遂に100話達成!
ここまで応援してくれた方々に感謝です!
ありがとうございます!
投稿開始から約半年。
結構なハイペースできたような気がします。
その知らせは突然だった。
このオーディリアに奴らが現れた。
報告を受けた俺達はモーリスのおっさんの指揮で集められた兵士の人達と共に城の正門近くにある『転移の門』の前に集まっていた。
おっさんが前に立ち、兵士に伝える。
「先程、オーベル地区に奴らが現れたという情報が入った。この国に現れたのは今回が初めてとなる。が、奴らのことはこの場の全員が知っているはずだ。絶対に気を抜くんじゃねぇぞ。いいな!」
『はいっ!』
「よし! それじゃあ、部隊は大きく二つに分ける。一つはイッセー達と現地へ向かう部隊。もう一つは俺と共にここに残り、もしもの事態に備える部隊だ。今のところはオーベル地区しか知らせは受けていない。だが、奴らは神出鬼没だ。どこに現れるかは分からんからな」
確かにそれがいいだろう。
一応、俺と行く部隊には部員の皆だけじゃなく、先生やティアまでいる。
あの白い怪物を相手取る戦力としては十分だろう。
あとは住民の避難と安全の確保を兵士の人達にやってもらえれば問題ないはずだ。
「イッセーと行くのはトリムの部隊だ。頼めるか?」
「了解しました。騎士の誇りにかけても必ず民を守ってみせます」
トリムさんの言葉におっさんは頷いた。
ブゥゥゥウン
その音と共に石で作られた巨大な門が虹色に輝きだす。
転移の準備が出来たんだ。
この転移の門は非常時にしか使用許可が下りない。
今回はそれだけの事態ってことだな。
ちなみにだけど、使用許可を出すのはこの国のトップを勤めているアリスだ。
あんな感じだけど一応は王女だからな。
トリムさんの部隊に続き、皆が門を潜っていく。
最後に俺が潜ろうとするとアリスが近付いてきた。
「イッセー、気を付けてね」
なんか、不安そうな顔してるな。
らしくもない。
「分かってるよ。こっちは任せとけ」
俺は笑ってそう答えると門を潜り、虹色の光に包まれていった。
▽
転移の光に包まれた後。
目を開くと広がっていたのは見覚えのある風景だった。
オーディリアの南部に位置する都市、オーベル。
城下町のあるセントラルほどではないけど、ここも大きな町の一つだ。
海に面しているため、貿易船が多く停泊している。
旅の途中でも何度か寄ったことがある町だ。
いつもならセントラルの城下町みたいに人がたくさんいて賑わっているんだけど・・・・・・
人の気配が少ない。
既に避難しているのか?
ドオォォォォォォォン!!!
遠くの方から爆発音が聞こえた!
聞こえてきた方を見てみると黒い煙が上がっている!
もしや、と思った俺は感覚を広げてそこの気を探る。
この気は・・・・・・!
「奴らだ! 皆、行こう! トリムさん達は逃げ遅れた人の救助に当たってください!」
「了解です! イッセー殿、どうかお気をつけて!」
俺達はそこで分かれて、現場まで走った。
そこに行くまでに逃げる町の人達とすれ違う。
走ること数分。
現場に辿り着くと、そこにはあの白い怪物が二十体以上もいやがった!
ちっ・・・・!
まさか、こんなに多くいるなんてな!
それにしても、どうやってこんなに入り込んだんだ・・・・?
しかも、こんな町の中心近くまで・・・・・。
まぁ、考えるのは後回しだ!
今はこいつらを潰すのが先決か!
俺は瞬時に鎧を纏う!
「周囲には人の気配はない! 皆は全力で応戦してくれ!」
「「「了解!!」」」
前回、フォレストニウムでやり合った時のように俺と先生、ティアの三人は一人で、部長達はチームを組んで怪物共に殴りかかる!
いくぜ、ドライグ!
こいつらのしぶとさは前回で学習済みだならな!
『ああ。生半可な攻撃ではこいつらは倒れない。全力でやれ』
まぁ、美羽や部長達を巻き込まないように注意はするけどな!
スパークが生じると共に鎧の形状が変化する。
今回は格闘戦でいくぜ!
「禁手第二階層――――天武!!!」
全身にブースターが増設され、格闘戦に特化した形状になった!
