ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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17話 ニーナの罠!?

ロスウォードが去り際に残していった怪物をアリスたちが殲滅してから数時間が経った。

 

俺達は事後処理をトリムさんが率いる部隊に任せた後、セントラルの城に戻っていた。

 

俺や先生、ティアは消耗が特に酷く、すぐにでも休みたい気分だったけどそうはいかない。

初めて得た情報。

 

それを皆に知らせなくてはならない。

 

モーリスのおっさんが難しい顔をしながら言う。

 

「ロスウォード・・・・それが奴の名か。それにイッセー達が三人がかりでも相手にならないとなるとな」

 

「ああ。俺も驚いたぜ。まさかあそこまでとは思ってなかったからな。あんた達が来てくれなかったら恐らくこの中の誰かは死んでいた。一先ず礼を言うぜ」

 

先生がおっさんに言った。

 

確かにアリスが来てくれなかったら、少なくとも俺は間違いなく死んでいただろうな。

アリスにはマジで感謝してる。

 

いや、アリスだけじゃないな。

俺の傷を治してくれたアーシアや自分も重傷を負いながらも斬り落とされた俺の左腕を回収してくれていたティアにも感謝してるんだ。

 

「おまえ達が生きて帰ってきたことには嬉しいが・・・・・結果的にオーベルの町には甚大な被害が出てしまった。それに死傷者も少なくない」

 

おっさんの情報に皆の表情が陰る。

 

ロスウォードが最後にはなった黒い槍の雨は、町を壊滅させた。

部員の皆は奇跡的に無事だったものの、町の人たちの中に死者が出てしまった。

 

 

クソッ・・・・

 

 

握る拳に力が入り、爪が皮膚に食い込む。

血が滲みだすけど、そんなことは気にならない。

 

 

手も足も出なかった・・・・!

俺にもっと力があれば、と思ってしまう・・・!

もう少し力があれば死者を出さずに済んだかもしれない・・・・!

 

『だが、それは・・・・』

 

分かってる!

今、それをどうこう言ったところでどうにもならないことくらい!

 

それでも・・・・!

 

 

カチャン

 

 

俺の前にティーカップが置かれた。

顔を上げるといつの間にかワルキュリアが俺の横に立っていた。

 

「イッセー様。お気持ちは分かりますが、今は心を落ち着かせてください。こういう時だからこそ冷静にならなければならない。それはあなたも分かっているでしょう?」

 

ワルキュリアはこの場にいる全員の顔を見渡す。

 

「ここにいる全員があなたと同じお気持ちなのです。それに、あなたがご自身を責めれば、皆さんも悲しみます。当然、私も」

 

「ワルキュリア・・・・」

 

「今は悲しみも後悔も感じている時ではありません。この先をどうするか。それを考える時です、・・・・っとメイドの私が言う言葉ではありませんね。失礼しました」

 

手を口に当てて言うと、ワルキュリアはお辞儀をして後ろに下がって行った。

 

 

ははは・・・・

 

流石はワルキュリアだ。

 

なぜか、ワルキュリアが言うと頭がクリアになる。

さっきまで、色々なことが頭の中で渦巻いてごちゃごちゃになっていたのに、その全てが綺麗に整理されていく。

そんな感じがするよ。

 

 

「ま、ワルキュリアの言う通りだ。イッセー、それにおまえ達もだ。今は自分のことを責めてる場合じゃない。それにそんな時間もねぇ」

 

そう言うと、おっさんは前にあるボードに書き記していく。

それは今回得られた情報と今後について。

 

「とりあえず、被害を受けたオーベル地区の住民は他の町に避難させた。オーベルの復興については他国からの支援、特にゲイルペインからの支援もあり、早急に取り掛かれることになっている。その件に関してはニーナ、おまえに一任する。よろしく頼むぜ」

 

「分かりました、おじ様」

 

おっさんに言われてニーナは頷く。

 

それから、おっさんの視線はアリスとリーシャに移る。

 

「アリスには今日得た情報を他国へと送ってもらいたい。それから、ロスウォードが現れた時は戦おうとはせず、逃げるように言っておいてくれ。何の対策もせずに奴と一戦交えるなんざ、いたずらに兵力を消耗させるだけだからな」

 

「分かったわ」

 

「それからリーシャはアザゼルの手伝いをしてもらいたい。施設も貸してやってくれ。アザゼルが得た白い奴らの体の一部。そこから何らかの突破口が見つかるかもしれんからな」

