ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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13話 ギャスパーの意地!!

試合が終わり、陣地へ戻った俺だが・・・・・・。

 

「「「・・・・・・・」」」

 

迎えてくれたのは皆のなんとも言えない表情だった。

 

うん、分かってたよ。

 

自分でも酷い試合だと思ってる。

 

特に最後なんか・・・・・・・。

 

『スマン、相棒・・・・・・。俺のために、こんな・・・・・』

 

き、気にするなドライグ。

 

おまえは俺の相棒なんだ。

 

相棒を助けるためならこのくらい・・・・・・・。

 

イグニスが楽しそうな声で言った。

 

『乳龍帝から鬼畜龍帝になっちゃったわね♪』

 

あんたがやらせたんだろうがぁぁぁぁぁあああ!!!

 

なに、他人事みたいに言ってるの!?

 

さらりとドライグを人質にとりやがって、この駄女神!

 

つーか、天龍を人質ってどんだけ!?

 

『私からすればドライグも子供同然よ』

 

『お、俺が子供同然・・・・・』

 

イグニスの言葉にショックを受けるドライグ。

 

地上最強と呼ばれた天龍が子供扱いだもんな・・・・・・。

 

異世界の女神半端ねぇ・・・・・。

 

「イッセー君・・・・まさか、あんなことをするなんてね。一応、子供達のヒーローなんだから・・・・・」

 

木場がため息を吐きながら言った。

 

そんな目で見ないで!

 

俺だって公衆の面前であんなことしたくなかった!

 

「違うんだ! あれはイグニスがやれって! ドライグを人質にしたんだ!」

 

俺はもっと簡単に終わらせようとしたんだよ!?

 

コリアナさんを気絶させて終わらせようかなって考えてたんだよ!?

 

モニターには実況席が映し出され、先生が顎に手を当てて唸っていた。

 

『うーむ、おそらくイッセーは彼女の気を操作して感覚を一気に引き上げたんだろうが・・・・・これはこれで恐ろしい技だな。触れるだけで女性はイカされる。そうなれば戦闘不能になるのは避けられないからな』

 

『となると、今の技は今後のレーティングゲームでの使用は制限されるでしょうね。レーティングゲームに出場する女性悪魔は少なくありませんから、下手をするとゲームに参加しない方も現れるかもしれません』

 

先生のコメントに皇帝がそう返す。

 

お願いだからそんな真面目に返さないでください。

出来ればスルーを希望します・・・・・。

 

ってか、もう使いませんよ!

 

『えー、折角良い技なのにー。今度、美羽ちゃん達にもやってみましょうよ』

 

うるさいよ!

 

あんたは少し黙ってくれ!

 

美羽達を巻き込むな!

 

 

 

 

 

 

次のダイスシュートが始まる。

 

出た目は――――リアスが3、サイラオーグさんが5。

 

また8か。

 

俺はさっきでたから、今回は無理だ。

 

となると、誰かを組み合わせて出すのが良いだろう。

 

リアスが席に戻り、次の試合に出すメンバー決める。

 

すると――――

 

「よし、次は私が出よう」

 

ゼノヴィアが前に出た。

 

騎士であるゼノウィアは3だから、出場は可能だ。

 

第四試合、ゲームは中盤戦に差し掛かろうとしている。

 

今くらいのタイミングならエクス・デュランダルの力を晒しても良い頃だろう。

 

「ええ、そうね。ゼノヴィアに任せようかしら。となると、後は誰と組んでもらうかなのだけれど・・・・・」

 

ゼノヴィアが出るとしたら数字があと5も余ってる。

 

「ここは祐斗かロスヴァイセが適任かしら?」

 

確かにパワータイプのゼノヴィアとテクニックタイプの木場が組めば戦術的にかなり有効だろう。

 

木場が前衛に出て相手を撹乱、そんでもってゼノヴィアが後ろからデュランダル砲で砲撃しても良いわけだし。

 

ロスヴァイセさんと組んだ場合はロスヴァイセさんの魔法で援護しつつ、ゼノヴィアが斬り込める。

 

