ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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いよいよこの章もクライマックスです!!


15話 勇者の底力

俺と曹操は二条城を飛び出して、市街地での戦闘に入っていた。

 

アーシアと九重から離れてしまうのは少し心配だけど、あの場でやり合って二人を巻き込んでしまうよりはマシだ。

 

高層ビルの壁を垂直に駆け抜け、幾度も衝突を繰り返す。

 

「おおおおおおおおおっ!!」

 

気合いと共に放つのは俺が今撃てる必殺の拳。

全身に気を循環させて、高めた一撃だ。

 

当然、禁手の状態と比べると威力は劣る。

 

それでも、大抵のやつは当たれば倒せる。

 

そう、当たれば(・・・・)

 

 

「良い一撃だ! ヒヤヒヤものだな!」

 

曹操は嬉々とした表情で俺の拳を次々とかわしていく。

 

時には槍で、時には体捌きで。

流れるような動きで俺の拳の全てをかわしていく。

 

さっきから掠りもしない。

 

俺は攻撃の手を休めないまま、曹操に叫ぶ。

 

「ちぃ! 一発くらい当たりやがれ!」

 

「言っただろう? 俺は弱っちい人間だって。君のような強者の一撃を受ければアウトな俺はこうするしかないのさ」

 

弱っちい人間、ね。

 

本当によく言うよな。

鎧を纏ったアザゼル先生と渡り合えるだけの実力を持ってるくせによ。

 

「だが、そう言う君こそ俺の槍をくらわないじゃないか」

 

「うるせぇよ! 悪魔の俺がそんなもん食らったらお陀仏だろうが!」

 

聖遺物の一つである聖槍の一撃なんざ、くらったら悪魔の俺はマジでヤバイんだよ!

消滅するわ!

 

・・・・・・って先生にも念を押されたしな!

 

つーか、こっちはギリギリなんだよ!

生身には受けてないけど、服は数ヶ所破れてるからな!

 

悔しいけど、テクニック面ではこいつの方が上らしい。

ここまでの戦闘でそれが明らかになった。

 

『ここまで来るとテクニックの極みとも言えるな。まさか、技術面で相棒を上回るとは』

 

ま、だからって弱音を吐くつもりなんて無いけどな!

 

俺はアスカロンに気を溜めて斬戟に乗せて横凪ぎに振り抜く!

気と混ざりあった聖なるオーラが壁を大きく抉り、ビルを倒壊させる!

 

曹操は隣のビルに乗り移って回避しやがった。

 

「伸びろっ!」

 

突きだされた聖槍が俺目掛けて伸びてくる!

 

速い!

 

「っ!」

 

俺はアスカロンの腹を盾にしてなんとか直撃は避ける!

 

だけど、そのまま近所の建物に突っ込んでしまった。

俺がぶち破ったことで、建物の壁はガラッと崩壊する。

辺りには埃も舞っている。

 

痛ってぇ・・・・・。

ギリギリ硬気功を背中に展開できたからケガはしなかった。

だけど、硬気功は表面を気で覆って硬化させる技だ。

衝撃までは消せない。

 

あー、背中が痛い。

 

俺は背中を伸ばした後、体のあちこちに付着した埃やら瓦礫の欠片をパンパンと叩いて落とす。

 

そういや、昼間もゴグマゴグをさっきので尻餅つかせてたな。

 

伸びるってことは逆に縮めることもできるのかな・・・・・?

 

槍の間合いの内側に入りこむことが出来れば・・・・・なんてことも考えていたんだけどね。

縮めることも出来るとすればそれも難しいか。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・

 

 

突如、建物が大きく揺れる。

 

………なんだ?

 

俺が怪訝に思っていると―――――極太の光の柱が天井をぶち抜いてきた!

こいつは聖槍による聖なるオーラの攻撃!

 

「げっ!」

 

思わず顔を引きつらせてしまう。

 

なぜなら、光の柱は俺を追いかけるように天井を破壊しながら迫ってくるからだ!

 

こんな狭い空間では避けることは難しい!

 

「クソッ!」

 

ガラス窓を破り、外に飛び出る。

その直後、俺がいた建物は真っ二つになり、轟音と共に崩れ去った。

 

だけど、俺は息をつく暇なんてなかった。

上から曹操が槍を構えて急降下してきた!

