ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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第九章 修学旅行はパンデモニウム
1話 修学旅行直前です!


ある日の夜。

 

 

「ね、ねぇ・・・・・今日、一緒に寝て良い・・・・・?」

 

 

 

一日の予定を済ませ、後は寝るだけ。

ただ、寝るには少し早いのでヘッドの上で漫画を読みながら一人ゴロゴロしていた時だった。

 

枕を持ったパジャマ姿のアリスが部屋に入ってきた。

そして、開口一番にそう言ってきたのだった。

 

 

「え? あ、いや、別にいいけどさ・・・・・。どうしたんだ?」

 

 

アスト・アーデから帰還してから一週間ほど。

こちらの世界に来たアリスは自分の部屋で寝ていた。

 

それが、いきなり一緒に寝ると言ってきたので俺は少し驚いていた。

 

 

アリスは胸に抱き抱えた枕に顔を埋めながら小さな声で言う。

 

「・・・・だって・・・・今度、どっか行くんでしょ? また離れることになるかと思ったら・・・・・・」

 

「いや、大袈裟だろ・・・・・・。たかだか、四日ほど別れるだけだよ。しかも京都だから近いし」

 

俺はアリスに苦笑しながらそう返す。

 

そう。

俺達、駒王学園の二年生は京都に三泊四日の修学旅行旅行に行く。

 

既に俺は準備を済ませていて、後は行くだけ。

まぁ、何かすることがあるとすれば、お土産とか名所を見ておくくらいだ。

 

向こうでは基本的にグループ行動だから、どこを回るかは桐生達と相談することになるけどね。

 

 

何にしても、アリスが言うほど大層なものじゃない。

異世界に行くとか言うなら分かるけど、俺達が行くのは京都だ。

交通機関を使えば数時間、魔法陣を使って転移すれば一瞬の距離。

 

「何かあれば直ぐに連絡できるし、思ってるようなことにはならないよ」

 

俺がそう言うとアリスは枕から少し顔をあげて、

 

 

「・・・・・・ダメ?」

 

 

はうっ!

 

 

そんな目元を潤ませながら言わないでくれ!

つーか、アリスってそんなキャラだったか!?

 

クソッ!

メチャクチャ可愛いじゃねぇか!

 

 

 

「わ、分かったよ。じゃあ、寝るか?」

 

「・・・・・うん」

 

 

というわけで、アリスもベッドの上へ。

 

少し恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうにしているのは気のせいだろうか?

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 

う、うーん・・・・・・・。

例の風呂の時みたいになってる・・・・・・。

 

会話がない。

 

 

すると、アリスが寝返りを打って俺の方に体を向ける。

 

「ねぇ、イッセーってさ・・・・・」

 

「ん?」

 

「いつも、皆と寝てるわよね・・・・・?」

 

「ま、まぁ、そうだな・・・・・」

 

一昨日なんか、部長達が裸で俺に抱きついて寝ていたんだけど・・・・・・。

そこをアリスに目撃されて、とんでもないことになった。

 

「わ、私も・・・・・」

 

そう呟くとアリスは俺に体を寄せてピッタリとくっついてきた。

 

「たまには・・・・・いいでしょ?」

 

んんんんん!?

なんだこの状況!?

 

俺が状況を呑み込めずに混乱しているとアリスは上目使いで言った。

 

「それとも、やっぱり胸の大きい娘の方が・・・・・いい?」

 

「いや、そんなことはないって!」

 

 

ヤバイ・・・・・。

 

なんか、スゲードキドキしてきた!

心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる!

 

さっきも言ったけど、アリスってこんなことするキャラだったか!?

 

アリスが俺に好意を持ってくれているのは分かってる。

それでも、いつもは俺がエロいことをすると容赦なくツッコミ入れてくるポジションだったはずだ!

 

それが今!

 

 

俺とアリスの距離は急接近していた!

 

 

次第にアリスの顔が近づいてきて―――――

 

「イッセー、私ね・・・・・・」

 

アリスが何かを言いかけた時だった。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

「お兄ちゃん、もう寝たの? 今日は早いんだね。・・・・・・・・えっ?」

 

 

 

美羽が部屋に入ってきたぁぁぁぁあああああ!!!!

 

このタイミングで!?

 

ヤベーよ!

 

男女が体を密着させて向かいあってるんだぜ!?

言い訳できねぇ!

 

 

「あら? どうしたの美羽? ・・・・・・・!?」

 

部長も来ちゃったよ!

しかも、この状況を見て固まっちゃったよ!