しかし、ここで恐る恐る挙手した者がいた。

 

ギャスパーだ。

 

「・・・・・ぼ、僕が行きます。ゆ、祐斗先輩やロスヴァイセさん達は強いですから、後のために控えておいた方が良いかなって・・・・・そ、それに」

 

ギャスパーはゴクリと唾を飲み込んで言った。

 

「ぼ、僕はこ、小猫ちゃんの仇を討ちたいですぅ!」

 

すごい覚悟だ。

 

あのギャスパーがこんなことを言うなんてな・・・・・・。

 

俺はフッと笑ってギャスパーの頭をワシャワシャと撫でてやる。

 

「よし! 行ってこい! リアスもOKだろ?」

 

「もちろんよ。ギャスパー、ゼノヴィアをサポートしてくれるかしら? あなたの邪眼やヴァンパイアの能力でゼノヴィアをサポートして欲しいの」

 

「は、はいっ!」

 

リアスに言われて気合いを入れるギャスパー。

 

震えているが瞳の奥には強いものを感じられる!

 

こいつも男になってきたじゃないか!

 

「頼りにしているぞ、ギャスパー」

 

「は、はい! ゼノヴィア先輩!」

 

こうしてゼノヴィアとギャスパーのタッグが誕生した。

 

 

 

 

 

 

二人が到着したバトルフィールドは岩がゴツゴツした荒れ地で、足場の悪い場所だった。

 

二人の眼前にひょろ長い体格の男と、不気味なデザインの杖を携えた小柄な美少女・・・・・のような美少年なんだよな。

 

うーむ、こうしてみると男の娘対決のように見えてしまうのは俺だけだろうか?

 

『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ騎士ゼノヴィア選手、一部で人気の僧侶な男の娘、ギャスパー選手です!』

 

「「「「うおおおおっ! ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」

 

実況の言う通り、観客席の一部からギャスパーに応援を送る男性ファンが!

 

す、スゴい人気だな・・・・・。

 

学園でも男子からの人気はあるけど、冥界でも変わらないのな。

 

ゼノヴィアは男性よりも女性からの声援が多いな。

 

ボーイッシュで豪快なところが受けているのかもね。

 

『対するバアルチームは、両者共に断絶した御家の末裔と言うから驚きです! 戦車のラードラ・ブネ選手、僧侶のミスティータ・サブノック選手はそれぞれ断絶した元七十二柱のブネ家とサブノック家の末裔です! アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが・・・・・』

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えですからな。おそらくそれに呼応して彼の元に集まったのでしょう。断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象にされていると同時に、一部の上役から厄介払いと蔑まれているからね。他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔は上に行けば大勢いますからな』

 

『ハハハハ、全くその通りです』

 

先生の皮肉げなコメントに皇帝べリアルが笑って返す。

 

その解説を聞き、バアル側の戦車ラードラと僧侶ミスティータが言う。

 

『我が主サイラオーグ様は人間と交じってまで生き長らえた我らの一族を迎え入れてくれたのだ』

 

『サイラオーグ様の夢は僕達の夢でもある。この勝負、負けるわけにはいかない』

 

バアル眷属の両者の目は使命感で燃えているようだ。

 

こいつは・・・・・・荒れるかもな。

 

『第四試合、開始してください!』

 

審判から開始が告げられ、両チームが素早く構える。

 

「ギャスパー、コウモリに変化して! ゼノヴィアはその後に攻撃!」

 

リアスが指示を出し、ギャスパーは無数のコウモリに変化してフィールド中に散らばり、ゼノヴィアは幾つものデュランダルの波動を放った。

 

バアル眷属はその攻撃を躱し、ミスティータが杖から炎を放つ。

 

確か、彼は魔力による攻撃を得意としていた。

 

『させません!』

 

コウモリとなって飛び回るギャスパーの赤い眼が炎を停止させ、ゼノヴィアがデュランダルの波動で掻き消す。

 

息の合ったコンビネーションだ。

 

『ラードラ! サイラオーグさまの指示が届いた! 僕は準備する!』

 

『了解だ!』

 

ミスティータが後方に下がって全身にオーラを迸らせる。

 

それを守る様に前に立つラードラ・ブネ。

 

壁にでもなるのかと思った時―――ラードラの体が盛り上がり始めた。

 

膨れ上がった肉体に尾と翼が生え、口元から牙が剥き出し、手の爪が鋭くなっていく!

