ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 姫の気持ち

金閣寺近くの人気のない場所に設置した鳥居。

 

そこを潜った先にあったのは完全な別世界。

 

江戸時代の町並みのセットのように、古い家屋が立ち並んでいる。

まるで時代劇の世界に入り込んだようだ。

 

薄暗い空間と独特の空気。

そして、そこに住まう妖怪達が俺達を迎えてくれていた。

 

一つ目の大きな顔の者もいれば長い首をもった者。

他にも立って歩く狸や河童など様々だ。

それら全てが俺達に好奇の視線を向けてくる。

 

 

この間の狐の姫様がいるところまで狐のお姉さんが案内してくれている。

 

「ここが妖怪の世界なんですか?」

 

「はい。ここは京都に住まう妖怪が身をおく場所です。悪魔の方々がレーティングゲームで使うフィールド空間があると思いますが、あれと似たような方法でこの空間を作りだしています」

 

「へぇ、妖怪の世界でもレーティングゲームって知られてるんですね」

 

「レーティングゲームの試合の様子はこちらでも見ることができるのですよ。中には熱狂的なファンもいます」

 

「なるほど。この世界は裏の都って呼ばれてるんでしたっけ?」

 

「他にも裏街、裏京都などとも呼んでおります。大抵の妖怪はここに住んでいますが、中には表の京都に住む妖怪もおります」

 

「へぇ」

 

妖怪にも色々あるんだな。

 

 

家屋が立ち並ぶ場所を抜けると林に入る。

そこを更に進むと巨大な赤い鳥居が現れた。

 

かなりの大きさだな。

千本鳥居で見たやつよりも三倍くらいあるか?

 

先生とセラフォルーさん、ティアを鳥居の先に発見。

 

「お、来たか」

 

「やっほー、待ってたわよ☆」

 

「よ、イッセー」

 

三人に手を振って返す俺。

 

すると、二人の間に金髪の少女がいた。

あの九尾の娘さんだ。

 

今日は巫女装束ではなく、戦国時代のお姫様が着るような豪華な着物を着ていた。

こうして見ると確かに小さなお姫様って感じだ。

 

「九重様。皆様をお連れいたしました」

 

俺達を案内してくれた狐のお姉さんはそう言うとドロンと炎を出現させて消えてしまった。

 

今のが狐火ってやつなのかな?

漫画とかでよく見るけど実物を見れるとはね。

 

 

お姫様は俺達の方に一歩出てきて口を開く。

 

「私は京都に住まう妖怪達を束ねる者――――八坂の娘、九重と申す」

 

そう自己紹介をした後、深く頭を下げてきた。

 

「先日は申し訳なかった。お主達を私の勘違いで襲ってしまった。どうか、許してほしい」

 

と、この間のことを謝ってきた。

 

皆の方を見ると、俺に視線が集まっていた。

 

 

まぁ、実際にやり合ったのは俺だし・・・・・・。

そういえば、俺と美羽以外の皆は松田達のことを任せていたから出会ってすらないんだよね。

 

この感じだと俺に任せるってことなのかね?

 

「まぁ、誤解が解けたのなら俺はいいよ。一応、そっちの事情も聞いてるからさ、気にしないでくれ」

 

「し、しかし、私はお主達に危害を・・・・・」

 

あらら・・・・。

なんか、かなり気にしてるみたいだな。

 

危害って言われても特にそれといった危害は受けてないんだよね。

 

俺は片膝をついて九重に視線を合わせる。

 

「九重はさ、お母さんが心配でああいうことをしたんだろう?」

 

「あ、ああ・・・・・だが、そのせいでお主達に迷惑を・・・・・・」

 

「だから、九重は俺達に謝った。間違ったことをしたと思ったから・・・・・・だろ?」

 

「もちろんだとも」

 

「それなら俺は・・・・・俺達は九重のことを責めたりはしないよ。九重はちゃんと謝ってくれたからな」

 

そう言って俺は笑顔で九重の頭を撫でてあげた。

 

九重はというと、顔を真っ赤にしてモジモジしながら呟いた。

 

「・・・・・・あ、ありがとう」

 

「おう!」

 

ま、こんな感じかな?