 

それにつられて他のメンバーも入ってくる!

 

「あらあら、これは・・・・・・」

 

「はぅぅっ! 出遅れましたぁ!」

 

「・・・・・一瞬の隙が命取り」

 

朱乃さん、アーシア、小猫ちゃんだ!

 

皆もこの光景に絶句してる!?

 

つーか、命取りってどういうことだよ!?

 

 

肩をプルプルと震わせる美羽。

 

俺は恐る恐る声をかけてみた。

 

「み、美羽・・・・・・?」

 

 

すると――――――

 

 

 

 

「アリスさんだけズルいよっ! ボクもお兄ちゃんにくっつく!」

 

 

 

 

 

この日、俺は女子の皆に密着されて眠ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「将来的にはグレモリー領に北欧魔術の学舎を設立や、悪魔の女性から戦乙女を輩出したり、新しい事業に挑戦してみたいと思っています」

 

ロスヴァイセさんが自身が思い描くビジョンを語る。

 

「天使の私が上級悪魔のお屋敷にお邪魔できるなんて光栄の限りです! これも主と魔王様のおかげですね!」

 

楽しそうにするイリナ。

 

「今回はお招き頂きありがとうございます。私もリアスさんのご実家を訪れることができる日が来るなんて思ってもいませんでした」

 

レイナは丁寧に挨拶をしている。

 

 

俺達、グレモリー眷属+レイナ+イリナは部長のご両親とお茶会を開いていた。

 

 

美羽とアリスはと言うと、今日は父さん、母さんの四人でまた町歩きをしている。

アリスはこっちに来てから日が浅すぎるからな。

まずはこの世界に慣れようというのが目標だ。

 

駒王学園への入学も考えてはいるそうだけど、それはもう少し先のことになりそうだ。

 

大学部に入るのかな?

 

 

それで俺達がなぜ、ここに来ているかと言うと、部長の眷属が揃ったので、記念として改めて紹介することになったんだ。

 

本当ならもう少し早くしたかったところだったけど、ロキとの戦いの後に俺が入院したり、異世界に行ったりしてドタバタしてたからな。

異世界から帰還した後も、サーゼクスさんに報告したりもしてたし・・・・・・。

 

ま、ジオティクスさんもヴェネラナさんも紹介が遅れたことについては全く気にしてないみたいだけどね。

少なくとも俺が入院していたことに関しては知ってるみたいだし。

 

「ハハハ。ロスヴァイセさんは事業に関心をお持ちのようで、グレモリーの当主としては期待が膨らむばかりだ」

 

ジオティクスさんは朗らかに笑っていた。

相変わらずダンディでカッコいいお父さんだな。

 

お茶を口にしていたヴェネラナさんがカップを置くと話題を切り替える。

 

「そういえば、一誠さん達二年生の皆さんは修学旅行間近でしたわね」

 

「はい。京都に行ってきます」

 

「そういえば、リアスがお土産で買ってきてくれた京野菜のお漬け物がとても美味しかったわね」

 

あー、前回来たときに父さんに持たされたお土産の漬け物を渡したら喜んでたっけ?

 

部長も好んで食べてるし・・・・・・。

どうやら、グレモリー家の人は漬け物好きなようだ。

 

イメージが合わないけどね。

 

「それじゃあ、俺が買ってきますよ」

 

「あら・・・・・そういうつもりで言ったのではなかったのだけれど・・・・・・。ごめんなさいね、気を遣わなくてもよろしいのよ?」

 

と、ヴェネラナさんは口元を手で隠しながら頬を赤く染めていた。

 

うん、可愛い!

やっぱり、どう見ても部長のお姉さんにしか見えないよ!

 

「いえ、俺もお土産を選んだりするの好きなんで。あ、何かリクエストはありますか?」

 

「そうねぇ・・・・・」

 

 

その後も他愛のない話は続いていき、お茶会は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶会を終えた俺達はそのまま帰ろうとはせず、グレモリーが所有している一つの城に寄っていた。

 

どうやら、サーゼクスさんが魔王領から戻っているらしく、帰り際にあいさつをしておこうということになったんだ。

 

「僕も行きます!」

 

ミリキャスも父親に会いたいということで俺達と同伴することに。

 

 

そんでもって、サーゼクスさんが戻った時に使うという移住区に来た。

すると、通路でサーゼクスさんと黒髪のお客さんらしき人と鉢合わせする。

 

「お邪魔している。元気そうだな、リアス、赤龍帝」

 

