ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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12話 約束

「――――ってなわけで、おまえさん達も話は聞いているだろうが、正直言って分からないことだらけだ」

 

 

昼食から数時間後。

 

俺達はモーリスのおっさんから改めてこの世界の現状を聞いていた。

特に新しい情報はなく、ウルムさんやトリムさんから聞いた話とほとんど同じだった。

 

「滅びの神とやらも一度姿を見せてそれっきりだ。奴さんが現れるまではあの白いのを潰していくしかないだろう。完全に後手に回っちまうのは気に入らねぇけどな」

 

おっさんはそう言ってため息をつく。

部長や先生達もむぅ、と唸っていた。

俺も色々考えてはいるけど、これといったアイデアは出てこない。

 

オーディリアはまだ襲撃を受けていないみたいだし、他国はそれぞれの軍を率いてなんとか怪物を殲滅しているという。

 

たまに他国から救援要請も受けるみたいだから、俺達が動くのはその時になるだろう。

 

 

これは、長期滞在になるかも知れないな・・・・・。

 

 

なんてことを考えている俺の隣では一人、空気が違う人物がいた。

 

「・・・・・・私、なんてことを・・・・・・。もう、お酒・・・・・止める・・・・・」

 

今にもズーンという効果音が聞こえそうなくらいに落ち込んでいるアリス。

 

どうやら、酔った時のことを覚えているらしい。

 

 

俺が部屋に運んだ後、ワルキュリアの言った通り、十分くらいで目が覚めたんだけど・・・・・・

その瞬間に全てを思い出したらしく、それからずっとこんな感じだ。

 

 

ま、まあ、俺もあの変貌っぷりには驚いたけどね。

まさか、アリスがあんなエロく迫ってくるなんて思ってもなかったし。

 

だが、しかし!

アリスのおっぱいの感触はしっかり覚えている!

当然、脳内メモリーには自動保存されている!

服の上からも分かるあの柔らかさは最高だった!

 

 

おっと、とりあえず今は慰めてやらないと。

かなり沈んでいるからな。

 

「そんなに落ち込むなって。人間、誰にも失敗はあるだろ?」

 

「でも、皆の前であんな破廉恥なことを・・・・・・」

 

「い、いや、だ、大丈夫だって! 次! 次は気を付けような! うん!」

 

俺としてはもう一度してほしいけどね!

 

 

すると―――

 

 

「・・・・・・あんた、喜んでない?」

 

 

ギクッ!

 

なんでバレた!!?

 

 

「顔がニヤけてる・・・・・」

 

「あ、マジか・・・・・」

 

いかんいかん。

 

アリスのおっぱいの感触を脳内でリピート再生してたから、顔に出ちまったか。

 

「・・・・・私が落ち込んでるのに・・・・・あんたは私の胸の感触でも思い出してるんでしょ・・・・・」

 

 

再び、ギクッ!

 

 

なんで、そこまで分かるの!?

そんなに顔に出てた!?

 

「・・・・・あ、う、うん」

 

「・・・・・感想は?」

 

「最高でした! ありがとうございました!」

 

「もう! このスケベ勇者ぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

バキィッ!!

 

 

「ガフッ!」

 

 

アリスの鋭いアッパーで俺は宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーさん、大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとう、アーシア」

 

 

淡い光が俺の顔に当てられ、傷を癒していく。

アーシアがいてくれて助かった・・・・・・

 

当のアリスはというと顔を腕組みして俺と反対方向を向いている。

うーむ、流石に正直に言い過ぎたかな?

 

耳まで真っ赤になっているのが後ろからでも分かる。

 

 

「とりあえず、これをおまえさん達に渡しておこう」

 

そう言ってモーリスのおっさんから配られたのは魔法陣が描かれた紙だった。

 

これは・・・・・通信用か?

