ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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今回は少し短めです。

それから皆さんが気になっているであろう人物が登場します!


18話 突破口を求めて

ある日、朝食の時間。

 

 

「祐斗、ゼノヴィア。後で稽古付けてやるから来いよ」

 

「分かりました」

 

「よろしく頼む」

 

パンを齧りながら、木場とゼノヴィアを稽古に誘うおっさんとそれを受ける二人の姿が目に入った。

 

いつもの広場で一対一でやり合うのだろう。

ここのところ毎日あんな感じだ。

 

ロスウォードと邂逅してから数日。

あいつとの圧倒的な力量差を実感した俺達はあの手この手で突破口を探していた。

特にアザゼル先生はリーシャとロスヴァイセさんを助手にして各地を転々としては研究施設に籠ってる。

 

こちらの魔法に詳しいリーシャと北欧の術式に精通しているロスヴァイセさん。

この二人の補助があれば何か掴めると思うんだけど・・・・

 

俺は隣でコーヒーを飲んでいる先生尋ねた。

 

「先生、何か進展はありましたか?」

 

「いいや。今のところは進展と言えるほどの成果は無い。現在も解析は進めてはいるんだが・・・・」

 

先生は首を横に振って息を吐いた。

 

そっか・・・・

あれからあまり時間が経ってないしな。

それにまだ情報が足りないってのもあるんだろうな。

 

 

俺の向かい側に座っていたアリスが言った。

 

「誰かあいつのことを知ってる人がいれば良いんだけどね~」

 

「それが見つかれば苦労はしないよ。ゲイルペインの長老も知らないんだぜ?」

 

「まぁ、それはそうなんだけどさ。美羽さんもお父さんから話は聞いてないんだよね?」

 

とアリスが美羽に話を振った。

 

美羽は食べていたパンを飲み込むと頷いた。

 

「うん。お父さんにはそういう話は聞かされてなかったし・・・・・。ウルムから送ってもらったお父さんの遺品にもそれらしいものは無かったよ」

 

魔王だったシリウスの所有物にも関連するものは無かったのか・・・・・。

 

 

はぁ・・・・・

 

アリスの言う通り、誰かロスウォードについて知ってる人がいればいいんだけどなぁ・・・・・・。

 

「奴が封印された場所でも判明すればいいんだがな。あれほど強力な奴を封印してたんだ。その周囲には封印の痕跡がのこるはず。それを解析できれば一気に事を進められるんだがな・・・・・」

 

封印された場所か・・・・・。

 

つーか、よくあんな奴を封印できたな。

一体、誰がしたのかかなり気になる。

 

そもそも、あいつは自分のことを作られた、と言っていた。

その作った本人に話を聞けることが出来れば話が早いんだけど・・・・・。

 

 

それにあいつは神々のことを愚か者と言っていたな。

神との間に何かあったのか?

 

 

神・・・・・

 

作られた・・・・・・

 

伝承・・・・・・

 

神層階・・・・・・・

 

俺は今までのキーワードを頭のなかで組み立ててみる。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・ん?

 

 

ちょっと待てよ・・・・・・

 

 

もしかして――――――

 

 

 

「あーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

 

 

俺の絶叫が部屋に響いた!

 

 

ガタンッ

 

 

俺が立ち上がったことで椅子も勢いよく後ろに倒れる!

 

でも、そんなことはどうだっていい!

 

 

そうだよ!

いるじゃん、知ってそうな人!

 

なんで今まで忘れてたんだろう!

 

 

突然の俺の叫びに皆は耳を塞いで呆然とした表情で俺を見ていた。

 

「おいおい! いきなり大声出しやがって! なに考えてんだ、おまえは!」

 

 

スパンッ!

 

 

先生が何処からか出したハリセンで俺の頭を叩いた!

 

痛いって!