 

「このっ・・・・・・!」

 

気弾を二、三発放ってはみるが、容易く弾かれてしまう。

 

アスカロンと聖槍がぶつかり、空中で火花を散らす!

 

「うん、悪くない反応だ」

 

感心するように笑みを浮かべる曹操。

 

「一々評価してんじゃねぇ!」

 

落下しながら繰り広げられる剣戟の応酬!

 

俺は曹操の槍をアスカロンで受けながら拳や蹴りを放ち、曹操は俺の攻撃を受け流しながら槍を振るってくる!

 

しかも、思ってた通りでこの槍は伸縮自在らしく、俺が懐に入って拳を繰り出すと槍を縮めて応戦してきやがった!

 

地面に着地する前に聖槍を蹴って、曹操との距離を置く。

 

深呼吸して態勢を整え、一つの疑問をぶつけた。

 

「おまえは他のやつらみたいに禁手にならないのか?」

 

ジークフリートやジャンヌ、ヘラクレス。

それに京都駅の地下ホームで戦った奴らも禁手で挑んできたから、てっきり曹操も禁手してくると思ってたんだけど・・・・・。

 

ってか、禁手って珍しい現象じゃなかったか?

次々に禁手してくるから、かなり安っぽく見える。

まるで禁手のバーゲンセールじゃねぇか。

 

俺の問いに曹操が答える。

 

「当初はするつもりだったんだけどね。これまでの攻防で君が神器を使えないことが分かったし・・・・・・どうしたものか考えているんだよ」

 

やっぱり気づかれるよな。

籠手は防具としてしか使ってないし。

 

「君が禁手を使っていたなら、俺も使っていただろう。だけど、神器の能力すら使えない君ではね」

 

「・・・・・・舐めたことを言ってくれるぜ。バカにしてるのか?」

 

俺がそう言うと曹操は苦笑しながら首を横に振った。

 

「感心してるのさ。神器を使わずにここまでの戦闘をこなすのだから」

 

「それは禁手を使わない理由にはならねぇよ」

 

「俺が禁手を使えば今の君ではすぐに終わってしまう。早く終わらせるとは言ったが、それではあまりにつまらない」

 

曹操は槍の切っ先を俺に向けた。

 

「もう少しくらいはこの戦闘を楽しんでも良いだろう?」

 

この野郎・・・・・・。

 

アスカロンを地面に突き刺し、拳を脇に構える。

俺の行為に曹操は怪訝な表情をしながらも警戒を強めた。

 

「その余裕・・・・・・・・今すぐ無くしてやるよ」

 

ぐぐっと右腕に力を籠め――――――曹操から距離がある状態で高速の拳を放った。

 

 

ブォオオオオオオオオオオオッ

 

 

巻き起こる突風!

それは曹操を真正面から遥か後方へと吹き飛ばした!

 

曹操は聖槍と腕をクロスさせて直撃は避けたみたいだが、表情は苦悶と驚愕に満ちていた。

 

「離れた状態で・・・・・・・遠当てかっ!」

 

正解だ。

 

振り抜いた拳で衝撃を生み出し、相手を打撃する技。

不可視の攻撃だから直撃までのタイミングを測ることが出来ない。

 

まぁ、実際に拳を当てるよりは威力が低いんだけどね。

それでも十分な威力はある。

 

「もう一発っ!」

 

俺は曹操目掛けて、更に遠当てを繰り出す!

再び生じた突風が曹操を襲った!

 

「ぐっ!」

 

曹操は聖槍を地面に突き刺し、聖なるオーラのシェルターみたいなものを作り出し、俺の遠当てに耐える。

 

あの槍、あんなことも出来るのか。

随分と多機能だな。

 

だけど、曹操の体勢は十分に崩せた。

 

仕止めるなら今だ。

 

一気に決める!

 

俺は脳に錬環勁気功を使用。

それと同時に視界から色彩が消えた。

 

地面を蹴って瞬間的に曹操との距離を詰める!

拳を振り上げ、そこに気を纏わせた!

 

そして、それを曹操へと繰り出す。

 

 

しかし――――――

 

 

俺の腹部に嫌な感触が伝わる。

腹を見れば見れば、曹操の槍が深々と刺さっていた。

 

「ゴフッ」

 

腹から込み上げてきた大量の血が口から吐き出された。

 

 

・・・・・・・な、なんだとっ!?

 

 

動きを読まれた?

