ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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11話 英雄派との開戦です!!

出発の時間となり、俺達はホテルを出て、京都駅のバス停に赴いた。

 

赴いたんだけど・・・・・・・

 

 

シュウゥゥゥゥッ

 

 

「イッセー君、美羽さん、顔から湯気が出てるよ」

 

「何かあったのか?」

 

木場と匙がそう言ってくる。

 

 

「「い、いや、大丈夫大丈夫・・・・・アハハハ・・・・・・」」

 

俺達はガックリとしながら二人にそう返した。

 

 

作戦会議を終えて、ホテルを出るまでの間、俺達はゼノヴィア達から質問攻めにあっていた。

 

問い詰められ、混乱した美羽は顔を真っ赤にしながら俺とのことをこと細かく言ってしまったんだ。

 

あーんなことやこーんなことまで、全てを。

 

「やはり、子作りとは奥深いものなのだな」

 

一人うんうんと頷いているゼノヴィア。

 

おまえが一番積極的に聞いてたよね。

 

「はぅぅ・・・・。イッセーさんと美羽さんはあんなことまでしてたなんて・・・・・。な、なにを弱気なことを! わ、私だって!」

 

顔を茹でタコのように真っ赤にしながらも気合いを入れているアーシア。

 

「はぁ~、危うく堕ちるところだったわ。で、でもでも、将来のためには聞いておかないとって思うし」

 

そういや、イリナは翼が点滅してたっけ。

 

 

さっき、ここに残るレイナも何やら呟いてたな。

 

 

アハハハ・・・・・・。

 

もう、どうすりゃいいんだよ・・・・・・。

 

兄妹揃ってHPもMPもゼロなんですけど・・・・・・。

 

誰か教会で甦生してくれ。

 

 

あ、俺、悪魔だからダメじゃん。

 

 

俺はもう死ぬしかないのか・・・・・・・。

 

『病んでるな』

 

『ウフフ、それはそうよ。二人のアツーイ夜を知られてしまったんだもの。無事に帰れたとしても決戦ね♡』

 

よし、英雄派全てを道ずれにして消えよう。

 

数年は山に籠って皆が忘れた頃に出てこよう。

 

『無駄だろ』

 

『彼女達のことだから、草木を掻き分けてでもあなたを見つけに来るわよ?』

 

そ、そんな・・・・・・。

 

二人の相棒から突きつけられた現実に俺は膝をつく。

 

 

匙が目元をヒクつかせながら言う。

 

「お、おい・・・・・兵藤。おまえ、本当に大丈夫かよ? おまえの頭上に『ズーン』って出てるぞ」

 

「す、スマン・・・・・・俺はここまでのようだ」

 

「まだ何もしてないけど!? ホテルから出ただけだぞ!?」

 

「あ、後のことは・・・・・・任せた・・・・・・ガクッ」

 

「無茶ぶり過ぎるっ! マジで何があった!?」

 

 

そんなやり取りをしながら二条城行きのバスを待っていると、俺の背中に何かが飛び乗った。

 

「イッセー! 私も行くぞ!」

 

金髪の巫女装束の幼女――――九重だった。

 

先生からは妖怪のいる裏京都で待機していると聞いていたけど・・・・・・。

 

「なんで、九重がここに?」

 

「私も母上を救いたいのじゃ!」

 

「おいおい・・・・・。危ないから待機するよう言われてるだろ?」

 

「それでもじゃ! 母上は私が・・・・私が救いたいのじゃ! 頼む!」

 

うーん、ここまで言われるとなぁ・・・・・。

 

今から行くのは戦場だ。

そんなところにこんな小さな女の子を連れていくのは普通に考えれば無しだ。

 

だけど、九重の想いは本物。

この子はそれほどまでに必死なんだ。

 

俺は九重を肩車して言った。

 

「仕方がないか・・・・・。わかったよ。一緒に行こうぜ」

 

「ほ、本当か?」

 

「おうよ。ただし、現地では俺の言うことをしっかり聞けよ?」

 

「うむ!」

 

