ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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13話 新手

ドゴォォォォォォォンッ!!

 

 

俺とゼノヴィアが放った斬戟は二条城の本丸を容易く吹き飛ばした。

本丸があった場所には煤だらけになった荒れ地のみ。

 

 

「ふー」

 

俺は息を吐きながら直ぐにイグニスをしまう。

これ以上持ってたら腕が焼かれかねない。

 

ゼノヴィアもデュランダルを肩に担いで額の汗を手で拭っていた。

デュランダルは元の鞘状態に戻っている。

 

「ゼノヴィア、ナイスアタック」

 

「イッセーも流石の威力だ」

 

なんてことを言いながら俺達はハイタッチ。

 

 

すると、匙が興奮気味に叫んだ。

 

「おまえら、早すぎだろ! いきなりか! いきなり決着をつけにいったのか!?」

 

「おう。早く終わらせるに越したことはないからな」

 

「だからって飛ばしすぎだろ!? 完全にオーバーキルめいた攻撃だったぞ今のは!」

 

「何言ってんだ。テロリストなんぞに加減するわけねぇだろ」

 

「イッセーの言う通りだ。私達の修学旅行を邪魔したことは万死に値する」

 

と、ゼノヴィアも俺に続く。

 

ゼノヴィアは全力で修学旅行を楽しんでたから、それを邪魔されて相当頭にきてたんだろうな。

少しスッキリしたような顔してる。

 

ゼノヴィアは新デュランダルをコツコツ叩く。

 

「うん。錬金術師によってエクスカリバーと同化したデュランダルは中々に良いものだ」

 

っ!

 

エクスカリバーと同化!?

 

俺が驚いているとイリナが解説してくれた。

 

「簡単に言うとね、デュランダルの刀身に教会が保有していたエクスカリバーを鞘の形で被せたらしいのよ。エクスカリバーの力でデュランダルの攻撃的なオーラを制御。更には覆っているエクスカリバーとデュランダルを同時に高めることで二つの聖剣は相乗効果をもたらして、破壊力を上げるのよ」

 

「そういや、ディオドラの時にデュランダルとアスカロンが共鳴してたっけ?」

 

「そうそう、それも新しいデュランダルが生まれた切っ掛けみたいなの」

 

へぇ、デュランダルとエクスカリバーの合体聖剣か。

 

これまた凄いものが出てきたもんだな。

 

ゼノヴィアは新デュランダルをかざしながら呟く。

 

「エクス・デュランダルと言ったところか」

 

エクス・デュランダル、か。

 

まぁ、無難と言うか・・・・・・そのまんまだな。

 

 

そういや、教会が保有してたエクスカリバーって六本だったよな?

 

最後の一本はヴァーリチームのアーサーが所有してたっけ。

 

もし、このエクス・デュランダルに最後のエクスカリバーが加わればどうなるんだろうな?

少し見てみたい気もする。

 

 

「いやー危ない危ない♪ 開幕早々やってくれる」

 

声がする方を見てみると曹操が楽しそうな笑みを浮かべて、槍で肩をトントンとやっていた。

他の英雄派メンバーも何ともなかったように立っていた。

 

今のを受けて無傷・・・・・・・なわけないか。

イグニスの一撃を受けて無傷ってのはないだろう。

 

 

あいつらの周囲に漂ってる霧。

 

あれで防いだのか?

 

「ゲオルクが作った空間に移動しなければやられていたかもしれないな。全く、君という男は俺を楽しませてくれるよ、兵藤一誠」

 

 

空間に移動?

 

そうか・・・・・・絶霧の能力なら簡単にできるか。

 

イグニスの一撃を受ける前に別空間に飛んで、今のをやり過ごした、と。

それなら無傷なのも納得できるな。

 

 

ジークフリートが興奮したように獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ハハッ、流石は噂に名高い赤龍帝の一撃か。一瞬、死を意識したよ。曹操、やっぱり彼を譲ってくれないかな?」

 

「それは出来ないな。彼と戦うのは俺の予定だろう?」

 

うわー、なんか俺の取り合いし始めたぞ。

 

マジでやめてくんない!?