 

 

ギャオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

咆哮をあげるのは黒いドラゴン!

 

あのひょろ長い人がゴツいドラゴンになっちまったのか!?

 

「ブネは悪魔でありながらドラゴンを司る一族・・・・・。けれど、変化出来るのは家の血を引く者でも限られた者、よりによって・・・・・っ!」

 

リアスが苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

グラシャラボラス戦の記録映像でも見なかった能力に俺達は度肝を抜かれた!

 

『ドラゴン変化は情報にも無かった! サイラオーグめ・・・・・その眷属を鍛え上げて覚醒させたか! やってくれるぜ、大王家次期当主様よ!」

 

先生もそうコメントしていた。

 

このゲームに向けてドラゴンに変化できるように修行したってことか!

 

ドラゴン化したラードラとゼノヴィア&ギャスパーの攻防が始まった!

 

デュランダルの波動+直接攻撃を繰り出すが、相手が堅牢でなかなかダメージを与えられない。

 

『ギャスパー、少し時間を稼いでくれ!』

 

ゼノヴィアがギャスパーにサポートを仰ぐ。

 

デュランダル砲を放つつもりなのだろう。

 

ゼノヴィアは後方に下がり、それをサポートするように無数のコウモリがラードラを包み込む。

 

『えい! えい!』

 

ラードラは口から火炎を吐くが、ギャスパーは散らばって避ける。

 

ゼノヴィアがエクス・デュランダルを天高く掲げてチャージし始めた時、ミスティータが叫んだ。

 

『そこだ! 聖剣よ! その力を閉じよ!』

 

ミスティータの杖が怪しく光り、ゼノヴィアの全身を捕らえた。

 

不気味な光に包まれるゼノヴィアの体に気味悪い紋様が浮かび上がる。

 

すると、ゼノヴィアの手元が震え、デュランダルを下に下ろしてしまう。

 

「これは・・・・・・! デュランダルが反応しない・・・・・・・!」

 

な、何だと!?

 

デュランダルが反応しないってどういうことだよ!?

 

ミスティータの方を見ると、当人はやつれた表情になっていた。

 

『僕は人間の血も引いていてね。神器、異能の棺(トリック・バニッシュ)。最近になってようやく使えるようになった呪い系神器だよ・・・・・』

 

こっちも最近能力を開花させたのか!

 

どうりで情報がなかったわけだ!

 

「ゼノヴィア! アスカロンは使えないのか!?」

 

俺がイヤホンマイクを通じて尋ねる。

 

アスカロンは基本的に貸しっぱなしだから今もゼノヴィアが持っている。

 

デュランダルがダメでもアスカロンなら・・・・・・。

 

ゼノヴィアは自身の固有空間からアスカロンを引き抜くが・・・・・・。

 

『ダメだ。アスカロンも反応してくれない』

 

マジかよ・・・・・!

 

『異能の棺か。自分の体力、精神力などを極限まで費やす事で、特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器。バアルの僧侶は自分の力と引き替えにゼノヴィア選手の聖剣を使う力を封じたようだ』

 

先生がそう解説する。

 

聖剣を扱う力そのものを封じられたのか!

 

なんて厄介なんだ!

 

『本当なら聖剣を封じた余波で、彼女自身にも聖剣のダメージを与えさせようと思ったんだけどね・・・・・。聖剣使いとしての才能は想像以上に濃かったようだ・・・・・。だが、これで彼女は戦えない」

 

ミスティータがふらつきながら苦笑していた。

 

ゼノヴィアは聖剣を使えなくなったが、自身が聖なる力でダメージを受けるほどの封印はされなかったのか。

 

この状況下ではそれだけが唯一の救いだな。

 

『ぬんっ!』

 

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

 

そこへラードラが容赦なく襲いかかる!

