ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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12話 突入、二条城!!

ガラッ ガララララッ

 

瓦礫が崩れる音が響き渡る。

 

「イタタタタ・・・・九重、大丈夫か?」

 

「私はイッセーが守ってくれたから大丈夫じゃが・・・・・・お主も無茶をするの」

 

 

周囲を見渡せば、崩壊し瓦礫の山と化した京都駅の地下ホーム。

天井が崩れ落ち、コンクリートの塊があちこちに転がっている。

 

 

英雄派の男達は・・・・・・アグニに完全に呑まれたな。

 

少し離れたところで全身から血を噴き出して倒れている。

瀕死の状態だ。

 

ギリギリ生きてるのは影の鎧があったからだな。

 

『籠手の力無しの状態で放ってしまったが、体はどうだ?』

 

少し疲れたけど問題ないよ。

 

後に曹操達が控えてるんだ。

こんなところで無駄に力を消費していられない。

 

だから、影使いが吸収できる許容をギリギリ越える威力のアグニを撃った。

ライザーの時はフェニックスの再生能力を越えるために全力――――魔王クラスの一撃を放ったけど、今回はそこまでの威力は必要なかったしな。

 

『なるほど。よくもまぁ、そこまで器用なことが出来たものだ。だが、奴の許容レベルはどうやって測った?』

 

 

ん~、勘・・・・・というか、経験測ってやつ?

 

 

『は?』

 

 

いや、戦っている間にさ、何となく相手の実力を測ってたんだよね。

 

気弾の威力を調整して、どのレベルで返ってくる気弾に変化が出るか見てたんだ。

そしたら、かなり威力高めのやつで僅かに気弾の威力にムラが出来ていたから、そこから上限値を計算したというか・・・・・・。

 

まぁ、九重がいたから無茶は出来なかったけど、明かすとそんな感じだ。

 

予測が当たってよかったぜ。

 

 

ドライグは感心しながら言う。

 

『昔の相棒では考えられないやり方だな。モーリス辺りならそれくらいはやりそうだが・・・・・。あのクソジジイも容易にこなすだろうな』

 

拳神の師匠はともかく、おっさんの方は異常だと思うけどな。

 

 

とにかく、そういうわけで俺は平気だ。

 

 

ただ・・・・・もう少し範囲を絞るべきだったかな?

 

この瓦礫の山を見ているとそう思えてくるよ。

 

 

「ここが本物の京都じゃなくて良かったのじゃ。そうじゃなかったら、大騒ぎになっとるの」

 

 

うっ・・・・・ごもっともな意見で。

 

ま、まぁ、九重はケガ一つ無いし、相手も倒せた。

結界オーライってことで良しとしよう。

 

「行くぜ、九重」

 

「うむ!」

 

俺は九重を抱き抱え、悪魔の翼を広げて二条城を目指した。

 

 

 

 

 

 

地図を見ながら、空を飛んでいると見えてきたのは二条城と門の前にいるオフェンス組のメンバー。

 

全員無事に揃ってるな。

 

「スマン、遅れた」

 

俺が手でゴメンとすると木場が笑顔で迎えてくれた。

 

「無事で何よりだよ。やはり、そちらにも刺客が?」

 

「まぁな。いきなり禁手使いが三人も来やがった。今の俺の状態は知ってるだろ? 少し苦戦してさ。・・・・・やはりってことは皆のところにも?」

 

「うん。僕達も禁手使いの襲撃を受けたよ」

 

「それで全員が無事ってことは倒せたみたいだな。流石だよ」

 

と、互いの無事を確認していると――――

 

 

「おげぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」

 

近くの電柱で吐いてるヴァルキリーの鎧を着たロスヴァイセさんの姿が・・・・・・。

 

匙が「大丈夫っすか?」と背中をさすってる。

 

「え、えーと、あれは刺客にやられたのか・・・・? 神器の能力とか?」

 

そう尋ねると木場は苦笑しながら否定した。

 

「実は昼間に飲んだ影響で・・・・・動いたら気持ち悪くなったみたいなんだ」

 

 

ビチャビチャビチャ・・・・・・

 

 

聞こえてくるゲロの音。

 

な、なんか、メチャクチャ吐いてないか・・・・・?

