ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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7話 嵐山へレッツゴー!!

「なぁ、おまえら、その顔どうしたんだよ?」

 

 

朝食を終えて、班に合流すると松田と元浜の顔が腫れ上がっていた。

バンソーコーやらガーゼやらが顔中に貼られている。

 

「なぁに、名誉の負傷さ」

 

松田が胸を張って言うが・・・・・・・。

 

 

そういや、こいつら女湯覗きに行ったんだっけ?

 

この様子だと、女湯を覗けるという例のスポットはシトリー眷属に抑えられていたみたいだな。

そんでもって、こいつらは強引に突破しようとしたと。

 

シトリー眷属に勝てるわけねぇだろ。

女子とはいえ、悪魔だからね。

しかも部長とのゲームに負けてからは相当な修行を積んでるらしいし。

 

 

ってか、さっき俺にも嫌疑がかかったな。

シトリー女子に問い詰められたよ。

 

アリバイを聞かれたんだが・・・・・・昨晩は美羽と・・・・・しちゃってたからね。

流石にそのことは言えるわけがなく、困ってたんだ。

 

最終的には美羽と事情を知る桐生が口裏を合わせて助けてくれたけど・・・・・・。

 

 

うぅ・・・・・。

なんか、とんでもない奴に弱味を握られた気分だ。

 

ま、まぁ、桐生はああ見えて良いやつだから大丈夫・・・・・・・だと思いたい・・・・・・。

 

 

「ムフフフ」

 

 

桐生が口に手を当ててスケベな笑みを浮かべてる!

 

大丈夫なの!?

 

本当に大丈夫なのか、これ!?

 

 

すると、元浜が怪訝な表情で訊いてきた。

 

「ところで・・・・・・おまえは何があったんだ?」

 

「えっ? な、何が?」

 

「何がってその状況についてだが」

 

 

元浜が俺を指差してくる。

 

いや、正確には俺達(・・)か。

 

 

ゼノヴィアが呟く。

 

「今日の美羽はやけに積極的だな」

 

 

今の俺の状況を説明しよう。

 

俺は今、美羽と腕を組んで歩いています。

 

ホテルを出てからずっと。

 

「~♪」

 

美羽はかなりご機嫌な様子で少し鼻歌も歌ってる。

俺からしたら可愛いし別に良いんだけどね。

 

ただ、美羽がいつも以上に積極的だから皆の視線が・・・・・・ね。

 

 

「普段から仲が良いのは知っているが、今日はいつも以上だな」

 

 

うっ・・・・・!

 

 

言えない・・・・・・。

こんな状況で言えない。

いや、どんな状況でも言えない。

 

言えば松田と元浜は血の涙を流して永遠に追いかけてくるに違いない。

 

それだけじゃない。

美羽は学年でも人気のある女子生徒だ。

ここで明らかになれば、『イッセー撲滅委員会』なるものが大挙して迫ってくるだろう。

 

 

・・・・・・つーか、イッセー撲滅委員会って何だ!?

 

 

とにかく、どうにかして乗りきらなければ!

 

「き、気のせいだよ。お、俺達はいつもこんな感じだぜ?」

 

「声が上ずってるぞ。しかも何故に疑問形?」

 

「な、なんのことかなぁ~」

 

 

それ以上聞いてくれるな元浜よ!

 

世の中には知らない方が良いこともあるのだ!

 

 

 

 

 

 

今日は嵐山周辺の観光だ。

 

まず向かうは天龍寺!

 

 

俺、二天龍だから縁がありそうな気がするんだよね。

 

なぁ、ドライグ。

天龍寺っておまえかアルビオンに由縁があるのか?

 

『(どうだったかな。昔、京都で戦いをしたようなしてないような)』

 

どうやら、記憶が曖昧らしい。

暴れてたにしろ、相当昔のことなのかもな。

 

 

大きな門を潜り境内を進む。

受付で観光料金を払い、中を見ようとした時だった。

 

「おおっ、待っておったぞ」

 

建物の影から巫女装束の金髪少女が現れた。

 

「よっ、九重。今日はよろしく頼むぜ」

 

「うむ! 任せておけ!」

 

元気よく答える九重。

この間のような暗い表情は今日は見えない。

 

獣耳と尻尾は隠していた。

まぁ、一般の人もいるし当然か。

 

松田と元浜が九重を見て驚いていた。

 

「はー、可愛い女の子だな。イッセー、いつの間にこんなちっこい子をナンパしてたんだよ?」

 

「・・・・ハァハァ・・・・・ちっこくて・・・・・・可愛いな・・・・・」

 

元浜の息づかいが危険なものに!?