前回は天撃でいかせてもらったけど、天武ならどうよ!
『Accell Booster!!』
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』
全身のブースターからオーラが噴出されて、怪物のとの距離を一気に詰める!
形はドラゴンみたいだな。
手が十本あって蜘蛛みたいだけど。
まぁ、それは良いとして、怪物もこのスピードには反応しきれていない!
「おおおおおおおおっ!!」
ドゴォォォォォォォン!!!!
渾身のストレートが怪物の顔面を捉えて遥か彼方まで吹き飛ばす!
普通ならこれで決まってるだろうけと、こいつらのしぶとさは並みじゃねぇからな。
俺は怪物を追いかけて更に追撃を仕掛ける!
怪物の真上を飛び、地面をバウンドして宙に浮いたところを叩きつけた!
籠手の力と錬環勁気功で高めた気を纏った拳での一撃。
この強烈な一撃をまともに食らった怪物は体を四散させた!
更には拳の余波で地面が大きく抉れて周囲を吹き飛ばしていく!
町の人達、ゴメン!
いくつか家が吹き飛んだ!
「おい、イッセー! もっと静かにやりやがれ!! っと、危ねぇな、この野郎!!」
先生は迫る怪物の炎をかわして、光の槍をぶん投げていた。
槍は怪物に突き刺さるとそのまま地面に巨大なクレーターを作り出した!
・・・・・ってあんたも人のこと言えないでしょうが!
「祐斗は聖魔剣で奴らを足止めして! 美羽とロスヴァイセはその隙に魔法で砲撃よ! 私と朱乃も続くわ!」
部長の指示に応じて、木場が怪物数体の足元に大量の聖魔剣を作り出す。
地面から咲いた聖魔剣は怪物共の足や胴体に突き刺さり、足止めに成功する!
そこへ、上空で幾重にも魔法陣を展開して待機していた美羽とロスヴァイセさんが極大な魔法のフルバーストを放った!
見てるだけで寒気がするほどの威力を持った砲撃だ!
それらは木場によって足止めされていた怪物共を一瞬で塵にしていった!
「流石です、美羽さん」
「ロスヴァイセさんの力があったからだよ」
それを確認した美羽とロスヴァイセさんは上空でハイタッチしていた。
魔法使いのコンビか。
二人とも相当の使い手だからとんでもないな!
と二人に感心していると地上では部長と朱乃さんのお姉様コンビが紅いオーラと黄金のオーラを纏っていた。
「朱乃!」
「了解ですわ!」
二人のオーラは膨れ上がり、それぞれ何かを形作っていく。
あれはドラゴンか?
部長の方は西洋のドラゴンで、朱乃さんの方は東洋の細長いタイプのドラゴンだ。
部長が笑む。
「こっちに来てから、なんだか力が溢れてくるの。だからこんなのも出来るようになったわ。――――
「あらあら。実は私もですわ。ーーーー雷光龍。うふふふ。ドラゴンの形になったのはイッセー君の影響かしら?」
おおっ!
なんだか知らないけど二人ともパワーアップしてる!
しかも、滅びの力と雷光をドラゴンの形に出来るのか!
めちゃくちゃ強そうだ!
「さぁ、消し飛ばしなさい!」
部長がドラゴンに指示をだす。
すると、滅びの力で形成されたドラゴンは意思を持ったかのように怪物に襲いかかった!
怪物に噛みつくと、その部分が跡形もなく消えていく!
かなり強力だ!
あれだけ濃密な滅びのオーラを形に出来るようになっていたのか。
あれじゃあ、大抵のものは触れただけで無くなっちまうな!
「続きます!」
朱乃さんも部長に続いて、雷光の龍を走らせた!
雷光の龍はその長い体で二体の怪物に巻き付いた!
すると―――
ガガガガガガガガガガッ!!!
雷光が煌めき、怪物の体を焦がしていった!
しかも、巻き付いている限りその攻撃は続くようで、怪物の足を完全に止めていた!
「うふふふふふ! どうかしら私の電撃は? おいたをする子にはまだまだいきますわ!」
笑顔で雷光の出力を上げていく朱乃さん!
怖ぇぇぇええええ!!!
なんかSの方もパワーアップしてませんか!?
こんな状況なのに楽しそうですね!
にしても部長と朱乃さんはいつの間にここまで力を上げたんだ?
