ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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最近忙しくて、中々執筆が進みませんでした。

次回も少し遅くなるかなぁ・・・・・。

出来るだけ早く投稿出来るように頑張ります!

それではどーぞ!



3話 サイラオーグの過去

明くる日のこと。

 

俺とリアスは二人で冥界のシトリー領に来ていた。

 

俺は豪華なリムジンの後部座席に座り、窓から豊かな自然を眺めている。

 

隣にはリアスが座っている。

 

「今回の件はお母様経由なのよ」

 

「ヴェネラナさん?」

 

聞き返すとリアスは頷く。

 

話を聞くとサイラオーグさんところの執事さんが俺に頼みがあるらしく、グレモリー家に伝えてきたそうで、ヴェネラナさんがそれを了承したという。

 

ヴェネラナさんはバアル家の出だから、その縁なんだろうな。

 

「俺に頼みってのは良く分からないけど、シトリー領に来たのは始めてだ。自然豊かで良いところだな」

 

「ええ、シトリー領は冥界、悪魔の領土のなかでも自然保護区が多いところなの。美しい景観の場所もたくさんあって、観光名所もあるのよ」

 

へぇ、グレモリーの領も自然豊かだと思ってたけど、シトリー領も大自然に恵まれた領土なんだな。

 

あの湖のあるところでキャンプとかしたら楽しいかも。

 

「それで今向かっているのは?」

 

「病院よ。シトリーは医療機関が充実していて、今から行くのは冥界でも名だたる病院の一つよ」

 

それはまた予想外の場所だ。

 

誰かが入院してるのか?

 

サイラオーグさん・・・・・・の関係者かな?

 

サイラオーグさん本人が入院ってのはあまり想像出来ない。

 

まぁ、今からいく場所が病院で俺に用があるってことは、何らかの治療の依頼なんだろうな。

 

俺が気を操れて、それで治療行為も出来ることは結構知られているらしいし。

 

そんなことを考えながら窓から外を見ていると、リムジンが拓けた場所に出ていく。

 

先にあるのは大きな建物。

 

あれが目的の病院のようだ。

 

 

その建物の送迎用の入り口にリムジンが止まり、俺達は車から降りた。

 

「お待ちしておりました」

 

俺達を迎えてくれたのは執事の格好をした一人の中年男性。

 

この人が依頼人か?

 

「案内してもらえるかしら?」

 

リアスがそう言うと執事さんは「どうぞ、こちらに」と歩き出していく。

 

案内についていき、病院内を進んでいるとリアスが口を開いた。

 

「イッセー、私の母がバアル家の出であることは知っているわよね?」

 

「もちろん。確かバアル家現当主の姉に当たるって聞いているけど」

 

「腹違いなのだけれどね。サイラオーグのお父様が本妻の息子、私の母が第二婦人の娘」

 

腹違いの姉か。

 

それだけで複雑そうだ。

 

「そして、私のおばさま――――サイラオーグのお母様は元七十二柱であり、上級悪魔の一族、ウァプラ家の出なのよ」

 

ウァプラ家・・・・・。

 

そういや、グレモリー家で授業を受けたときに習ったな。

 

確か――――

 

「獅子を司る家だっけ?」

 

「その通り。ウァプラ家は獅子を司る偉大な名家よ」

 

獅子、ライオンか。

 

サイラオーグさんらしい血筋だ。

 

 

そんな会話をしているととある一室の前にたどり着く。

 

「こちらでございます、リアス様」

 

執事さんに言われて、リアスは部屋へと入っていく。

 

俺も後に続いていくと、個室のベッドにキレイな女性が眠りについていた。

 

「・・・・・ごきげんよう、おばさま」

 

リアスは眠る女性に悲哀に満ちた眼差しを向ける。

 

おばさま・・・・・・・さっきの話からして、この人は・・・・・・・。

 

俺から花束を受け取りながら執事さんが言う。

 

「この方はミスラ・バアル様。サイラオーグ様の母君でございます」

 

やっぱり、そうなんだな。

 

サイラオーグさんのお母さんは呼吸器をつけたまま寝ていた。

 

俺も冥界の病院で入院していたことはあるけど、初めて見る機器がベッドの横に並んでいて、モニターには心電図のようなものが映し出されている。

 

執事さんは花束を持ったまま、涙を流していた。

 

「今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。赤龍帝殿・・・・・・ミスラ様を目覚めさせるためにご助力願えないでしょうか?」

 