すると、匙が慌てて反対した。

 

「お、おい、こんな小さな女の子を連れていくつもりかよ!?」

 

「ま、言いたいことは分かるけどさ。俺が責任もって九重を守るから、おまえも九重の気持ちを汲んでやってくれないか?」

 

「おいおい・・・・・」

 

匙が呆れながらため息をつく。

 

 

その時――――俺達の足元に薄い霧が立ち込めてきた。

 

同時にぬるりとした生暖かい感触が全身を襲った。

 

 

・・・・・・来やがったな。

 

「皆、注意しろ」

 

俺の言葉に全員が頷くと、俺達は全身を霧に覆われていった。

 

 

 

 

 

 

霧が止むと俺と九重は地下鉄のホームにいた。

 

『京都』って駅名のプレートもあるから京都駅の地下ってことだな・・・・・。

 

周囲に人影はなく美羽や木場達もいなかった。

 

 

近くに気配を感じないってことは完全に分断されたか・・・・・。

 

 

絶霧の能力で俺達はまた強制転移させられたわけだ。

 

全く・・・・・昼間の時といい、今回といい、俺達をいきなり転移させるんだもんな。

神滅具ってマジで恐ろしいと思うぜ。

 

「九重、大丈夫か?」

 

「私は大丈夫じゃが、ここは・・・・・?」

 

「昼間の時と同じだよ。俺達は強制的に転移させられたみたいだ」

 

「じゃ、じゃあ、ここも別空間に創られた疑似京都なのか? 彼奴等の持つ技術はすさまじいのぅ」

 

「全くだ」

 

俺と九重が相手の技術の高さに感心しながら周囲を見渡していると、俺のケータイが鳴った。

 

見ると木場からだった。

 

ケータイは通じるのね・・・・・・

 

「もしもし、木場か? 今はどこに?」

 

『うん。今は京都御所にいるよ。ロスヴァイセさんも一緒だよ。イッセー君は?』

 

「こっちは九重と京都駅の地下鉄ホームだ。ちょっと待て、地図で場所を確認する」

 

俺は九重を一旦、下ろして持たされていた地図を出す。

 

俺がいる場所はここ・・・・・・・そんでもって木場がいるのは・・・・・・。

 

おいおい・・・・・マジかよ。

 

「このフィールド、かなり広大に作られてるのか?」

 

『二条城を中心に京都の町を広大に再現してるみたいだね。レーティングゲームのフィールドの技術を使ったのならそれも可能だとは思う』

 

ってなると、早急に集まった方が良さそうだな。

 

このままだと完全に分断されているところに襲撃を受けるかもしれない。

 

戦う力を持たないアーシアのことが気になるところだが・・・・・。

 

「合流場所は二条城でいいな?」

 

『了解。他の皆への連絡はそちらから取るかい? 彼女達もこちらに来ていると思うからね。僕達は英雄派に招待されたようだから』

 

「俺の方から連絡してみるよ。木場は先生に連絡してみてくれ」

 

木場との連絡をそこで終わり、他の皆へ連絡してみる。

 

とりあえず、全員と連絡が取れた。

教会トリオは仲良く一ヶ所に集まっていて、美羽は匙と一緒だった。

その二つのグループにも集合場所を伝えておいた。

 

更に木場から連絡があり、先生とは連絡が取れなかったそうだ。

俺からかけてみても先生とは繋がらない。

 

どうやらフィールドの中では連絡が可能だが、内と外では完全に遮断されているようだ。

 

何か特別な術式でも仕込んでいるのかね?