 

 

「ど、どうしたの、お兄ちゃん?」

 

美羽も怪訝な表情で尋ねてくる。

 

俺は目の前にあった水を飲んで、自分を落ち着かせる。

それから深呼吸も追加でやった。

 

「ふぅー」

 

息を吐いて、再び椅子に座った。

 

いやー、もっと早くに思い出しとけば良かった。

それなら、こうして悩むことも少なかったかもしれない。

 

あー、俺のバカ野郎!

 

 

「イ、イッセー? あ、あんた、どうしたのよ?」

 

「・・・・・いたんだよ」

 

「いた? 何が?」

 

「ロスウォードについて知ってそうな人!」

 

「「「「何ぃっ!?」」」」

 

全員が驚愕の声をあげた。

 

当然の反応だ。

これまで、ほとんど何も分からなくて手詰まりに近い状態からのこれだ。

 

俺だって自分に驚いてるところだ。

 

先生が俺の両肩を掴む。

 

「マジかよ! おまえ、何でもっと早くに言わなかった!?」

 

「俺だって今思い出したんですよ!」

 

「だぁー、このバカタレが! そんなことは言い! 早く言え! 誰だ! どこの誰だ!」

 

 

 

 

 

「俺の―――――――――師匠です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界、アスト・アーデの果てには一つの島がある。

森に覆われた小さな島だ。

 

 

ここはアスト・アーデに住む人々は誰も知らない場所。

恐らく、俺しか知らない場所だ。

 

 

なぜか?

 

 

その理由の一つにこの島を囲う海には強力な魔獣が多く住み着いていることが挙げられる。

ロスウォードに比べるとかなり劣るけど、一体一体が異常な強さを持つ魔獣で、一国の軍隊を投入しても倒せるか分からないほどの強さを持つ。

 

だから、魔族も人間も誰も近寄らない。

 

 

そして、もう一つの理由として、海上に漂う霧の存在がある。

島を囲うように漂う白い霧。

島に近づくものの感覚を狂わせ、近寄れないようにする魔の霧だ。

 

一度入ってしまえば二度と出てこれないなんてことも言われている。

 

 

だから、この島のことは誰も知らない。

当然、アリス達も。

 

 

俺がこの場所を知ってる理由はかつてこの場所に来たことがあるからだ。

昔、ライトを亡くしてアリス達と分かれた後、一人で修行の旅に出た時に一度。

 

あの時は死ぬかと思ったね。

霧に捕らわれないように海に潜り、海の中では魔獣共に見つからないようにしないといけなかったからな。

 

それを一ヶ月以上かけてこの島に来た。

食料も水もほとんどないような状況だ。

 

正直、よく生きていられたなと自分でも不思議に思うくらいだ。

 

やっぱり根性なのかね?

 

 

そんな島に俺は一人来ていた。

皆を連れてこなかったのはある人との約束もあったからだ。

 

 

「それにしても、今回は苦労はしなかったな」

 

そんなことを一人で呟きながら森の中を歩いていく。

 

魔獣も天武(ゼノン)でぶっ飛ばしたし、霧も天撃(エクリプス)の砲撃で吹き飛ばしたからな。

かなり楽に来れた。

 

『滅茶苦茶だな。昔の相棒ならそんなことは出来なかっただろうに』

 

まぁ、そう言うなよ。

今回は急いでいたこともあるしな。

 

森を抜けると広い草原に出た。

その中央には古い神殿がある。

 

石で作られていて、見た目は転移の門に似ている。

 

 

俺がこの島に来たのはこれが目的だ。

 

 

「神層階への入口。見つけたぜ」

 

 

そう、この神殿こそが神層階への入口。

この神殿を通ることで神層階へと行くことができる。

前回はそうだった。

 

俺は神殿に入った。

ちょっとした懐かしさも感じながら周囲を見渡す。

 

少し進むと広い空間にたどり着いた。

壁にはこれと言った特徴はないけど、床の中心には円形の紋様が描かれている。

古代の文字やらよく分からない絵が床の石板に彫られていた。

 

 

初めて見たときは怪しさしか感じなかったよなぁ。

 

 

なんてことを思い出しながら俺は円の上に立ち、オーラを流し込む。

 

すると、紋様の線をなぞるように光が走り始めた。

どうやら、今回も行けそうだな。

 

『今回は気絶しないと良いな』

 

あー、前回は気絶してたっけ?