 

いや、今の俺は・・・・・・・・

 

「今回、一番驚かされたよ。まさか、君もそこに入れるとはね」

 

 

ズルリッ

 

 

曹操が槍を腹からゆっくり抜いていく。

 

そう言う曹操の瞳は―――――俺と同じ世界を見ていた。

 

 

 

 

「おまえも・・・・・・領域(ゾーン)に入れるってのかよ・・・・・!?」

 

腹を抑えながら問う俺。

 

ヤバい・・・・・・聖なる力の影響か意識が飛びそうになる。

 

俺は地面を蹴って曹操から距離を置くと、懐からフェニックスの涙を取り出し振りかける。

傷は煙をあげながら塞がっていく。

 

今のが聖なるオーラで消滅する感覚か・・・・・・。

話には聞いていたが、全身から力が抜けて自分が無になっていくような感じだった。

 

俺の問いに曹操は顎に手をやる。

 

「ゾーン・・・・・? ああ、君はあの状態のことをそう呼んでいるのか。俺は特に名付けはしなかったけど、君がそう呼ぶのなら統一しようか?」

 

想定外だ・・・・・・!

まさか、曹操まで領域に入ることが出来るなんて・・・・・!

 

「・・・・・・どうやってそれを会得した?」

 

「どうやって、か。これと言ったことはしてないんだが・・・・・修行で得た力としか言いようがない。君を知った時に今のままでは色々マズいと思ったのでね。俺も久しぶりにハードなメニューをこなしたものさ。そして至った。極限にまで集中を高めたこの世界に」

 

そうか・・・・・俺は脳に直接、錬環勁気功を使用することで強制的に領域へと突入する。

だけど、それは方法の一つであって別の手がないわけじゃない。

こいつは俺とは違う形で領域に突入出来るようになったってことか。

 

師も無しにそこへ至れたってことはこいつも天才の部類かよ・・・・・・。

 

俺の相手はこういうやつが多すぎるぜ。

 

………フェニックスの涙で傷は塞がったけど、結構なダメージを受けちまった。

 

俺は嫌な汗を流しながらアスカロンを構える。

まだ聖槍の影響が体の内側に残ってるのか・・・・・・。

 

こいつは長引かせるのはマズそうだ。

 

「あまり恐れている様子はないな。聖槍の恐ろしさを体験しただろう? 君がどれだけ強くても悪魔である以上は聖なる力が弱点なのは変わらない。いや、ドラゴンでもあるから龍殺しも弱点ではあるか・・・・・。どちらにしても、この聖槍は君にとっては最悪なのは間違いない」

 

「あれくらいでビビるようじゃ、俺はとっくの昔に死んでるよ。俺をビビらせたかったらもっとヤバい奴を連れてこい」

 

「なるほど・・・・・。それならば、龍喰者を前にすれば君は恐れるかな? まぁ、それは後にしよう。あれを君だけに使うわけにはいかない」

 

龍喰者、ね。

 

さっきもその名前を聞いたけど、そんなにヤバいやつなのか?

ドライグですら知らない存在みたいだし・・・・。

 

この戦いが終わったらアザゼル先生にでも聞いてみるか。

あの人なら何か知ってるかもしれないしな。

 

それよりも曹操には訊いておきたいことがある。

 

「昼間にアザゼル先生が訊いてたけどさ、俺ももう一度訊いておきたい。おまえ達英雄派はなぜこんなことをする? こんな大がかりな仕掛けまでして、だ」

 

「またその質問か。昼間にも言った通り、俺達は『人間』としてどこまでやれるのか、それが知りたいのさ。それに」

 

「それに?」

 

俺が訊き返すと曹操は肩に槍をトントンとした。

 

「悪魔や堕天使、ドラゴン、妖怪は人間の敵だ。その人間の敵が協力したら怖いだろう? 人間が魔王やドラゴンを倒すのはごく自然なことだ。そして、それを成すのは英雄の力を持つ俺達だ」

 

英雄の力・・・・・。

こいつら英雄派は英雄の魂を引き継ぎ、強力な神器や魔剣を所持している。

 

そのことを言っているのか?

