我輩はレッドである。   作:黒雛

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 こ、更新に遅れたのではない!
 更新したことにハーメルンが気付かなかっただけなのだッ!!!

 今月の初めまで夜にもお仕事をやっていたのが原因です。漁だったんだけど、あまりに不漁過ぎて材料費にすら届かなかったんですけど。お金と時間を無駄にしたんですけど。いや、マゾで、いや、マジで。


第十三話「オツキミ山のカスミント」

 テンションがハイってやつだったんだ。

 突き刺さる視線に冷や汗を流しながらレッドは己の迂闊さを呪った。

 ついつい視界にロケット団が入り込み、周りに目がいかなかった。あんなところにジムリーダーがいるなんて思ってもみなかった。

 ロケット団にロケットの如く突撃をかましてしまった。

 だってあいつらに人権なんてあってないようなもんだし。

 グリーンの邪魔をした時点でレッドの中でロケット団のヒエラルキーは“こおりなおし”と同レベルに転がり落ちた。“こおりなおし”が必要になる頃には“なんでもなおし”が現役だから。“こおりなおし”よ、解せぬというのなら開発陣に「もっと序盤に氷タイプを」と願うべきだ。“まひなおし”と“どくけし”があればなんとでもなるのが現状だし。

 しかし“なんでもなおし”と銘を打ちながらブルーに効果がないのはなぜだろう。あいつの腐り果てた人格は直らないということか。

 ちなみにブルーも同様に“なんでもなおし”をレッドにぶっぱした。

 もちろんレッドは激怒した。

 清く正しく誰もが尊敬して止まないこの大天使の一体なにを矯正するというのか!?

 

 ――それはともかく。

 

 今はこの突き刺さる視線をなんとかする必要がある。

 おつきみ山の内部を歩きながらレッドは言う。 

 

「違うんだ。違うんだよ。さっきのはアレだ。俺の中に百ほど眠っている人格の中でも、とびっきり危険な思考回路をしてるゴザンレス田中とベルゼバブ山田が悪いんだ。それとラティ」

『私に罪をなすりつけるの、めっ!』

 

 ぴょんとラティアスが頭突きをしてそのままぐりぐりと押しつけてくる。

 

「お前だってノリノリで“アシストパワー”連発してただろうが」

『むーっ! むーっ!』

 

 ぷくーと頬を膨らませるラティアス。

 カスミは溜め息をついて、

 

「はいはい、喧嘩しないの。助かったのは事実なんだから今回は見逃してあげるわ」

 

 正直、私も良い気味だと思ったし、と続ける。

 あの後、ずたぼろのロケット団は、通報を受けた警察に逮捕された。殆どの連中が「ごめんなさいごめんなさい」と連呼していたのは記憶に新しい。もう二度と悪事を働こうとは思わないだろうし、赤帽子――というか『赤』を見た瞬間トラウマを起こす可能性も高い。なるほど、こうして悪を淘汰したら世界は平和になるのか、とレッドは平和の極意を悟った。

 

「というか、なんでジムリーダーがロケット団の下っ端にいいようにやられてたんだよ。あいつら基本人間の形をしたサンドバックだろ? 人権ないぜ」

「鬼か、アンタは。こっちにも事情ってものがあるのよ。ニビに急ぎの用があって、バッジ取得数が少ない子とジム戦を終えてすぐに飛び出したから手持ちの入れ替えを忘れていたの」

「あー、見るからに頭の悪そうな外見してるもんなー」

 

 納得と、拳を手のひらにポンと乗せる。

 ヘソ出しに短パンは流石に時代の波に乗り遅れているとレッドは思う。

 

「おい、ぶっ殺すぞ」

「やれやれ、殺すなんて下品な言葉を使うなんて最近の若者は恐ろしいぜ。俺のように清く正しい心を持った人間はもういないのかねえ。殺すとか、ほんと怖いわ」

『マスター、ねぼけてる? 頭、怪我した?』

「おい、ぶっ殺すぞ」

『いつものマスターだ!』

「つまりアンタは日常的に殺すとか言ってるわけね、がきんちょ。怖いわー、最近の子どもは怖いわー。マーメイドなカスミちゃんは怖くて仕方ないわ」

「人魚ねえ。ああ、似てる似てる。トサキントに人間の手足をくっつけたらどっかのジムリーダーさんの似顔絵が完成だな! カスミント。で、どうやったら進化すんの? カスミント!」

 

 哀しいことに他者を煽るという一点に置いてレッドとまともに渡り合えるのは、自らを「立てば天使、座れば女神、戦う姿は戦乙女」と自称する青の少女くらいである。「立てば悪魔、座っても悪魔。歩く姿はただの邪神の間違いだろ」と指摘すると喧嘩になった。