 

誤解も解けたし、九重も謝ってくれた。

一先ずはこれでOKだろ。

 

 

あ、そういえば・・・・・・

 

俺は九重に耳打ちする。

 

(あのさ、俺が投げ飛ばしたあの人達、大丈夫? 割りと本気で投げちゃったからさ・・・・・・)

 

(あやつらは私が連れていた中でもそれなりの手練れ。あれくらいなら大丈夫じゃ。・・・・・・まさか、ああも簡単にあしらわれるとは思わなかったが・・・・・・)

 

あははは・・・・・・。

ま、まぁ、無事なら何よりかな?

 

 

俺が立ち上がると先生が小突いてきた。

 

「流石は勇者・おっぱいドラゴン様だ。子供の扱いが上手いな」

 

「ここで勇者の肩書きを出さないでください。それに自分から名乗ったことはありませんよ」

 

「いいじゃねぇか。おまえがどう言おうと周囲からはそう言われてたんだしよ」

 

まったく、この人は・・・・・・。

これ以上は言っても無駄だから言わないでおこう。

 

「こんなところでおっぱいドラゴンの布教を広げようとするなんて! 私も魔女っ子テレビ番組『マジカル☆レヴィアたん』の主演として負けていられないわ!」

 

なんか対抗意識燃やされてる!?

 

こんなことで対抗しないで!

 

ったく、どこでも魔王様はいつも通りなんですね!

 

 

そんなやり取りをしている俺達に九重が言った。

 

「・・・・・私がこのような事を言うのは身勝手だとは思う・・・・・じゃが! どうか・・・・・どうか、母上を助けるために力を貸してほしい!」 

 

 

 

 

 

 

俺達は屋敷に入り、事の顛末を聞いていた。

 

 

この京都を仕切る九尾、八坂さんは須弥山の帝釈天から遣わせれた使者と会談するために数日前に屋敷を出たという。

 

ところがその八坂さんは会談の時間になっても姿を現すことがなく、そのまま連絡が取れなくなった。

 

このことを不審に思った妖怪サイドが調査を行ったところ八坂さんの護衛についていた烏天狗を瀕死の状態で保護した。

 

「その後、その者が母上が襲撃を受け、さらわれたことを伝えてくれたのじゃ」

 

「その天狗は?」

 

「もう・・・・・」

 

俺の問いに九重は悲しげな表情で首を横に振った。

 

先生達の見立てでは今回の件に『禍の団』が絡んでいる可能性は高いとのことだ。

 

「各勢力が手を取り合おうとすると、こういうことが起こりやすい。オーディンの時はロキ。そんでもって、今回はテロリストってことだ。どいつもこいつも面倒な奴らばかりだ。そんなに俺達が気に入らないのかね?」

 

先生が不機嫌そうに言う。

 

平和な日々を願う先生のことだ、きっと腹の内は煮えくり返ってるのだろう。

 

ま、それは俺もか。

 

 

九重の脇に座る天狗の爺さんが言う。

 

「総督殿、魔王殿。どうか、八坂姫を助けるため、力をお貸しいただけないじゃろうか? 我らに出来ることならば何でもいたす」

 

この天狗の爺さんは天狗の長で古くから九尾の一族と親交が深いそうだ。

今回もさらわれた八坂さんを助けるために集まってくれた。

 

 

天狗の爺さんは一枚の絵画を見せてくれた。

 

「ここに描かれておりますのが八坂姫でございます」

 

そこに描かれているのは巫女装束を着た金髪美女!

頭部にはピンと立った狐耳!

 

そして、おっぱいがチョーデカい!

巫女装束の上からも分かるそのボリューム!

 

これが九重のお母さんなのか!

 

「お兄ちゃん、涎垂れてる」

 

ハッ!

 

いかんいかん!

九重が困っているときにこんな卑猥なことを!

