ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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8話 突入します!!

俺と美羽は今、アーシアとレイナが連れていかれたとされる教会に着いた。

アーシアの気を追ってきたのだが、ここで間違いないようだ。

 

………で、そんな俺達よりも先に教会に着いている者達がいた。

 

「木場に小猫ちゃん。なんで、二人がいるんだよ?」

 

「リアス部長の命令でね。堕天使の背後関係が掴めたから討伐に来たんだよ」

 

「部長はイッセー先輩を呼びに公園に転移したらしいんですが、イッセー先輩はすでにいなかったと言っていました」

 

「マジで?」

 

俺が尋ねると二人は頷いた。

 

まさかのすれ違いか。

本当にすいません、部長………。

俺、グレモリー眷属の問題児とか思われてないよね?

 

木場が訊いてくる。

木場の視線は美羽に向けられていて、

 

「イッセー君。美羽さんも連れてきているようだけど………良いのかい?」

 

あー、やっぱり気になるよな。

皆には俺が赤龍帝であることは明かしていても、異世界のことは何一つ話していない。

当然、美羽の素性もだ。

 

「まぁ、大丈夫だ。美羽は俺が守るし。それに美羽もそれなりの実力はあるからな」

 

なんと言っても美羽は魔王の娘だね。

 

「………イッセー君がそう言うなら、分かったよ。僕や小猫ちゃんもいるからね」

 

聞きたいことがあるようだったけど、とりあえず納得はしてくれたようだな。

まぁ、ここで質問に答えている時間もないしな。

あまりのんびりしているとアーシアの神器が奪われてしまう。

 

次に小猫ちゃんが俺に聞いてきた。

 

「イッセー先輩、神器はまだ動かないんですよね?」

 

「まぁね。まだ、調整に時間がかかるらしいよ」

 

そう、籠手はまだ使えない。

ドライグ曰く、

 

『無理に悪魔化を試みた際、相棒は倒れただろう?あの時に神器に異常が生じてな。現ベルゼブブの協力もあって今は安定しているが、その影響で神器はしばらく使えない。当然、禁手化もだ。調整が終わり次第連絡する』

 

だそうだ。

 

そう言うわけで俺は今、籠手は全く使えない状態だ。

この事は部員の皆は全員知っている。

部長もこの事があったから、フリードの時にはすごく心配をしていたんだ。

相変わらず、表情に変化がないが小猫ちゃんもなんだかんだで心配してくれていたらしい。

 

「まぁ、籠手が使えなくても堕天使には遅れを取らないよ」

 

「そうですか。なら、いいです」

 

「そういえば、部長と朱乃さんは?」

 

「二人はこの教会の外にいる堕天使の討伐に行ったよ」

 

なるほど、一人も逃がすつもりはないようだ。

 

となると、この場の戦力は俺と美羽、木場、小猫ちゃんの四人。

これだけいれば十分過ぎるだろう。

 

教会の入り口に立つと、小猫ちゃんが言ってくる。

 

「先輩、気を付けてください」

 

「ああ、どうやら中で俺達を待っている奴がいるらしいな」

 

この気は…………あいつか。

 

扉を開けて中に入ると、待っていたのは白髪の男。

 

「やあやあやあ。感動の再会だねぇ、イッセーく~ん」

 

「フリード………本当に懲りない奴だな。結構重傷だったはずだが………」

 

「もちろん、この通り、生きてござんすよ! どこにも傷はナッシーング!」

 

「どうせ、アーシアに治療させたんだろ? ………まぁいい、とりあえず今すぐ消えろ。こっちは急いでんだ」

 

俺がそう言うとフリードは笑いながら光の剣を両手に握る。

光の剣の二刀流だ。

 

「そんな冷たいこと言わないでくれよぉ。俺っちはイッセー君に前回の仕返しをしたいんだからさぁ!」

 

「無駄ってことが分からないみたいだな。………退けッ!」

 

俺はフリード目掛けて殺気を放った。

俺の正面に広がった殺気による圧力は木製の床にヒビを入れ、弾く。

ガラスにもヒビが入り、いくつかが砕け散った。

 

フリードは少し後退りしながらニンマリと笑った。

 

「うひょー! すんごい殺気! これでこそ殺りがいがあるってもんだぜぇ!」

 

床を蹴って俺達の方に突っ込んでくるフリード。

 

迎え撃とうとする木場達を手で制した俺は腰を沈めて、拳を引いた。

俺は錬環勁気功を発動し、拳に気を集める。

赤いオーラが拳を纏う―――――。

 

俺は光の剣を振り回すフリードとの間合いを一瞬で詰め、奴の懐に入り込む。

 

「これでも喰らっとけ」

 

静かに告げた俺はオーラを纏わせた拳を放ち、フリードの顔面を捉えた。

成す術もなく、俺の拳を受けたフリードは教会の壁を突き破って飛んでいく。

 

初めて出会った時とほとんど同じ絵だ。

………ただ、フリードが当たる直前に体を後ろに反らしてダメージを減らしていたこと以外は。

 

