ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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16話 解決です!!

曹操は聖槍を杖にしてゆっくり立ち上がる。

 

奴の瞳は俺と同じ世界―――――領域に入っている。

 

まさか、俺と同じように領域に入れる奴と戦うことになるなんて思ってなかったぜ。

 

曹操が言う。

 

「時間がない、か。どうやら、その急激なパワーアップは長時間の維持は難しいようだな」

 

今の俺は錬環勁気功の奥義を発動している状態だ。

周囲に漂う気を体内に取り込み、体内で循環と圧縮を高速に繰り返している。

 

一時的に身体能力を爆発的に上げることが出来るけど、長続きはしない。

何より、加減を間違えると自爆しかねない危険な技だ。

 

俺は拳を強く握る。

 

「俺の限界が来る前におまえを倒せばいいだけだ。それで全てが終わる。八坂さんの方も上手くいきそうだしな」

 

俺は八坂さんと大怪獣バトルを繰り広げる龍王化した匙の方に視線を移す。

 

『グオオオオオオッ!』

 

九本の尾に縛られ、苦痛の声を漏らしている匙。

 

一見すると匙が押されているように見えるだろう。

 

だけど、よく見てみると八坂さんの力も大きく下がっているのが分かる。

 

ヴリトラの黒炎で消耗している証拠だ。

 

「なぜだ・・・・・? 都市に流れる力を九尾に注いでいるはずだが・・・・・・まさか・・・・・・!」

 

目を見開く曹操。

 

どうやら気づいたようだな。

 

「おまえ達が施していた術式が崩されたってことだ。見ろよ、八坂さんの尾が匙から離れていくぜ?」

 

「ゲオルクが押し負けたというのか!?」

 

「あー、あの霧使いね。残念だったな、相手が悪すぎだ。何て言っても相対しているのは俺の妹。そう簡単には勝たせてくれねぇよ。ほら、今度は八坂さんを縛る魔法陣の輝きが小さくなってきたぞ」

 

ゲオルクが美羽に押し負けたのはいくつか理由がある。

 

一番大きいのはやはり美羽の魔法が特殊だということだろうな。

ゲオルグも美羽の魔法には戸惑っていたみたいだし。

 

まぁ、何にしてもだ。

 

「おまえ達の実験は失敗した。――――さぁ、覚悟しやがれ。これまで散々やってくれたツケ、きっちり払ってもらう」

 

アスカロンの切っ先を曹操に向ける。

 

すると―――――

 

「クッ・・・・・ハハハハハ! 面白い! ならば、俺がここで君を倒し、実験をやり直せば良い話だ!」

 

曹操は笑みを浮かべ聖槍をクルクルと回す。

 

曹操から放たれる威圧が増大する。

聖槍もそれに応えるように、これまでに無いくらいの輝きを放っていた。

 

俺を倒して実験をやり直す、か・・・・・。

 

やれるものなら―――――

 

「やれるものなら、やってみやがれっ!!」

 

その叫びと共に俺を覆うオーラも一気に膨れ上がった!

 

これ以上、こいつらを京都で好き勝手にやらせるかよ!

 

俺は曹操に真正面から突っ込んでいく!

 

たとえ神器が使えない状態だとしても、負けるわけにはいかねぇんだよ!!

 

「であぁぁあああああああっ!!!!」

 

 

ガギィィィィィンッ!!!!

 

 

全力で振り下ろしたアスカロンを曹操が受け止める!

 

だが、その顔は苦い顔をしていた。

 

「ぐっ・・・・・なんという一撃っ! これまでのどの攻撃よりも速く鋭いな! だがっ!」

 

曹操は槍を滑らせて、石突きで俺の腹に一撃を加える!

 

その衝撃で俺は吹っ飛ばされた!

 

幾つものビルを突き破り空中に放り出される俺。

 

だけど、俺を覆うオーラのお陰でダメージは受けていない!

 

空中で宙返りして、向かってくる曹操を迎え撃つ!

 

イグニス、今の俺なら最大どれくらい展開できる?

 

『鎧を纏っていないあなたなら十数秒が限度ね。それ以上は腕が焼かれるわ』

 

十分だ。

 

それだけあれば、あいつをぶちのめせる!

 

俺はイグニスを展開。

 

右手にはイグニス、左手にアスカロン。

 

ゼノヴィアと同じ二刀流!