 

しまった!

こいつは真性のロリコンだった!

九重みたいな子はこいつにとってはどストライクじゃないか!

 

とりあえず、警察にでも突き出しておくか!?

 

 

「やーん! 可愛い! 兵藤、どこでこんな子を掴まえたのよ?」

 

桐生が元浜をぶっ飛ばし、九重に抱きついた!

頬擦りまでしてるよ!

おまえもちっこい子が好きなのか!

 

つーか、掴まえたって言い方止めろ。

色々あったんだよ。

 

「は、離せ! 馴れ馴れしいぞ! 小娘!」

 

「うーん! 可愛すぎるわ! お姫様口調とか最高じゃない!」

 

 

あー、ダメだこりゃ。

九重の声は届いてないな。

 

このまま放置してたら、桐生が九重を可愛がって一日が終わってしまいそうだ。

 

こいつなら、それくらいやりかねん。

 

俺は桐生を九重からベリッと引き剥がす。

 

「この子は九重。ちょっとした知り合いでな。今日は俺達の観光案内をしてくれることになってるんだ」

 

「九重じゃ、よろしく頼むぞ」

 

えっへんと堂々とした態度の九重。

 

その姿に元浜と桐生の眼鏡がキラーンと光っていたのは無視しよう。

 

「それじゃあ、早速お願いするよ、九重」

 

「もちろんじゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで俺達は九重のガイドのもと天龍寺を始めとした嵐山の名所を回る。

 

俺達に一生懸命紹介しようとする姿は微笑ましいものだった。

 

 

天龍寺に二尊院、竹林の道、常寂光寺。

 

九重が予め名所のルートを考えてくれていたおかげで、当初の見込みよりも多くの名所を観光することができた。

 

小さいのにしっかりしていて、松田達も「へぇ」と感心していた。

 

九重は自ら案内を申し出たこともあって、責任感とかもあったのかな?

 

とにかく、俺達を楽しませようと頑張ってくれていたよ。

 

 

 

「いやー、結構歩いたな」

 

 

 

息をつくのは松田だ。

 

俺達は九重の薦めで湯豆腐屋で昼食を取ることにした。

 

 

歩いて少し疲れたのもあるし、時間的にもちょうどよかった。

 

 

実はこれも九重のプラン通りだったりもする。

 

聞けば、あの狐耳のお姉さんとか天狗の爺さんにどこを回れば良いか予め聞いていたそうだ。

 

おかげで俺達はかなり楽しめた。

竹林の道も良かったし、人力車に乗っての観光なんかも出来たからな。

 

「ここの湯豆腐は絶品じゃ」

 

九重が俺達に湯豆腐をすくって器に入れてくれる。

 

本当にしっかりしてるよな。

 

九重はというと、心底楽しそうに笑っている。

これが普段見せている年相応の姿なんだろうな。

 

「これがイッセーの分じゃ」

 

「サンキュー」

 

俺は礼を言って器を受けとる。

 

おぉー、これは美味そうだ!

昆布のダシの香りが食欲をそそるぜ!

 

桐生から箸を受けとり早速・・・・・・・。

 

 

んー、美味い!

 

豆腐もいつも食べてるやつとは違うな!

薬味もお好みで選べるというのも良い!

 

俺は大根おろしを乗せてポン酢をひとたらしっと。

 

あー、やっぱり和食って良いよね。

 

「これはいけるな」

 

ゼノヴィア達もはふはふ言いながら湯豆腐を味わってる。

 

そういや、皆は湯豆腐食べたことなかったな。

家では作らないし。

 

これも良い思い出になったんじゃないかな?

 

もしかしたら、帰ってからもう一度食べてみたいとか言い出したりするかも。

 

 

「あ、イッセー君」

 

声をかけられたので振り返ると木場の班が隣の席で昼食をとっていた。

 

「よう、木場じゃねぇか。そういや、おまえ達も今日は嵐山だったな」

 

「うん。天龍寺は行ってきたかい?」

 

「もちろん。天井の龍は圧巻だったぜ」

 

「僕達も午後は渡月橋を見てから天龍寺に行く予定だから楽しみだよ」

 

「そっか。俺達もこの後、渡月橋に行くから途中まで一緒に行くか」

 

「そうだね」

 

などと話していると今度は後ろから声をかけられた。

 

「おう、おまえら、嵐山堪能してるか?」

 

後ろの席ではアザゼル先生とロスヴァイセさんがいた。

 

ってか、真っ昼間から酒ですか!