まぁ、減らしたと言ってもほぼ直撃だったから、重傷なのは間違いない。

それにしても、あのタイミングであんなことが出来るなんてな。

あれで性格が良ければ教会からも追放されることもなく、良い戦士になれただろうに。

勿体ないやつだ。

 

「行くぞ、皆」

 

「あ、うん」

 

「………了解です」

 

俺は後ろで呆けている木場と小猫ちゃんに声をかけて先を急いだ。

 

 

 

 

[レイナーレ side]

 

 

私、レイナーレはアーシアと共にドーナシークに連れ去られてから、教会の地下にある大かな部屋に連れてこられた。

 

今、私は壁に鎖で四肢を繋がれている。

そして、アーシアは部屋の奥にある大きな十字架に磔にされている状態。

今からドーナシークがアーシアの神器を引き抜く儀式を行おうとしている。

 

「お止めください! こんなことは間違っています!」

 

「何が間違っているというのだ? 人間ごときが神器を持っていたとしても何の役にもたたん。私が持っていた方が有効に活用できる」

 

「ですが、そんなことをすればアーシアが!」

 

「この娘は神器のせいで辛い目に会ったのだろう?それはこれからも変わらん。だから、苦しみから解放してやろうというのだ。それが分からんのか、レイナーレよ」

 

確かにアーシアはこれまでに沢山辛いことを経験してきた。

もしかしたら、これからも辛い経験をするかもしれない。

だけど…………!

 

「今のアーシアには友達がいます! 例え辛いことが会ったとしても友達がいれば、アーシアは何だって乗り越えられます!」

 

「………レイナさん」

 

私がそう言うもドーナシークはどうでも良いことのように嘲笑う。

 

「友達?くだらんな。悪魔とつるむなど以ての外だ。………まぁ、いい。どのみちアーシアの神器は私がいただく。どんな傷でも一瞬で治す《聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)》。私はこの力があれば、私は更に堕天使としての高みに立つことができる」

 

「そんなことで………。そんなことであなたはアーシアを殺そうというのですか?」

 

「そんなことだと? 世の中は全て力だ。武力、智力、権力、財力。これらが高いものが常に勝ってきた。力とは全てなのだよ」

 

「そんなもの! 他人から無理矢理奪って得たものなんて何の意味もないわ!」

 

「所詮、貴様には何を言っても無駄か。私は同族を殺すことは好きではない。同じ堕天使として生かしておくつもりだったが、もういい。この娘から神器を抜き取った後で貴様は処分する。下級の堕天使が一人いなくなったところで問題はない」

 

ドーナシークがアーシアの方を向き、神器を抜き取るための術式を始める。

魔法陣が展開し、アーシアの体を光が包む―――――。

 

「止めなさい、ドーナシーク!!」

 

「うるさいぞ。そいつを黙らせろ」

 

「おら、黙れ!」

 

ドーナシークに命じられて私の横にいた悪魔祓いの一人が私の顔を殴った。

 

殴られた時に口の中を切ったのだろうか。

血の味がする。

 

「レイナさん!」

 

アーシアが私の事を心配してくれている。

その目には涙。

 

自分が殺されそうになっているというのに、私の心配………馬鹿ね、アーシア。

でも、そんなあなただからこそ、私は―――――。

 

ダメ、私ではアーシアを助けられない。

例え鎖を解いても私ではドーナシークからは逃げられない。

 

「誰か………助けて………誰か助けてよ………!」

 

私が自分の無力さに涙を流した―――――その時。

 

 

 

ドッガアァァァァアン!!!

 

 

 

突然、部屋の扉が吹き飛ばされた!

鉄製の扉が反対側の壁に衝突し、その衝撃で建物が激しく揺れた!

 

「何事だ!?」

 

ドーナシークも部屋にいた悪魔祓いも突然のことに声を荒げている。

暫くすると舞い上がっていた埃が収まり、視界が開けた。

そして、扉があった場所に立っていたのは―――――。

 

「俺の友達を泣かせてんじゃねぇ!」

 

赤いオーラを身体中から発しているイッセー君だった。

 

 

「レイナーレ side out」

 

 

 

 

遡ること少し前。

教会の地下に行く通路を発見した俺達は、その通路を進んでいった。

すると、通路の奥に金属製の大きな扉を見つけた。

 

「ここで、間違いないみたいだな」

 

「そうだね。中から堕天使の気配がする」

 

「それと、あのシスターさんの気配もします」

 

皆が言うようにこの扉の向こうからアーシアとレイナの気配がある。

それと、ドーナシークをはじめとした数人の堕天使、他にもいるけど………細かいことはいい。

今はアーシアの救出が最優先だ。

 

「じゃあ、いくぜ?」

 

俺の言葉に全員が頷く。

俺はそれを確認すると、扉を思いっきり殴り付けた。

扉は吹き飛び、反対側の壁に衝突。

その衝撃で建物は激しく揺れ、舞い上がった埃で室内は真っ白に染まっていた。

 

視界が開け、俺が目にしたのは涙を流すアーシアとレイナ。

 

「俺の友達を泣かせてんじゃねぇ!」

 

俺は怒りの言葉をドーナシークにぶつけた。

 

 

 

 

「イッセー君!」

 

「イッセーさん!」

 

俺の姿を見て、二人は俺の名前を呼んだ。

俺は二人に問う。

 

「二人とも無事か?」

 

「私は無事です。でも、レイナさんが………」

 

レイナの方を見ると口から少し血が流れていて、顔には痣も出来ていた。

 

見たところ、レイナの横にいる悪魔祓いらしきやつがやったのだろう。

あいつ、女の子になんてことしやがる!

