば、速度はさらに上がっていく。

 

サイラオーグさんも同様に地面を駆け、俺との距離を詰めて来る。

 

互いの間合いに入った瞬間に繰り出されるのは左右の拳によるラッシュ。

しかも、拳にオーラを纏わせた状態で放つ拳だ。

 

直撃すればダメージは免れない。

 

そのため、俺達は基本的に受けることはせず、時には避け、時には受け流しながら自身の拳を繰り出していた。

 

「前回の手合せの時よりも攻撃が鋭く感じられるな! まともに受ければ俺とて大きなダメージを受けるだろう!」

 

「それはこっちの台詞だ! 枷を外したあなたの力は桁違いだよ!」

 

サイラオーグさんが拳を繰り出すたびに、風を切る音が鳴り響く!

 

その拳圧で俺の服はところどころ破れるほどだ!

 

俺は攻撃をいなしながら周囲から気を取り込み、その全てを右の拳に纏わせる。

 

それを脇に構え―――――――一気に振り抜く!!

 

「っ!!」

 

サイラオーグさんは危険を感じとったのか、咄嗟に横へと回避。

 

俺の拳は見事に空振るが、その勢いは真っ直ぐに突き抜け――――――

 

 

ドォォオオオオオオオン!!!!

 

 

地面を大きく抉りながら、遙か遠くの方まで突き進んでいった!

 

クソッ!

やっぱそう簡単には当たってくれないか!

 

俺が小さく舌打ちしてると、サイラオーグさんは俺の右後ろへと回り込んできた。

 

見れば肘打ちを繰り出す格好となっている。

 

それに対して俺は地面に片手をつき、その腕を軸にして蹴りを放つ。

 

しかし、俺の蹴りは虚空を薙いで終わった。

 

俺が蹴りを放つと同時にサイラオーグさんは俺の右手側に移動していたからだ。

 

サイラオーグさんは俺の足を掴み、地面に叩きつけようとするが―――――

 

「そう簡単にはやらせねぇよ!」

 

ゼロ距離で気弾を放つ! 

 

このままでは避けられないと判断したサイラオーグさんは俺の足から手を放し、大きく距離を取った。

 

一度、近距離戦を終えた俺達は軽く息を吐く。

 

 

・・・・・・いやはや、中々にヒヤヒヤするぜ。

 

 

若手悪魔ナンバーワンの真の力。

 

パワー極振りだけあって凄まじい威力だ。

 

と、ここで俺の視界に相手の兵士が映り込んだ。

 

リアスと対峙しているその兵士は仮面を静かに取り払った。

 

そこにあったのは俺達とそう歳が変わらないであろう少年の顔。

 

――――だが、それはすぐに変貌する。

 

 

ボコッ! ベキッ!

 

 

体中から快音を起こして、少年の体が盛り上がっていく!

 

全身に金色の毛が生えて、腕や脚が太く、たくましくなっている。

口が裂けて、鋭い牙を覗かせ、尻尾が生えて、首の周りにも金色の毛が揃えていく。

 

 

ガゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 

 

兵士の少年は五~六メートルはある巨大なライオンへと変化した!

 

額には宝玉のようかものがあり、そのライオンがリアスの眼前に立つ。

 

なんだ、ありゃ!?

 

『おおおっと! バアルチームの謎の兵士、その正体は巨大な獅子だったーーー!』

 

実況も驚いている様子だった。

 

うん、俺も驚いてるよ!

 

『あれは・・・・・ネメアの獅子か!?いや、あの宝玉は・・・・・まさか!』

 

解説の先生は驚きながらも何か得心したようだった。

 

あのライオンに心当たりがあるようだ。

 

実況が訊ねる。 

 

『アザゼル総督、あれはいったい?』

 

『・・・・ネメアの獅子はギリシャ神話に登場するヘラクレスの十二の試練の相手なんだが・・・・・。聖書の神があの獅子の一匹を神器として封じ込めた。それは十三ある神滅具として数えられて、極めれば大地を割るほどの威力を持ち、巨大な獅子の姿にもなれる。―――神滅具『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』。しかし、所有者がここ数年、行方不明になっていたんだが・・・・まさか、バアル眷属の兵士になっていたとは・・・・・・』

 

マジで!?