 おかしい。いつも喧嘩になっている。なに? ヒロインというのは主人公に助けられたらあっさりと惚れる存在ではないのか? ああ、そっか。あいつはヒロインではなくヒドイン。もしくは外道なヒロイン略してゲドインだった。

 

「お、落ち着くのよカスミ。相手は子ども。子どもなんだから。殺人は駄目よ。……あれ? でもこのオツキミ山なら一人くらい行方不明になっても」

 

 なんか恐ろしいことを口走っている。いつでもピカチュウを出せる準備をして、

 

「急ぎの用ってなんかあったのか?」

「化石を復元したら水ポケモンが復活したって連絡を受けたのよ」

 

 科学の力ってすげー。

 

「水ポケってことは、オムナイトか」

 

 オムナイト

 水と岩をタイプに持つうずまきポケモン。

 十本の足と貝が印象的な太古を生きたポケモンである。

 

「へえ、よく知ってるわね。ポケモンの化石は昔から見つかっていたけど、それを復元する技術は最近完成したばかりだっていうのに」

「俺、超天才だから。俺より優れた同世代とかこの世に存在しないから。生まれながらの頂点だから」

「自分で言うか。もし化石ポケモンがほしいのなら、このオツキミ山を掘れば見つかるかもしれないわよ? 化石のほとんどはここから発見されているから」

『ぴっけるーっ』

 

 ラティアスがピッケルを両手に持っている。

 

「どっから取り出したよ、お前」

『“ねんりき”で作ったー』

「凄いわね、この子。エスパータイプの技を器用に使いこなせるのは、ナツメのポケモンくらいだと思ってたわ」

「うちのはやればできる子だからな」

 

 頑張れ、“はかいこうせん”と“テレポート”を併用したワームスマッシャー。

 

『マスター。ぴっける使う?』

 

 よしよしとラティアスの頭を撫でながら「俺、グークのピッケルが好きだから」とかぶりを振るう。フエールピッケルでも可。

 化石ポケモンに興味がないわけじゃないが、今はハナダシティを目指している。それに化石を見つけるためにはピッケルの他に諸々の装備も必要となる。化石発掘はまた今度だ。

 

「せっかくなんだから掘ってみればいいじゃない。化石ポケモンに興味ないの?」

「ないことはないけど、必ずしも欲しいってわけでもないからなー。俺の構成するパーティメンバーに化石ポケモンは入ってないし」

 

 レッドが目標としているのは、あくまでジムを突破して四天王を撃破し、ポケモンマスターになることであって、全てのポケモンをゲットしたいのではない。もしポケモンマスターになるのに必要となればゲットして見せるが、ジム巡りと平行しながらやってしまうと余計な手間になる。ポケモンの捕獲はチャンピオンに君臨してからでも遅くないはずだ。

 

「へえ、もうパーティメンバーが完成してんの?」

 

 カスミが感心の声を上げる。

 

「構成の構想だけな。後二体、欲しいポケモンが足りないんだよ。その一体が水タイプだから、水のエキスパートがいたらそいつの生息地を教えてほしいって思うんだけど、どこかに水のエキスパートはいないかなあ! いないかなあ!」

「アンタ、ほんといい性格してるわね。いいわよ、教えてあげるわよ」

「なんと、マジですか。さすが美人は違う。性格も素晴らしいなあ!」

「ありがとう。ここまで胸に響かないペラペラの賛辞を受けたのは初めてよ」

「いやー、それほどでも」

「褒めとらんわ! ――で、なんのポケモンが欲しいのよ」

「ラプラス」

「なるほどね。確かにその子なら見つけるのに苦労するのも無理ないわ。ずっと昔に乱獲されて絶滅寸前まで追い込まれたんだもの」

 

 そこに怒りの感情が宿っていたのは水ポケモンへの愛故か。

 

「やっぱり難しいか?」

「そうね。アローラ地方なら手厚い保護のおかげで順調に生息数を増やしていってるからそう難しくはないでしょうけど」

「アローラ地方? なんか野生のボーマンダが出現しそうな名前だな」

 

 新作か? 新作が出たのか? 

 ふむ……タイトルはサン&ムーンと見た! きっとソルロックとルナトーンがタイトルバックの主役を飾るに違いない。

 レッドの迷推理が煌めいた。

 

「なによ、それ。アローラ地方っていうのは海を越えた先にある観光地方のことよ」

「ふうん。観光地方ね」

 

 チャンピオンという頂に立った日には、自分とポケモン達のご褒美として旅行に行くのも悪くない。

 

「けど、そんなアンタに朗報よ」

 

 そう言ってカスミは一枚の紙を渡してくる。

 これはチラシだろうか?

