今回は、気晴らしで上げました。
こんな感じで、ホントにゆっくりですが、ちょくちょく上げていくつもりではあります。
思い出したら書く、みたいなかんじで。
それでは、本編をどうぞ。
A S 第一話(三十二話)【私達は………】
季節は巡り巡って再び夏。
場所は変わらず学園都市。
私の隣には私の最愛の人。
──私達は、『幸せ』や、『幸福』と表すものを手に入れていた。
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朝になり、俺はいつもと同じベッドで目を覚ます。
当然、隣には俺の妻となった人物が寝ていた。
鳴護アリサ。………いや、現在では上条アリサとなった彼女は、俺と同じベッドでまだすやすやと眠っていた。
彼女が【上条アリサ】として過ごしている時間は、実際、俺とアリサが結婚してからの時間より長い。
それは、あの消えたアリサが戻って来たあの年から既に始まっていたから。
学園都市の学校に通う生徒は、その学校のそれぞれの学年主任がまとめた名簿に記載されている名前を、名簿ごと校長に提出した上で、校長はその生徒をその学校の学生として学生登録しなければならない、というシステムがある。
そして、アリサはその学生登録の際、ちょっとした事があったお陰で、名前を、本名の【鳴護アリサ】ではなく、偽名の【上条アリサ】として登録していた過去を持つ。
だが、高校を卒業し、大学に通う現在、学生登録として登録されている【上条アリサ】は、俺と結婚してからは偽名ではなく本名になってしまったので、そこら辺の問題はなかった。
一つ贅沢を言えば、名字が変わることによって得られるはずだった『なれない』感が全く無かった事だろう。
何せ、結婚しても周りからも自分達も呼び方が全く変わらなかったのだから。
そもそも俺とアリサは、互いを互いが下の名前で呼んでいたため、そこは例外としても、周りからの呼び方まで全く変わらないと、気持ちは新婚早々で初々しいものがあるとしても、その中の一つは失われてしまった事になる。
そう考えつつも、現在の生活に満足している俺は、まだ起床時刻には全然早い起床に、少し不機嫌になりながらも、アリサの寝顔が見られたので良しとする、なんて最も新婚らしい定番な事を思いつつも、アリサを起こさないように気遣いつつ、もう一度ベッドに入った。
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「…………麻くん、起…て………、当麻く……」
誰かに身体を揺すられ、本日二回目の起床を果たす。
起きてみると、そこにいたのはやはりというかなんと言うか、アリサだった。
「おはよう、当麻くん」
「おはよう、アリサ」
互いに朝の挨拶をしてから、アリサがちょっと変な顔をしたあと、クスクスッと微笑み、
「当麻くん、もしかして二度寝した?顔が凄いよ?」
と、言ってきた。
俺は、ベッドから出て、鏡を見るも、
「………そんなに違うか?……いつもと変わらないように見えるんですが……」
「当麻くんには分からなくても私には分かるんです。二度寝したんでしょ?」
「ま、まぁ、したけど」
俺がそう返答すると、アリサは、「やっぱり」と言いながらキッチンへと向かう。
ちなみに、今俺らが住んでいるのはアパートで、前に住んでた学生寮よりは遥かに広い。
しかし、実はこのアパート、俺とアリサは家賃は半分しか払っていない。
なぜなら、このアパートは、(実は高校を卒業する直前まで知らなかったのだが、)紅と翔一の親が、建てたものらしく、現在も俺らと同じ大学に通っている紅と翔一が、親に頼み込んでくれたらしい。
お陰で、大学の学生寮より安い料金で、アパートに住む事ができるようになっていた。ちなみにだが、紅と翔一は大家の部屋に住んでいて、実質無料で住んでるらしい。紅曰く、親はここではなく、元々住んでいた店(浴衣を借りたあの店)の方にいるんだとか。
それから、ちなみに、と言えばもう一つ。例の碧眼青髪の暴食シスター、と言えばほとんどの人がわかるであろう、そう。インデックスだ。
彼女も、去年帰って来たのだが、現在は小萌先生のところで泊まって、料理を修行しているらしい。そして、インデックスは俺とアリサが今どこに住んでいるのかを知らないのだった。
正確に言えば、知ることを拒否した。
彼女曰く、知ったら甘えてしまいそうだから、というのが理由らしい。
──と、話を戻そう。
アリサ曰く、いつもと違う顔の俺は、アリサが一年振りに還ってきたあの日から続いている習慣、──朝ご飯とお弁当の当番──の役割で、今日は偶数日なので、俺が朝ご飯をつくり、アリサがお弁当の担当日だ。
もう言わなくても一年以上続けているので、互いに染み付いているこの習慣は、俺らが共用している一つでもあり、そう思うと、なかなか嬉しいものでもあった。
朝ご飯を作り終え、食卓に並べる。
そして並べ終える頃、アリサが時間を確認してからテレビをつける。この時間だとやっているのはニュースだ。
だが、ニュースもそうなのだが、それよりも重要なのが天気予報である。
学園都市のツリーダイヤグラムを(ある意味)俺が撃ち落として以来、そのままほったらかしになっている人口衛星は、修復などの手が加えられることなく今も漂っている。
なので、今は学園都市の天気予報も極々たまに外れる事がある。
まぁ、上空の気象情報を全て予測する、なんて事を(学園都市基準での)普通の機械と人間だけでやろう、なんてのが間違っている気もするが。
そんなところにツッコンでも仕方ないので、俺はアリサと一緒に朝ご飯を食べながら天気予報が始まるまでのニュースを見ていた。
──結果、洗濯物は干しても問題無かった。
学園都市には、その技術力の進歩によって、完璧に天候に関係無く室内で干せる、その上仕上がりは外で干した時と変わらない、という素晴らしいものもあるにはあるのだが、いかんせん高い。苦学生の手の届くレベルではないので、毎朝毎晩、天気予報を見て干すかどうか決めないといけないのだった。
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「そろそろ行こう、アリサ」
アリサを呼びつつ、玄関で靴を履く。
奥から肯定の返事が聞こえて数秒後、アリサも小走りに玄関に来た。
アリサが靴を履き終わるのを待ってから、
「んじゃ行くか」
「うん。鍵も閉めたし、行こ?」
と、短めに会話してから、俺はアリサと学校へと向かった。
──これが平日の朝の風景である。
というわけで、本編でも何度も出てきましたが、今回以降の話は基本は『結婚後』の話になりまする。
変なところで切ってごめんなさい。
今回は『ある夏の日』から約二年後の話です。
お楽しみ頂けたでしょうか。
意見、感想、質問などありましたら感想に書いてください。
(それと、全く関係無いですが、比企谷八幡くん、誕生日おめでとうございます)