よし、あいつは絶対にボコボコにしてやるよ!

心優しい美少女を傷つけるとか、男として許せん!

 

レイナが言う。

 

「これくらい平気よ。イッセー君、私は大丈夫だから」

 

「そっか。後で手当てしないとな。女の子の顔に傷が出来たらダメだしな」

 

とりあえず、二人とも命に関わるようなケガはしてないな。

となると問題はあいつか。

 

「また、貴様か。つくづく私の邪魔をしてくれるな悪魔よ」

 

そう言いながら翼を広げて、手に光の槍を作り出すドーナシーク。

その姿を見て、木場が少し驚いていた。

 

「翼が四枚………。なるほど、彼は中々の実力者のようだね」

 

翼の数で実力が分かるということか?

前回、ドーナシークの翼を見たときは気にしなかったけど、翼が多い方が強いのか。

ドライグはそんなこと教えてくれてなかったな。

 

ドーナシークが言う。

 

「もう少しで計画は遂行される。邪魔をしないでもらおうか」

 

ドーナシークはアーシアの首に槍を突きつけると、悪魔祓いに合図を送ってレイナにも剣を突きつけさせる。

 

「人質のつもりか?」

 

「私としては速やかに終わらせたいのだ。悪魔の諸君にはご退場願おう」

 

パチンッとドーナシークが指をならす。

すると、部屋に黒いフードを被った人間が三十人ほど入ってきた。

 

「全員、はぐれ神父とはぐれ悪魔祓いだね」

 

木場がそう呟く。

 

こいつら全員が奴の配下………。

よくこれだけの数を集めたもんだな。

 

「これくらいで俺達が引き下がると思ってんのか?」

 

「こちらには人質がいる。手は出せんだろう。それとも見捨てるか?」

 

「俺にとっては何もしないことは見捨てることと同じだ」

 

「ほう? 貴様にはこれが見えんのか?」

 

ドーナシークがさらに槍をアーシアに突きつけようとした――――その時。

 

バチンッと弾けるような音と共にドーナシークの槍が見えない何かに弾かれた。

それはレイナに剣を突きつけていた悪魔祓いも同じだった。

 

それにドーナシークが驚愕する。

 

「なっ!?」

 

奴が驚くのも無理はない。

アーシアとレイナを守ったもの、それは―――――。

 

「ボクの友達は誰にも殺させはしないよ!」

 

美羽が手を前に突きだし、そこには魔法陣が展開されていた。

 

美羽は魔法が使える。

美羽曰く、幼い頃からシリウスに魔法を教えられていたらしい。

現在では高い技術を有し、数多くの魔法が使えるとのこと。

 

美羽が今、展開した魔法は風による防御術式。

それをアーシアとレイナに同時に展開して二人を守ったんだ。

―――しかも、誰にも気づかれずに。

 

隠密性の高い魔法。

これを修得するのは並の努力では難しい。

これだけで美羽の高い実力が見て取れるだろう。

 

「ありがとうな、美羽。良いタイミングだ」

 

「ううん。お兄ちゃんが時間を稼いでくれたからだよ」

 

俺の言葉を聞いて、ドーナシークが声を荒げる。

 

「先程までの会話は時間稼ぎだというのか!?」

 

「ああ。アーシアは殺されることは無いだろうけど、レイナはそうじゃない。おまえにとってレイナは直ぐにでも殺すことが出来るだろ? だから、安全が確保されるまで待っていたんだよ」

 

「貴様………っ!」

 

「さあ、覚悟しろよドーナシーク。おまえの計画はこれで終わりだ」

 

俺がそう告げるとドーナシークは激昂する。

 

「たかが、悪魔ごときが! その者どもを今すぐ殺せ!」

 

ドーナシークに命じられて、はぐれ神父達が一斉に俺達の方に走ってきた。

 

「イッセー君、はぐれ神父どもは僕が相手しよう。彼らには個人的に思うところがあるからね」

 

剣を抜き放って、木場はそう言ってくる。

普段とは違うとても低い声色だ。

はぐれ神父と何かあったのだろうか?

 

「祐斗先輩、私も戦います。イッセー先輩はあの堕天使をお願いします」

 

「じゃあ、ボクは残りの堕天使を相手するよ!」

 

小猫ちゃんと美羽もそう言って戦闘に参加する。

木場が剣で相手を斬り伏せ、小猫ちゃんが殴り飛ばし、美羽は炎、雷、氷、風、あらゆる属性の魔法を放って堕天使を相手にする。

 

「分かった。後ろは任せたぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

俺はドーナシークのところまで駆けていった。

 

 


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