 

「有事の際はおまえさん達の力を借りることになるだろう。その時はそれを使って連絡を入れる。しっかり持っておいてくれ」

 

なるほど。

白いやつが現れたらこれに連絡が来るわけだ。

 

「連絡を受けたら、この城の正門前に集まってくれたらいい。おそらく、転移の門を使うことになる」

 

「転移の門?」

 

先生が興味を引かれたようだ。

 

「転移の門ってのは各国の主要な都市に配備されていてな。有事の際には門を繋いでそこに転移出来るのさ」

 

「それだったら転移魔法陣で転移した方が早いんじゃないか? まぁ、俺達はこの世界には来たばかりで、どこに転移すればいいのか分からんが・・・・・」

 

「それもそうなんだが、この門の利点は一度に大量の物資と人を転移出来ることなのさ。例えばだが、その都市が危険にさらされた場合、その都市の民衆を避難させることが出来るのさ」

 

「そいつは大したもんだ。なぁ、見せてもらっても良いか?」

 

「良いぜ。どうせ、見せることになるしな。イッセーはどうする?」

 

と、おっさんに尋ねられたけど・・・・

 

うーん、どうしようかな?

 

俺は転移の門の場所は知ってるし、何回か使ったこともあるから、態々見に行くほどのものじゃないんだよね。

 

今のところ、何も起きてないようだし、俺達の出番はない。

 

 

あ、そうだ。

それなら――――

 

「俺は町に行くよ。会っておきたいやつもいるからな」

 

そう言うとおっさんは何か察したようだった。

おっさんはニッと笑む。

 

「そうだな。だったらあいつの好物でも買っていくと良い。金は出してやるよ」

 

「助かるよ、おっさん。ありがとう」

 

俺はおっさんが出してくれたお金を受けとりポケットにしまう。

 

「ゆっくりして来るといい。だが、晩飯には戻ってこいよ? ワルキュリアが飯作ってくれてるだろうからな」

 

「分かってるよ」

 

 

俺はあいつに会いに行くとして、美羽達はどうするんだろ?

 

 

「皆はどうする? 俺と行くか?」 

 

「良いの? お兄ちゃん達の邪魔にならない?」

 

「そんなことはないさ。大勢の方があいつも喜ぶだろうからな」

 

 

 

 

 

 

俺はオカ研の皆を連れて王城を出た後、セントラルの城下町を訪れていた。

 

 

「わぁ・・・・・」

 

 

俺の隣で美羽が感嘆の声を漏らす。

 

町には多くの人が行き交っている。

大通りの両端には市場が並んでいて、どこも繁盛している様子だ。

更に言うなら他国からの商人も来ているみたいで、俺がいた頃よりも活気がある。

 

フォレストニウムも凄かったけど、ここは別の意味で凄いところだ。

美羽からすれば初めて見る世界かもな。

 

俺達が住む町でもここまでの人混みは見られない。

 

部長が言う。

 

「凄い人だかりね。今日はお祭りでもあるのかしら?」

 

「ここはいつもこんな感じですよ。でも、前よりも人が増えたかな?」

 

ここは元々、物流が集中する場所だし、国内外を問わずに色々な人が集まってくるんだけど・・・・・

でも、確かに人が多いような気がする。

 

もしかしたら、魔族との和平が成立したからかな?

そうだと嬉しいな。

 

「イッセー先輩、その帽子はとうしたんですか?」

 

小猫ちゃんが俺の頭に乗ってる帽子を指差しながら聞いてきた。

 

「これ? これはモーリスのおっさんから借りたんだよ。俺の顔は結構知られてるからね。大騒ぎになるからって貸してくれたんだ」

 

まぁ、魔法で分からなくしたりする方法もあるんだけど、そこまでするのは面倒だし・・・・・

気を完全に消して認識出来なくする方法もあるけど、そうなると皆からも俺を認識出来なくなるからね。

 

バレたらその時は何とかするよ。

 

「それで、イッセー君はどこに行く予定なのですか?」

 

「とりあえず、俺がよく買い食いしてた店に行きます。これから会うやつは、そこのパイが好物だったので」

 

広場についた俺は町の地図を確認して、目的の場所を探す。

 

えーと、確かあの店は・・・・・

 

お、あったあった。

良かった、まだ店はあるみたいだ。

 

「店の場所を確認できたんで、行きま――――」

 

 

「ここにいたのですね、イッセー」

 

 

突然、後ろから声をかけられた。

聞き覚えのある声だ。

 

振り返るとそこにいたのは淡い緑色の髪を後ろで束ねた長身の女性。

歳は俺より少し上くらい。

服装はノースリーブの白いワンピースで、スラッとした白い四肢を覗かせている。

 

 

「もしかして、リーシャか?」

 

「ええ、そうですよ。久しぶりですね、イッセー」

 

やっぱり!

 

彼女の名前はリーシャ・クレアス。

歳は俺よりも四つ上。

旅の仲間で、俺やアリスのお姉さん的な存在の人だ!