 

「先生達も来てたんですね。つーか、教師が昼酒ってのはどうかと思いますよ?」

 

「無駄ですよ、イッセー君。この人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。生徒の手前、そういうのはいけないと再三言ってはいるのですが・・・・・」

 

ロスヴァイセさんはお怒りのようだ!

額に青筋立ててるよ!

 

こ、恐い!

 

「まぁ、そういうなよ。嵐山方面の調査した後のちょっとした休憩じゃねぇか。心配すんな。どこぞのお姫様みたいに酒に飲まれることはないからよ」

 

先生・・・・・・それ、アリスのこと言ってますよね?

 

本人の前では言わないでくださいよ?

あいつ、結構引きずるタイプなんで。

 

「飲むとか飲まれるとかの問題ではありません。私達教師は生徒の見本にならないといけないんですよ? それを・・・・・・」

 

「大丈夫だって。うちの生徒はやって良いことと悪いことの区別ぐらいつけてるさ。俺達が多少崩したところで非行に走る奴なんざいねぇよ。はぁ・・・・・。ロスヴァイセよ。おまえ、もう少しお堅いところを直した方が良いぜ? そんなんだから、男の一人もできねぇんだよ」

 

 

あ・・・・・・

それ、禁句じゃね?

 

 

俺が気づいた時には既に遅く―――――

 

 

 

バンッ!

 

 

 

ロスヴァイセさんは真っ赤になってテーブルを叩いた!

 

「か、かか彼氏は関係ないでしょう!? バカにしないでください! 分かりましたよ! 飲めばいいんでしょう!」

 

ロスヴァイセさんはそう叫ぶと先生から酒を奪った!

 

 

くびっぐびっ

 

 

おおっ!

見事な飲みっぷりだ!

 

「ぷはー! だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがラメなんですよ」

 

おいおいおい!

呂律回ってなくね!?

 

早っ!

酒回るの早っ!

 

 

「い、一杯で酔っぱらったのか・・・・・・?」

 

流石の先生もこれには驚いているようだ!

 

だよね!

俺もその気持ちは分かるぜ!  

 

あ! ロスヴァイセさんが二杯目を!

 

「ぷふぁー!」

 

二杯目も見事な飲みっぷりで!

 

気のせいか・・・・・なんか目が据わってるような・・・・・・。

 

「わらしはよってなんかいないのれふよ。わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしているころから、おさけにつきあっていたりしてれれすね。おさけにはつよいんれすよ」

 

うん!

絶対に強くないよね!

確信を持って言えるよ!

 

なぜ、二杯でそんなになるんだ!?

 

アリスよりも酷い酔い方だ!

 

 

しかし、ロスヴァイセさんの愚痴は続いていく!

 

「あー、なんらかあのジジイのことおもいらしたら、はらたってきた。こんろあったら、ただじゃおかないっすよ。わらしはやすいおきゅうきんでみのまわりをせわしてたんれすよ? ジジイのせいれ、かれしはできないし、できないし・・・・・・・かれしができないんれすよぉぉぉぉおおおおお!! わらしだってすきでしょじょしてるんじゃなぁぁぁあああいっ!!!!!!」

 

 

だ、大号泣しだしたよ・・・・・・。

 

この人にお酒は『飲ますな危険』だな。

 

今、家で飲むのは父さんと母さん以外に俺とアリスくらいだ。

当然、年齢的な問題もある。

 

部長達も二十歳なれば飲み始めるとは思うけど・・・・・・何があってもこの人だけには飲まさないでおこう。

 

家でこんな状態になられたら、誰が止めるんだよ・・・・・・?

 

俺か?

うん、絶対無理。

断言しておくぜ。

 

こんな状態の人を止める術は持ち合わせていないな。

 

 

あと、美羽。

処女ってところに凄く反応してたけど、頼むから気を付けてくれよ?

 

つーか、桐生!

そこで俺達を見るな!

 

バレる!

 

 

「わかったわかった。おまえの愚痴に付き合ってやるから、話してみな」

 

 

お、流石は先生だ。

酔っぱらいの対処法もお手のものみたいだ。

 

先生の言葉を聞いて、ロスヴァイセさんは大号泣から一転、パァッと明るい表情になる。

 

「ほんとうれすか? アザゼルせんせー、いいところあるじゃないれすか。てんいんさーん、おさけ、じゅっぽんついかれー! アハハハハ!」

 

 

おいいいいいいいっ!!