 

「分かりました。アザゼルさんには明日、ご案内いたします。今日の方は休まれた方が良いと思うので」

 

リーシャの言葉に先生は苦笑する。

 

「ああ、すまんな。流石の俺も今日はくたびれた。一日休ませてもらう」

 

「構いませんよ。あれ程の重傷だったのですから無理はありません。イッセーも今日は休んでくださいね?」

 

「分かってるよ」

 

俺もそろそろ限界だ。

血を流しすぎたせいでフラフラするしな。

 

 

「ロスウォードにはまだ封印の影響が残っているものと思われる。その影響が残っている間になんとかしたい。そこで、明日からはオーベルに残っている奴の力の残滓を調査する。おまえ達にも手伝ってもらうから今日はゆっくり休め」

 

 

 

 

 

 

 

 

会議が終わり、茶を飲んで一服していると向かいの席に座っていたリーシャが言ってきた。

 

「どうせなら、私が介抱してあげましょうか? 昔みたいに」

 

な、なんとっ!?

 

マジっすか!?

昔みたいにって言うことは膝枕とかしてくれるんですか!?

それなら是非ともしてほしい!

 

リーシャの太ももはスベスベしてて、更にはほど良い弾力もあって気持ち良いんだよな!

 

また、あの感触を味わえるというのか!

最高じゃないか!

 

 

「ぜひお願いします!」

 

「ふふふ、イッセーは相変わらずですね。それでは後程、部屋でしてあげましょう」

 

あぁ・・・

生きててよかった・・・・!

またあの感触を味わえるというのか・・・・っ!

 

 

バチッ バチチチチッ!!!!!

 

 

激しい電撃が部屋に飛び交う。

と同時に鋭い殺気が俺に放たれていた。

 

「うふふふ・・・。イッセー・・・・あんた、随分元気みたいじゃない。それだけ元気なら私の槍の稽古にでも付き合ってもらえないかしら?」

 

うおっ!?

 

アリスが戦闘モードで俺を睨んでくるぅぅぅ!!!

ちょ、その雷止めてくんない!?

 

マジで死ぬから!

 

 

「・・・・・よくもこの状況でスケベになれますね、イッセー先輩。今すぐにでも、アリスさんの槍を受ければいいと思います。特に頭」

 

「そうですね。イッセー様は一度アリス様の電撃を受けられた方がいいかもしれません。脳に直接受ければ、その変態もマシになるかもしれませんね」

 

 

ゴファ!

 

 

小猫ちゃんとワルキュリアの合わせ技!

小猫ちゃんの毒舌がいつもより強めに感じるのは気のせいだろうか!?

ワルキュリアから毒舌の指導とか受けてないよね!?

 

つーか、脳に直接受けるってどういうことだよ!

頭、かち割れってか!?

 

 

俺が二人の毒舌を食らっている横ではアリスがリーシャに食いかかっていた。

 

「リーシャも! イッセーに甘くしないでよ!」

 

「ダメなの?」

 

「もちろんよ!」

 

「なんで?」

 

「なんでって・・・・・・・だって、イッセーはスケベだし・・・・・・」

 

「イッセーがエッチなのは昔からじゃない。それは私も承知しているわ」

 

「で、でも・・・・・!」

 

アリスがそこまで言うとリーシャはアリスの肩を掴んで微笑んだ。

 

「分かったわ。それならアリスにイッセーを譲るわ。あなたが介抱してあげなさい」

 

「はぁ!? な、なんで私が!?」

 

「え? だって、アリスはイッセーのこと―――」

 

「わー! それダメぇ!!!」

 

涙目でリーシャの口を押さえるアリス。

なんか、顔がトマトみたいに真っ赤になってるぞ。

めちゃくちゃ焦ってるな。

 

何があったんだよ?

 

 

「素直じゃねぇな相変わらず」

 

おっさんが何やら呟いているのが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った後、俺は直ぐにベッドにダイブした。

ベッドに突っ伏した瞬間、溜まってた疲労が一気に俺を襲ってきて、俺の全身から力を奪っていったんだ。

そして、俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

それから、何時間経ったのだろう。

 

 

「―――さん。―――お兄さん。起きてください、お兄さん」

 

 

プニプニと頬を押される感触と俺を呼ぶ声で俺は目が覚めた。

 

ゆっくり目を開くと、眠る前はまだ窓から陽の光が僅かに入っていたものの、今は真っ暗になっていた。

 

「んあ・・・・ニーナか?」

 

「はい、私ですよ。お兄さん」

 

俺の頬を指で押しながらニッコリと微笑むニーナ。

 

何でニーナが俺の部屋に?