 

「会えてうれしいよ。おっさんから聞いたぜ。教官をしてるんだってな」

 

「はい。と言っても今年からなので新米なんですけどね」

 

「それでも凄いじゃないか。おめでとう、リーシャ」

 

「ありがとうございます。イッセーも一層逞しくなりましたね。――――さぁ、こちらに」

 

と両手を広げるリーシャ。

 

そうだった・・・・・。

この人は仲のいい人には直ぐハグする癖があるんだった。

何でかはアリス達にも分からないんだけど、昔からこうらしい。

 

皆の視線が恐いところだけど・・・・・

 

俺はリーシャとの距離を詰めて背中に手を回す。

リーシャも俺の背中に手を回してきた。

 

「本当に逞しくなりましたね。出会った頃とは大違いです」

 

まぁ、修行しまくったからね。

 

それよりも、リーシャの豊かな胸が当たって・・・・・。

しかも、大人のお姉さんの良い香りがする。

アリスとはまた違った香りだ。

たまらんね!

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

・・・・・・うん、皆の視線が恐い。

 

ロスヴァイセさんだけは周りの店に興味を持っていかれてるみたいだけど・・・・・。

 

 

「そちらの方々はイッセーの・・・・?」

 

「元の世界から連れてきた俺の仲間さ」

 

「そうですか。それなら、挨拶をしておかないといけませんね。はじめまして、私の名前はリーシャ・クレアス。気軽にリーシャと呼んでください」

 

リーシャは丁寧にお辞儀をする。

 

それに応じて皆も名乗っていく。

 

皆の紹介が終わったところでリーシャが尋ねてきた。

 

「それで、イッセーはどちらに?」

 

「『山猫食堂』に行くんだけど、その前に土産を買っていこうと思ってね」

 

「なるほど。あそこのお店に行くのですね。それなら、私もご一緒してもよろしいですか? 私もここの所は忙しくて、機会がないのです」

 

「もちろん。それじゃあ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

リーシャと再会した俺達は俺がよく買い食いをしていた店で人数分のパイを購入した後、目的の店を訪れた。

 

店の看板には『山猫食堂』という店の名前と猫の絵が描かれていて、外観は古びた印象を受ける。

 

「ここに来るのは私も久しぶりですね。イッセーほどではありませんが」

 

「最後に来たのはいつくらいなんだ?」

 

「そうですね・・・・・・三ヶ月ぶりでしょうか」

 

三ヶ月か。

 

あまり時間が取れないって言ってたしな。

魔法学校の教官も大変だ。

 

歩きながら聞いた話だと、リーシャは主に回復魔法の指導に当たっているらしい。

旅の間に培った技術を次の世代に伝えていくことにやりがいを感じているとのことだ。

 

リーシャは戦闘もこなせるから、たまに残業で戦闘訓練を見ることもあるみたいだけどね。

 

部長が尋ねてくる。

 

「ねぇ、イッセー。ここに会いたい人が? でも、準備中みたいよ?」

 

部長の言う通り、確かにドアには『準備中』の札が張られてある。

 

まぁ、昼飯時はとっくに過ぎてるし、仕方がないのかな?

 

「大丈夫ですよ。とりあえず入りましょう」

 

 

店内に入ると、そこにあったのは小さなフロア。

木目の床にところ狭しと並んだテーブル。

 

石造りの壁にはポスターや貼紙が貼られてある。

天井には巨大なシーリングファンがあって、店内の空気を循環させている。

 

この店は俺がこっちにいた頃、よくモーリスのおっさん達に連れてこられた店だ。

アリスやニーナもお忍びでよく来てたっけ。

あいつら、城から勝手に抜け出した時はワルキュリアに説教されてたのをよく覚えてるよ。

 

 

「誰もいないよ? 勝手に入って大丈夫だったの?」

 

美羽に言われてぐるっと店内を見渡す。

確かに誰もいない。

 

この時間帯ならいると思ったんだけど・・・・・・。

 

「おーい居ないのかよ、おばちゃーん」

 

少し大きめの声で呼び掛けてみる。

 

すると

 

「はいはーい、どなた~?」

 

厨房の奥から、女性の声が返ってきた。

 

なんだ、いるじゃん。

 

「表に札をかけ忘れたかしら? ごめんなさいね、今準備中なの~。もう少ししてから来てくれる~?」

 