その黒髪のお客さんとは貴族服を着たサイラオーグさんだった。

 

前回会った時もそうだったけど、全身から覇気が滲み出てるよな。

紫色の瞳もギラギラした闘志に満ちている。

 

俺を見た瞬間、どこか挑戦的な笑みを浮かべていたんだけど・・・・・・。

多分、俺と戦える日が来るのが待ち遠しいんだろうな・・・・・。

 

「ええ、サイラオーグこそ元気そうで何よりだわ。お兄様、ごきげんよう。こちらにお帰りになられていると伺ったものですから、ご挨拶だけでもと思いまして」

 

「気を遣わせてしまってすまないね。ありがとう、リアス。それから眷属の諸君も」

 

サーゼクスさんがミリキャスを抱き抱えながら微笑む。

 

 

こうして見てると魔王には見えないね。

シリウスと再会したから余計にそう感じてしまう・・・・・。

 

 

「お兄様、サイラオーグがここに来ていたのは?」

 

「うむ。バアル領の特産品を持ってきてくれたのだよ。従兄弟に気を遣わせてしまって悪いと思っていたところなのだ」

 

そっか。

 

サーゼクスさんから見てもサイラオーグさんは母方の従兄弟だもんな。

 

魔王の親戚で次期大王か。

サイラオーグさんの立ち位置もすごいもんだ。

 

「それから、今度のゲームについてもいくつか話してね。フィールドを用いたルールはともかく、バトルに関しては複雑なルールは一切除外してほしいとのことだ。そして――――――彼はイッセー君との戦いを望んでいる」

 

「「「っ!」」」

 

サーゼクスさんの言葉を聞いて、俺を除いた全員が驚いていた。

 

俺は・・・・・・まぁ、なんとなく予想はしてたかな。

 

「サイラオーグ、本気なの? イッセーは―――――」

 

「ああ、分かっている。今の俺では勝てまい。だが、兵藤一誠の実力がいかに抜きん出ているからと言って逃げるわけにはいかん。・・・・・・いや、違うな。俺は兵藤一誠と拳を交えたいのだ。俺の魂がそれを望んでいる」

 

 

すごい気迫と覚悟が伝わってくる。

 

サイラオーグさんの眼力高い視線が部長を捉え、そして俺に移る。

 

・・・・・・凄まじい威圧だ。

 

悪意も邪念も一切感じない。

 

あるのは純粋な戦意。

 

 

「こ、怖いですぅうううっ」

 

・・・・・なんで、俺の後ろでガクガクしてるんだよ、ギャスパー?

 

 

俺とサイラオーグさんの視線がぶつかり合っていると、サーゼクスさんが提案する。

 

「ちょうどいい機会だ。軽く拳を交えてみるといい」

 

その提案にサイラオーグさんは目を丸くしていた。

 

「よろしいのですか?」

 

「サイラオーグも今の自分の力がどこまで通じるのか知りたいのではないか?」

 

「ええ」

 

「だったら、やってみるといい。まぁ、イッセー君が了承すればの話だが・・・・・」

 

皆の視線が俺に集まる。

 

今からですか・・・・・・。

 

 

まさか、サーゼクスさんがそんな提案をしてくるとは思ってなかったよ。

 

ま、俺としては断る理由も無い。

 

「分かりました。あ、だけど、今は神器が使えない状態なんで・・・・・それで良ければ」

 

「そうなのか?」

 

「ええ、ちょっと色々あって不調なんですよ」

 

俺がそう答えるとサイラオーグさんは少し残念そうな顔をする。

 

だけど、すぐに笑みを浮かべて―――――

 

 

「それでも構わない。おまえの拳を存分に見せてくれ」

 

 

 

 

 

 

グレモリー城の地下には駒王学園のグラウンドがすっぽり入りそうなくらいの広さを持つトレーニングルームがある。

 

俺達はそこへ移動していた。

 

眼前でサイラオーグさんは貴族服を脱ぎ、グレーのアンダーウェア姿になる。

 

現れるのは鍛え抜かれた見事な肉体。

相当な修行をつんできたことがよく分かる。

 

「軽い手合わせとは言え礼を言うぞ、兵藤一誠。俺はこの時をずっと待っていた」

 

「良いさ。約束もしてるし・・・・・・・俺もサイラオーグさんとは戦ってみたいとは思ってたからね」

 

俺達は互いに笑みを浮かべる。

 

サイラオーグさんの体からは分厚いオーラが放たれていて、既に戦闘態勢に入っていた。

 

本当に部長と同世代かよ?