 

まだ飲むんかい!

 

止めよう!

そろそろ止めとこう!

 

なんてこったよ!

この人、百均だけじゃなかったよ!

 

酔っぱらいヴァルキリーだよ!

 

「おまえら、さっさと食って行け。ここは俺が受け持つからよ」

 

「り、了解っす・・・・」

 

とりあえず、俺達は先生の言う通りにすることにした。

 

昼食をさっさと済ませ、店を出る。

 

 

「ひゃくえんショップ、サイコーれすよー! アハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出て、渡月橋を目の前にした俺達。

 

「ロスヴァイセちゃん、すごいことになってたな」

 

「ああ、あれは相当酒癖悪いぞ」

 

松田と元浜も若干引いていた。

 

俺もあれには驚いたよ。

 

「きっと、ロスヴァイセちゃんも色々苦労してるのよ」

 

桐生はうんうん頷いて同情している。

 

 

ま、まぁ、確かに苦労はしてるかな・・・・・・。

 

オーディンの爺さんにはかなり手を焼いていたようだし。

 

「お主達も大変だな」

 

「あ、アハハハハ・・・・・・」

 

・・・・・・・九重にまで同情されてしまった。

 

ロスヴァイセさんには言わないでおこう。

 

泣く。

 

 

さてさて、気を取り直して次に行きましょうか!

 

次は渡月橋!

 

歴史を感じさせる古風な木造の橋がそれだ。

ここから見える山の風景が絶景だ!

 

「知ってる? 渡月橋って渡りきるまで後ろを振り返ったらいけないらしいわよ?」

 

桐生がそう言ってくる。

 

アーシアが聞き返す。

 

「どうしてですか?」

 

「なんでも、渡月橋を渡ってる途中で振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしいのよ。そこのエロ三人組は振り返ったら終わりね。エロが無くなったらただのバカになってしまうわ」

 

「「「うるせぇよ!」」」

 

俺、松田、元浜が桐生に返す。

 

おまえ、バカにしすぎだろ!

俺だってエロ以外の知識くらいあらぁ!

 

気にする素振りもない桐生は追加情報をくれる。

 

「あと、振り返ると男女が別れるって言い伝えもあるわね」

 

 

ガシッ

 

 

「絶対に振り返らないよ!」

 

桐生の説明を聞いて美羽が俺の腕に強く掴まる!

必死の表情だ!

 

「お、おい、美羽?」

 

「お兄ちゃんも絶対に振り返ったらダメだよ!」

 

「あ、はい・・・・」

 

うーむ、美羽が涙目で言ってくるものだから、つい頷いてしまった。

 

迷信だと思うんだけどね。

 

まぁ、可愛いから良しとしよう!

 

 

「あいつら、義理とはいえ兄妹だろ? どうみてもカップルにしか見えん・・・・・」

 

「うむ。あそこまでいくと既にバカップルの領域だ・・・・・・。まさかと思うが・・・・・・」

 

 

うっ・・・・・・。

 

松田元浜め、なんて鋭い!

 

元浜なんて、何かを察したような顔してるけど!?

大丈夫だよね!?

まだセーフだよね!?

 

「気にせんでいいと思うのじゃが・・・・・。男女の話は噂に過ぎんのじゃ。なんでも大昔にここで男女が痴話喧嘩して別れたとかで・・・・・」

 

九重がそう言ってくれる。

 

なんか良くありそうな話だな、それ。

その男女がここで別れたのが広まって今に至ると。

 

それを聞いても美羽は頑として腕を離そうとはしない。

まぁ、美羽は純粋だからね。

 

 

無事に渡りきり、反対岸に到着。

 

美羽も大きく息を吐いて一安心してる。

 

 

ふと振り返ってみると――――

 

 

「うぅ・・・・・イッセーさん」

 

「中々に見せつけてくれるな。イッセー、後で私にもさせてくれ」

 

「確かにこれはバカップルだわ」

 

「イッセー君と美羽さんって・・・・・」

 

 

おおうっ!?

 

アーシアが涙目だし、ゼノヴィア、イリナ、レイナが半目で見てくるよ!

 

 

「とりあえず、委員会に連絡だな」

 

「案ずるな松田よ。既に連絡済みだ」

 

 

おいいいいいいいっ!!

 

委員会はやめろ!

 

つーか、委員会って何!?

 

結局、どういう組織なの!?

 

 

その時だった。

 

 

突然、ぬるりと生暖かい感触が全身を包み込んでいった―――――

 

 

 

 


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