 

「異形の存在を倒す、それが英雄だと?」

 

「人間の極みであり、強大な異形を倒す存在。それが英雄と呼ばれる者達だろう?」

 

「そうかよ………」

 

俺は奥歯をぐっと噛み締める。

 

同時に俺の体を赤いオーラを覆った。

 

間違ってる………間違ってるぜ………。

 

そんなものは英雄なんかじゃない。

 

「おまえ達が言う英雄がそう言う存在だというのなら………俺はその考えを真正面から否定する」

 

錬環勁気功の奥義を発動。

周囲に漂う気を自身に取り込み、体内で循環と圧縮を高速に繰り返していく。

 

これを使えば一気に消耗してしまうけど、やるしかない。

神器が使えない状態の俺が目の前の男を倒すにはこれしかないだろう。

 

俺の体を覆っていた赤いオーラの外側が黄金へと変わり、眩い輝きを放つ。

 

「曹操、覚悟しやがれ。おまえ達の間違ったその考え――――――今から粉々に打ち砕く!」

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

僕とジークフリートは剣を交えながら二条城を駆け巡り、今では門を少し出たところで戦闘を行っていた。

 

「七剣よ!」

 

僕は宙に浮かぶ七つの聖魔剣を操り、ジークフリートに攻撃を仕掛ける。

 

この剣はその特性上、相手の死角をついた攻撃が可能になる。

正面、真横だけでなく背後からも相手を切り刻む。

 

並の相手なら対処できずにすぐに片がついているだろう。

 

「まだまだ!」

 

ジークフリートは六本の腕で握った魔剣で僕の七剣を弾いていく。

背後からの攻撃もそれが迫ってくるのが分かっているかのように。

 

振り下ろされたグラムを聖魔剣を交差して受け止める。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

一撃一撃が重いっ・・・・・・・!

 

流石は魔帝剣グラムの使い手。

 

昼間の戦闘で分かっていたけど――――強い。

 

彼が禁手になってからは五本の魔剣と光の剣を駆使して僕の七剣を容易に防いでくる。

 

魔剣が強力なのもそうだけど、それを扱う彼の技量が禁手になってから顕著に現れていた。

 

僕は両の聖魔剣でグラムを弾いて大きく後ろに跳び、これまでの攻防で刃こぼれしていた聖魔剣を放棄。

 

息を大きく吐いて新たに聖魔剣を創造する。

 

ジークフリートが笑みを浮かべて言う。

 

「いいね。禁手を使った僕とここまで張り合えるなんて、想像以上だ」

 

「このくらいで満足してもらっては困るね。僕だってまだやれるさ」

 

手を前に突きだし、七剣を僕の前に整列させる。

 

「七剣!」

 

その命令に従い、七剣は弧を描くようにしてジークフリートを襲う。

 

「またこれか! 芸がないことだ!」

 

ジークフリートはグラムの刀身にオーラを纏わせて、一閃。

 

 

バリィィィィィン

 

 

ガラスが砕けるような儚い音と共に七剣の全てが粉々になった。

 

「その手はもう通じない。僕を倒すならもっと他の手を考えるべきだ」

 

グラムの切っ先を僕に向けてジークフリートは言う。

 

・・・・・・まぁ、僕もこのままではいけないと思っているよ。

 

これ以上、七剣を操作しても彼には通じない。

そんなことは分かっている。

 

だからこそ、僕は七剣をわざと砕かせた(・・・・・・・)

 

僕は天に手を掲げる。

 

すると―――――先程砕かれた七剣の破片全てが宙に浮かんだ。

 

剣の破片が空へと昇る。

 

ジークフリートは目を見開く。

 

「これは・・・・・・っ」

 

「僕が次の手を考えていないと思ったかい?」

 

これは七剣の奥の手。

 

隠し技だ。

 

刃の雨(エッジ・レイン)ッ!!」

 

僕が手を振り下ろすと同時に全ての刃がジークフリートへと降り注ぐ!

 

これだけ細分化された刃だ。

普通に剣を振るう程度では防げない。

 

「くっ・・・・・こんなもの・・・・・・・っ!」

 

ジークフリートは咄嗟の判断で後ろに飛ぼうとする。

 

だけど、それは無駄な行為だ。

 

僕は聖魔剣を地面に突き刺し、叫んだ!

 

「咲け、聖魔剣!」

 

ジークフリートを囲むように無数の聖魔剣が地面から生えた!

全ての聖魔剣の切っ先がジークフリートに向けられている!

 

上に飛ぼうにも刃の雨が迫っていて、それは出来ない!

 

これで逃げ場はない!