 

「曹操ォォォォォォオッッ!!」

 

俺は奴の名を叫び、ビルの壁を蹴る!

 

悪魔の翼を羽ばたかせて、曹操に向かう!

 

「おおおおおおおっ!!」

 

「はああああああっ!!」

 

再び衝突する俺と曹操!

 

俺の攻撃の威力も上がっているが、奴の槍さばきも鋭さを増し、俺の体に幾つもの傷をつけていく!

 

正直、聖なる力の影響でかなりキツイ。

 

今にも意識が飛びそうになる。

 

「どうした、兵藤一誠! 今のままでは聖槍の影響で消滅してしまうぞ!」

 

そんなことは分かってるんだよ!

 

それでもっ!

 

俺は聖槍を弾き、大きく後ろへ下がる。

 

そして、イグニスを曹操目掛けて投擲した!

 

「それで俺の動揺を誘えるとでも?」

 

そう言って聖槍を振るいイグニスを弾き飛ばす曹操。

 

だが、次の瞬間―――――

 

「なっ!?」

 

曹操は驚愕の声を漏らす。

 

当然だ。

 

曹操の眼前にはアスカロンの切っ先が迫っているのだから。

 

俺はイグニスを投擲した後、全く同じ軌道でアスカロンを投げた。

イグニスでアスカロンが隠れるように。

 

そして今、曹操を貫こうとしていた。

 

 

ザシュッ

 

 

曹操は避けようとするが間に合わない。

アスカロンが曹操の右眼を深く抉った。

 

「ぐぅぅぅ・・・・・ッ。目が・・・・・・!」

 

右眼を覆い、苦しむ曹操。

手の隙間からは血が流れ出ていた。

 

あれで右目は潰せたな。

即興でやってみたけど、上手くいった。

 

曹操は右眼を手で押さえながら狂喜に顔を歪ませた。

 

「赤龍帝ぇぇぇぇっ!!」

 

叫ぶ曹操。

 

だが、俺はそれを無視して曹操の懐に入り込んでいた。

 

「こんなもんで済むと思うなよ? さっき言っただろ。ツケはキッチリ払ってもらうってな!」

 

気を纏わせた右手が赤く輝きを放つ!

 

「英雄名乗るなら、小さい女の子を泣かせてんじゃねぇぇええええええ!!!」

 

 

ドゴォォォオオオオオン!!

 

 

俺のボディーブローが曹操を捉え、遠くの方へと吹き飛ばした。

 

 

 

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・」

 

俺は息を上げて、その場に膝をついた。

 

纏っていたオーラも次第に小さくなっていく。

奥義の限界が来たみたいだ。

 

しかも、聖槍を受けたせいで、体にできた傷から煙が上がってやがる。

こいつは早くアーシアに治療してもらわないとヤバイな・・・・・・。

 

体から力が抜けていく。

自分の体を支える力すら無くなり、突っ伏してしまった。

 

クソッ・・・・・ここまで来て、意識が・・・・・・。

 

「イッセー君!」

 

声が聞こえた。

 

俺のもとに駆けつけてくれたのは木場だった。

 

「木場・・・・・」

 

「しっかりするんだ、イッセー君!」

 

木場はそう言うとポケットに入れていたフェニックスの涙の小瓶を取りだし、俺に振りかけてくれた。

 

煙を上げて、俺の傷が塞がっていく。

 

どうやら、消滅せずにすみそうだ。

 

木場は俺を起こして肩を貸してくれる。

 

「悪いな、おまえに渡していた分を使わせちまって・・・・・」

 

「気にすることはないさ。君に死なれる方が嫌だからね」

 

木場はそう言って微笑む。

 

俺の傷が塞がり、安堵しているようだった。

 

「ところで、ジークフリートは? 倒したのか?」

 

尋ねると木場は首を横に振った。

 

「いや、イッセー君に殴り飛ばされた曹操を追っていったよ。僕もイッセー君が倒れるのが見えたから、戦闘を止めてここに来たんだ」

 

「そっか・・・・・。すまん、ジークフリートを追撃する機会逃しちまったな」

 

「いいさ。あのまま続けていたら僕も危なかっただろうからね。とりあえず行こう。曹操は二条城の本丸があった場所まで飛ばされたみたいだよ」

 

本丸があった場所って・・・・・・。

 

元の場所に戻っちゃったか。

 