 

 

オーフィスの蛇を使ったディオドラをも遥かに凌いでるな。

ま、あんな奴と比べるのはサイラオーグさんに対して失礼か。

 

 

 

周囲の空気に緊張が走る。

 

 

 

「それでは―――――いかせてもらうぞ!」

 

 

その瞬間、サイラオーグさんは飛び出した。

 

 

速い!

 

 

サイラオーグさんから放たれるのは真っ直ぐで、分かりやすい一撃。

だけど、その拳に込められた想いは半端じゃない!

 

まともに食らえばダメージは受ける。

 

だったら―――――

 

 

「おらぁぁあああ!!!!」

 

 

拳に気を集中させ、サイラオーグさんの拳めがけて放つ!

 

 

「っ!」

 

 

 

バキィッ!!!

 

 

 

拳と拳がぶつかり合い、その衝撃で地面に亀裂が入る!

 

そして、俺達は弾かれたように後ろに飛び退いた。

 

 

すげぇな。

 

スピードもパワーも想像以上だ。

 

ヤンキーとの戦いの時よりも明らかに数段パワーアップしてる!

 

これが若手最強の拳!

 

 

「凄いですね。一人でそこまで鍛えたんですか?」

 

「ああ。俺には魔力の才能など皆無でな。あったのはこの体のみ。だから、俺はひたすらに身体を鍛えた」

 

 

やっぱり、俺達はどこか似てるな。

 

辿ってきた道のりは同じってわけだ。

 

 

――――まるで自分と戦ってるみたいだ。

 

 

「今度はこっちからいくぜ!」

 

 

俺は高揚を覚えながら地面を蹴って駆け出す!

 

気を高速で循環させて、身体能力を一気に高めてサイラオーグさんに拳を振るう。

 

 

ドンッ!

 

 

サイラオーグさんは顔の前で腕をクロスして俺の拳を防ぐが、耐えきれず、かなり後ろの方へと吹き飛ばされた!

 

 

ザザザッと地面を滑りながら、こちらを見るサイラオーグさんの顔は―――――笑っていた。

 

獰猛に、だけど、心の底から嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

 

「これほどとは・・・・・・! 久しぶりに満足のいく戦いが出来そうだ!」

 

 

サイラオーグさんのオーラが一段上がる。

 

そして、先程よりも速いスピードで俺に迫ってきた!

動いた衝撃で、サイラオーグさんがいたところが大きく抉れる。

 

挑んでくるのは悪魔特有の魔力合戦でもなければ魔法でもない。

純粋な格闘術!

 

真正面から飛んでくる拳と蹴り!

 

小細工抜きの肉弾戦か!

 

「いいぜ、受けてやるよ!」

 

俺も後ろに下がることはせず、ただ前に出る!

 

互いの拳や蹴りを捌き、相手の顔、ボディ、足へと自身の攻撃を放っていく!

 

拳が衝突する度に地面に亀裂が入り、深く抉れていった!

 

 

「ぬんっ!!」

 

 

繰り出される拳!

 

 

ブゥゥゥゥンッ

 

 

風を切る音!

すげぇ拳圧だ!

 

俺は最小限の動きでそれをかわし、腕を掴む。

 

 

「だぁあああああ!!!!」

 

 

そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす!

サイラオーグさんはトレーニングルームの壁に叩きつけられる!

 

 

「ガハッ・・・・・・!」

 

 

サイラオーグさんが吐血するだけのダメージは与えた。

 

すると、俺の額から何か流れてくる。

拭ってみるとそれは血だった。

 

かわしたはずなのにこれか・・・・・・。

 

『本気ではないとはいえ、相棒に肉弾戦でここまで食らいつく悪魔もそうはいまい』

 

ドライグも感心してる。

 

確かにその通りだ。

しかも、この人は部長と同じでまだデビュー前だというから驚きだ。

 

分かっていたけど、半端な鍛え方じゃない。

 

 

濃密なオーラを纏ったサイラオーグさんが叫ぶ!

