ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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学校始まってから中々書く時間がないです(泣)

質問で聞かれたことですが、ロスウォードのイメージはウルキオラの第二階層です。





23話 砕かれた希望

「我、目覚めるは―――――」

 

 

 

 

 

<ようやくか> 

 

<やっとだね>

 

 

 

 

 

呪文を唱えると、歴代達の声が聞こえてくる。

それと同時に俺の意識を引きずり込もうとしやがる。

 

まぁ、それもドライグがある程度抑えてくれているおかげで、少しはマシだ。

 

 

 

「覇の理を神より奪いし二天龍なり―――――」

 

 

 

 

 

<覇を求めることが我らの真理>

 

<それこそが赤龍帝の本懐>

 

 

 

こいつら・・・・・・っ!

好き勝手言いやがる・・・・・・・!

 

 

 

 

 

「無限を嗤い、夢幻を憂う―――」

 

 

 

 

<おまえも我らと共に来い>

 

<今代の赤龍帝、兵藤一誠よ>

 

 

歴代の怨念が一層強くなる。

 

 

 

うるせぇよ、てめぇら!

そんなに俺の邪魔をしたいのかよ!

 

人の足引っ張る暇があるなら、力を貸しやがれぇぇえええええ!

 

 

 

 

 

「我、赤き龍の覇王となりて―――」

 

 

 

 

 

その節を唱えた時、一人の女性の声が聞こえた。

 

<ふふふ、やっぱり面白いわ、あなた>

 

 

 

・・・・・・・ん?

誰だ?

 

この感じ・・・・・・・・他の歴代とは違うな。

 

 

<心配しないで。私はエルシャ。あなたの味方よ>

 

味方・・・・・?

 

<そう。残留思念になった私は神器の中からずっと、あなたを見ていたわ。おっぱいドラゴンさん♪>

 

はうっ!

この状況でそれ言うの止めてくれません!?

 

つーか、女の人にその名前で呼ばれると超恥ずかしいんですけど!

 

<いいじゃない。面白いし♪ そんなことよりも今は目の前のことを何とかしましょう。私とベルザードでドライグのサポートをするわ。あなたは精一杯、その力を振るいなさい>

 

ベルザード・・・・・・?

 

 

いや、今は気にしてる時間は無いな。

ありがとう、エルシャさん!

これが片付いたら、改めてお礼しにいくよ!

 

 

 

そして、俺は最後の節を力強く発した。

 

 

 

 

「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう――――――!」

 

 

 

『Juggernaut Drive!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

俺が身に纏う鎧の形状が変化した。

 

より鋭角になり、色は血のような赤。

背中からはドラゴンの翼のようなものが生える。

 

両手、両足からは鋭利な爪のようなものが生え、その姿は小型のドラゴン。

 

 

 

覇龍となった俺から吹き荒れる嵐のようなオーラは周囲の物を破壊していく。

 

「これが覇龍か・・・・・・。なんという禍々しい力だ」

 

後ろでティアがぼそりと呟いた。

 

 

今まで、この力を使わなくて良かった。

俺の意思に関係なく、周囲を破壊していくからな。

まぁ、初めて使ったからってのもあるんだろうけど・・・・・。

 

 

『いや、覇龍を使って正気を保てているだけでも十分だ』

 

 

ドライグ?

 

歴代の怨念を抑え込んでるんじゃないのか?

 

『それはエルシャとベルザードがやってくれている』

 

その二人は何者なんだよ?

歴代の赤龍帝ってのは分かるけどよ。

 

『ベルザードは歴代の男性赤龍帝の中で最強だった男だ。エルシャは女性赤龍帝の中で最強だった者だ』

 

マジかよ。

 

そんなスゲー人達が俺の味方をしてくれたのか。

 

『まぁ、現在の歴代最強は相棒なんだがな・・・・・。俺も驚いている。神器の奥底にいたあの二人がここで出てくるとは思わなかったからな』

 

 

「喋ってる暇はないぞ。もうすぐ来るぞ」

 

ティアが俺とドライグに注意を促した。

 

上を見上げると漆黒の球体が眼前に迫っている。

 

 

さて、この状態で止めれるかは微妙なところだけど・・・・・。

やるしかねぇか!

 

「いくぜ、ドライグ! ティア!」

 

「おう!」

 

 

俺とティアは上空に上がり、両手を上に掲げる。

手のひらを広げて腰を落とす。

 

こいつをこの町に落とさせやしない!