 

火を吐きながら、その太い手足でゼノヴィアを攻め立てる!

 

『ゼノヴィア先輩!』

 

逃げるゼノヴィアを無数のコウモリが包み込み、同時にラードラの視界を奪った。

 

コウモリが居なくなると、そこにいたはずのゼノヴィアの姿もいなくなっていて、今は何処かの岩影に移動していた。

 

ギャスパーが避難させたんだな!

 

ナイスだ、ギャスパー!

 

『すまない、助かったよギャスパー。だが、どうやら私は役立たずになりそうだ』

 

『そ、そんな事ないです! ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!』

 

ギャスパーはゼノヴィアを励まし、腰に着けていたポシェットから小瓶、チョーク等の道具を取り出した。

 

『ぼ、僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!』

 

ギャスパーは手元に小さな魔方陣を展開させ、ゼノヴィアの体に当てる。

 

どうやらゼノヴィアにかかった神器の呪いを調べているようだ。

 

『逃がさん! 何処だ!』

 

ラードラが地響きを立てながらゼノヴィアとギャスパーを捜し回る。

 

見つかるのは時間の問題・・・・・・。

 

急いでくれ、ギャスパー!

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 

『はい、手持ちの道具で何とかなりそうです』

 

ギャスパーはゼノヴィアを中心にチョークで魔法陣を描く。

 

見慣れない紋様を描き、最後に俺の血が入った小瓶を持った。

 

ギャスパー強化用アイテムとして予め持たせておいたやつだ。

 

『今描いた魔法陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。ただ、解呪出来るまで少し時間が掛かりそうですけど・・・・・』

 

『待て、ギャスパー。その血を使えばおまえは――――』

 

あれを使ってしまえばギャスパーはパワーアップは出来ない。

 

持たせているのはあの一つだけ。

それはギャスパーの体力的に一回しか使えないのが理由なんだが・・・・・。

 

困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面の笑みを見せた。

 

『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました。今の僕にしか出来ないことを』

 

『ギャスパー・・・・・?』

 

訝しげに感じているゼノヴィア。

 

ギャスパーが魔法陣に俺の血を振り掛けると、描かれた紋様が淡く輝く。

 

そして、ギャスパーは立ち上がり―――――岩影から飛び出していった!

 

あいつ、まさか!

 

『ぼ、僕が時間を稼ぎます! 呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!』

 

血も飲まずに単身で挑むつもりか!

 

「駄目だ! 戻れ、ギャスパー!!」

 

「無謀よ! ギャスパー! 隠れなさい!」

 

俺とリアスが叫ぶが、ギャスパーは逃げる素振りを見せなかった。

 

その表情は決意に満ちたものだった。

 

『ダメですぅっ! ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ! 部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!』

 

「いいから、早く逃げてッ!」

 

リアスの二度めの叫びを聞かないギャスパーの眼前にラードラとミスティータが迫っていた。

 

『見つけたぞ、ヴァンパイアめ。あの剣士は隠したようだが、貴様がここにいるということは近くにいるのだろう? 火炎を撒き散らせば出てくるだろうか。・・・・・・いや、いっそ周囲の風景ごと焼き払ってしまおうか』

 

ドラゴンと化したラードラの巨躯に迫られ、全身を震わせているギャスパー。

 

しかし、逃げる素振りを見せず立ち向かっていく。

 

『あ、暴れさせるわけにはいきませんっ!』

 

『単独で臨むか。震えてはいるがその勇気、敬意を払うべきもの。勇気が無ければドラゴンの前に立つことすらできない』

 

ラードラは口元から猛火を勢いよく吐き出す。

 

ギャスパーは防御魔法陣で防ごうとするが・・・・・・。

 

「うわああああああああああああああああっ!!」

 

防御魔法陣が破れ、ギャスパーは火炎に吹き飛ばされていく。

 

ダメだ!

 

今のギャスパーではラードラの攻撃は防げない!