 

 

ま、何にしても皆が誰かしらと同じ場所にいるみたいで安心した。

 

「九重、俺達も行こうか」

 

「わかった!」

 

九重と手を繋いで、二条城へと向かおうとした。

 

その時。

 

 

「? どうしたのじゃ、イッセー?」

 

立ち止まった俺を怪訝な表情で見上げる九重。

 

俺はホームの柱の方を見て目を細めた。

 

「出てこいよ。隠れてるのは分かってる」

 

突然現れた気配と俺に向けられた殺気。

 

この気はどこかで・・・・・・。

 

柱の影から姿を表したのは男が数人。

 

 

真ん中のサングラスをかけた男には見覚えがある。

 

男はニヤッと笑みを浮かべて話しかけてきた。

 

「やぁ、赤龍帝。俺のことを覚えているかな?」

 

「ああ、影を扱う神器を持ってたな」

 

「そうだ。かの赤龍帝に覚えてもらえているとは光栄だ」

 

「心にもないことをよく言う」

 

以前の戦闘でこいつは最後に異様なオーラを放っていたからな。

その時のことはよく覚えているよ。

 

俺達の推測が正しければ、こいつは――――

 

「それで? あんた達がここに来た理由は・・・・・ま、聞かなくても分かるからいいや」

 

「話が早くてこちらも助かるよ。――――それじゃあ、早速始めようか。以前のようにはいかない。教えてやるよ、本当の影の使い方を――――」

 

男から黒く不気味なオーラが発せられる。

足元の影が広がったと思うと、男の周囲にある柱、自動販売機などの影も動き出した。

 

「――――禁手化(バランス・ブレイク)

 

 

ズズズズッ

 

 

男から放たれるプレッシャーが増し、周囲の影が男のもとに集まって体を包み込んでいく。

 

全身を影が覆い、男の体に鎧のようなものが形作られた。

 

影の全身鎧ってところか。

 

「『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』の禁手、『闇夜の獣皮(ナイト・リフレクション・デス・クロス)』。これが俺の新たな力。赤龍帝、あの時の反撃をさせてもらうぜ?」

 

影の男がそう言うと周囲にいた男達も神器を展開する。

 

そして一斉に――――

 

「「禁手化ッ」」

 

その声と共に男達の力が数段上がるのが感じられた。

 

 

こいつらもかよ・・・・・。

 

 

「『青の長槍(ピアス・ブルー)』の禁手『蒼黒の剛槍(ランサ・ペネト・ブルー)』」

 

「『無空の箱庭(スペース・ボックス)』の禁手『無定型の地平原(インターフェレンツ・エデン)』」

 

一人は青い通常の槍から青と黒が混じった柄が太く長い槍へと変化。

槍の切っ先には水を纏わせている。

 

もう一人は手に占いで使っているような水晶を持っていて、水晶の色が透明から白と黒が入り交じったような色に変化した。

 

 

禁手使いが三人・・・・・・。

 

対して俺は神器を使えないし、九重を守りながら戦わないといけない。

 

影使いの能力は何となく予想できるけど、他二人のは今のところ不明。

 

いきなり厄介な展開になっちまった。

 

 

ここは早めに片付けたいところだけど・・・・・・

 

 

「とりあえずやってみるか」

 

俺は影使い達三人に向けてそれぞれに気弾を放つ。

 

気弾が三人を捉え命中したかのように見えた。

 

しかし、全ての気弾が伸びてきた影に吸収されてしまった。

 

そして次の瞬間、俺を囲むように壁と天井に影が広がり、そこから俺の気弾が飛び出してきた!

 

俺は九重を抱えたまま、その場を離れる。

 

その直後。

 

 

ドドドドドドドドンッ!!!

 

 

互いに衝突し、気弾は全て弾けた。

 

 

影使いの能力は前回の拡張版ってところか。

 

今度は影を身に纏っているから直接的な攻撃は効かないだろう。

 

なんとも相性が悪い相手だ。

 

 

「赤龍帝、覚悟ッ!!」

 

剛槍を持った男が俺目掛けて突っ込んでくる。

 

槍から水を生み出し、それを操って斬り込んできた!

 

 

足を半歩ずらし、体捌きで受け流す。

 

そして、男の顔面にカウンターを放つ!

 

 

ズヌンッ

 

 

「っ!」

 

 

しかし、俺の拳は伸びてきた影に吸い込まれて男に届くことはなかった。

 

槍使いの男は舌打ちする俺に笑みを浮かべて更に槍を振るってくる!

咄嗟に後ろへ跳び、回避!