 

「・・・・・酒とは恐ろしいものじゃな」

 

「九重、見るな。あれは見ちゃいけないものだ」

 

俺は両手で九重の目を遮る。

 

あんなシーンは子供に見せちゃいけません!

 

 

はぁ・・・・・・

 

やべーよ、この後も戦闘が続くのに別の意味で不安になってきたよ・・・・・。

 

 

ゲロ吐きヴァルキリー・・・・・・・嫌な二つ名が浮かんじゃったよ。

 

「お兄ちゃん、ケガはない?」

 

「服は何ヵ所か破けてるけどな。美羽はどうだ?」

 

「ボクも大丈夫だよ。匙君もサポートしてくれたしね」

 

「そっか」

 

ま、美羽なら大抵の相手は退けられるだろうし、匙のヴリトラの力も加われば何も問題ないとは踏んでたからな。

実力的にこっちは大して心配はしてなかったよ。

 

匙も日頃の修行の成果でヴリトラの力を大分使いこなせるようになってきたみたいだし。

 

 

一番心配してたのは・・・・・・・

 

「アーシアも無事みたいだな」

 

「はい。ゼノヴィアさんとイリナさんが守ってくれましたから」

 

「アーシアを守るのは任せてもらおう」

 

「そうそう」

 

戦闘服姿のゼノヴィアとイリナもそう言ってくれる。

 

相手も回復役のアーシアを狙ってくると思ってたから心配してたんだけど、杞憂に終わってくれたようだな。

 

 

見ればゼノヴィアに握られているデュランダルは装飾された鞘に入っている。

 

「それが新しいデュランダル?」

 

「そうだ。直前に私の元に返ってきたんだ」

 

デュランダル特有の攻撃的なオーラが漏れていない。

 

あの鞘で抑え込んでいるのか?

 

 

「げぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」

 

 

うわ、まだ吐いてるよロスヴァイセさん・・・・・・。

 

マジで大丈夫なのか?

帰ってもらおうか?

 

いや、マジで。

 

あの調子じゃ戦闘中にも吐くぞ・・・・・・。

 

それが相手の顔面とかにぶちまけられたら・・・・・・テロリストとは言え、少し申し訳なく思ってしまう。

 

 

俺はロスヴァイセさん――――ゲロ吐きヴァルキリーを指差しながら美羽に言う。

 

「美羽、何とかできないか?」

 

「う、うん。一時的なもので良いなら・・・・・」

 

「もうそれでいいよ。この戦闘を乗り切れたらそれで」

 

半分諦めた感じで言う俺。

 

美羽は何とも言えない表情でロスヴァイセさんに応急処置の魔法をかけるのだった。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

 

 

巨大な門が鈍い音を立てながら開いていく。

 

開き放たれた門を見て木場が苦笑する。

 

「どうやら僕達を待ってるみたいだね」

 

「らしいな。凝った演出をしてくれるぜ」

 

俺は息を吐いて、皆の方を見る。

皆もそれに頷きを返してくれた。

 

「それじゃあ、ご要望通りに出向いてやるか」

 

それからロスヴァイセさんの吐き気が治まるのを待った後、俺達は二条城の敷地へと踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「僕が倒した刺客は本丸御殿で曹操が待っていると倒れる間際に言っていたよ」

 

木場が走りながらそう言う。

 

「本丸御殿ね。それを聞くと向こうが魔王で俺達が勇者のパーティーみたいに感じるな。ほら、RPGとかでよくある」

 

主人公のパーティーが魔王の城に乗り込むあのパターンにそっくりだよね。

 

「僕達が悪魔で向こうが人間だから、そのあたりは真逆になるけどね。ただ、勇者のパーティーというのは間違ってないんじゃないかな?」

 

木場の言葉にゼノヴィア達が続く。

 

「そうだな。こっちには本物の勇者がいるんだ」

 

「あんな英雄の子孫になんて負けやしないわ!」

 

 

アハハハ・・・・・

 

なんか、かなり期待されてないかい?