 

いや・・・・・・でも、ここまでの美女とは思わなかったから・・・・・。

 

 

俺が涎を拭っていると先生が言う。

 

「八坂姫をさらった奴らが京都内にいるのは確実だろう」

 

「どうして分かるんですか?」

 

「京都全体の気が乱れてないからだ。御大将――――九尾の狐はこの地に流れる様々な気を管理し、バランスを保つ存在でもある。京都ってのはその存在自体が巨大な力場だ。もし九尾がこの地を離れるか殺害されていれば京都には異変が起こるんだよ。まだそれがないってことは御大将は生きてこの京都にいるってことさ。そして、さらったテロリスト共もそこにいるだろうぜ」

 

やっぱり京都って特別な都市なんだな。

 

でも、そうなら少し急がないとヤバイか。

 

テロリストが八坂さんをさらったってことはだ、少なくとも八坂を使って何かするということ。

それで、八坂さんの身に何かがあれば、それによる被害は京都中に出ることになる。

 

「セラフォルー、悪魔側での調査はどうなっている?」

 

「今も動いてもらってるけど、情報はないわ」

 

「ティアマットは?」

 

「私の方も同じくだ」

 

先生は二人の報告を聞いてむぅと唸ると俺達を見渡す。

 

「おまえ達にも動いてもらうことになるかもしれん。人手が足りなさすぎるからな。強者との戦いに慣れているおまえらなら、いざというときにも動けるだろう。その時が来たら頼むぞ」

 

『はい!』

 

先生の言葉に俺達は応じた。

 

九重が手をつき深く頭を下げる。

脇に座る天狗の爺さんと狐のお姉さんもそれに続く。

 

「どうかお願いじゃ・・・・・母上を助けるのに力を貸してくれ・・・・・・・。どうか・・・・・・お願いします・・・・・・!」

 

震える声で言う九重。

 

畳にはポロポロと涙が零れていた。

 

 

俺は立ち上がり、九重に言った。

 

「任せとけ! 俺達が九重のお母さんを取り返す! そんでもってテロリストの奴らもぶちのめしてやるよ!」

 

 

どんな理由があるにしろ、こんな小さな女の子を泣かせるような奴は―――――潰す。

 

徹底的にな。

 

俺の中ではテロリスト共に対する怒りが燃え盛り始めていた。

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた・・・・・・」

 

 

ボフッ

 

 

部屋に入って早々に布団へとダイブ。

 

夕食も済ませたし風呂も入った。

 

いやー、今日は色々あって疲れたわ。

 

 

妖怪の世界――――裏京都を出た後、俺達は金閣寺に戻り、寝ていた松田達を起こして観光を再開。

お土産を買ったり、今日予定していた他の名所も無事に回ることが出来た。

 

ホテルに帰ってからは木場やシトリー眷属とも今後についても話し合った。

まぁ、先生達から連絡があるまでは観光をつづけるんだけどね。

 

 

明日は嵐山にいく予定なんだけど、なんと九重がガイドをしてくれることになった。

 

俺達を襲ってしまったお詫びとのことだ。

俺達はもう気にしてないんだけど、あちら側の好意もあるからね。

とりあえず、受けておいた。

 

母親をさらわれて九重も不安だろうけど、明日の観光で少しでも気をまぎらわせることが出来れば良いな。

 

 

九重と一緒に観光ということは松田達の前に姿を現すということだろ?

耳とか隠せるのかな?

 

まぁ、小猫ちゃんも普段は隠してるし、問題ないとは思うけど。

 

 

それにしても、九重の耳・・・・・・フワフワしてた・・・・・・。

 

うーむ、もう一度くらいは触ってみたいものだ。

 

 

さてと、今から何をするかな。

 

松田と元浜は女子風呂を覗きに行くだろうし。

まあ、風呂の見張りにはロスヴァイセさんとシトリー眷属がいるとのことだから確実に死ぬだろう。

 

俺は二人とは別ルートで行ってもいいが・・・・・・・。

 

 

すると――――

 

 

 

コンコン

 

 

 

部屋の扉がノックされた。

 

この感じは美羽か。

 

俺は起き上がって部屋の扉を開ける。

 

 

そこには浴衣を着た美羽が立っていた。

 

風呂上がりなのか、髪がしっとり濡れていて頬が少し赤い。

水滴が美羽の首筋をつたい、そのまま胸へスーッと流れ落ちる―――――

 

 

ぐっ・・・・・・・なんとも言えない色気があるな!

 

「遊びにきたよ、お兄ちゃん。・・・・・ってどうしたの? 鼻血出てるよ?」

 

「えっ・・・・あ、ホントだ」

 

美羽の浴衣姿って初めて見たけど、可愛いし・・・・・・なんか色気が半端じゃない。

風呂上がりってのもあるんだろうか?