 

「まだ俺は終わらんぞ、兵藤一誠!」

 

「よっしゃあ! 俺もギアを上げていくぜ!」

 

再び交わる拳と拳。

俺は更に気を高めてパワーの底上げをする。

 

 

俺ってヴァーリみたいに戦闘狂ってわけでもないんだけど、この戦いにはなぜかテンションが上がっていた。

 

軽い手合わせってことだったから、それなりにセーブしている。

だけど、それもそろそろ止めても良いだろう感じてしまっている。

 

サイラオーグさんだって、この戦いを楽しんでいるようだ。

俺の本気を引き出そうと、どんどんパワーを上げてきている。

 

 

 

だったら、その想いに応えよう。

 

俺は一気に本気を―――――領域に突入しようとする。

 

 

 

その時。

 

 

 

「二人ともそこまでだ」

 

 

 

「「っ!」」

 

 

 

サーゼクスさんが間に入って俺達の拳を受け止めていた。

 

 

ブォォオオオオオオオ

 

 

二つの衝突によって風が吹き荒れる。

 

 

「サーゼクスさん・・・・・?」

 

「イッセー君、サイラオーグ。君達の気持ちは分かるが今日はここまでにしてもらおう。ここまで来てしまうと流石に止めないわけにはいかない」

 

言われて見てみると離れたところにいる部長達のところまで地面に大きな亀裂が入っていた。

俺達の拳圧にこの部屋が耐えきれなかったのか。

 

「す、すいません・・・・・・」

 

やっちまった・・・・・・。

 

見ればサイラオーグさんも苦笑している。

 

申し訳なさそうにする俺達にサーゼクスさんは微笑みながら言う。

 

「いやいや、責めているわけではないのだよ。ただ、ここで君達の本気を見てしまうのは勿体ないと思ったのでね」

 

「それでは、今度のレーティングゲームに兵藤一誠は参加出来るのですか?」

 

「上層部が納得するかは分からないが、私から言っておこう」

 

 

マジか!

ついに俺も公式のレーティングゲームに参加出来るのか!

 

まだ分からないけどサーゼクスさんなら何とかしてくれるはず(多分!)

 

 

サイラオーグさんは脱いだ上着を拾い、肩にかける。

 

「それでは俺はこれで失礼します。兵藤一誠、また拳を交えよう」

 

「もちろんです」

 

サイラオーグさんは俺と握手を交わした後、この場を去っていった。

 

 

その後ろ姿を見ながらサーゼクスさんが尋ねてきた。

 

「彼の拳はどうだったかな?」

 

「俺とあそこまで殴り合える人はそういないんで、正直、驚いてます。しかも、手足に枷をつけた状態ですよね?」

 

やり合っている時、サイラオーグさんの手首と足首には魔法陣みたいな紋様が見えた。

 

多分、あれは自身を縛るための枷だろう。

 

「その通りだ。彼はまだ若手だが、上級悪魔の中であの拳を受け止めることが出来る者は殆どいないだろう」

 

 

サイラオーグ・バアル。

 

滅びの魔力を持たずに生まれてきた悪魔。

武器は己の拳。

 

あの人とは今度こそ本気で殴り合ってみたい。

 

 

 

 

 

 

それから数日後、駒王学園にて。

 

「それじゃあ、予定はこんな感じで良いわね?」

 

桐生がメモを見せながら確認を取ってきた。

 

俺は修学旅行に行くメンバーと当日の打ち合わせをしていた。

ちなみに班長は桐生。

 

「名所は回れるし、お土産を買える時間も取れるから良いんじゃないか?」

 

「後は、その日の人の流れとか見て臨機応変に対応すればいいと思うわ。この時期は修学旅行生が多いから、混んでるかもしれないし」

 

桐生の意見に皆は頷く。

 

 

そういえば、去年ははじめての京都に部長がはしゃぎすぎて予定していたところの全てを回ることが出来なかったと朱乃さんが言っていたな。

 

俺達の班にも初めてメンバーはいる。

特にゼノヴィアは金閣寺に興味津々らしく、かなり楽しみのようだ。

 

ま、余裕のある予定を組んでるし、朱乃さんが言っていたようなことにはならないだろう。

 

 

「とりあえず予定は決まりね。準備が出来ていない人はしっかりしておくよーに」

 

『はーい』

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

チャイムが鳴った。

 

俺は席に戻って次の授業の準備をする。

次は日本史だな。

 

 

ガラララッ

 

 

 

「テメーら、席つけー」

 

 

入ってきたのは担任の坂田先生。

 

あれ?

先生って国語担当だろ?

 

日本史は?

 

クラスの皆が訝しげに思っていると先生は頭をボリボリとかきながら言った。

 

 

「時間割りでは日本史の授業だったが、服部先生の痔が悪化したので国語に変更になった。つーわけで、早速授業始めっぞー」

 

気だるげに言う先生。

 

 

 

「それじゃあ、花の慶次十巻を開け」

 

 

 

 

先生、持ってません。

 

 

 

 


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