 

あのライオンが神滅具なの!?

 

兵士ってことは悪魔になってるんだよな・・・・・・。

 

そんなことが可能なのかよ?

 

すると、サイラオーグさんは静かに口を開いた。

 

「残念ながら本来の所有者は既に死んでいる。俺が『獅子王の戦斧』の本来の所有者を見つけた時は、既に怪しげな連中に殺された後だ。神器となる斧だけが無事だった。所有者が死ねば神器はいずれ消滅する。その戦斧もそうなるであろうと思っていたんだが・・・・・・、あろうことか意志を持ったかのように獅子に化けて、所有者を殺した集団を根こそぎ全滅させたのだ」

 

所有者が死んだのに、神器単体で動き出したってのかよ!

 

ドライグ、聞いたことあるか?

 

『初耳だな。少なくとも俺はそのような経験はない』

 

そっか。

 

ドライグの場合、所有者が死ねば直ぐに意識が途切れて、気づいたら次の所有者の神器の中にいたんだったな。

 

「俺が眷属にしたのはその時だ。獅子を司る母の血筋が呼んだ縁だと思ってな」

 

サイラオーグさんのお母さん、ミスラさんは獅子を司るウァプラ家の人。

 

確かに運命的な出会いだったのかもな。

 

『単独で意思を持って動く神器・・・・・・神滅具だと!? 更には悪魔に転生できたのか! それを可能にしたのは獅子の力か悪魔の駒の性能か・・・・・。どちらにしろ興味深い! 実に興味深いぞ! そりゃ、所有者を断定できないわけだ! レアだ! レアすぎるぜ! サイラオーグ! 今度、その獅子を俺の研究所に連れてこい! スゲー調べたい!』

 

おおー、スゲー笑顔だ。

瞳の奥がキラキラ輝いてるよ、あの先生。

 

まぁ、それだけレアな現象ってことか。

 

なんせ悪魔に転生してるもんな、神滅具が。

 

「所有者無しの状態のせいか、力がとても不安定でな。敵味方見境無しの暴走状態になって、勝負どころではなくなるから単独で出せるものではなかった。出せるのは今回、俺と組めるこのような最終試合だけだ。いざというとき、こいつを止められるのは俺だけだからな」

 

クイーシャさんが言ってたのはこの事だったのか。

 

サイラオーグさんと組んででしか出すことが出来ない。

だから、さっきの試合はクイーシャさんが出るしかなかったと。

 

「どちらにしても、私の相手はその神滅具の獅子ってことね」

 

リアスが獅子に構え、滅びの魔力を練りだしていく。

 

滅びのオーラが形をなし―――――一体のドラゴンを造り出す。

 

滅びの滅龍(ルイン・エクスティンクト・ドラゴン)

 

朱乃同様に魔力をドラゴンの形に押し留めたもの。

 

ロスウォード眷獣にはかなり有効だったが、はたして神滅具ではどうなるか。

 

うーむ、なんで二人ともドラゴンの形になったんだろうな。

 

『朱乃ちゃんも言ってたじゃない。イッセーの影響かもって。イッセーのことを考えすぎてドラゴンになったのかもね』

 

お、俺ですか・・・・・・

 

まぁ、何にしても強力なのは変わらない。

 

俺とリアス、双方が相手に向かっていく。

 

俺は拳を繰り出し、リアスが滅びの魔力で形成された龍をライオンへと放つ。

 

頑張ってくれよ、リアス!

 

再開される超至近距離の格闘戦。

 

拳撃と蹴撃が交錯し、その激しさは一度目の戦闘をも上回る。

速く、鋭く、威力も一段階上がる。

 

直撃は受けていないが、サイラオーグさんの拳が俺の頬を掠め、頬から赤いものが流れた。

 

だけど、それはこっちだって同じ。

 

サイラオーグさんの拳を流した後、その腕を掴む。

 

その腕を引張り、態勢を崩したところに蹴りを放った!