 

「ま、まぁ、上がってくれ」

 

「じゃあ、お邪魔しまーす」

 

俺は美羽を部屋に招き入れ、とりあえず鼻血を拭う。

 

 

『妹の浴衣姿に欲情か』

 

うるせー!

 

浴衣の間から見えるおっぱいについ反応しちゃうんだよ!

仕方がねぇだろ!

 

「とりあえず、ジュースでも飲むか? 冷蔵庫に色々入ってるけど」

 

「そうだね。何があるの?」

 

「オレンジとリンゴ、ブドウもあるし、あとはミックスジュースかな」

 

「そんなに買ったの?」

 

「いや、元から入ってた。ほら、俺だけ部屋がこんなだろ? それの代わりか何かは知らないけど、この部屋の飲み物は結構充実してたんだよ。ホテルの人に聞いたら全部タダで飲んで良いって言われてさ」

 

「へぇ、それじゃあ飲み放題ってことだね」

 

「ま、そうなるな」

 

俺は二人分のコップにジュースを注ぎ、片方を美羽に手渡す。

 

美羽は腰に手を当て、一気に飲み干した。

 

「プハァー。お風呂上がりの一杯って良いよね」

 

「おじさんかよ」

 

「もうっ。ボク、まだまだ若いよっ」

 

プクッと頬を膨らませる美羽。

 

「ははっ、冗談だって」

 

いやー、反応が一つ一つ可愛いよね。

 

俺は笑いながら、コップに口をつける。

 

「二日目を終えたわけだけど、初の京都はどうだった?」

 

そう、美羽はゼノヴィア達と同じで今回が初の京都だった。

そのため、前々から下調べしたり、修学旅行の準備も張り切ってしてたんだ。

 

美羽と一緒に買い物に行ったりもしたっけな。

 

 

ちなみに俺は以前に一度来たことがある。

 

あれは小学校低学年の時だったかな?

転校していった友達の家が京都にあって、遊びに来たことがあるんだよね。

 

まぁ、その友達も今は引っ越して九州にいるけど。

 

美羽は二日間の思い出を振り返りながら微笑む。

 

「すごく楽しかったよ。どこの名所も立派なものばかりだったしね。ゲイルペインに住んでいた頃には見たことが無いものばかりだったよ。それに・・・・・・」

 

「それに?」

 

「友達とこうして旅行に来てワイワイすることなんてほとんどなかったから、それが一番の思い出なんだ」

 

そっか。

 

そういえば、昔の美羽はギャスパーみたいに引きこもりだったな。

エルザとかと遊ぶこともあったみたいだけど、基本的には室内で遊ぶことが多かったらしいし。

 

中学のころは三年生からだったから二年生の修学旅行には参加できなかったしな。

今回が美羽にとって初めての修学旅行になるのか。

 

そういうところではアーシアとかゼノヴィアとかと変わらないか。

 

「まぁ、楽しかったのならそれでいいさ。美羽が喜んでくれるなら俺も嬉しいしな」

 

「お兄ちゃんは楽しかった?」

 

「もちろん」

 

まぁ、色々あったけどな。

 

 

そんな感じで俺と美羽がこの二日間の思い出を語り合っていると――――――――

 

『イッセー!』

 

『ついに見つけたぞ!』

 

廊下から松田と元浜の声が!

ドタバタと走ってきている!

 

俺の部屋に入ろうってのかよ!

 

「美羽、遮断結界を頼む」

 

「えっ? なんで?」

 

「久しぶりの兄妹水入らずをあいつらに邪魔されてたまるか」

 

「あ・・・・うん」

 

美羽は頷くと、魔法陣を展開。

俺と美羽を囲むように小さなドーム状の結界が形成される。

 

これであいつらからは俺と美羽の姿が見えることは無いしこちらの声が聞こえることも無い。

 

 

バタンッ

 

 

勢い良く扉が開かれ、松田と元浜の二人が現れた。

 

松田が部屋を見渡して言う。

 

「あれ? イッセーのやついないじゃん」

 

まぁ、俺達からはバッチリ見えてるけどね。

あいつらからは俺達の姿は目視できない。

 

「もしかしたら、あいつも女湯が覗けるという例のスポットの存在を知ったのかもしれん!」

 

「なに!? いや、あいつなら気付いていても不思議じゃない! 先に覗くつもりか!?」

 

「そうに違いない! 行くぞ松田! あいつにだけ良い思いをさせるな!」

 

「おおっ!」

 

 

ドタドタと走り去っていく二人。

 

ていうか覗きが出来るスポットだと!?