 

 

敷地内を進み、二の丸庭園を抜けると本丸御殿を囲む水堀が見えてくる。

それから本丸御殿に続く櫓門を潜り、辿り着いたのは古い日本家屋が建ち並ぶ場所。

 

キレイに整備された庭園も見えて、ライトアップまでされている。

 

ここまで細かく再現してるのか。

ある意味すごい拘りだ。

 

 

「禁手使いの刺客を倒したか。俺達の中でも下位から中堅の使い手でも禁手使いには変わらない。それを倒してしまうのは驚異的であり、流石だとも言える」

 

その声に振り向くと庭園には曹操。

建物の陰からは制服を着た英雄派の構成員が姿を現す。

 

「母上!」

 

九重が叫んだ。

 

九重の視線の先には着物姿のキレイな女性が佇んでいた。

頭部には狐耳、九つの尾。

 

あの人が九尾の御大将――――八坂さんか。

 

かなりの美人だ!

おっぱいも大きいな!

着物からこぼれ落ちそうなくらいだ!

 

「お兄ちゃん・・・・・こんな時に」

 

美羽が半目で見てくる!

 

うん、ごめんなさい!

スケベなこと考えてる場合じゃないよね!

 

「母上! 九重です! お目覚めくだされ!」

 

九重が駆け寄り声をかけても八坂さんは反応しない。

瞳は陰り、無表情だ。

 

何かの術で意識を奪われてるのか?

 

 

九重が曹操達を睨み付ける。

 

「貴様ら! 母上に何をしたのじゃ!」

 

「言ったでしょう? あなたの母君には我々の実験に協力してもらうだけですよ」

 

曹操はそう言うと槍の石突きで地面をトンッと叩く。

 

刹那――――

 

「う・・・・・うぐ・・・・・うぁぁあああああああっ!!!」

 

八坂さんが悲鳴をあげはじめた!

 

体が光か輝くと同時にその姿を変えていく!

 

どんどん大きくなっていき―――――

 

 

オオォォォォォォォォォンッ!!

 

 

夜空に向かって咆哮をあげる巨大な金色の獣。

 

これが八坂さんの正体、伝説の妖怪―――九尾の狐!

 

体格は十メートルくらい。

以前戦った親フェンリルと同じくらいだ。

 

巨大化した九つの尾のせいで見た目にはかなり迫力がある!

 

 

それに・・・・・この力の波動!

タンニーンのおっさんやティアにも負けてない!

実力は間違いなく龍王クラス!

 

 

今の八坂さんの瞳には感情が感じられない。

完全に英雄派に操られている状態なのだろう。

 

 

クソッ・・・・・・最悪の展開だ!

 

 

俺は曹操に問い詰める。

 

「曹操! こんな疑似京都を作って、しかも八坂さんまで操って、何をしようとしている!? 」

 

曹操は槍の柄を肩にトントンとしながら答えはじめた。

 

「そうだな、そろそろ教えてもいいだろう。俺達は京都に流れる力と九尾の力を使って、この空間にグレートレッドを呼び寄せる」

 

「なんだと? あのドラゴンを呼んでどうするつもりだ? まさか倒すなんて言うんじゃないだろうな?」

 

グレートレッド。

この世界で最強と呼ばれる赤龍神帝。

 

今の俺が挑んだら瞬殺されるほどの存在だ。

 

いくらなんでもあのドラゴンを倒すのは無理なんじゃないか?