 

キモい!

 

 

「私も攻撃したんだが・・・・・・。まぁ、イッセーにはまだまだ及ばないから仕方がないのかもしれんが・・・・・」

 

ゼノヴィアがため息をついてるよ。

 

元気出せ、ゼノヴィア!

 

仕方がねぇよ!

俺が言うのもあれだけど、イグニスってチートだもん!

宿ってる人が半端じゃないんだって!

 

『えっへん。私って凄いでしょう?』

 

可愛い言い方してるけど、自慢しなくていいから!

 

あんたが凄い人なのは十分承知してるって!

 

『フフッ♪ 脱いでも凄いのよ?』

 

何の話だーーー!

 

今、全く関係ないよね!?

 

『でも、見たいのでしょう?』

 

 

 

・・・・・・・・・見たいです。

 

 

 

『相棒・・・・・・おまえ・・・・・・』

 

何も言うな、ドライグ。

 

これは男の性だ。

 

 

「さて、そろそろ実験を始めるとしよう」

 

曹操が槍の石突きで地面を叩く。

 

すると、八坂さんの体が輝き出した!

 

何だ!?

 

「九尾の狐に京都に流れる力を注ぎ、グレートレッドを呼び出す準備に取りかかる。ゲオルク!」

 

「了解」

 

曹操の言葉に眼鏡をかけた魔法使い風の青年、ゲオルクが手を突き出す。

 

ゲオルクの周囲に各種様々な紋様の魔法陣が縦横無尽に出現した!

魔法陣に描かれた数字やら魔術文字が高速で動き回る!

 

「・・・・北欧式、悪魔式、堕天使式、黒魔術、白魔術、精霊魔術・・・・・他にも・・・・・。彼はかなりの使い手のようですね」

 

ロスヴァイセさんが目を細目ながらそう呟いた。

 

確か、絶霧の弱点は所有者だと聞いていたが・・・・・・。

どうやら所有者も相当な実力者らしい。

 

これまた厄介なことで。

 

 

八坂さんの足下に巨大な魔法陣が展開する。

 

あの魔法陣、どこかで・・・・・・・。

 

 

俺が記憶を探っているとドライグが言う。

 

龍門(ドラゴン・ゲート)。以前、ミドガルズオルムの意識を呼び寄せた魔法陣に似ているな』

 

言われてみれば確かに。

所々は違うけど、あの時の魔法陣に似ている。

 

 

オォォォオオオォォォォンッ!!!

 

 

八坂さんが雄叫びをあげる!

双眸が大きく見開き、全身の金毛が逆立っている!

 

明らかに異常な状態だ!

 

 

ゲオルクが言う。

 

「グレートレッドを呼ぶ魔法陣と贄の配置は良好。あとはグレートレッドがこの都市のパワーに惹かれるかどうかだ。ここには天龍と龍王が一匹ずついるのは案外幸いなのかもしれない。曹操、悪いが自分はここを離れられない。魔法陣の制御をしなくてはならないんだが、これがまたキツくてねぇ」

 

ゲオルクの言葉に曹操は手を振って了承する。

 

「了解了解。さーて、どうしたものか。赤龍帝は俺がやるとして・・・・・・。ジークは聖魔剣だろう?」

 

「そうだね。前回の続きを楽しむとするよ」

 

「そうなると――――ジャンヌ、ヘラクレス」

 

「はいはい」

 

「おう!」

 

曹操の呼び声に細い刀身の剣を持った金髪のお姉さんと、二メートルはあろうかという巨体の男が前に出た。

 

「彼らは英雄ジャンヌ・ダルクとヘラクレスの意思―――魂を引き継いだ者達だ。おまえ達はどれとやる?」

 

曹操の言葉にジャンヌと呼ばれたお姉さんとヘラクレスと呼ばれた男が笑みを浮かべた。

 

その時だった。

 

 

「赤龍帝は私が貰う」

 

突如聞こえてきた、第三者の声。

 

これには英雄派のやつらも予想外だったのか声がした方に視線を向けた。

 