 

「そらっ!」

 

放った蹴りは周囲の空気を斬り裂きながら、サイラオーグさんの顔面へと迫る!

 

サイラオーグさんは右腕で受け止めるが・・・・・

 

「ぐっ・・・・!」

 

苦悶の表情を浮かべた。

 

すると、右腕の表面に血が滲んでいるのが見えた。

 

それは俺の蹴りが当たった場所ではなく、それとは別の場所―――――――木場とゼノヴィアが斬った場所だ。

 

 

俺はそれを見て笑みを浮かべた。

 

 

嬉しくてたまらなくなった。

 

木場の、あいつらの攻撃は確かに届いていた。

圧倒的な実力差があったのにもかかわらず、確かに届いていたんだ!

 

「木場! ゼノヴィア! ロスヴァイセさん! おまえ達からのバトンは確かに受け取ったぞ!」

 

俺は身をかがめ、サイラオーグさんの鳩尾に肘打ちを叩きこむ!

 

 

ドゴォォンッ!!

 

 

衝撃がサイラオーグさんの体を突き抜けた!

 

「ガハッ!」

 

サイラオーグさんの体がよろめく!

 

その隙を俺は見逃さない!

 

肘打ちを繰り出した体勢から体を捻って、サイラオーグさんの顎へと蹴りを繰り出す!

 

その体を上へと押し上げる!

 

俺は地面を蹴って、それを追いかけた!

 

「おおおおおおおおッ!!!!」

 

そこから繰り広げるのは拳と蹴りを混ぜた七連撃!

 

サイラオーグさんの体がくの字に折れ曲がり、更に上空へと押しやる!

 

俺は悪魔の翼を広げて急上昇。

サイラオーグさんの先へと回り込む。

 

そして、こいつが――――――――

 

「リタイヤしていった仲間の想いを籠めた一撃だッ!!」

 

フルスイングで振り下ろす回し蹴り!

 

 

ドッゴオォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

 

まともに受けたサイラオーグさんは地面へと叩きつけられる!

 

地面に巨大なクレーターが咲き、土砂が上空まで舞い上がった!

 

土砂とともに下に着地した俺はクレーターの中心部を見る。

 

そこには大の字に地面にめり込んだサイラオーグさんの姿。

 

実況が叫ぶ。

 

『決まったぁぁぁああああ! 一瞬の隙をついての連撃が炸裂! サイラオーグ選手、立てるでしょうか!』

 

普通の相手ならまずは立てない。

 

今の連撃全てにかなりの力を籠めたからな。

 

しかし――――――

 

 

ボゴンッ

 

 

サイラオーグさんが体に乗った土を振り払いながら起き上った。

 

「強い・・・・。これほどのものか・・・・・!」

 

サイラオーグさんは口から滲んだ血を拭いながら・・・・・笑っていた。

 

それはもう満足そうな表情をしていた。

 

・・・・・・蹴りを食らう直前に闘気を一か所に集中させてダメージを軽減したのか。

 

上手い。

 

あの瞬間に咄嗟の判断。

 

流石に戦い慣れている。

 

 

「キャッ!」

 

 

リアスの悲鳴が聞こえた。

 

振り向くと、血染めのリアスが膝をつき、呼吸を荒くしていた!

 

獅子は体から煙を上げ、ダメージを負っている。

 

しかし、その状態でリアスの前に立ち塞がる!

 

 

マズい!!!

 

 

「リアスはやらせねぇえええええ!!!」

 

俺は咄嗟に右腕を引いて、獅子目掛けて遠当てを放つ!