 

完全に捉えた!

 

刃の雨がジークフリートを完全に覆った。

 

 

 

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・くっ・・・・・」

 

とてつもない疲労感が僕を襲い、その場に膝をついてしまった。

 

流石に力を使いすぎた。

 

まだ修行中である七剣の操作、それに加えて大量の聖魔剣の創造。

一度にこれだけの力を使ったのは初めてだからね。

少し加減を間違えたよ。

 

まぁ、相手も相当な実力者だから楽に勝てるなんてことは思っていなかったけど・・・・・・・。

 

砂塵が周囲に漂っていてジークフリートの姿が確認出来ない。

倒せたのかそうではないのか・・・・・・。

 

ただ、手応えはあった。

大きなダメージは与えたはずだけど・・・・・・。

 

暫くすると砂塵が止み、視界が開けてくる。

 

そして、僕の目に映ったのは―――――全身から血を流し膝をついているジークフリートの姿。

倒せてはいなかったみたいだけど、かなりのダメージは与えられたようだ。

至るところに七剣の破片が突き刺さっていて何とも痛々しい光景だ。

 

・・・・・・やったのは僕なんだけどね。

 

とにかく、ジークフリートに大きな傷を負わせた。

僕も疲労は大きいけど、戦えないほどじゃない。

あと一撃をジークフリートに繰り出せば勝負はつく。

 

僕は聖魔剣を杖に立ち上がり、構える。

 

すると―――――

 

「クッ・・・・・ハハハハハハッ!」

 

ジークフリートは狂ったような笑い声をあげた。

 

なんだ?

何をそんなに笑うことがある?

 

自分の生死がかかっているこの状況で。

 

一頻り笑うとジークフリートは懐に手をやった。

 

取り出したのは一つの小瓶。

 

それを見て僕は目を見開いた。

 

それは本来テロリストが持っていいようなものじゃない。

 

なぜ・・・・・・

 

「なぜ、君がフェニックスの涙を持っている!?」

 

そう、彼が取り出したのはフェニックスの涙!

 

あれは各地で起こる禍の団のテロ行為のせいで、各勢力の重要拠点への支給もままならないと聞いている。

 

それをなぜ、彼が持っているんだ!?

 

問い詰める僕にジークフリートは笑んだ。

 

「裏のルートで手に入れたのさ。ルートを確保し、金さえ払えば手にいれることは可能だ。もっとも、フェニックス家の者は僕達に回っているなんて露ほども思っていないだろうけどね」

 

ジークフリートは小瓶の蓋を開け、中の液体を自分の体に振りかけた。

傷口が煙をたてながら塞がっていく。

 

なんということだ・・・・・・。

まさか、こんな・・・・・・っ!

 

フェニックスの涙があればテロ行為で苦しむ人々を助けられるかもしれないのに!

 

「いい殺気だ。君から向けられる重圧が増したね。それほど僕達がこれを持っていることが許せないかい?」

 

「そうだね。流石に許せそうにないかな」

 

「そう。それでは僕を倒すといい。倒せればの話だけどね」

 

そう言ってジークフリートは再度、懐を探る。

 

取り出したのは拳銃だった。

 

いや、先端に針がついているから・・・・・・ピストル型の注射器なのだろうか?

 

「これを使うのは控えたかったんだけどね。ここで君に負けてヘラクレス達に笑われるのは面白くないんだ」

 

ジークフリートは針先を己の首筋に突き立てようとする格好になったときだった。

 

 

ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

 

僕達の近くにあった、二条城の門が爆ぜた!

 

なんだ!?

 

何があった!?

 

ジークフリートもこれには驚き、注射器を下ろし門の方を見る。

 

 

「ガハッ・・・・!」

 

 

崩壊した門の瓦礫から出てきたのは膝をつき、吐血する曹操。

 

 

タンッ

 

 

その足音と共に降りてきたのは全身から赤と黄金のオーラを滾らせたイッセー君。

 

あれはロスウォードの攻撃からオーディリアを守るときに使っていたものと同じだ。

 

 

曹操は制服の袖で口許の血を拭いながら笑みを浮かべる。

 

「急激にスピードが上がったものだから避け損ねてしまったよ。君はどこまでも俺を楽しませてくれるな、兵藤一誠」

 

「こうなったら時間が無いんでな。さっさとケリをつけさせてもらうぜ、曹操!」

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 


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