ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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100話記念の話はこの章が終わってからにするつもりです。
皆さんの希望するストーリー案待ってます!


15話 圧倒的な力

空を見上げる俺の視線の先にいるのは一人の男性。

 

 

死人のように血の気がない白い肌

 

何処までも冷たい、見ている俺の方が凍りつきそうな瞳。

 

アザゼル先生や朱乃さん、レイナのような黒い翼。

ただ、三人のように艶があるわけではなく、全てを呑み込むような深い闇色の翼だ。

 

頭部には二本の角、そして腰からは鞭のようにしなる長い尾があった。

 

 

その男性から感じられる圧倒的なプレッシャー。

あまりの重圧に息苦しささえ感じる。

アーシアとギャスパーなんて耐えることが出来ずに膝をついてしまっているほどだ。

 

 

額から冷たい汗が流れ落ちる。

 

 

「・・・・・な、んだ・・・・・あいつは・・・・・・ッ!」

 

 

この場にいる全員の視線が男性に集まる。

だけど、全員が動けないでいた。

 

先生やティアでさえ。

 

 

 

「貴様が赤龍帝か」

 

 

 

「っ!」

 

冷たい視線が俺の姿を捉えた瞬間、全身に悪寒が走った。

まるで、心臓を鷲掴みにされたような気分だ・・・・・。

 

あいつ、俺のことを知ってるのか・・・・?

 

ということはやっぱり――――

 

 

俺の思考がそこに至った瞬間、俺の視界から男性が消えた。

 

 

トンッ

 

 

 

「――――っ!!!」

 

 

気づけば男性は俺達の直ぐ近くに舞い降りていた。

 

 

全く反応できなかった・・・・・・!

 

動きが全く見えなかったぞ・・・・・ッ!!

 

 

「あいつ・・・・・いつの間に・・・・・・ッ!」

 

先生が僅かに聞き取れるほどの小さな声を漏らしていた。

 

先生も今の動きは見えなかったようだ。

 

見ればティアも同様の反応だった。

 

俺は驚きながらもゆっくり呼吸を整えていく。

そして、その男性の問いに静かに答えた。

 

「ああ。・・・・・・俺が赤龍帝だ」

 

「そうか。ロキから聞いていた外見的特徴が一致している。それに二年前と同じ力がおまえから感じられる」

 

ここでロキの名前が出てくるってことは間違い無さそうだな・・・・・・。

 

先生が一歩前に出て、男性に問う。

 

「おまえがあの白い奴らの親玉・・・・・・滅びの神か」

 

確信を持った声。

 

こいつから放たれるこの濃密な力。

それにロキの名前を口にした。

 

この場にいる全員が確信していた。

 

 

男性は無表情のまま口を開いた。

 

「神だと? 俺がか? 笑わせてくれる」

 

 

その答えに俺達は怪訝な表情を浮かべた。

 

・・・・・・まさか、こいつじゃないのか?

 

先生が聞き返す。

 

「おまえがこの騒ぎを起こしている張本人、滅びの神と呼ばれる存在じゃないのか?」

 

すると、男性はああ、と納得したように言う。

 

「・・・・・そうか。貴様らの間では俺はそう呼ばれているのか。ならば少しだけ訂正させてもらう。俺は神などではない。あのような愚か者共と同じ扱いは止めてもらおうか。不愉快だ」

 

この時、男性は始めて表情を変えて、明らかな不快感を見せた。

 

この世界の神々に対して何か思うところがあるのだろうか・・・・・。

 

「なるほど・・・・・。それなら、おまえのことはなんと呼べば良い?」

 

「ロスウォード。それが俺の名だ」

 

・・・・・・ロスウォード。

それが俺達が滅びの神と呼んでいた存在の名前か。

 

「それじゃあ、ロスウォード。おまえが神ではないとして、だ。この騒動を起こした張本人だってことは認めるんだな?」

 

「ああ、その通りだ」

 

ロスウォードは即答した。

 

・・・・・・隠す気も言い訳もなし、か。

まぁ、そんなことをしたところで意味はないけどさ。

 

先生は人工神器の短剣を突き付けて問いを続ける。

 

「おまえの目的はなんだ? あの伝承が事実ならおまえはこの世界を本当に滅ぼそうとしている。その理由はなんだ?」

 

そうだ。

そこが一番肝心なところだ。

 

なんで、こいつはこのアスト・アーデの各地で暴れまわっているんだ?