「何となく予想はしていたんですけど・・・・・・・。その前に質問良いですか?」

 

「ええ、私に答えられることであれば・・・・・」

 

執事さんは頷いた。

 

「それじゃあ、一つだけ。この依頼なんですけど・・・・・・なんで、依頼があなた個人からなんですか?」

 

「っ」

 

俺の問い執事さんは声を詰まらせた。

 

サイラオーグさんの母親となれば、バアル家にとっては次期当主の母親。

 

そんな大切な人を治療するのにも関わらず、一人の執事が個人的(・・・)に依頼してきたというのが引っ掛かったんだ。

 

普通ならバアル家から正式に依頼するというのが筋だろう。

 

すると、執事さんは拳を握り肩を震わせながら答えた。

 

「それは・・・・・・バアル家の者がサイラオーグ様を疎ましく思っているからでございます・・・・・・。シトリー領の医療機関に移したのもバアル領ではミスラ様のお命を狙う者が現れる可能性が高いため・・・・・」

 

「はぁ!?」

 

思わず声を出してしまった。

 

命を狙うってのはどういうことだよ!?

 

次期当主の母親だぞ!?

 

普通ならバアル領の方が安全だろ!?

 

俺が疑問に思っていると、リアスが語り始めた。

 

「サイラオーグはこれまでの経緯から疎ましく思われているのよ。特にバアル家の者から。・・・・・そうね、分かるように事情を話すわ」

 

 

それは一組の母子の激動の運命だった。

 

 

 

 

 

 

サイラオーグさんはバアル家現当主のお父さんと獅子を司るウァプラ家のお母さんの間に生まれた。

 

無事に出産されたとき、次期当主が生まれたと周囲は大変喜んだそうだ。

 

だが、それは束の間のこと。

 

サイラオーグさんは魔力が無いに等しく、バアル家の特色である『消滅』の力を持っていなかった。

 

バアル家当主は魔力に恵まれ、『消滅』の力を持つことが当然とされてきた。

 

そのため、そのことを知った周囲の者の反応は一転。

魔力と滅びを持たずして生まれてきたサイラオーグさんと、その子を産んだ母親であるミスラさんは蔑まれるようになる。

 

 

――――欠陥品を産んだバアル家の面汚し、と

 

 

実の父親でさえ、二人を見捨てたという。

 

 

当時のグレモリー家もその噂を聞き、ヴェネラナさんが二人をグレモリー領に保護しようとしたが、バアル家がそれを許さなかった。

 

その頃は滅びの力を色濃く受け継いだサーゼクスさんが活躍していたこともあり、バアル家としてはグレモリー家が気に入らなかったそうだ。

 

本家の子が特色を受け継がないで、嫁にいった者の子の方に遺伝したんだ。

バアル家の気持ちも分からなくはない。

 

 

バアル家は大王。

つまり、世襲でなくなった現魔王を除けば、家柄的にはトップに位置する家。

プライドも相当高い。

 

それ故に周囲の目も意識してしまう。

 

サイラオーグさんとミスラさんはバアル家にとって厄介者でしかなかった。

 

 

その後、ウァプラ家がミスラさんとサイラオーグさんの帰還を求めたが、それも叶わなかった。

 

サイラオーグさんだけは渡すわけにはいかない―――――家の恥を外に出すわけにはいかないと現当主である父親がそう告げたからだ。

 

 

当然、ミスラさんはサイラオーグさんと残ることを選んだ。

故郷の助力を断り、サイラオーグさんと一部の従者を連れてバアル領の辺境へと移り住むことにした。

 

貴族として生きてきたミスラさんにとって、そこからの生活は厳しいものだった。

 

特にサイラオーグさんは魔力が無いに等しかったため、同世代の下級、中級悪魔からいじめを受けることになる。

 

まだ幼い子供。

苛められれば泣いて帰ることもある。

 

 

しかし、ミスラさんはそんなサイラオーグさんに強く言い聞かせたという。

 

 

――――魔力がなくとも、あなたには立派な体があります。足りないとおもうのなら、代わりとなる何かで補いなさい! 腕力でも、知力でもいい、それを補ってみなさい! たとえ、魔力がなかろうと、滅びの力がなかろうと諦めなければいつか必ず勝てるから。

 

 

その言葉は今でもサイラオーグさんの心に残っている大切なものだそうだ。

 

 

その裏、サイラオーグさんに見られない場所でミスラさんは何度も謝り泣き続けていたという。

何度も謝り自分を責めていたそうだ。

 