俺は木場に支えられながら、戦闘開始地点に向かうことにした。

 

 

 

 

俺達が本丸に戻ると、そこにいたのはジークフリートとボロボロの姿の曹操。

曹操は口から大量に血を流し、今にも死にそうだ。

 

まぁ、あれだけ強力な一発を決めてやったんだ。

 

いくら曹操が強くても体の強度はそれほど高くはない。

 

ああなるのは当然だ。

 

と言っても俺も相当無茶苦茶したから限界なんだけどね。

満身創痍。

身体中が悲鳴をあげてるよ。

 

ジークフリートは曹操の懐を探り、小さな小瓶を取り出した。

 

あれは、まさか――――

 

「どうやら、禍の団にもフェニックスの涙が回っているみたいなんだ。認めたくないけどね」

 

木場が怒りの籠った瞳で教えくれた。

 

マジかよ・・・・・・!

 

フェニックスの涙がテロリストの手に!?

 

ジークフリートがフェニックスの涙を曹操にかけると煙をあげながら腹の傷が塞がっていく。

 

本物の涙ってことかよ・・・・・・!

 

クソッ・・・・・!

 

傷が塞がった曹操は聖槍を杖にして立ち上がる。

右目は・・・・・かなり深く抉れたのか、血は止まっているみたいだけど、潰れたまま。

 

曹操はフラフラの状態だってのに、俺を睨んでくる。

 

「やってくれたな、赤龍帝・・・・・っ!」

 

「まだやるか? まぁ、逃がしはしないけどな」

 

俺は最後の力を振り絞って気を集める。

 

右手の掌にバスケットボールくらいの大きさの気弾が出来上がった。

 

そして、それを曹操に投げつけようとした時だった。

 

 

バジッ! バチッ!

 

 

空間を震わす音が鳴り、空間に穴が生まれつつあった。

 

その光景に見覚えがある。

 

魔法陣は美羽が解除したはずだ。

 

なぜ、ここに―――――

 

いや、違う。

 

あの穴から感じられる力はグレートレッドとは別物だ!

 

空間の裂け目から姿を現したのは、緑色のオーラを発しながら夜空を舞う、十数メートルほどの東洋タイプのドラゴンだった。

 

曹操が叫ぶ。

 

「―――五大龍王の一角。西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)玉龍(ウーロン)かッ!」

 

龍王!?

 

このタイミングで五大龍王の登場ですか!?

 

マジか!

最後の龍王と出会っちゃったよ!

 

俺が驚くなか曹操は五大龍王よりも、その背中に乗っている人影に目を向けていた。

 

その人影はまるで高さを無視する様に、ドラゴンの背中から地上へと降り立ってくる。

 

金色に輝く体毛に法衣を纏った・・・・・猿?

猿の妖怪・・・・・?

 

「大きな『妖』の気流、それに『覇』の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ」

 

小さな背丈の老人は一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。

 

「おー、久しぶりじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がでかくなったじゃねーの」

 

猿の老人は曹操にそう言う。

 

曹操は目を細めて笑んだ。

 

「これはこれは、闘戦勝仏殿。まさか、貴方がここに来られるとは。各地で我々の邪魔をしてくれているそうですね?」

 

「坊主、悪戯が過ぎたぜぃ。ワシがせっかく天帝からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思ってたのによぉ。拉致たぁ、やってくれるもんだぜぃ。ったく、異形の業界の毒なんぞになりおって。『覇業は一代のみ』とはよく言ったもんじゃ」

 

「毒、ですか。貴方に称されるなら、大手を振って自慢できる」

 

「と言っても、すでに仕置きはされとるようじゃ。赤い龍にやられたか?」

 

「ええ、まぁ」

 

え、えーと・・・・・・

 

ごめん、あの爺さん、誰?

 

敵か?

 

いや、話の内容からしてそれはないか。

 

曹操と知り合いみたいなんだけど・・・・・・・。

 

「・・・・・おそらく、孫悟空。しかも初代だよ」

 

俺の疑問が分かったのか木場がそう言った。

 

な、なにぃぃぃぃいいいいい!?

 

俺は木場の発言に心底仰天した!

 

「しょ、初代の孫悟空ぅぅぅううう!? あ、あの爺さんが西遊記の!?」

 

マジかよ!

超超超有名人じゃん!

すげぇ!

 

俺の目の前に西遊記の人きたぁああああ!