 

火炎の一撃で火傷を負うが、ギャスパーはよろよろと立ち上がる。

 

『下がれ、ギャスパー! それではおまえが!』

 

『むっ! やはり近くにいるな。どこにいる?』

 

ラードラがゼノヴィアの声を聞き、辺りを探し始めた。

 

『あああああああああああっ!!』

 

ギャスパーはラードラを行かせまいと、悪魔の羽を展開し、ラードラの腕に食らいつく!!

 

『っ! 離せっ! いつでも倒せる貴様とは違って、デュランダル使いは早急に倒さねばならぬ! 呪いの効果は有限だからな!』

 

ラードラが空いている手でギャスパーを掴み――――その手に力を込めた。

 

メキメキと骨の軋む嫌な音が響き渡る!

 

『うわぁぁああああああああああぁぁぁぁぁっ!』

 

ギャスパーが激痛に絶叫。

 

「もうやめて!」

 

アーシアが顔を手で覆い、絶叫した。

 

握りつぶしたギャスパーを地面に捨てる。

 

血塗れでボロボロ。

 

呼吸も乱れていて、いつリタイヤしてもおかしくない状態だ。

 

 

しかし―――――

 

 

それでも、ギャスパーは這ってラードラに食い下がった。

 

『・・・・・ぼ、僕は男の子だから・・・・・・守らなきゃ・・・・・ゼノヴィア先輩を・・・・・・部長の役に・・・・・・たたなきゃ・・・・・』

 

―――――っ!

 

その言葉を聞いて俺は目を見開いた。

 

ギャスパー・・・・・・おまえ・・・・・・。

 

『邪魔だ!』

 

ラードラに蹴られて地面をバウンドするギャスパー。

 

それでもあいつは這っていく。

 

『・・・・・男は女の子を・・・・・・守れるくらいにならなきゃいけない・・・・・!』

 

口から大量の血を吐き出しながらも、ギャスパーは立ち上がった。

 

受けたダメージで脚は震え、立っているのも難しい状態だというのに。

 

 

バキッ!

 

 

能力を使いフラフラになったミスティータがギャスパーを杖で横殴りにした。

 

『諦めろ。君では我々には勝てない』

 

無情な一声。

 

だが、それは事実だ。

 

血を飲んで強化されたギャスパーなら倒せたかもしれない。

 

だけど、今のギャスパーでは・・・・・・。

 

それでも、ギャスパーは両の足で立ち、ラードラとミスティータを見据えた。

 

『今は力がなくても・・・・・! 守りたい・・・・・・誰かのために力を使いたい・・・・・気持ちさえあれば強くなれる・・・・・・! 僕が・・・・・ゼノヴィア先輩を・・・・・守らないと・・・・・・!』

 

俺が教えた言葉。

 

ボロボロのせいで殆ど声になってないけど、確かに聞こえた。

 

あいつの強い声が。

 

 

ズンッ!

 

 

ラードラがギャスパーを容赦なく踏みつけた。

 

足をのけると、ギャスパーはボロボロになっていた。

 

もはや、まともに戦える状態じゃない。

 

 

 

 

『・・・・・ぼ、僕は・・・・・まだ・・・・・諦め・・・・・ない』

 

 

 

 

 

瀕死の状態でもまだ立ち上がろうとする。

 

 

「ギャスパー・・・・・・」

 

リアスはあまりの光景を背ける。

 

そんなリアスに俺は言った。

 

「目を背けるな、リアス。あいつは君のために戦ってるんだ。引きこもりで怖がりのあいつが、あんなボロボロになってでも立ち上がろうとしてるんだ。ギャスパーの王であるリアスが目を背けちゃいけない」

 

俺の言葉にリアスは涙を溢れさせるが――――それを拭い映像に視線を戻した。

 

「そうね。ゴメンなさい。あの子が頑張っているというのに私が逃げるわけにはいかないわね」

 

アーシアと朱乃が嗚咽を漏らし、ロスヴァイセさんは目に涙を浮かべていた。

木場は唇を噛み、血が滲んでいる。

 

『・・・・・僕は・・・・・戦える・・・・・。イッセー先輩なら・・・・こんな状況でも・・・・・諦めない。だから僕は―――――』

 

 

 

 

その時だった―――――

 

 

 

 

ギャスパーの体から黒い靄のようなものが発せられた。

 

その瞬間、ギャスパーの瞳が赤く輝きを放った!