 折り畳んでいる紙を広げると、そこにはハナダシティで開催される祭の告知が書いていた。

 チラシには『水上レース大会』と大々的に銘を打っている。優勝者にはハナダシティのジムリーダーたるカスミから水ポケモンを授与――!?

 レッドは目を丸くして、カスミを見遣る。

 カスミは自慢気に頷いて、

 

「もしアンタが優勝したらラプラスを譲ってあげるわよ」

 

 その言葉にレッドのテンションが上がった。

 しかし、よくよく考えてみると。

 

「俺、水ポケモン持ってないんだけど」

「え…………一匹も?」

「……一匹も」

「…………この話はなかったことに」

「できるかあっ!」

 

 

 

 

 

 夜も更けてきたところでレッド達はオツキミ山の頂上で一泊することにした。

 さすがオツキミ山と言われているだけはある。

 頂上から見上げる月はとても大きく見える。降り注ぐ月の光は柔らかく、蒼く澄んだ夜の景色に静寂が満ちていた。

 

「ご飯にするか」

 

 暫しの間、儚げな月の美しさを眺めていたが、空腹を感じて思考を戻す。

 焚き火を囲うように座りながらレッドは自分のポケモン達を“モンスターボール”から出した。愛すべきパートナー達を軽く愛でてから、リュックに入っている食べ物を用意する。

 

「ねえ、そのヒトカゲって色違いじゃないわよね?」

 

 カスミが問い掛けてくる。

 

「ん? そりゃ見ての通り、色違いじゃねーけど、どうしたんだ?」

 

 レッドは胡坐をかいて、その上に嬉々として座ってくるラティアスにご飯を食べさせてあげながら答える。

 話題となったヒトカゲは美味しそうにご飯を食べながら疑問符を浮かべていた。

 

「ううん、色違いじゃないのならいいのよ」

「だからなにがだよ。ちゃんと話してくんない?」

 

 面白そうな気配を感じて、レッドはしつこく問い詰める。

 

「――はあ……っ。わかったわよ。でも他言無用の話よ?」

「おう」

「ヤマブキシティのジムリーダーって知ってる?」

「知ってるよ。ナツメ――だよな」

「そ。彼女はエスパー少女として有名なんだけど、超能力の一つに未来予知ってのがあるんだけど、ナツメはその未来予知でヤマブキシティが蒼い炎で焼き尽くされる光景を予知したのよ」

「へー、そりゃまた難儀な」

 

 どうせまたロケット団の仕業だろう。

 人に迷惑ばかりを掛けて、とレッドは呆れる。もっと自分のように人に優しく、清く正しくをモットーに生きる潔癖な人間はいないのだろうか。少し、身勝手な連中が多すぎる。

 ちょいちょいと袖を引っ張られる。

 見下ろすと、ラティアスがこちらをジッと見上げながらあーん、と口を開けている。苦笑しつつ、食べさせてあげるとふにゃんと相好を崩した。どうやら今日のご飯は口に合っているみたいだ。

 

「つまりその犯人が色違いのヒトカゲだって言いたいのか?」

 

 カスミは頷く。

 

「そうよ。いえ、正しくはリザードンね。黒い身体に蒼い炎を纏ったリザードンがそう遠くない未来にヤマブキシティを焼き払うことになるんですって」

 

 レッドは冷凍ビームを受けたかのように、ガチンと硬直した。

 

「く、黒い身体に蒼い炎のリザードン……?」

「もしかして心当たりがあるの!?」

「――いや、全然ないね。ほら、俺って根っからの平和主義者だからマジ許せねーって思っただけだし。人を傷つける奴とかありえねーし」

「寝言乙」

『もーそーおつー』

「おかわりなしな」

『やー!』

 

 じとーとこちらを見てくるカスミから目を逸らし、レッドは自然な動作で右手に嵌めている腕輪を見えない位置に置いた。

 

 

 

 







 作者のみなさんが前書きとか後書きで『f/go』の話ばっかりするから『ファントム オブ キル』をプレイなう。これ、完全にファイアーエムブレムやん。楽しい!(迷わずオートバトルを選択しながら)

 先月出たps4のデジモンワールド、究極体に必要な能力値が7,8倍くらい引き上げられているのに感動。初代の完全体もこんな感じだったよねーと思いながら本編クリア。……初代デジモンワールドがやりたくなる。
 毎度毎度デジモンワールドが出る度に買っているんだけど、毎度毎度本編をクリアすると初代をやりたくなる。別に懐古厨ってわけじゃないんだけど、やっぱり初代に戻ってしまうのは何故? 
 釣りとカーリングが好きだからです。


 但しモノクロ店、テメーはダメだ。テメーだけはダメだ。

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