 

 

すると――――

 

 

「目的、か。答えるならば・・・・・・それが俺の存在意義だからだ」

 

「何?」

 

「俺はそのためだけに産まれてきた。・・・・・・いや、作り出された(・・・・・・)と言った方が正しいか」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

ロスウォードの予想外の言葉に俺達は驚愕を隠せないでいた。

 

 

作り出された、だと!?

 

ってことはこいつもフェンリルがロキに作られたみたいに、誰かの手によって作り出されたってことか!?

 

 

 

「全てを破壊し、全てを滅ぼす。それが、俺という存在だ」

 

 

 

ズッ・・・・・・

 

 

 

っ!!

 

ロスウォードから放たれる力が上がりやがった!

こいつ、どれだけの力を持ってやがるんだよ!?

 

俺は瞬時に鎧を纏う!

 

こいつは危険だ!

 

「部長! 皆を連れて逃げてください! ここは俺が―――ガッ」

 

 

俺は言い切る前に横からの衝撃に吹き飛ばされ、幾つもの家屋を突き抜けていった!

 

ヤバイ!

 

勢いが強すぎて止まらねぇ!

 

俺は咄嗟に背中のブースターからオーラを全力で噴出させて、勢いを相殺する!

 

海に突っ込むギリギリ手前のところでなんとか止まることが出来た。

 

 

ふぅ・・・・・な、なんとか止まったか。

 

にしてもなんつー速さだよ。

威力も半端じゃねぇぞ。

 

『正直に言おう。今の相棒ではまずは勝てん。アザゼルやティアマットと共闘したとしてもな。現段階で奴の力は全盛期の俺やアルビオン、天龍を超えている』

 

っ!

 

おいおい、マジかよ・・・・・・!

 

全盛期のドライグより強いとかどんだけだよ!

 

『更に言うなら今の奴はまだ本気ではない。見たところ、余裕があったからな。どれだけの力があるのか、それは俺にも測れない』

 

クソッ・・・・・

嫌な追加情報だぜ。

 

 

 

ドゴォォォォォオオオオオオン!!!

 

 

 

俺がさっきいたところから爆発音が聞こえる。

 

見ればティアと黄金の鎧を纏ったアザゼル先生がロスウォード相手に戦っていた!

 

あの鎧は人工神器の禁手。

俺の籠手みたいに何度も使える訳じゃないから、その使用には制限がある。

言わば先生の奥の手みたいなもんだ。

それを出会って早々に使ったのか・・・・・・。

 

 

あの状態の先生はオーフィスの蛇を飲んだ旧魔王派の幹部を圧倒できるほどの力を発揮する。

 

ティアだって龍王最強と言われるほどの猛者だ。

 

その二人を相手にしてロスウォードは押されるどころか圧倒していた。

 

 

なんて奴だよ・・・・・・!

 

 

俺も直ぐに加勢しねぇと!

 

ドライグ!

 

『逃げろ、と言ったところで無駄か。だが、それでこそだ。いいぞ。既に準備は出来ている』

 

サンキュー!

こうなったら超巨大な一撃をぶっ放してやろうぜ!

 

 

俺はに鎧を天撃の状態に変化させる。

 

同時に倍加もスタート!!!

 

 

『Accell Booster!!!!』

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

更に錬環勁気功で気を周囲から取り込んで限界まで気を循環させていく!

 

狙いはロスウォード。

 

先生とティアに当たらないように気を付けないとな。

 

俺は三人の戦闘を注意深く見て、タイミングを伺う。

 

早まるな、と自分に言い聞かせる。

先生とティアが離れた瞬間、奴の動きが止まった瞬間を狙い撃つ!

 

 

そして、その時が訪れた!!

 

 

「いっくぜぇぇぇええええ! ドラゴン・フルブラスタァァァァァアアアアア!!!!」

 

『Highmat Full Blast!!!!』

 

六つの砲門からかつてないほどのオーラの奔流が放たれる!

放たれたオーラは空中で孤立したロスウォードに向かって突き進む!

 

ロスウォードは自分に迫る砲撃に気付きながらも、その場から動く素振を見せない。

 

そして――――――

 

 

ドドドドドォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

俺が放った砲撃は見事に直撃した!!