 

球体は徐々に近づいてきて、ついに俺とティアにのしかかった。

その瞬間―――――

 

 

 

ズンッ

 

 

ぐっ・・・・・・・・!

重い・・・・・・・・!

 

あり得ないほどの重量が俺達を襲う。

骨が軋み、大量の汗が流れる。

体中が悲鳴をあげていた!

 

これだけ圧倒的な力を放っている覇龍状態でも受け止めることすら出来ないって言うのかよ!

ティアだっているってのに!

 

これがロスウォードの力・・・・・・・!

世界を滅ぼすほどの力を持つ存在が放つ一撃か!

 

「「ぐっ・・・・・・おおおおおおおおおおっ!!!」」

 

俺とティアの咆哮がこの町に響く。

 

 

吹き荒れるオーラ。

封印される前の天龍の力を覇龍によって引き出した俺と龍王ティアマットの全力。

ほとんどの敵なら圧倒できるほどの力だ。

 

それでも、俺達は圧されていた。

 

ふと下を見てみると地表までもうすぐのところまで近づいてしまっていた。

 

「イッセー! このままでは・・・・・・・!」

 

「分かってる! だけど、諦めるわけにはいかねぇだろ!」

 

今の状態が続けば、この球体は町に落ちてしまう。

そうなれば、この国の全てを吹き飛はされてしまだろう。

 

この国の人を避難させるにはまだ時間がかかる。

だから、俺達は何としてでもこいつを防ぎきらないといけない。

 

 

こうなったら・・・・・・・

 

 

『どうした? 何か方法があるのか?』

 

ああ、上手くいくかはわからないけどな。

 

ドライグ、俺がイメージするものを送る。

出来るか?

 

『っ! なるほど・・・・・・そうきたか。だが、それでは生身の部分の防御力は大幅に下がるぞ』

 

そんなもんいらねぇよ。

こいつを防ぐことが出来なかったら、どのみち結果は同じだろ?

 

やれることは全てやってやるさ。

 

『承知した』

 

俺は覇龍の状態を維持したまま(・・・・・・・・・・・・)、鎧を解除。

これは覇龍を解いたわけではなく、鎧を維持する力をもこの球体を防ぐ力として使うということ。

 

鎧を解いた瞬間、俺から発せられるオーラが上がった。

それによって少しは持ち直したけど・・・・・・。

ギリギリか。

 

 

俺はティアに頼み事をしてみた。

 

「ティア、おまえの力を全て俺にくれないか?」

 

「それは良いが・・・・・。おまえ一人で何とかするつもりか?」

 

「そうだよ。このままじゃ、そのうち押しきられる。俺とティア、二人の力を一つにしたら少しは可能性がある」

 

今は二人の力をバラバラに使っている状態だ。

それでは力にズレが生まれて、その部分が弱くなってしまう。

 

それだったら、一人に力を集約させた方が効率が良い。

ティアもそれを理解したのか、一考した後、頷いた。

 

「・・・・・・分かった。受けとれ。私の持てる力の全てをおまえに渡そう」

 

ティアはそう言うと俺の肩に手を置く。

その手を通して俺の中にティアの力が流れ込んでくる。

 

 

ドンッ!

 

 

力を受け取ったと同時に俺から放たれるオーラが爆発的に上がった。

赤いオーラが膨らみ、この町を赤く照らしていく。

 

俺に全ての力を譲渡したティアは手を離す。

 

「これで私に出来ることは何もなくなってしまったな。・・・・・・・後は頼んだぞ」

 

俺に全ての力を託したことで、ティアは意識を失い、地に落ちてしまう。

 

「ああ、サンキューな。ティアは下がって休んでいてくれ。後は俺がやる」

 

ティアがくれたこの力。

その想い。

 

無駄にはしない!

いくぜ、ドライグ!

 

『応っ!』

 

『Accel Full Booster!!!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!』

 

鳴り響く倍加の音声。

新しいその音声はこれまでものよりも更に加速した倍加を実現。

それと同時に俺の力は一気に引き上げられる!

 

 

 

『Welsh Dragon Advent !!!!』

 

 

グオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

 

膨れ上がったオーラは巨大な赤い龍の形となり、漆黒の球体をその太い腕で押し返す!

 

錬環勁気功を脳に使用し、二度目の領域(ゾーン)に突入。

周囲に漂う気を全て使う勢いで、気の圧縮と循環を超高速で続けていく!

