ある夏の日に   作:一級狙撃手

2 / 33
今回も読んでいただき、ありがとうございます。今回はアリササイドでの話となっております。アリサがこの世界に還ってくるまでの話です。


第一章 二話【やっぱり会いたい】

 7月19日、霧ヶ丘女学院、昼休み──。

 

 シャットアウラ=セクウェンツィアはいつも通り1人で弁当を食べていた。最後に弁当を他の人と一緒に食べたのはいつだったか……。

 

 ちなみに、別に孤独が好きと言うわけでは無い。なら、何故1人で食べているのか?それにはちゃんとした理由がある。

 

 彼女は…周りから見れば1人だが、実際は1人ではないのだ。それは…

 

(シャットアウラちゃん、今日のお弁当は何にしたの?)

 

(玉子焼きと野菜炒め、あと…生姜焼きぐらいだな)

 

(なんかいつもより豪華じゃない?)

 

 そう。シャットアウラの身体の中にはあの時ひとつになった鳴護アリサがいるのだ。と言っても今のアリサは意識はあるものの実体などもとよりなく、ふわふわとシャットアウラの『心』の中をただよう(イメージとしては空中に浮くシャボン玉のような感じ)不安定な存在でしかない。

 

 そのため、会話こそできるものの、他の事はほとんどできないと言ってもいい。シャットアウラとはもともと身体が一つであったが、分裂した時に新しく【アリサ】という人格ができ、再び一人に戻った後でもその人格が消える事はなかったため、同じ身体にいながら全然違う考えをもっていたりするのだ。

 他にも、シャットアウラが今何をやっているのかを知ることができない、会話も聞こえない、などなどいろいろある。

 

 北半球と引き換えに、ひとつになったシャットアウラとアリサは、そのことを本人達はあまり気にしていなかったが、周りには(主に当麻やインデックス)少なからず悲しい思いをさせてしまったため、それに責任を感じたアリサが合わせる顔がない、と言ってここ1年は上条達はもとより、御坂達にも顔を合わせずに過ごして来た。“奇蹟(ぐうぜん)”によって…

 

 だが、いかに奇蹟を起こせる歌姫であろうとも、その奇蹟(ぐうぜん)は、いつまでも続く訳じゃない。まして、その相手は幻想殺し(イマジンブレイカー)。……そう。いつか、その効力は切れるのである。

 

 

 昼休みが終わり、残りの授業を受けて帰宅。そのまま夕飯の用意にとりかかる。…と、そこで材料が足りてないことに気付く。

 

(あ、肉がない…)

 

(どうしたの?シャットアウラちゃん)

 

(あ、いや、夕飯の材料が少し足りてなくてな)

 

(それじゃ、今からスーパー?)

 

(そうだな。スーパーに行って食材買ってそれから夕飯だな)

 

 と言うことで、スーパーに向かう。

 

 

 スーパーにて。

 

 只今絶賛お買い物中。……と、そこによく知った声が後ろからかけられた。

 

「……あれ、シャットアウラ…か?」

 

 振り返るとそこには、上条当麻とインデックスがいた。

 

 

 

 振り返るとそこには、上条当麻とインデックスがいた。

 

 いきなりのことに、動揺し、シャットアウラは軽くパニック状態になりかける。

 

「おい…大丈夫か?なんなら病院行くか?」

 

「なんかパニックになっているんだよ」

 

 どうやら相当ひどいらしい。そして、外からわかるということは、つまり中からなんてもっとわかってしまうわけで…

 

(どうしたの?シャットアウラちゃん!?)

 

 会話しかできないアリサですら気付く程動揺し、パニックになっていた。

 

 とりあえずなんとか落ち着き、今はファミレスにいる。6人席に(正方形のテーブルの壁側、壁側に接している他2辺の計3辺で、1辺に2人ずつ座るタイプ)当麻とインデックスが同じ列に、シャットアウラは2人に向かい合うようにして座る。適当に軽く何かを注文して深呼吸する。そして、まず、アリサに状況報告をした。

 

(え、えーっと、あ、アリサ。多分…と言うか確実にマズい状況になってしまった)

 

(ど、どうしたの?)

 

(あ、ありのままを言うぞ?今、上条当麻とファミレスにいる)

 

(え!?な、なんで当麻くんと!?それ以前にお買い物は!!?)

 

(買い物中に後ろから声をかけられて私もパニックになってしまってな。それで、とりあえずファミレスに移動させたらしい)

 

(さ、さっきのざわざわした感じってそれだったんだ…)

 

(な、なぁ、アリサ。その…お前の事は…その)

 

(ま、まだ決心つかないから言わないで!)

 

(……わかった)

 

 と、アリサに確認をとったりしていたがようやく終わり、上条達の方を見る。

 

「………ットアウラ、おーい、シャットアウラさん?」

 

「シャットアウラちゃんがこんなにボーっとしてるのって大分めずらしいんだよ」

 

「そうなのか?やっぱ病院行った方が…」

 

 どうやらアリサとの会話に集中しすぎていたらしい。私は、大丈夫だ、とだけ答えて1年ぶりに上条当麻と話をした。

 

 上条達と別れて帰宅中

 

(しかし、アリサ、本当によかったのか?…その、言わなくて)

 

(うん。でも、やっぱり会いたい…かな。姿も…声すら私には聞こえないから)

 

(なら、やってみるか?)

 

(何を?)

 

(私達で奇蹟を起こせばいいんだよ。あの時のように、今度は《アリサを助けるため》に)

 

(でも、そんなことしたらシャットアウラちゃんが…)

 

(ああ、私もそう思ってた)

 

(『思ってた』って…?)

 

(よく考えて見ろアリサ。私はアリサとひとつになる前に歌い出したんだぞ?それって、おかしくないか?つまり、奇蹟の力を失ったり、歌が聞けなくなったりしたのは別の要因があった、って事じゃないのか?)

 

(あ……)

 

(そう。だから絶対とは言えないが、大丈夫なんだ。わかったか?)

 

(…うん!)

 

 こうして、家に帰り、夕飯を食べ終わった後、私達は《奇蹟》を起こした。

 

 シャットアウラちゃんが予想した通り、私が分裂してもやはり何かが失われるような事はなかった。私…鳴護アリサは1年ぶりに、この世界に帰って来たのだった。




読んでいただきありがとうございました。感想待ってます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。