 

「お休みのところごめんなさい。お兄さん」

 

「いや、大丈夫だよ。一眠りしたら、疲れもマシになったしね」

 

体はまだ少しも重たいけれど、眠る前と比べると大分マシだ。

 

俺は上半身を起こして背中を伸ばす。

あー、良く眠れた。

 

「それは良かった。それで、さっき、お兄さんにお風呂の用意をしたから、それを伝えに来たんだよ」

 

「お風呂? 態々、俺のために? いつもの大浴場じゃないのか?」

 

この城に来てから、俺は使用人が使っている大浴場を利用していた。

 

態々、俺のために準備してもらうのも悪いと思ってたし・・・・・・。

 

そこは俺達が来てからは解放されていたから、何時でも使える。

今日も目が覚めたらそこに入ろうかと思っていたんだ。

 

 

「お兄さんの疲れが取れるように特別なお湯を用意したの」

 

「へぇ。それはありがたいな。ありがとう、ニーナ」

 

そう言ってニーナの頭を撫でてやる。

 

ニーナは顔を紅潮させて少し照れた様子だった。

 

「じゃあ、風呂の支度するから。少し待っててくれるか?」

 

「うん!」

 

 

 

それから俺は風呂の支度を軽く済ませ、ニーナにその場所まで案内してもらった。

 

その場所はこの城の最上階にある王族用の浴場だった。

 

 

「おいおい、俺がここに入っていいのかよ? まぁ、昔は良く使ってたけどさ」

 

「お兄さんなら大丈夫。さぁ、入って入って」

 

とニーナは俺を脱衣場へと押し込んでいく。

なんだか、無理矢理感も感じられるのは気のせいだろうか?

 

まぁ、いいか。

せっかく、俺のために用意してくれたんだ。

ありがたく使わせてもらおう。

 

 

風呂場に入ると、用意されていたのは白いお湯が入った浴槽。

 

いい香りがする。

これはハーブかな?

 

それに何か術的なものも感じられるな。

疲れが取れる術式でも仕込んでいるのだろうか。

 

そんなことを考えつつ、湯船につかる。

 

「あぁ~」

 

自然と出る声。

温泉なんかに浸かった時に出るあれだ。

 

確かに体から疲れが吸いとられるような感じがする。

これが湯の効能なのかね?

 

チャプチャプとお湯を自身の体にかけながらお湯を堪能していく。

 

最近は家でも大きい風呂にばっかり入っていたから、普通サイズの風呂もたまには良いなと思ってしまう。

このサイズの浴槽に入るのは何ヵ月ぶりだろう?

 

それに風呂場の窓から見える月が綺麗なので、体だけじゃなく心の疲れも取れていくようだ。

 

ニーナにはまた今度お礼をしないとな。

最高の風呂だよ。

 

 

ニーナに感謝の念を送りつつ、堪能していると――――

 

 

 

ガチャ

 

 

 

突然、風呂場の扉が開く。

 

 

 

「「えっ?」」

 

 

 

俺は入ってきた人物と目が合い、固まった。

 

 

 

 

 

 

入ってきたのは全裸のアリスだったぁぁぁぁあああ!!!

 

 

 

「ちょ、ええええええええっ!? ア、アリスゥゥゥゥゥウウウウウ!?!?!?」

 

「な、なんで、あんたがここにいるのよぉぉぉぉおおおお!?!?!?」

 

 

跳び跳ねて絶叫する俺達!

 

なんでアリスが入ってくるんだ!?

 

いや、確かにここは王族専用だけどさ!

ニーナが俺のために用意したって言ってたから完全に貸切りだと思ってたんだけど!

 

 

アリスが大事なところを手で隠しながら叫ぶ!

 

「まさか覗き!?」

 

「覗きならこんなに堂々と入ってねぇよ!」

 

「だったらなんでここにいるのよ!?」

 

「ニーナに案内されたんだよ!」

 

「ニーナが!? ってイヤァァァァアアアア!!! 前隠しなさいよ、バカァ!!!」

 

「おわっ!?」

 

アリスに指摘されて初めて気づく!