どうせなら、沙悟浄とかも見たかったけどね!

 

猿の爺さん――――初代孫悟空と目があった。

 

「赤龍帝の坊や。よー頑張ったのぉ。儂らが助っ人だぜぃ。まぁ、頑張りすぎて儂らの出番はほとんど無くなってしまったようだがの。――――玉龍、おまえはヴリトラを助けてやれぃ。九尾もあと一押しのようだぜぃ」

 

『龍使いが荒いぜ、クソジジイ! オイラ、ここに入るだけでチョー疲れてんですけど! ってか白龍皇の仲間の魔女っ子に手助けしてもらったんだけどよ! それはそうと、久しぶりじゃねぇか、ドライグ! 元気そうじゃねぇか!』

 

おおっ!

なんかテンション高いな、あのドラゴン!

 

『久しぶりだな玉龍。魂だけの状態で元気と言うのも変だが・・・・・まぁ、元気だ』

 

ドライグが複雑そうな声で返す。

 

なぁ、あのドラゴンって昔からああいう感じなのか?

 

『そうだな。玉龍は昔からああだ』

 

な、なるほど・・・・・。

 

玉龍は八坂さんのところへ向かい、匙と共闘を開始する。

 

匙も限界に近そうだったから、助けてくれるのはありがたい。

 

『うおおおお! 狐の姉ちゃん! オイラは強ぇぇぞ!』

 

テンション高いな、おい!

 

「さて、どうする坊主? このまま儂らとやり合うか? 儂はそれでも良いけどねぃ。だが、その時は容赦しないぜぃ?」

 

孫悟空が曹操に問う。

 

曹操はフッと笑みを浮かべると首を横に振った。

 

「やめておきましょう。この状況であなたと戦えば俺達は間違いなく壊滅する。それだけは避けたい。ジーク、撤退だ」

 

「・・・・・わかった。これ以上は無理だろう」

 

ジークフリートはそう言うと魔法陣を展開して何処かに連絡を入れる。

 

恐らく他の英雄派のメンバーに通信を入れているんだろうな。

 

ジークフリートが魔法陣を閉じるとすぐに英雄派幹部が集結。

 

ディルムッドの姿が見えないけど・・・・・・。

 

彼女は別行動だからだろうか?

 

「初代殿、赤龍帝殿、グレモリー眷属、再び見えよう」

 

曹操がそう言った瞬間、英雄派の足元に巨大な魔法陣が展開される。

 

逃がすかよっ!

 

俺は気弾を放とうとするが―――――

 

「ガッ・・・・・!」

 

全身を激痛が走り、それは出来なかった。

 

奥義を使った代償か・・・・・・!

 

転移の光に包まれていくなか、曹操は俺に視線を送る。

 

「兵藤一誠。次会った時は必ず君を貫く。この槍の真の力で」

 

それだけを言い残すと、英雄派はこの空間から消えていった。

 

 

 

 

英雄派が逃げたあと、残ったのは俺達と助っ人である初代孫悟空と玉龍。

そして、今だ九尾姿の八坂さんだ。

 

とりあえず動きは止めているから、まずは負傷したメンバーの治療をしているんだけど・・・・・・。

 

「くっ・・・・・やはり塞がらないか・・・・・」

 

ゼノヴィアが苦痛の声を漏らす。

 

ディルムッドとの戦闘でゼノヴィアは左腕に深い傷を受け、今も血が流れ出ている。

 

アーシアと美羽がなんとか治療しようと試みてみるが、結果は変わらない。

 

「ダメだ。おそらく普通に治療したのではこの傷は治らない。今は止血だけして、アザゼル先生にでも診てもらうのがいいかもしれない」

 

ゼノヴィアはそう言って制服の袖をちぎって腕を縛る。

 

イリナやロスヴァイセさんも相当な傷を負っていたけど、こちらはアーシアの治癒でなんとかなった。

 

問題はゼノヴィアか・・・・・・・。

 

「イッセー。私のことは後でいい。先に九尾を何とかしよう」

 

ゼノヴィアにそう言われ、八坂さんに視線を移す。

 

匙と玉龍のおかげで何とか動きは止めたものの、人間の姿に戻ることはなかった。

しかも、瞳は洗脳の色を浮かべたままだ。

 

「母上! 母上!」

 

『・・・・・・』

 

九重が泣きながら八坂さんを呼ぶが・・・・・・反応は一切ない。

 