そこを師匠に保護されたような・・・・・・

 

まぁ、いっか。

何とかなるだろ。

 

床に描かれた紋様がカッと強い光を発する。

 

その瞬間、天井から降ってきた光の柱に俺は呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・ぼう。・・・・・・ろ。起きろ、相棒』

 

ドライグの声が頭に響く。

その声で俺は目が覚めた。

 

 

周囲を見渡すと、辺り一面霧に囲まれていた。

真っ白だ。

 

この光景には見覚えがあった。

 

ここは・・・・・・

 

『ああ。どうやら上手くいったみたいだぞ。それに、この霧から感じられる妙な力。ここはあのジジイが住む場所の近くだ』

 

やっぱりか。

 

ってことは近くに師匠の小屋があるはずなんだけど・・・・・・

 

 

俺はゆっくり立ち上がってもう一度周囲を見渡してみた。

 

だけど、何処までいっても真白な世界。

悪魔の視力でも見えないか。

 

仕方がない。

 

 

錬環勁気功を発動させて、周囲の気を探る。

例え神々が住む神層階であったとしても、錬環勁気功による気の探索は可能だ。

気は万物に宿るからな。

それは神でも例外はない。

 

 

周囲を探索し始めてから少し経った。

 

 

「見つけた。こっちか」

 

俺は気の感じた方への歩を進めていく。

 

ここは森の中なので、木の枝を手で退けながら目的地を目指す。

 

 

『また、あのジジイと出会うことになるとはな。正直、会いたくなかったんだが・・・・・』

 

ドライグって本当に師匠のこと嫌いだよな。

 

『基本的には悪くはないと思うが・・・・・あのスケベジジイのせいで相棒はこんな風になってしまったからな』

 

いや、だから、スケベなのは前からだって。

師匠は関係ないよ。

 

『・・・・・・・・そう、だったな・・・・・・・うぅ・・・・・・クズッ』

 

 

あーあ、ドライグがまた泣き始めた・・・・・・

 

ゴメンゴメン。

泣くなよ、ドライグ。

 

 

 

そんなやり取りをしながら歩くこと十分弱。

 

 

 

崖の上にある小さな山小屋に着いた。

 

丸太を組んで作られたよく見る山小屋だ。

 

煙突から煙が出てるってことはいるみたいだ。

 

 

『懐かしいな』

 

ああ、まったくだ。

ここでは随分世話になったもんな。

 

うぅ・・・・あの地獄のような修行が昨日のことのように思えてくる・・・・・

 

よくこの崖から蹴落とされたっけ・・・・

 

 

あ・・・・涙出てきた・・・・・

 

 

『うぅ・・・グスッ・・・・・』

 

おいおい、なんでドライグまで泣いてるんだよ?

さっきのことまだ気にしてるのか?

 

『いや・・・・毎夜毎夜、二人のスケベ話に付き合わされたこと思い出すと・・・・・涙が出てきてな・・・・グズッ・・・・』

 

そっちか・・・・。

 

ゴメンね、師弟そろってスケベで。

 

 

ま、とりあえず入ってみるか。

 

俺は小屋の扉をゆっくり開いてみる。

 

 

すると――――――

 

 

 

 

 

 

「うひょーーー! たまらんのぉ! この尻! この太もも! うひょひょひょひょひょ!!」

 

 

 

 

スケベな声を出しながらテレビらしきものにへばりつく師匠の姿があった・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、イッセーは再び神層階へ行きました!

最初の方(プロローグ3話)で会話に出ていたイッセーの師匠がついに見参!

次回は師弟のやり取りになります!

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