 

それを知ってかなのか、それは分からない。

 

ある日、サイラオーグさんは泣くのを止めた。

 

 

 

 

 

 

「サイラオーグ様は自ら厳しい修行をこなし、ご自身を鍛えられたのです。何度倒れようとも立ち上がり、向かっていくようになりました」

 

自分の運命を呪うことはせず、ただ自分に足りないものに立ち向かっていく。

倒れても倒れても立ち上がり続ける。

 

相当な覚悟がなければ、そんなことは出来ない。

 

「そして、サイラオーグ様は夢を掲げたのです。――――実力があればどのような身の上でも夢を叶えることが出来る冥界を作りたい、と」

 

悪魔の世界は実力社会と言うが、その実、上流階級とそれ以外では世界がまるで違う。

たとえ力を持っていたとしても出自が下級の者は望みを叶えることが出来ないことの方が圧倒的に多い。

 

そんな悪魔社会を変えるためにサイラオーグさんは魔王を目指すことを決意する。

 

 

サイラオーグさんが中級悪魔とまともに勝負が出来るようになったころ、ミスラさんの体に異変が起こる。

 

「悪魔がかかる病の一つなのよ。その病気にかかると深い眠りに陥り、目を覚まさなくなる。次第に体も衰退していき死に至るの。症例が少ないから原因も治療方法も分かっていないわ。今出来ることは、こうやって人工的に生命を維持することだけ」

 

リアスが寂しげに目元を細目ながら言った。

 

治療方法を求めて冥界の名だたる病院を全て回ったそうだが、それは見つからず。

 

それでも、サイラオーグさんは突き進んだ。

 

「体を鍛え上げたサイラオーグはバアル家に帰還して、彼の父親とその後妻の間に生まれた弟を下したのよ。そうして、彼は次期当主の座を得た」

 

多分、その弟は滅びの力を持っていたんだろうな。

 

その弟を倒して今の地位を得た、か。

 

波乱に満ちてるな。

 

 

・・・・・・なるほど、それが気に入らないバアル家の誰かがミスラさんを狙うかもしれないってことなのか。

 

病気で体を動かせなくなったミスラさんは格好の的だからな。

 

性根が腐ってやがる・・・・・・。

 

 

執事さんがハンカチで涙を拭いながら言う。

 

「赤龍帝殿。あなたは万物に宿る『気』を操る力を持つと聞いています。しかも、それは仙術とはまた違った力とも」

 

「ええ、まぁ」

 

気を操るという点では同じだけど、その運用方法も操作の仕方も仙術と錬環勁気功では違いがある。

 

あと出力とかも違うかな。

 

俺が頷くと執事さんは深々と頭を下げて言った。

 

「どうか・・・・・どうかミスラ様の治療にご助力を・・・・。治療方法が分からない今、僅かな可能性でも、それにかけるしかないのです・・・・・・」

 

「イッセー。私からもお願いするわ。おばさまを治すために力を貸してくれないかしら?」

 

と、リアスも執事さんに続いて言った。

 

 

二人に言われて俺は腕を組んでうーむと考え込む。

 

治療を引き受けること自体は良いんだけど・・・・。

 

外傷とか毒とかなら治癒力を高めてやれば治る。

それは仙術でも可能だ。

 

ただ・・・・さっきの話からすると仙術は既に試してるっぽいんだよなぁ。

 

となると俺が治癒力を高めても効果は分からない、か。

 

どうしたものか・・・・。

 

「とりあえず、色々試してみます」

 

俺はミスラさんの額に手を当てて、目を閉じる。

 

俺とミスラさん、互いの体に流れる気の波長を合わせると脳波がシンクロ。

 

 

そして――――――――俺はミスラさんの精神世界へと潜った。

 

 

 

 

 

 

俺は白い世界に立っていた。

 

よく神器やイグニスの中に潜ったりもするが、あれと似たような空間だ。

 

ただ、問題は起きていてだな・・・・・この空間の周囲には黒い空間が広がっていて、それが少しずつこの空間を侵食してきているということ。

 

・・・・精神世界にまで影響が出ているのか。

 

侵食スピードはかなり遅いけど、確実に症状は進んでいるみたいだ。

 

こいつは急がないとマズいかもな。

 

「とりあえずは彼女を探しましょうか」

 

「そうだな」

 

俺は頷いて、歩き始める。

 

この空間のどかこかにミスラさんがいるはずなんだが・・・・・。

 

 

 

・・・・・あれ?