 

生み出された衝撃波が獅子を襲い、吹き飛ばす。

 

吹き飛ばされた獅子は宙返りして着地。

 

平然としていた。

 

それでも、リアスから引き離すことができた。

 

俺はリアスに駆け寄り、倒れそうになるところを受け止める。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ・・・・」

 

そう言うリアスだが、出血が激しい。

 

このままいけばリアスは失血でリタイヤするだろう。

 

そうなれば俺達の負けだ。

 

俺はリアスのポケットから小瓶を取りだした。

 

「これを使うよ」

 

「ごめんなさい、私・・・あなたの足を引張って・・・・」

 

申し訳なさそうにするリアスだが、俺は首を横に振った。

 

「いや、いいさ。神滅具だけあって相手も相当な手練れだ。仕方がないさ」

 

リアスに涙を振りかけると傷が塞がっていく。

 

これで一安心。

 

だが、こちらもフェニックスの涙を使ってしまったか・・・・・。

 

 

その時だった。

 

 

『サイラオーグ様! 私を身に纏ってください! あの禁手ならばあなたは!』

 

おおっ!?

 

ライオンが喋った!?

 

って、纏うって・・・・禁手って言ったのか?

 

ライオンの言葉にサイラオーグさんの怒号が飛んだ。

 

「黙れッ! あの力は冥界の危機に関してのみに使うと決めたものだ! この男の前であれを使って何になる!? 俺はこの体のみでこの男と戦うのだ!!」

 

どうやら奥の手があるようだが・・・・・

 

ドライグの声がフィールドに響いた。

 

『ずいぶん舐めたことを言ってくれる。他人の全力を要求しておいて、自分は出し惜しみをするというのか?』

 

静かにそう言った後、ドライグは怒りをぶつけるように叫んだ。

 

『ふざけるなよ、小僧。その程度で相手の全力を引き出そうなど片腹痛い!』

 

おいおい、ドライグさんよ・・・・少し言い過ぎじゃないか?

 

・・・・と言いたいところだけど、ありがとよ。

 

俺もサイラオーグさんに吼える。

 

「俺の仲間も、あなたの眷属も自分の全てをかけてこの戦いに臨んでいる! ぶつけろよ、あなたが持てる全てを! そうすれば、俺も全力で応えよう!」

 

この先の戦いに出し惜しみなんていらない!

 

俺達は互いの持てる全てでぶつかり合うべきなんだ!

 

一拍開けて、サイラオーグさんが言う。

 

「・・・すまなかった。確かに相手に全力を求めておいて、こちらが力を出し惜しみするなど無礼以外の何物でもない。それに、これまで俺に着いてきてくれた眷属達にも顔向けできんな。俺はなんと愚かだったのだろうか」

 

一呼吸した後、サイラオーグさんの力が爆発的に上昇した。

 

カッと目を開き、強く言う。

 

「俺は目の前の男を倒したい! 俺は負けるわけにはいかんのだ! 我が夢のために! 俺の夢に殉じてくれた我が眷属のために! レグルスゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

『ハッ!!』

 

ライオンの全身が黄金に輝き、光の奔流と化しサイラオーグに向かう!

 

「今日この場を死戦と断定する!」

 

黄金の光を全身に纏ったサイラオーグは高らかに叫んだ。

 

「我が獅子よ! ネメアの王よ! 獅子王と呼ばれた汝よ! 我が猛りに応じて、衣と化せ!」

 

フィールド全体が震えだす。

 

異空間であるフィールドが耐えられなくなってきたようだ。

 

サイラオーグさんが眩い閃光に包まれていき、周囲の風景をぶっ飛ばす!

 

 

『「禁手化ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」』

 

 

 

閃光が止み、現れたのは金色に輝く獅子の全身鎧だ。

頭部の兜にはライオンのたてがみと思わせる金毛がなびく。

 

「『獅子王の戦斧』の禁手化―――『獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)』! 殺す気でいかせてもらうぞ、兵藤一誠!」

 

その言葉に俺は笑みを浮かべ、鎧を纏う。

 

スパークを発生させ、一気に天武へと至る。

 

全力には全力を以て応えよう―――――。

 

「いいぜ! 第二ラウンドといこうか!」

 

 

 

 


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