そんな場所があったのか!?

 

き、気になる!

行ってみたい!

 

 

だが!

今はこの時間を大切にしたい気持ちで一杯だ!

 

ここは・・・・・・美羽を優先する!

 

 

「そろそろ解いても良いかな?」

 

「そうだな・・・・・・いや、ちょっと待った。誰か来た」

 

 

人が近づいてくる気配を感じて美羽を制止する。

 

すると、現れたのはアーシア、イリナ、ゼノヴィアの教会トリオだった。

 

三人は俺の部屋を覗くと首を傾げる。

 

「イッセーさん?」

 

「いないな。どこかに出かけているのか?」

 

「女湯覗きに行ってるのかも。イッセー君ならしそうだし」

 

俺ってやっぱりそーいうイメージなのね。

まぁ、否定はしないけど。

 

美羽とのおしゃべりがなければ覗きに行ってたかもしれないし。

 

 

とりあえず、この三人なら結界を解く瞬間を見られても問題ない。

 

俺は美羽に結界を解くように言おうとすると――――――――

 

 

美羽に口を手で覆われて、布団に押し倒された!

 

突然のことに慌てる俺に対して美羽は人差し指を立てて「しーっ」と言ってくる!

 

な、何ごとっ!?

 

 

そんなことになってるとは気付かず教会トリオは、

 

「しかたがない。時間を改めてまた来よう」

 

「そうですね」

 

「じゃあ、卓球しにいかない? 勝負よゼノヴィア!」

 

「のぞむところだ!」

 

「とりあえず、誰もいないようだし電気だけ消しときましょうか」

 

 

パチンッ

 

 

イリナが気を使ってくれたのか、部屋の電気を消してしまった!

節電は大切だよね!

ありがとう、イリナ!・・・・・・ってそうじゃなくて!

 

そして、三人は扉を閉めてここから去ってしまう!

 

 

 

え、ええええええええええええええええっ!!!

 

 

何、この状況!?

どうすればいいのこの状況!?

 

 

真っ暗な部屋に俺と美羽の二人だけ!

しかも、俺は美羽に布団の上に押し倒されてる!

展開が急すぎてわけが分からねぇ!

 

「お、おい・・・・・・美羽? ど、どうしたんだ?」

 

俺は恐る恐る尋ねてみる。

 

流石にこの展開は考えてなかったから何が何だか分からない状態だ。

 

「ボクね・・・・こっちに帰ってきてからずっと、お兄ちゃんに伝えたいことがあったんだ・・・・・それで、二人きりになる機会を探してたの・・・・」

 

「二人きり?」

 

「うん。家だと皆がいるからね」

 

確かに家では部長達もいて二人きりになる時間は無かった。

それにアスト・アーデから帰ってきてからはライザーの更生計画だの、アリスの町探索とかで忙しかったもんな。

 

それにしても伝えたいことってなんだ?

それも態々二人っきりでなんて・・・・・・。

 

何か悩み事でもあるのだろうか?

それも他人には聞かせられないようなこと・・・・・?

 

それならば、俺はしっかり訊いてやらないと!

兄として妹の力になってやらねば!

 

そう自分に言い聞かせる俺の上では、

 

 

 

(押してダメなら押し倒せ)(押してダメなら押し倒せ)(押してダメなら押し倒せ)(押してダメなら押し倒せ)・・・・・・・」

 

 

 

何やら念仏のように呟いているんだけど・・・・・・。

 

俺が怪訝に思っていると美羽が口を開いた。

 

「お、お兄ちゃん・・・・」

 

「お、おう。な、なんだ・・・・?」

 

聞き返す俺。

 

そして、美羽から出た言葉は―――――――――

 

 

「お兄ちゃんは・・・・・イッセーはボクのことを妹としてしか見れない? 一人の女の子としてはもう見れないかな・・・・・?」

 

 

「へっ・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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