 

今、誰に返事したんだ、俺は・・・・・。

 

訝しげに思った俺は恐る恐る振り返る。

 

 

・・・・・イグニスがそこにいた。

 

 

「どうしたの?」

 

頭に疑問符を浮かべているイグニス。

 

あ、しかもドライグまでいやがる!

 

「なんでここにいるのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

俺の絶叫がこの空間に響き渡った!

 

だってそうじゃん!

 

ここ、ミスラさんの精神世界だよ!?

 

なに、さも当然のような顔をして俺に着いて来てるの!?

 

「私達はあなたと一心同体。どこに行くのも一緒よ!」

 

ビシッとポーズを決めるイグニス!

 

そんなポーズを決められても困るんですけど!?

 

どこのヒーロー戦隊!?

 

「つーか、なんでドライグも来てるんだよ?」

 

『す、すまん・・・・無理やり連れてこられた』

 

て、天龍を無理矢理って・・・・・流石は原初の女神。

 

「あんた、絶対暇だろ?」

 

「あら、バレた?」

 

イグニスはウインクしながらペロッと舌を出す。

 

こ、この人は・・・・・・

 

 

はぁ。

 

 

俺は盛大にため息をつく。

 

もういいや。

 

これ以上ツッコんでいたら、ここに来た目的を忘れそうだ。

 

とりあえずはミスラさんを探そう。

 

結局、俺はイグニスとドライグを連れてミスラさんを探し始めた。

 

 

 

それから少し経ってから俺達は椅子に座った女性を見つけた。

 

ミスラさんだ。

 

ミスラさんの前には幾つもの映像が流れていて、その全てに一人の男の子。

 

赤ん坊の時のものもあれば、小学生くらいの時のものも映っていた。

 

これは・・・・・サイラオーグさんが幼いときの・・・・・・。

 

「あの・・・・・ミスラさん、ですよね?」

 

「・・・・・・・」

 

声をかけてみるが、返事は返ってこない。

 

聞こえていないのか?

 

もしかして、意識がないとか?

 

病の影響なのかな?

 

そんなことを考えているとイグニスが一歩前に出た。

 

「よーし、私が色々やって目覚めさせてあげましょう」

 

手をワシャワシャ動かしてイグニスがミスラさんに駆け寄った!

 

なんかスケベな笑みを浮かべてる!?

 

「待たんかいぃぃぃぃぃいいい!!!」

 

俺はダッシュで羽交い締めにして、それを阻止!

 

「あんた、なに考えてんの!?」

 

「おっぱい揉んだら覚醒するかなーと」

 

「するか! やめてくれよ! 後でサイラオーグさんに怒られるわ!」

 

マジで勘弁してくれ!

 

つーか、おっぱい揉んで意識が戻るとかないから!

 

あったとしても後で複雑な気分になるわ!

 

「えー、ダメー?」

 

「ダメに決まってるだろ!」

 

良いと思ったの!?

 

ダメだこの人!

ダメな女神、略して駄女神だよ!

 

「わかったわよぅ」とイグニスが諦めたので手を離す。

 

本当にわかったのか疑問ではあるが・・・・・。

 

俺から解放されたイグニスは背筋を伸ばしながら言う。

 

「病気が治るかどうかはともかく、精神世界での意識を目覚めさせることは出来るわよ?」

 

「え?」

 

「だって、こうして自分の子供の映像が流れているってことは、こんな状態になった今でも誰かを想うことが出来ているってことじゃない。だったら手はあるわ」

 

マジか!

 

駄女神と思ったとたんにスゲーことを言ってくれるな、この人は!

 

「それで、どうやるんだ?」

 

俺が訊くとイグニスは胸を張って言う。

 

「まぁ、私に任せなさい♪ これでも女神だから」

 

イグニスは掌を合わせ、何やら呪文を唱え始めた。

 

会わせた掌から赤い光が発せられていき、この冷えきった空間を暖めていく。

 

「あ、そうそう。今度、私の実験に付き合ってもらうからね?」

 

「実験!? それって何を――――」

 

「じゃあ、いっきまーす!」

 

「人の話を聞けーーーーー!!!!」

 

 

次の瞬間、赤い光がこの空間を覆った。

 

 

 

 

 

 

「目が覚めたか、兵藤一誠」

 

ミスラさんの精神世界から出て、目を開けるとサイラオーグさんがいた。

 

「あ、どうも・・・・・って、えーとこれはですね・・・・・」

 