 

先生曰く、全勢力で向かっても勝てないと言われてるみたいだし。

 

「流石に倒すのは難しいだろうな。というよりまともにやり合って勝てる相手じゃない。俺達のボスでさえ難しい相手だというのに」

 

こいつらのボス・・・・・・オーフィスか。

 

俺の脳裏に浮かぶあの少女。

無限の龍神と恐れられ、禍の団のボスをしている。

 

確か、次元の狭間に帰りたいっていう望みを持ってたな。

 

ただ、そこに戻るにはグレートレッドが邪魔で、オーフィスはそれを何とかしたいらしい。

 

「とりあえず、今回の実験はボスの願いを叶える第一歩なのさ。呼び寄せ、生態を調査できるだけでも大きな収穫だ。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』がどれぐらいの影響をあの赤龍神帝に与えるかも見てみたいしね」

 

ドラゴンイーター?

なんだそりゃ?

 

ドライグ、聞いたことあるか?

 

『いや、初めて聞く単語だ。名前からしてドラゴンに対して何らかの影響を与えていくものだとは思うが・・・・』

 

ドライグですら知らないものなのか・・・・・。

 

ま、どちらにしてもろくでもない代物だろう。

 

 

俺は曹操に指を突きつける。

 

「その実験目的を知ったところで俺達がすることは変わらねぇ。とにかく八坂さんは返してもらうぜ」

 

俺がそう言うとゼノヴィアが剣を振り上げる。

 

鞘の各部位がスライドしていき、変形する。

 

 

ズシュゥゥゥゥゥッ!!

 

 

激しい音を立てながら、鞘のスライドした部分がら大質量の聖なるオーラが噴出する!

 

オーラが刀身を覆い尽くして極太のオーラの刃と化した!

 

オーラは上手く纏められているみたいだ。

その証拠に攻撃的なオーラが周囲に影響を与えていない。

 

あの鞘がデュランダルの力を制御してくれているようだ。

 

「貴様達の思想、今からしようとしていることは危険だ。私達だけではない。周囲にまで被害を与えるだろう。貴様達にはここで倒れてもらうぞ」

 

「僕もゼノヴィアに同意だね」

 

「同じく!」

 

木場とイリナもゼノヴィアに続き、聖魔剣と光の剣を作り出す。

 

「九重ちゃんを悲しませるような人達には手加減しないよ!」

 

「私も頑張ります!」

 

美羽とアーシアも気合い入ってる。

 

美羽の体から凄まじいオーラが放たれ、風が吹き荒れ始める。

どうやら美羽も相当お怒りのようだ。

 

「ま、ここまでされて黙ってるわけにもいかないもんな。俺もやってやるぜ」

 

匙の腕、足、肩に黒い蛇が複数出現。

それと同時に体から黒い炎を発する。

 

更には匙の傍らに影が現れ、黒い大蛇となった。

その大蛇も黒い炎を纏っている。

 

匙の左目は赤くなり、蛇の目のようになっている。

 

「ヴリトラ、おまえも力を貸してくれ」

 

大蛇が低い声で喋りだす。

 

『いいだろう。眼前の者共全てを我らが黒炎で燃やし尽くしてやろうぞ』

 

おおっ、やる気満々だな。

久方ぶりに暴れられるからテンション上がってんのかな?

 

 

全員、戦闘態勢も整ってるしやる気も十分だ。

 

「よし、ゼノヴィア。やっちまうか」

 

「任せろ」

 

 

ズォォォオオオオオオオオッ!!!

 

 

デュランダルのオーラが更に出力を上げていく!

オーラの刃が空を貫かんばかりの勢いで伸びていった!

 

 

これだけの聖なるオーラだ。

まともに受ければ上級悪魔でも完全に消え去るな。

 

聖なる力を宿してるだけでも悪魔には大ダメージなのに、これだけの力だ。

 

レーティングゲームではかなりの武器になるぞ。

 

 

そんじゃ、俺も続きますか。

 

俺は手に気を纏わせてイグニスを瞬時に展開。

 

刀身に灼熱の炎を纏わせる。

 

 

そして―――――

 

 

「「とりあえず、初手だ。喰らっとけ!」」

 

 

莫大な聖なるオーラと灼熱の斬撃が英雄派を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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