・・・・・そういえば、さっき部長がこの世界に来てからとか言ってたな。
もしかしたら、この世界に来たことで体に何らかの変化が起きた・・・・・?
いや、でも、モーリスのおっさんとやり合ってた木場とゼノヴィアにはそんなところは見られなかった。
力が伸びる人とそうでない人がいるのか?
いや、個人差ってのも考えられるか・・・・?
『もしかしたら、相棒の第二階層もこの世界に来たことが関係しているのかもしれんな』
第二階層が?
『ああ。以前にも言ったことがあるだろう? このような進化を遂げたのは相棒だけだ。相棒の強い想いに神器が応えたのは間違いないだろう。だが、この世界に来たことも一つの要因なのではないかと思ったのだ』
でも、俺が第二階層に至ったのはこっちに飛ばされてから三年も後だぞ?
部長や朱乃さんみたいに数日でのパワーアップなんて無かったぞ。
『そもそも、こっちに来てから一年経つまでは神器にすら目覚めてなかったではないか。禁手に至ったのもそれから二年後だ。それに』
それに?
『相棒も先程考えていただろう。個人差なのかもしれん』
おいおい・・・・・
それはそれで傷つくな。
俺のパワーアップ、遅すぎだろ・・・・・。
『相棒らしいではないか』
うっ・・・・
そう言われるとそうかもしれないな・・・・・・・
ま、まぁ、この状況で部長達がパワーアップしてくれているのは嬉しい誤算だ。
もしかしたら、木場達も後でパワーアップする可能性もあるわけだし、期待してその時を待つとしよう。
仮にそうだとしたら、木場も第二階層みたいな感じになるのかな?
すごく気になる。
グワァァァァアアアア!!!!
おっと、もう一体来やがったな。
俺は突っ込んできた一つ目の人みたいな怪物の腕を掴んで、背負い投げの要領で上空に放り投げた!
怪物は飛べないらしく、空中では身動きが取れないようだ。
これならあいつを狙い撃ち出来る!
右手を付出して、落下してくる怪物に照準を合わせる!
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』
「狙い撃つぜぇぇええええ!」
放たれる極大の気の奔流!
天武の状態で放つアグニだ!
威力は半端じゃねぇぞ!
俺が放った極大のアグニは怪物を一瞬で消し飛ばし、そのまま天を貫いていった!
ふぅ・・・・・・
流石のあいつらでもこのレベルの攻撃なら一瞬で片がつくか。
ドドドォォォォォォォォンンン!!!
鳴り響く轟音。
そちらを見てみると離れたところでティアが凄まじいオーラを纏いながら怪物共を蹴散らしていた。
「貴様らごときがこのティアマットに敵うと思ったか!」
流石は最強の龍王。
前回は力を抑えていたから、少し手こずっていたけど、制限無しの今ならこの程度は余裕みたいだ。
「今回は貴様らで憂さ晴らしさせてもらうぞ! 最近はイッセーと触れ合う機会が少なくてイライラしてたところなんだ!」
うおおぅ!?
何言ってるの、あの人!?
確かに、最近はアリスやニーナとばかり話しててティアと話すことが少なかったけどさ!
そんなにストレス溜まってましたか!?
俺と触れ合わないとイライラするんですか!?
ティアってそんな性格だったっけ!?
なんか、ゴメン!
今度からしっかりティアと話す時間を確保するよ!
「・・・・・なんか、凄いことになってるね」
木場が苦笑しながらティアの方を見ていた。
うん、そうだね・・・・・
あのペースだとティアがこの町を破壊し尽くしそうで怖いよ・・・・・・
「ほらほら、次だ次!」
そろそろ止めに入ろうか・・・・・。
いや、でも、恐いし・・・・・・。
だって、笑顔で怪物共をボコボコにしてるんだぜ?
溜まってるストレスをここで発散してるのかね?
どちらにしても恐くて近寄れねぇよ。
「木場、頼みがあるんだけど・・・・・」
「何となく予想はつくけど、一応聞いておくよ。何だい、頼みって?」
「あいつを止めてきてくれる?」
「イッセー君は僕に死ねと?」
「あはははは・・・・・ゴメン、冗談だ」
そう言って俺は迫る怪物共に殴りかかった。
▽
「とりあえずは片付いたか」
先生が首を回しながら言う。
俺も鎧を解いて、先生の言葉に頷いた。
二十体以上いたあの白い怪物共は部長や朱乃さんの予想外のパワーアップもあり、予想よりも早くに全滅させることが出来た。
・・・・・ま、まぁ、ティアの活躍も大きいかな?