 

驚きすぎて俺も全裸なの忘れてました!

 

とりあえずタオルで隠そう!

 

よし!

これで完璧だ!

 

って満足してる場合じゃねぇ!

 

アリスに事情を理解してもらわないと、丸焦げになる!

それは避けなければ!

 

「と、とりあえず、俺の話を聞いてくれ、な? それから、雷は止めてくれ!」

 

「・・・・・・話を聞こうじゃない・・・・・・」

 

アリスは俺を涙目で睨みながらその場にうずくまる。

 

た、頼むから理解してくれよ?

 

そう切に願いながら俺はこれまでの経緯をアリスに話していった。

 

 

 

 

 

 

一通り事情を説明した後、アリスは盛大にため息を吐いた。

 

 

「ったく、図ってくれたわね、ニーナ」

 

「図った?」

 

「私もニーナに言われたのよ。良いお湯が手に入ったから入ってみてって」

 

おいおい・・・・・

ってことはニーナのやつ、これが狙いだったのかよ。

 

なんでこんなことを?

 

「あの娘は余計なことを・・・・・・こんな・・・・・」

 

何やらブツブツと呟くアリス。

何が心当たりがあるのかね?

 

「ま、まぁ、そういうことなんだ。とりあえず、俺は出るよ」

 

「え? でも、入ったばかりなんじゃないの?」

 

「それはそうなんだけど・・・・・」

 

流石にこれ以上いるのもアリスに悪いしな。

 

それにアリスの身体見たら色々反応してしまいそうだし、そうなれば丸焦げにされそうで恐いんだよね・・・・・

 

そう思い、風呂場から出ようとすると、アリスに腕を掴まれた。

 

何事?

 

 

 

「・・・・・わよ」

 

アリスが何か言ったけど、聞き取れなかった。

 

「えっ?」

 

「・・・・・良いわよ」

 

「何が?」

 

「だ、だから、あんたと一緒に入っても良いって言ってんの!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

な、なんですとぉぉぉぉぉおおおおおおお!?!?

 

 

「マジで!?」

 

「何度も言わせないでよ、バカァ!」

 

 

バキッ

 

 

「あべしっ!」

 

 

アリスのグーパンチが俺の顔面を捉えた!

 

ドクドクと流れる鼻血を抑えながら俺はアリスの言葉を脳内でリピートする。

 

一緒に入っても良い、だと!?

 

あのアリスがそんなことを!?

 

夢なのか!?

だとしたら、絶対覚めてくれるなよ!?

 

 

アリスは顔を真っ赤にしてモジモジと恥ずかしそうにしながら言う。

 

「せ、せっかく、ニーナが用意してくれたし・・・・・。あんたを追い出すのも悪いし・・・・・。それなら二人で入った方が、い、いいいいいいんじゃない?」

 

最後の方、声震えてますけど!?

大丈夫なの!?

風呂に入った瞬間、感電死とかしないよね!?

 

 

色々なドキドキ感を感じながら俺はアリスと共に湯船に浸かった。

 

 

 

 

 

 

王族用の湯船と言っても俺達の世界にある一般の風呂よりも少し大きいくらいだ。

二人で入ると当然狭い。

 

なので、俺とアリスは必然的に密着して入ることになるんだけど・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

か、会話がない。

気まずい空気が流れてるよ・・・・・・。

 

普段の俺なら柔らかい女の子の体の感触やおっぱいや太ももに意識を向け、それを楽しんでいるだろう。

 

しかし、この空気の中でそれをするのは・・・・・・・。

 

 

 

すいません、少しだけ楽しんでいます。

 

 

 

密着することで伝わるアリスの肌の感触!

女性特有の甘い香り!

もちろん、おっぱいにも目はいっています!

 

楽しまないわけにはいかないでしょう!