今の俺はミスラさんの額に手を当てた状態だ。

 

「他人が何をやっているんだ」と思われてもしかたがない。

 

俺が現状を説明しようとするとサイラオーグさんは小さく微笑みながら首を振った。

 

「事情はリアスから聞いている。おまえが母を治療するために来たこともな」

 

よくよく考えれば、ここにはリアスも執事さんもいる。

 

二人に事情を聞いていてもおかしくないか。

 

執事さんが訊いてくる。

 

「赤龍帝殿。それでミスラ様は・・・・・」

 

「一応、やれることはやったと言うか・・・・・やってもらったと言うか・・・・・」

 

それから俺はこの場にいる三人に事情を話す。

 

精神世界で起きたことの全てを。

 

「という感じで・・・・精神世界でのミスラさんの意識は戻ったと思いますが、これで治療になったかどうかと言われると・・・・・・すいません」

 

「いや、かまわんさ。たとえ精神世界とは言え、母の意識が目覚めた。これだけでも十分前に進めたと言える。礼を言うぞ、兵藤一誠。それからリアス。グレモリー家とシトリー家にも世話になっている。両家には感謝の念がつきない」

 

「いいのよ。それくらいさせてもらうわ」

 

何気ないいとこ同士の会話。

 

しかし、サイラオーグさんの表情は一転して厳しいものになる。

 

「だが、ゲームは別だ。俺が欲しいのは全力のグレモリー眷属。全力のおまえ達と戦いたい」

 

堂々と不敵に言ってくれるぜ!

 

サイラオーグさんは自身の拳に視線を落とす。

 

「俺には肉体(これ)しかなかった。だから負ければ全てを失う。積み上げてきたものが崩れるだろう。『消滅』の魔力を受け継げなかった俺にとって、勝つことのみが唯一の道だった」

 

そして、俺とリアスに戦意に満ちた瞳が向けられる。

 

「格好は悪い。だが、これが俺の戦い方なのだ」

 

その言葉に俺も真っ直ぐにサイラオーグさんに向けて言葉を返す。

 

「分かっています。俺も全力であなたと拳を交えたい。そう思っていますから」

 

俺はサイラオーグさんに拳を差し出す。

 

「俺は自分の主を勝たせるため、あなたの想いに応えるため、持てる力の全てを出します」

 

そうさ。

 

ここに過去だのなんだのは一切関係ない。

 

あるのは今抱える想いだけだ。

 

目の前の男もそれを望んでいる。

 

だから、俺は今持てるの力を全てを出そうじゃないか。

 

 

俺の言葉にサイラオーグさんは満足そうに笑んだ。

 

「そうだ。それでいい。その言葉だけで十分だ。やはり、おまえと向かい合うと自然と高揚してしまうな。赤龍帝、兵藤一誠。今度こそ、互いの全力を出しきろうではないか!」

 

そう言ってサイラオーグさんは俺と拳を合わせる。

 

俺もサイラオーグさんも無意識のうちに体からオーラが滲み出てるぜ。

 

高揚しているのは俺も同じってことだな。

 

「リアス、兵藤一誠。夢のため、野望のため、俺はゲームに臨む」

 

「ええ、私も負けないわ」

 

サイラオーグさんの一言にリアスも大胆に答える。

 

 

その後、サイラオーグさんと執事さんに別れの挨拶をして、俺とリアスは帰路についた。

 

イグニスの力でミスラさんが回復すればいいが・・・・・・。

 

 

今はそれよりも―――――

 

「リアス」

 

「なに?」

 

「今度のゲーム、俺は初のレーティングゲームになるよな」

 

「そうね。ライザーの時はともかく、公式のゲームではそうなるわね。前回まではイッセーは出場出来なかったから・・・・・。もしかして緊張しているの?」

 

リアスの問いに俺は首を横に振った。

 

「いや、俺の主がリアスで良かったなって思ってさ」

 

「え?」

 

「こんな最高な気持ちで試合に臨めるなんて、きっとリアスが俺の主じゃなかったら体験出来なかったと思うんだ。だからこそ、次のゲーム。――――俺は君を勝たせてみせるよ」

 

俺はニッと笑ってリアスに言った。

 

 

すると――――

 

 

「う、うん・・・・・」

 

あれ?

 

なんか、顔赤くなってない?

 

どうしたよ?

 

『・・・・・相棒・・・・・おまえはバカなのか?』

 

『出たわね。無意識の女落とし』

 

 

二人の相棒から酷いことを言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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