「さて、どうしたもんかいの。仙術で邪な気を解いてもいいんじゃが、ここではちと時間がかかるのぉ」

 

初代も煙管を吹かしながら思慮しているようだ。

 

俺は初代に尋ねる。

 

「邪な気を解けば元に戻ると?」

 

「九尾を縛っとるのは邪な気。それを除いてやれば元には戻るぜぃ。だが、これほどまでの気じゃ。一人では少々時間がかかるぜぃ」

 

「じゃあ、俺も手伝いますよ。二人ならなんとかなるでしょう?」

 

「赤い坊や。おまえさん、自分の状態が分かっとるのかぃ? おまえさんに流れる気は滅茶苦茶。動くことも辛いだろう?」

 

まぁね。

 

錬環勁気功で身体に負担を掛けすぎたから、少し動くだけでも、全身がバキバキに痛い。

 

気の負担で痛めた身体は自然治癒でないと治せないから、アーシアの治療でも効果がない。

 

だけど、

 

「一時的に痛みを消して動けば問題ないです。こんな痛み、ほっとけばそのうち治りますしね」

 

「若いのに無茶するねぃ。ま、それならやってみようかねぃ」

 

初代は苦笑しながら承諾してくれた。

 

俺は泣いている九重の頭をそっと撫でてやる。

 

「九重、少し離れてろ。今から母ちゃん助けてやっからさ」

 

「・・・・・イッセー」

 

「心配はいらないよ。女の子との約束は絶対守る男だからな、俺は」

 

俺はそう言って笑むと、初代と共に八坂さんの身体に手を当てる。

 

・・・・・想像以上におかしな気が流れてるな。

 

八坂さん、今から解放するんでもう少し我慢してくださいね?

 

 

「いきます」

 

「おう、いつでもいいぜぃ」

 

俺と初代が頷いた瞬間。

 

 

ブワッ

 

 

八坂さんの身体を淡い光が包み込む。

 

俺と初代の二人で八坂さんを縛る邪悪な気を消し去る!

 

こいつなら!

 

「戻ってきてくだされ! 母上ぇぇえええええ!」

 

九重の心からの叫び。

 

そうだ!

戻ってこい!

九重にはあなたが必要なんだ!

 

俺は錬環勁気功の出力を上げる!

 

 

すると―――――

 

 

パァァァァァ

 

 

八坂さんの身体が輝きを放つ。

 

少しして光が止むと、人間の姿に戻った八坂さんがいた。

 

よっしゃ!

 

成功だ!

 

 

「・・・・ここは?」

 

八坂さんはふらふらと体がおぼつかない様子だが、意識は戻りつつあるようだった。

 

九重が八坂さんに駆け寄り、その胸に飛び込む。

 

「母上ぇぇぇっ! 母上ぇぇぇっ!」

 

八坂さんは優しく九重を抱きしめ、頭を撫でる。

 

「・・・・・どうしたのじゃ、九重。おまえは、いつまで経っても泣き虫じゃな」

 

見れば皆の治療をしていたアーシアが泣いていた。

 

うんうん、分かるぜその気持ち!

感動のシーンだよな!

 

他の皆も感動の涙を流していた。

 

俺もジーンと来てるぜ!

 

あ・・・・・やべっ。

身体に力が入らねぇ。

 

残った最後の力を全て使っちまったから、立つことも出来ないや。

 

俺が後ろ向きに倒れそうになると美羽が俺を支えてくれた。

 

「大丈夫?」

 

「あー、大丈夫と言いたいところだけど、大丈夫じゃないかも・・・・・・」

 

うん、立てないもんな。

マジでヤバイかも。

戻ったら確実にゴー・トゥ・ベッドだぜ。

 

「じゃあ、ボクがまた介抱してあげるよ」

 

「ハハハ・・・・・。じゃあ、お言葉に甘えるとするよ」

 

おっと、女性陣からの視線が・・・・・・。

こいつは後で荒れるかな・・・・・・?

誰も助けてくれないんだろうなぁ・・・・・・。

木場とか絶対後ろから見てくるだけだよね?

 

ほら!

 

今も少し離れたところからこっち見てるし!

 

よし、疲れたから後で考えよう。

今考えるのは無理だわ。

 

「ま、何はともあれ、解決じゃい」

 

初代がそう締めの一言を言った。

 

 

 

 


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