「まさか君がここに来るとはね・・・・・」

 

苦笑を浮かべる曹操。

 

 

声の主がいたのは先程まで本丸があった場所。

 

そこに立っていたのは長く淡い紫色の髪を後ろで束ねた女性だった。

かなりの美人だが、冷たい表情をしている。

 

ゼノヴィアが着ているようなボディーラインが浮き彫りになる戦闘服に袖無しのコートを羽織って、腰には二本の剣。

 

そして、手には二本の槍を握っていた。

 

二本の槍・・・・・・二槍流ってのは珍しいな。

少なくとも俺は戦ったことがない。

 

 

あの人、英雄派の一員か?

そのわりには雰囲気が・・・・・・。

 

特徴の制服も着てないし・・・・・・・。

 

 

ジャンヌが女性に言う。

 

「どういうつもりかしら? 普段は作戦に全く参加しないあなたがここに来るなんて」

 

ヘラクレスもそれに続く。

 

「それに赤龍帝を貰うだぁ? ふざけたことぬかしてるとおまえからやっちまうぞ!」

 

二人とも明らかに不機嫌な声音だ。

 

 

すると、女性は二人を睨み――――

 

「黙れ。――――殺されたいか?」

 

 

その瞬間、僅かに悪寒が走った。

 

 

なんつー殺気だよ・・・・・・。

 

直接殺気をぶつけられたヘラクレスとジャンヌは黙りこんでしまったぞ。

 

本当に英雄派なのか?

話からするに、曹操達とはあまり仲はよろしくないみたいなんだけど・・・・・。

 

 

怪訝に思う俺達に曹操は嘆息しながら言う。

 

「彼女はディルムッド。ケルトの英雄、ディルムッド・オディナの魂を引き継いだ者・・・・・・・なんだけどね」

 

曹操の言葉に女性――――ディルムッドは瞑目する。

 

「私はそんなものはどうでもいい。ただ強い者と戦うことが出来ればそれで」

 

「なんかヴァーリみたいな性格してんな。あんたも英雄派ってことでいいのか?」

 

俺の問いには曹操が答えた。

 

「一応の所属はね。ただ、彼女は活動に参加してくれないものでね・・・・・・。ついたあだ名が『英雄派のタダメシぐらい』」

 

その言葉に英雄派の面々が嘆息していた。

 

 

うん、とりあえず変な人が出てきたって認識で良いみたいだ。

 

何その二つ名!?

ただの残念な人じゃん!

 

本日の残念な人パート2かよ!

 

「私のことは言わないでくださいっ。反省してますからっ」

 

おおっと、ロスヴァイセさんが頬を染めてプンスカしてるよ。

 

こうしてると可愛くて美人な人なんだけどね。

 

って、心を読まれた・・・・・・。

 

 

戦場に微妙な空気が流れる。

 

それを払拭するように曹操が咳払いし、ディルムッドに尋ねた。

 

「それで、赤龍帝を貰うというのはどういう了見だ?」

 

「言っただろう? 私は強い者と戦うことを目的としている。赤龍帝とはいずれ刃を交えたいと思っていた」

 

「それは認められないな。あの男は俺の獲物だ」

 

「いや、私の獲物だ」

 

 

ズッ・・・・・・

 

 

二人が睨み合い、殺気がぶつかり合う。

俺達にも英雄派にも緊張が走った。

 

おいおい・・・・・ここにきて仲間割れか?

いや、仲間・・・・・・じゃないのかな?