 

『僕が・・・・・・僕が守ってみせる・・・・・! イッセー先輩と・・・・・・皆と約束したから・・・・・・!』

 

ギャスパーが叫ぶ!

 

『こ、これは停止の邪眼!?』

 

『馬鹿な!? そのような状態で私達の動きを停めたのか!』

 

この状況で二人の動きを停めたってのか!

 

ラードラとミスティータは何とか足掻こうとするが、停止の力が強く、抜け出せないでいるようだ。

 

どこにこんな力が・・・・・・・!

 

イグニスが言う。

 

『あの子の中に眠っていた力が動いたのね。あの子の想いに呼応するように』

 

ギャスパーの潜在能力が解放されたというのか!

 

『多分ね。あんな状態になっても諦めない強い心があったからこそ解放されたと思うわ』

 

『ああ。きっと相棒の影響だろうな。出会った頃とは大違いだ』

 

ドライグもそう続ける。

 

そうか・・・・・。

 

だったら俺は最後まで見届けなければいけないな。

 

あいつの想いと覚悟を。

 

『くっ・・・・・、見事としか言いようがない。だが、いつまで我々を停められる? この停止が解けた時が――――』

 

ラードラがそう言った時だった。

 

 

 

『いや、もう十分だ』

 

 

 

岩陰からゼノヴィアが姿を現した。

 

デュランダルから極大の聖なるオーラが溢れている。

 

静かに、だけど荒々しく弾けるそれは近寄るだけで消滅しそうなほどだ。

 

 

「すまなかった。私が不甲斐無いばかりに、おまえは・・・・・・」

 

涙を流して、ギャスパーに謝る。

 

「私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた」

 

エクス・デュランダルの鞘がスライドしていき、攻撃フォルムとなる。

 

「仲間の為に、主の為に持つべきだった死ぬ覚悟をギャスパーよりも足りなかった。自分があまりに情けない・・・・・! 私は自分が許せなくて仕方がないんだ!!」

 

聖なるオーラがゼノヴィアの体を包み込み、より一層強く輝いていく。

 

「おまえの思いに応えるのはただ一つ。こいつらを完全に吹き飛ばしてやろう!! それが、お前への応えだと思うからな!!」

 

エクス・デュランダルから天高く立ち上る聖なる光の柱。

 

それは京都で見たときよりも巨大で、フィールドが激しく揺れる!

 

そして、ゼノヴィアは必殺の一撃を振り下ろした!

 

「でゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

ザバアァァァァァァアアアァァァンッ!!!

 

 

大質量のオーラの波動がラードラとミスティータを飲み込んでいき、二人はリタイヤの光となって消えていった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の戦車一名、僧侶一名、リタイヤです』

 

第四試合の終了を告げるアナウンスが流れると、ギャスパーはその場に倒れた。

 

ゼノヴィアはデュランダルをしまうとギャスパーに駆け寄り、その体を抱き寄せた。

 

『終わったぞ。おまえがあの二人を倒したんだ』

 

『・・・・・勝てたんですね・・・・・良かった。・・・・・僕は・・・・・お役にたてたんですね』

 

『もちろんだ・・・・・!』

 

ゼノヴィアがそう返すとギャスパーは安心したような表情で完全に気を失い、リタイヤの光に包まれていった。

 

 

 

第四試合も勝利を得たが俺達は後輩二人を失った。

 

俺達先輩が守るべきだった後輩が誰よりも奮闘した。

 

小猫ちゃん、ギャスパー。

 

俺達は絶対に負けない!

 

二人の覚悟はしっかりと受け取ったからな!

 

 

 

 

 




次はもう少し遅くなるかもしれません。

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