 

 

煙が辺りに立ち込める。

 

俺はロスウォードの動きが止まっている間に先生とティアに合流する。

 

「先生! ティア! 二人とも無事か?」

 

「今のところはな。それにしても良いタイミングだった」

 

先生もティアも少し鎧と服がボロボロになっているけど今のところは大きな傷を負っている様子はなかった。

流石だ。

 

 

ふと見ると、部長達の姿がどこにもなかった。

 

俺の様子に気づいたのかティアが教えてくれた。

 

「美羽やリアス・グレモリー達には下がってもらったぞ。あのレベルを相手にあいつらを守りながら戦うのはきついからな。もうすぐオーディリアの兵士達と合流するはずだ」

 

なるほど。

確かにその判断は間違ってない。

 

部長達には悪いけど、そのあたりは皆も理解しているはずだ。

 

おそらく、アリスやモーリスのおっさん達にも知らせは行くはず。

 

「さて、俺達は目の前の奴に集中しねぇとな。今の一撃をまともに食らったんだ。倒せなくとも傷は負わせたと思いたいところだが・・・・」

 

先生が今だ煙に覆われている場所を睨む。

 

俺もそう思いたいところだ。

 

 

 

 

ドゥンッ

 

 

 

 

煙の中心から強風が巻き起こり、煙を掻き消していく。

 

現れたのは―――――――――――無傷のロスウォードの姿だった。

 

「マジかよ・・・・」

 

つい声が漏れてしまう。

 

それほどに衝撃だった。

 

天撃の最大出力の砲撃をまともにくらったんだぞ!?

それなにに無傷なんて・・・・

 

「こいつは・・・・本格的にヤバいな」

 

「先生、どうしますか?」

 

「どうするって言われてもな・・・・・・ここまでの奴が出てくるとは完全に想定を超えてる。俺としては一旦下がりたいところだが、そういうわけにもいかんだろ?」

 

そう言って先生はチラッと町の中心部に視線を送る。

 

向こうにはまだ、トリムさん達や町の住民の人達もいる。

ここで俺達が下がってしまえば、間違いなく被害は拡大するだろう。

 

せめてもう少し保たせたいところではある。

 

 

ロスウォードは自分の掌を見つめた後、俺達の方に視線を送ってきた。

 

 

 

「この程度か・・・・。少しは期待していたんだが、残念だ。どうやら期待外れのようだ」

 

 

 

また俺の視界から奴の姿が消える。

 

そして次の瞬間、風を切る音と共に苦悶の声が聞こえた。

 

「ガッ・・・!」

 

振り返れば、俺の隣にいた先生の姿は無く、代わりにロスウォードが立っていた!

 

先生はどこに・・・・!

 

奴の視線を追うと、その先には破壊された家屋。

瓦礫の中に先生が埋まっていた!

 

また見えなかった!

 

 

「チィッ!!」

 

 

舌打ちをしてドラゴンの姿に戻るティア。

その姿に戻った途端、巨大な拳でロスウォードを殴りつける!

 

衝突の衝撃が空気を震わせる!

完全に捉えた!

 

 

だが――――

 

 

「いくら巨体になろうとも、この程度では俺には届かん」

 

「なっ!?」

 

ティアの腕が宙を舞った。

いつの間にかロスウォードの右腕には黒い槍が握られていて、その先端には赤い血が滴っていた。

 

 

「テメェ!!!」

 

 

激高した俺は天撃から天武へと鎧を変える!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』

 

『Ignition Booster!!!!』

 

砲門の代わりに全身に増設されたブースターからオーラを噴出!

ソニックブームを巻き起こす!

 

「うおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

この近距離だ!

この拳は外さねぇ!!!

 

ロスウォード目掛けて放った全力の拳!

 

それは奴を捉えて、かなりのダメージを与える―――――――はずだった。

 

 

パシィッ

 

 

空しく響く音。

俺の全力の拳はロスウォードによって軽々と受け止められていた。

 

「クソッたれ!」

 

俺は驚愕しながらも、更に追撃を仕掛けようと左の拳を握った。

 

しかし、

 

「言ったはずだ。期待外れ、と」

 

斬り落とされる俺の左腕。

噴き出す鮮血。

 

激痛が走る!

 

なんなんだ、こいつの異常な力は!?

 

「イッセー!!」

 

先生が巨大な光の槍を持ってこちらに迫る!

更にはティアが巨大な魔法陣を展開していた!

 

俺は咄嗟にその場から離れる!

 

それと同時に先生の巨大な槍とティアの極大の砲撃がロスウォードに放たれた!

 

二人の一斉攻撃がロスウォードに命中する!

 

だけど、これで倒せるような奴じゃない!