 

英雄派のメンバーはディルムッドのことを嫌っているみたいだし・・・・・・。

 

 

睨み合うこと数秒。

 

曹操が再度口を開いた。

 

「では問おう。君が準備に準備を重ね、ようやく戦えるとなった相手が眼前にいるとする。その相手をいきなり横合いから奪われた。君はどうするかな?」

 

「まずはそいつを殺すな」

 

「だろう? 今の俺がまさにそれだ。俺はここに来るまでに色々と準備を整えてから来ている。ここで君に譲る訳にはいかないな」

 

その言葉にしばし考え込むディルムッド。

 

そして、

 

「チッ・・・・・。分かった今日はおまえに譲ろう」

 

「では改めて。ジャンヌ、ヘラクレス。おまえ達は誰とやる?」

 

「私は天使ちゃんにするわ」

 

「じゃあ、俺は銀髪の姉ちゃんだな」

 

「ということらしい。ディルムッド、君はデュランダル使いのゼノヴィアとやるといい」

 

「・・・・・・良いだろう」

 

少々、不服そうな表情で頷くディルムッド。

 

出来れば帰ってほしいんだけど・・・・・・。

向こうは槍の切っ先をゼノヴィアに向けているしな。

 

俺が曹操。

 

木場がジークフリート。

 

イリナがジャンヌ。

 

ロスヴァイセさんがヘラクレス。

 

そして、ゼノヴィアがディルムッド。

 

「ゼノヴィア、気を付けろよ? あのディルムッドって人、かなりの使い手だぞ」

 

「そのようだ。だが、イッセーを狙っていると聞かされて黙っているわけにもいかないな」

 

ゼノヴィアはエクス・デュランダルの鞘の一部に手をかける。

すると、カシャッと仕掛けが動いて柄のようなものが現れた。

 

それを引き抜くと―――――それは剣だった。

 

あのデュランダル分離出来るのか!

 

「相手が二槍流なら、こちらは二刀流だ。それにこっちの方が私に合っている」

 

ゼノヴィアが刀身に聖なるオーラを纏わせながら言う。

 

頼んだぜ、ゼノヴィア。

 

「匙、おまえは八坂さんの動きを封じてくれ。美羽にはあの魔法陣を破壊してほしい。出来るだけ八坂さんに影響を与えないようにしてくれ」

 

「俺は怪物対決かよ。・・・・・・任せとけ」

 

「あの魔法陣を封じるには・・・・・・やっぱり流れ込んでる都市の力を塞がないとダメだよね。そうなると・・・・・」

 

美羽は既に何やら考えを張り巡らせているようだ。

 

八坂さんのことは任せたぜ、二人とも!

 

匙の体が黒い炎に大きく包まれた。

次第に炎は広がり、巨大に膨れ上がっていく!

 

龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)ッ!」

 

炎がいっそう盛り上がり、黒炎が形をなしていく!

それは体の細長い東洋タイプのドラゴンへと変貌した!

 

『ジャァァアアアアアアッ!!!』

 

巨大な漆黒のドラゴンが吼える。

 

ロキの時に見せたあの姿。

以前よりも安定しているな。

 

ヴリトラの黒炎は相手を縛り力を奪う。

なんとか八坂さんを抑え込んでもらいたい。

 

 

俺はアーシアに言う。

 

「アーシアは九重を頼む。それから回復もお願いするよ」

 

「はい! 皆さんのケガは私が治します!」

 

「九重もアーシアを頼むな」

 

「任せろ! じゃが―――」

 

「わかってる。おまえのお母さんは俺達が助ける。約束だ!」

 

任せろと親指を立てて九重に応じた。

 

俺は曹操に拳を向けて叫ぶ。

 

「さっさと終わらせるぜ、曹操。おまえのふざけた考えは今ここで打ち砕く!」

 

放たれた激しい殺気が空気を揺らして、砂利を弾く。

隅に置いてあった岩にヒビが入る音が聞こえてきた。

 

曹操は口の端を楽しそうに吊り上げた。

 

「いいね、この殺気。ここまでくると心地よくもある」

 

「その余裕ぶった口振りも叩き直してやるよ」

 

「余裕? それは違うな。俺は心から楽しんでいるのさ」

 

「そうかい。だったら勝手に楽しんでやがれ」

 

そう言って籠手からアスカロンを引き抜く。

 

 

 

一瞬の静寂。

 

 

 

そして――――

 

 

ガギィィィィィィィイイインッ!!!

 

 

互いの武器が火花を散らせた。

 

 

 

 




ディルムッドの容姿はfate grand order のスカサハ師匠をモデルにしました。

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