あらら・・・・・

俺の声に気づいてないよ。

 

「エルニダさん。私です。リーシャです」

 

とリーシャが言うと、厨房から女性が現れた。

 

「あら~、リーシャちゃん? 久しぶりじゃないの。最近、めっきり来なくなってたから心配してた――――えっ?」

 

現れた女性は俺の姿を視界に捉えた瞬間に固まった。

 

そして、その表情は驚きのものから喜びの笑みへと変わっていった。

 

「あら・・・・・イッセーじゃないの!」

 

エプロンで手を拭きながらおばちゃんは慌てて近寄ってきた。

 

俺も笑みを返す。

 

「久しぶり、おばちゃん。元気にしてたか?」

 

「勿論よ、って来るなら来るで連絡しなさいよ! 分かってたら色々、料理つくって待ってたのに!」

 

おいおい・・・・・

早速無茶言ってくれるよ、この人。

 

「俺、昨日戻ってきたばっかりなんだぜ? しかも、いたのはゲイルペインだ。こっちに来たのも今日の昼頃だよ」

 

「そうなの? でも、昨日モーリスが来たけど、何も言ってこなかったわよ? あ、もしかして、ご機嫌だったのはこれが理由?」

 

あのおっさん・・・・・・・・

 

「それにしても、可愛い娘ばっかり連れて・・・・・アリス様が怒ってたんじゃないの?」

 

「別に・・・・・。いや、着替え覗いたら殴られたか・・・・」

 

「あんたも相変わらずだねぇ」

 

嘆息するおばちゃん。

 

確かに今でもスケベだけど、あれはモーリスのおっさんのせいでもあるし!

それに、あんな所で着替えるアリスにも問題があると思うんだ!

 

「まぁ、適当に座んなさいよ。おやつでも作ってあげるから」

 

「ありがとう。あ、俺、あいつに会いに来たんだけど、良い? ほら、あいつの好物も買ってきてるんだ」

 

と、手に下げている袋を見せる。

中にはパイがいくつか入っている。

 

それを見たおばちゃんは目を細めた。

 

「そうかい・・・・すまないねぇ。ゆっくり話してきな」

 

「ありがとう」

 

そう言って、厨房の横を通って店の裏口へと歩いていった。

皆も俺の後をついてくる。

 

裏口のドアを開けると、そこにはやや大きい中庭があって、家庭菜園が広がっていた。

何種類かの野菜を育てているようで、中には大きな実を付けているものもある。

 

「イッセー君、ここに会いたい人がいるのかい? 誰もいないけど・・・・・」

 

木場が怪訝な表情で尋ねてきた。

 

まぁ、事情を知らなかったらそう言う反応になるよな。

俺は苦笑しながら歩を進める。

 

そして、辿り着いたのは庭の隅。

 

「これは・・・・・お墓?」

 

そこにあるのは小さな墓石。

その墓石には文字が刻まれてある。

 

皆が怪訝な表情をする中、美羽が声を漏らした。

 

「ライト・・・・・・もしかして・・・・・」

 

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

 

美羽の漏らした一言に皆も目を見開いた。

どうやら、ここが何なのか理解したようだ。

 

リーシャが皆に説明する。

 

「ここはイッセーの先代の勇者、ライト・オーヴィルの実家なのです。そして、その墓石はライトのもの。先程の方はエルニダ・オーヴィル、ライトの母親です」

 

 

リーシャの言う通り、この墓は俺を庇って死んだ俺の親友ライトの墓だ。

 

俺は墓石の前に座り、語りかけた。

 

「久しぶりに会いに来たぜ、ライト。ほれ、おまえの好物もこの通りな」

 

袋からパイを取り出して、墓石に備える。

こいつはこれが本当に好きだったからなぁ。

二人でよく食べたよな。

 

 

・・・・・・ここに来る度に思い出す。

 

ライトが俺を庇って死んだ日の事を。

 

魔族に斬られて倒れていく姿。

ライトの体から流れ出ていく赤い血。

 

今でも鮮明に覚えてる。

 

俺の軽率な行動が親友を殺した。

今でもそう思っている。

その後悔の念はいつまで経っても消えることはない。

 

 

だけど、ライトの最後の言葉。

倒れゆく中、俺に発した最後の言葉もしっかりと覚えてるんだ。

 

 

『皆を頼む』

 

 