俺は痛みを堪えながらイグニスを呼び出す!

 

この剣を受ければいくらあいつでも多少の傷は負わせれる。

そう踏んでの行動だった。

 

ロスウォードの背後に回り、全力でイグニスを振り下ろす!

俺の想いに応えるようにイグニスの刀身が紅く変色し灼熱化した!

 

こいつなら!

 

 

 

「ほう。イグニスか。懐かしい剣だ」

 

 

 

久しぶりに出会ったような目でイグニスを見るロスウォード。

 

 

・・・・・・こいつ、イグニスを受け止めやがった。

 

それも素手で。

 

 

「なるほど。貴様が今の所有者だったか。だが、貴様はこの剣の真の力を全く引き出せていないな」

 

「おまえはこの剣の力を知ってんのかよ?」

 

「ああ。一度、この身で受けたからな」

 

ということは、伝承に出てきた剣って、やっぱり――――――

 

いや、今はとりあえずこいつを何とかしねぇと!

 

ロスウォードの周囲に黒い槍が無数に現れる。

 

「そろそろ終わりにしよう。貴様らでは俺の望みは叶えられん」

 

ロスウォードが指を鳴らした瞬間、黒い槍が四方に散っていく!

それは街の至る所に降り注ぎ、破壊の嵐を巻き起こしていった!

一本一本の威力が異常だ!

 

俺や先生、ティアもなんとか避けようとするが、あまりの量に完全によけきることは出来ず、体の至る所に槍が突き刺さっていく!

 

その一撃の威力に、俺達は耐えることが出来ず地面に落下してしまう!

そして、そのまま地面に張り付けにされてしまった!

 

「ゴブッ」

 

口から大量の血が吐き出される。

全身から血が流れていくのが見えた。

 

ヤバい・・・・出血しすぎて、感覚なくなってきた・・・・

 

体に力が入らない。

動けねぇ・・・・・!

 

 

ロスウォードはこちらに手を向けて、手のひらに黒い光を集めていく。

俺達にトドメをさそうってのか・・・・!

ダメだ、避けられねぇ・・・・!

 

 

そして、黒い光が強くなった。

 

その時――――――――――

 

 

 

奴の動きが止まった。

 

 

 

何だ?

トドメをさすんじゃないのかよ?

 

ロスウォードは自身の掌を見て呟いた。

 

「これは・・・・。そうか、まだ封印の影響が残っていたか・・・・・」

 

封印の影響?

どういうことだ?

 

もしかして、あいつの封印は完全に解かれたわけじゃない・・・・・?

 

ロスウォードの視線が怪訝に思う俺に移る。

 

「チッ・・・俺が動けるのはここまでか・・・・・。ならば―――――――」

 

そう言うと、再び手に黒い槍を作りだす。

そして、そのまま自分の腕の表面を斬った。

 

腕を前に突出し、横凪に一閃する。

あいつの腕から流れ出ていた血が周囲に飛び散る。

 

すると、

 

 

ボコッボコッ

 

 

奇妙な音と共に血が付着した地面が盛り上がる。

それは徐々に形を成していく。

それは俺達がつい先程戦っていた奴らと似ていた。

 

 

グギャァァァァァァァァアッ

 

オオオオオオオオオオオオッ

 

 

奇声を上げはじめる白い怪物共。

 

 

・・・・そうか、あの白い怪物どもはロスウォードの血で生み出されていたのか。

先生の推測が当たってたわけだ。

 

 

ふと、視線を上空に向けると、既にロスウォードの姿は無かった。

どうやらあいつは去ったらしい。

 

助かった・・・と言いたいところだけど、あいつが残していった白い怪物が迫ってるんだよね。

今度は半魚人みたいなやつかよ。

 

迎え撃ちたいところだけど、黒い槍のせいで身動きが取れない!

 

そんな俺の前に怪物が立つ。

 

このままじゃ、やられる!

 

 

 

 

 

「もう! だから気をつけてって言ったでしょ!」

 

 

 

 

 

気が付けば、目の前にいた怪物が真っ二つになっていた。

 

そしてその代わりにいたのは――――――――

 

 

 

「ふぅ・・・どうにか間に合ったみたいね。意識はまだあるかしら、イッセー?」

 

 

 

白い雷をその身に纏い、怪物から槍を引き抜く女性。

 

アリスが俺の目の前に立っていた。

 

 

 

 

 




次回はアリス達を活躍させる予定です。

気になるアリス達の力量が分かると思います。

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