 

クソッ!

流石にこの状況で連携されると面倒だな!

 

 

「イッセー! 水じゃ!」

 

九重の言葉に足元を見てみると、いつの間にかホームは水浸しになっていた。

 

「ハハハッ! ガキを抱えながら俺達の相手はキツいんじゃないのか?」

 

槍使いの男は高らかに笑うと槍をホームに突き立てる。

 

波紋が広がり、ホームの水を揺らす。

 

「さぁ、やれ! 我が水よ! 奴の体を貫いてやれ!」

 

 

ギュオオオオオオッ!!

 

 

男の言葉と共にホームに溜まった水が槍のようなものを何本も形成し、俺を襲ってきやがった!

 

「こなくそっ!」

 

俺は硬気功を発動させて、向かってきた全てを打ち砕いていく!

 

この程度なら、まだ大丈夫だけど、九重を抱えながらじゃ激しい動きがとりづらい!

 

気弾を連続で放っても影が伸びてきて、全てが俺に返される!

 

 

ドゥ! ドンッ! ドドンッ!

 

 

「うわっ!」

 

気弾がホームを抉り、その時生じた衝撃波に九重が悲鳴をあげた。

 

気弾の威力ももう少し下げるか・・・・・・。

 

 

「やるなぁ、赤龍帝! だが、俺も加わればどうなるかな?」

 

影使いがそう言うと、周囲に影が広がり、そこから影が伸びてきた!

 

影の槍ってところか!

 

しかも、いくつかの影が触手のように蠢いて俺を縛ろうとする!

 

「えらく多彩だな!」

 

俺は気の残像を残すことで相手の認識をごまかし、それを回避する。

 

 

だぁー!

 

マジで神器の能力って厄介だ!

厄介過ぎる!

 

特にこの影!

 

変幻自在すぎるぜ!

 

 

ザアァァァァァァァッ

 

 

「おっと!」

 

水の方も影と組み合わせて攻撃してくるから、こいつもこいつで面倒だ。

 

 

槍使いが自身の影に槍を突き刺す。

 

ズヌンッと影に切っ先を吸い込まれたその槍は、俺の影から出てきやがった!

 

「ちぃっ!」

 

体を捻ってそれを避けると次は天井の影から無数の水の槍!

 

あの影使い、味方の攻撃の出現ポイントまで変えられるのか。

ま、敵のやつも出来るなら出来て当然か。

 

俺は気弾や拳を放って応戦するが影が伸びてきて、全ての攻撃を吸収する!

 

しかも、あちこちの影から返ってくるから性質が悪い!

 

「ハァッ!」

 

「効くかよ!」

 

顔目掛けて飛んできた槍を首を傾げて避ける!

 

避けたと同時に回し蹴りを放つ!

 

・・・・が、また影に妨害された!

 

 

この狭い空間でこいつらの能力とコンビネーションはマジで厄介すぎる!

 

ここは一旦、外に出るか!

 

俺は相手の攻撃を掻い潜り、上へと通じる階段を駆け上がる。

 

せめて、外でやり合うことが出来れば、何とかなるはずだ。

 

 

俺は階段を上り出口へ―――――

 

 

「なっ!?」

 

 

階段を上りきった俺は目を見開いた。

 

 

何故なら――――

 

上へと向かったはずなのに、出た場所はさっきと同じ地下鉄のホームだったからだ。

 

 

驚愕する俺を見て、影使いが愉快そうに笑う。

そして、水晶を持った男を指差して言った。

 

「驚いたかな? これがこいつの禁手の能力、周囲の空間を自由自在に創り変える能力さ」

 

「空間を?」

 

俺が聞き返すと影使いは頷く。

 

「そう。相手に気づかれることなく、その周囲の空間の形状を変える。仕掛けられた相手はその変化に気づくことは出来ない。だから、その気になれば永久に続く迷路にするだって出来る」

 

空間制御系の神器。

完全なサポートタイプ。

 

さっきから攻撃をしてこなかったのはそのためか。

 

「だったら空間を壊せばいいじゃないか」

 