その言葉は俺に刻み込まれた。

親友との最後の約束。

絶対に破ってはいけない約束だ。

 

だから、神層階まで行って無茶苦茶修行して、皆を守れるくらいの力を手に入れた。

 

そして、俺はなんとか戦争を終わらせることに成功した。

 

 

でも、再びこの世界に危機が迫っている。

俺はこいつとの約束を守らないといけないんだ。

 

 

俺は墓石に拳を当てる。

 

「ライト。俺はおまえの分まで力を振るう。皆を絶対に守ってみせる」

 

 

――――おまえがくれたこの命。皆のために使ってみせるぜ。

 

 

俺は立ち上がり、皆の方を向いた。

 

「ここに皆を連れてきたのは皆に俺の覚悟とお願いを聞いてもらいたいからだ」

 

「覚悟とお願い・・・・?」

 

その言葉に頷く。

 

「皆も話を聞いてなんとなく理解しているはずだ。今回の敵はおそらくロキよりも強大な力を有している。そんな危険な奴が俺達の敵だ。・・・・・今回の任務はあくまで調査。危なくなったら元の世界に帰ることになっている。だけど、俺にはそんなことは出来ない。何がなんでも、そいつを倒す。そのつもりで俺はここに来た」

 

皆は俺の話を黙ったまま静かに聞き続ける。

 

「だけど、俺だけじゃどうにもならないこともあるだろう。だから、その時は皆の力を貸してほしい。頼む!」

 

俺はそう言って皆に頭を下げた。

 

 

「「「「「もちろんっ!!」」」」」

 

 

俺が頭を上げると皆は強い瞳で俺を見ていた。

もうそれ以上何も言わなくてもいいと言った目だ。

 

どうやら、既に俺の覚悟は皆に伝わっていたらしい。

 

だったら俺の言うことは一言でいい!

 

「ありがとう!」

 

俺達のこの光景を見て、リーシャとおばちゃんが微笑む。

 

「イッセーは元の世界でも良い仲間を持ったみたいですね」

 

「そうだねぇ。イッセーはスケベなのに何故か人徳ってもんがある」

 

スケベなのは言わないで!

これは死んでも治らないから!

 

 

と、美羽がおばちゃんのところに歩いていく。

 

どこか緊張した様子だ。

 

「あ、あの! ボ、ボクは・・・・・ッ!」

 

自分の正体を明かそうとしたのだろう。

自分はあなたの家族を殺した魔族の一族だと。

 

だけど、おばちゃんは美羽の言葉を阻み、そのまま抱き締めた。

 

「良いんだよ、分かってる。何も言わなくて良い。これでも王国騎士団長とも繋がりがあるんでね。あんたのことは直ぐに分かったよ」

 

「っ! だったら、どうして――――」

 

「私もこれまで色々な人と出会ってきた。まぁ、モーリス達ほどじゃないけどね。そいつがどんな奴かは目を見ればすぐに分かるのさ。・・・・・・あんたは優しい目をしていたからねぇ。それも一目見たら分かるくらいに」

 

「それでも、ボクはあなたの・・・・・」

 

美羽が何かを言おうとするとおばちゃんは首を振った。

 

「確かに戦争で私は夫も息子も失った。だけど、家族を失ったのはあんたも同じだろう? もしかしたら、うちの息子もあんたの大切な人を殺めたかもしれない。人だろうが魔族だろうが、人を亡くすのは辛いことさ」

 

「・・・・・・・・」

 

「戦争も終わって和平が結ばれ、ようやく平和になった。今の私達がしなきゃいけないのは過去の因縁をどうこう言うよりも、この平和を守り続けることさ。死んでいった私の息子やあんたの父親のためにもね」

 

「・・・・・・・・・っ」

 

美羽の瞳から涙が溢れる。

感情が押さえきれなくなったんだろう。

 

おばちゃんは美羽の頭を撫でながら続ける。

 

「あんたは何も言わず、イッセーの隣で歩いていけば良い。あの子はスケベだけど優しい子だからね」

 

「はいっ」

 

美羽は流れる涙を拭って

 

「ボクはイッセーと一緒にいます。イッセーを信じてこれからもずっと」

 

「それでいい。・・・・イッセー、この子を泣かせたら私が承知しないよ」

 

「泣かせねぇよ。それも誓ったことだからな」

 

 

 

 




次回くらいで先に進めるつもりです。

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