 

 

パンッ

 

 

その音と共にこめかみの血管が弾けて、温かいものが頬を伝った。

まだ不馴れな状態で強制的に領域に何度も入ろうとした結果か・・・・・・。

こめかみ以外にも腕や足、体の至るところの血管が弾けていく。

俺の肉体も限界を迎えているようだ。

 

 

 

それがどうした。

 

 

俺は今まで、自分の限界を越えてここまで来たんだ。

限界なんて越えてやる!

 

「がぁあああああああああああああ!!!!!!」

 

獣のような咆哮をあげ、両手を力一杯に前に突き出す。

限界を越えて溜めていた気を全て解き放った。

 

オーラで形成された赤い龍の巨体が更に巨大なものとなる。

その大きさは漆黒の球体を越えていた。

 

 

そして、赤い龍はその翼で球体を包み込み―――――

 

 

 

 

赤い龍の中で全てが弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

 

生じた爆風がこの町を駆け抜け、全てを吹き飛ばした。

 

ティアマットに城へ強制的に転移させられた僕達は避難施設に避難していた人達を転移の門のところまで誘導しながら、ロスウォードの放った球体と、それを防ぐイッセー君達のことを見ていた。

 

僕達も加勢に行きたかったけど、足手まといになるとモーリスさんに止められ、ただ見ることしか出来なかった。

 

漆黒の球体は凄まじいオーラを放つイッセー君達でも、防ぎきれないもので、徐々にこの町に落ちてきていた。

避難民の中からはもうダメだと言う声まで聞こえてくる。

 

 

その時だった。

 

 

イッセー君の纏うオーラが巨大な赤い龍の形となったのは。

 

 

あれは何度か見たことがある。

一度目は若手悪魔の会合でソーナ会長の夢を悪魔上層部に否定された時。

二度目はディオドラ・アスタロトがアーシアさんを傷付けた時。

 

どちらも圧倒的で上級悪魔でも震えるほどの力だった。

だけど、今回のはオーラの量も濃さも桁違い。

魔王クラスをも遥かに上回っている。

 

 

巨大化した赤い龍はその翼で球体を包み込み、最終的にはそのほとんどを抑え込んだ。

 

爆風で町は崩壊状態だけど、あれほどの攻撃を放たれたのにも関わらず、この程度ですんだのなら奇跡と言っても良いのかもしれない。

 

 

 

そして今。

 

 

 

「ボク、行ってくる!」

 

「待って! 私も行くわ!」

 

美羽さんが転移用魔法陣を展開し、アリスさんもそこに飛び込む。

 

「おい! 待て!」

 

モーリスさんが引き止めようとするが、二人の耳には届かず、この場から姿を消してしまった。

 

モーリスさんは頭をかき、僕に言った。

 

「あー、クソッ! 祐斗! ここの指揮は俺が取る。おまえらはアリス達を追いかけてくれ!」

 

「はい!」

 

僕達は部長が展開した転移用の魔法陣に入る。

 

場所は先程イッセー君と別れた場所。

二人がそこへ向かったのは明らかだ。

 

転移の光が僕達を包み込み、その場所まで移動する。

 

すぐ目の前には先に転移していた美羽さんとアリスさん。

その隣ではティアマットが気絶していた。

 

 

だけど、肝心のイッセー君はどこにも見当たらない。

 

 

・・・・・・・イッセー君はどこに・・・・・・・?

 

 

 

その時、僕は美羽さん達の視線が上空に向けられていることに気付いた。

 

 

 

二人の視線を追いかけていくと――――――

 

 

 

僕は目を見開いた。

 

 

そこにいたのは、ロスウォードに首を掴まれ、全身から血を流しているイッセー君。

イッセー君の瞳からは完全に光が消えていた。

 

 

「自身を犠牲にしてこの国を守ったか・・・・・。まさかここまでの力を発揮するとは・・・・・・・」

 

ロスウォードはそう言うと指先をイッセー君の胸に当てた。

 

 

・・・・・待て

 

・・・・・・何をするつもりだ

 

 

「貴様はよくやった」

 

 

ロスウォードの指先に黒い光が集まっていく。

 

 

 

「一瞬だ。せめて楽に死なせてやる」

 

 

「やめてぇえええええええええ!!!!」

 

美羽さんが制止の声をあげる。

 

だけど、その声はロスウォードには届かない。

 

そして――――――

 

ロスウォードから放たれた黒い光はイッセー君の胸を貫いた。

 

 

 

 

「いやぁぁあああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

美羽さんの悲鳴が崩壊したこの町に響いた。

 

 

 

 

 

[木場 side out]

 

 

 

 

 




というわけで、今回はここまでです。

次回も一週間くらいは空くと思います。

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