「甘いな。神器の効果範囲内に閉じ込められたが最後。内側からこの空間を破壊することは出来ないよ。少なくとも今のあんたじゃな」

 

「なに?」

 

「今までの攻防でわかった。どんな事情があるかは知らないが、あんたは神器を使えない。そうだろ?」

 

「・・・・・っ」

 

気づかれたか・・・・・

 

いや、これだけの状況で神器を使わないんじゃバレて当然か。

 

「だったら、潰すなら今だ。神器を使えないあんたなら、今の俺達でも十分可能だ」

 

まぁ、その判断は間違っていない。

 

鎧だったら、こいつらの攻撃を受けてもびくともしない。

だけど、今は生身の状態だ。

まともに受ければダメージは受ける。

 

 

ズズズズッ

 

 

槍使いと水晶を持った男の体に影が巻きついて行く。

 

こいつは・・・・

 

「これであんたの攻撃は俺達には届かない。あんたはこの空間から逃げることもできず、俺達に串刺しにされる。それで終わりだ」

 

あの影は味方にもああやって使うことが出来るのか。

 

 

流石にマズイな。

 

 

大規模な攻撃が出来れば手っ取り早く終わらせることが出来る。

 

それはあの影の吸収能力には必ず限界があるからだ。

どんなに凄い能力にも必ず限界はある。

 

相手の吸収能力を超える攻撃。

それを放つことが出来れば早々に片がつく。

 

だけどここには九重がいる。

 

鎧の状態になれれば、翼で九重をくるんで保護することもできるんだけど・・・・・・。

 

 

ま、出来ないことを言っても仕方がない。

別の方法を考えるか。

 

と、この場をどう切り抜けるか考えている時だった。

 

 

「イッセー、私が足を引張っているというのなら気にすることは無いのじゃ」

 

九重が俺を見上げてそう言ってきた。

 

おそらく、俺の表情を見てなんとなく考えていることが分かったのだろう。

 

九重は一旦息を吐くと、自分の想いを俺にぶつけてくる。

 

「今回、無理を言ってついてきたのは私じゃ! 多少のケガくらい覚悟できておる! 私は何としてでも母上を助けたいのじゃ! こんなところで足を止めるわけにはいかん!」

 

「――――――――っ」

 

 

――――――凄い覚悟だ。

 

まだ、こんなにも幼い女の子だというのに。

 

「これはこれは幼き狐の姫君。赤龍帝が本気を出せば俺達に勝てると? 残念ながらそれは無理だ」

 

「無理などではない! この者は私と約束してくれた! 必ず母上を助けてくれると!」

 

「神器を使えれば、それも可能だっただろう。だが、その男は神器を使えない状態にある。神器を使うことすら出来ないただの悪魔が禁手に至った俺達を相手に勝てるはずもない。九尾は俺達の思い通りに利用させてもらう」

 

情の欠片もない男の言葉に九重は激しく睨みつける。

 

 

「さっきから随分好き勝手言ってくれるな」

 

俺は手のひらを影使い達に向ける。

戦闘開始してからずっと溜めてたから、もう十分だ。

 

男達は一瞬身構えるが、クスクスと馬鹿にするような笑い声を漏らす。

 

「まだ分からないのか? あんたの攻撃は俺の影には通用しない」

 

「それはどうだろうな。あんた、自分の能力を過信しすぎだぜ」

 

甲高い音が響き―――――右腕が激しく光り輝く。

 

「九重、しっかり俺に掴まっておけよ? ま、俺がしっかり守ってやるから心配すんな」

 

「うむ!」

 

俺の言葉に九重は満面の笑みを浮かべて頷き、俺の制服をギュッと掴んだ。

 

 

それを確認して再び、男たちの方に視線を向ける。

 

「言っとくけどな。人間だろうと、悪魔だろうと、妖怪だろうと関係ない。俺は誰かを泣かせるような奴らには容赦しない」

 

 

 

そして―――――

 

 

「アグニッ」

 

 

極大の光の奔流がこの空間の全てを吹き飛ばした―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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