見ていて怪物達がかわいそうに見えたよ・・・・・
ティアの顔はスッキリした表情をしていた。
どうやら、ストレスは発散できたらしい。
「ティア・・・・・」
「ん? どうした、イッセー?」
「俺、もっとティアとの時間を増やすよ」
俺がそう言うとティアの表情はパァッと一気に明るいものとなった。
更には俺を抱き寄せて、頭を激しく撫でてくる。
「そうか! ハハハハハハハ!」
普段ならここで皆の鋭い視線が来るだろう。
でも、皆はただ苦笑するだけだった。
どうやら、皆もティアの暴れっぷりに恐れを抱いていたようだ。
まぁ、そうなるよね・・・・・・。
『イッセー殿! 聞こえていますか、イッセー殿!』
通信用の魔法陣が展開され、トリムさんの声が聞こえてくる。
「聞こえてるよ。そっちはどう?」
『こちらは全ての住民を避難させることが出来ました。ケガ人が多く、中には重傷者もいますが、奇跡的に死傷者はいないようです』
その知らせに全員が胸を撫で下ろす。
死人が出なかったのは不幸中の幸いってところか。
「分かりました。俺達の方も終わったので直ぐにそっちに向かいます。トリムさんはそれまで、ケガ人の治療をお願いします」
『了解しました』
そこで通信は終わる。
俺は先程の戦闘で負傷したメンバーの治療に当たってるアーシアに声をかける。
「アーシア、悪いけどケガ人の治療を任せてもいいか? もしかしたら、衛生兵の人達だけじゃ人手不足かもしれないし」
「分かりました。それが私に出来ることなので」
アーシアは快く引き受けてくれた。
さて、とりあえず、アーシアの治療が終わるまで待つとしてだ。
「先生、どう思いますか?」
「あの白いやつのことか・・・・・。全ての個体が全く同じ気を持っていること、伝承の内容、そしてゼムリアに残っていた力の残滓。これらを照らし合わせると・・・・・。やはり、敵の親玉が産み出しているものとして考えるのが妥当だろう。・・・・・それで、さっき分かったことなんだが・・・・・・倒した内の一体から採取した腕なんだが、本体が消滅したら腕が土に変わったんだ」
「土、ですか?」
俺が聞き返すと先生は頷いた。
先生は懐から小瓶を取り出す。
中には何の変哲もない、何処にでもありそうな茶色い土が入っていた。
「こいつはその土の一部だ。詳しく調べて見ないことには何とも言えんが・・・・・・。敵の親玉は自然にあるもの、例えば土に自分の体の一部を使ってあの怪物共を作っている。なんてことが考えられる」
「でも、本当にそうなら白い奴を作るにも限界があるんじゃないですか?」
「ま、普通に考えればな」
先生は肩を竦めて小瓶をしまう。
自分の体の一部を使って産み出す、か。
あのレベルのやつらをあれだけの数を産み出せる時点でとんでもないな。
今後の調査で詳細が分かればいいんだけど・・・・・。
とりあえず、この町を襲っていた怪物共は全て片付けたし、新しい手懸かりも先生が見つけてくれた。
今回は収穫があったってことで戻るとしますか。
アーシアによる治療も終わり、ここから移動しようとした。
その時―――――
ズッ・・・・・・
「「「「「っ!!!!!」」」」」
突然、息が詰まりそうなくらいの重圧に襲われた。
な、なんだ・・・・・この感じは・・・・・っ!?
まるで体に重りを乗せたような感覚だ!
押し潰されそうになる!
皆も俺と同様で、先生やティアですら汗を流していた。
今まで感じたことのないこの重圧!
このプレッシャー!
こいつが放たれてくるのは!
「上か!!!」
俺は上空を見上げた。
そこにいたのは――――――
「貴様が赤龍帝か」
『滅び』が俺達を見下ろしていた。
というわけで、100話目、この章に入って14話目にしてようやく話が進みました!
活動報告でも書きましたが、何処かで100話記念のストーリーを書きたいと思っています!(その時の気分によりますが)
読んでみたいと思うストーリーを募集しています!