 

ただ、ガッツリ見るわけではなくチラッとだけどね。

そこが肝心。

 

変な気を起こせば感電死させられる可能性もあるし・・・・・

 

 

それにしても、あのアリスがこんなお誘いをしてくれるとは思わなかったよ。

この間のやつはお酒の影響だからだろうし。

 

 

さて、とりあえずはこの空気を何とかしないとな。

アリスも顔真っ赤で何を話したら良いか分からないと言った様子だし。

 

何を話そうか・・・・・・。

 

と俺が考えているとアリスに先を越されてしまった。

 

「イッセーって、いつもボロボロになってるわね。今日もそうだった」

 

「あー、まぁ、そうかな」

 

何でかは分からないけど、俺の敵って強敵が多いよな。

そのせいで戦う度に大きな怪我をしてる。

 

その自覚は前々からあった。

 

「見たときは驚いたわ。腕は一本無くなってるし、体のあちこちに槍が突き刺さってるし・・・・・・」

 

「俺だって、あそこまでやられるとは思ってなかったんだよ。ロスウォード・・・・・あいつの強さは異常だ」

 

「それでも、逃げることくらいは出来たでしょう?」

 

「出来るかよ、そんなこと。皆を置いて逃げるならボロボロになってでも戦った方がマシさ」

 

本気でそう思う。

 

逃げるくらいなら最後まで戦う。

俺はその覚悟でこれまで歩いてきた。

 

まぁ、戦略的撤退なら何回かしたけどね。

 

でも、皆を置いて自分だけ逃げるってのは絶対に無しだ。

 

「変わらないわね。そういうところ」

 

「変わらないよ。これからもな」

 

俺がそう返すとアリスはフッと笑んだ。

 

 

俺は今の生き方を変えるつもりはない。

もう二度と大切なものを失わないように。

守るべきものを守れるように。

例え自分が傷ついても戦い抜く。

 

まぁ、最近は皆に無茶するなって良く言われるから、程々にしているところもあるけどね。

 

 

アリスは少し俯くと、手でお湯をすくう。

 

「実はね、今日、あんたが倒れてるところを見たとき、心臓が止まりそうになった」

 

「大袈裟だな」

 

「大袈裟じゃないわ。あんたが死んだんじゃないかと思うと、それだけで何も考えられなくなったわ」

 

「・・・・・・・・」

 

「でも、あんたが生きているのが分かって、本当に嬉しかった。涙が出そうなのを堪えてたのよ?」

 

アリスはそう言うと苦笑する。

 

 

あの時は平然としているように見えたけど、こいつにも結構心配かけてたんだな。

 

「ゴメン」

 

「何謝ってるのよ。私はあんたが生きていてくれればそれで良いのよ」

 

「はははは・・・・・・。美羽にも言われたっけな」

 

「美羽ねぇ・・・・。まさか、魔王の娘を妹にしてるなんて思わなかったわ」

 

「連れ帰ってたことには驚かないのかよ?」

 

「うーん、魔王の娘がいないって聞いた時、なんとなく予想はついてたからね。それに」

 

「それに?」

 

聞き返すとアリスは俺の頬に指を当てて笑んだ。

 

「あんたならやりそうだし」

 

あらら・・・・・

俺の行動はお見通しだったようで・・・・・・

 

流石と言うかなんと言うか・・・・。

 

極秘に連れていった意味が無かったような気がするのは気のせいだろうか?

 

「まぁ、あの娘の言う通りよ。私もあんたが生きていてくれるならそれでいい。それだけで嬉しい。だから」

 

そこまで言うと、アリスは俺の首に手を回す。

 

そして、憂いのある瞳で言った。

 

 

 

 

「絶対に死なないで」

 

 

 

 

――――――っ

 

今までのどの言葉よりも重みがあった。

心の底から発せられた言葉。

 

 

今後、ロスウォードと戦うに当たって、俺が無茶をするのが分かってるんだろうな。

実際、あいつは無茶をしなければ生き残れない相手だ。

 

アリスはそれが分かってる。

 

だから、俺には無茶をするなとは言わなかった。

 

ただ生きて帰ってきてほしい。

 

それがアリスの俺への望み。

 

 

「ああ。死なないよ」

 

「絶対よ。王女との約束破ったらひどいんだからね」

 

「破らないよ。つーか、破ったらどのみち俺、死んでるじゃん」

 

「それもそーね。ふふふ」

 

 

俺達は一頻り笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、程よい温もりを感じた俺達は二人とも眠気に襲われ、そのまま目蓋を閉じてしまった。

 

 

翌朝、俺とアリスの間で気不味い雰囲気になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以前の質問で「この章のヒロインは?」と聞かれました。
その時は美羽とアリスのダブルヒロインって答えましたけど・・・・・・

書いてるうちに、「この章のヒロインってアリスじゃね?」と自分で思うようになってきました。(笑)

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