やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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比企谷八幡はその少年と出会う

noside

 

四月も終わりごろに近付いた土曜日、八幡は自室のベッドの上で自身が手に入れた力について考えていた。

 

少々疲労の色が窺える辺り、学校生活とウルトラマンの掛け持ちはそれなりに堪えるらしい。

 

「昨日の怪獣・・・、パワーも強くて熱線もアリ・・・、あんな奴がまだまだいると考えると、身がもたねぇな・・・。」

 

先日のゴメスとの戦いで、彼は後一歩で死ぬところまで追い詰められかけた。

 

普段からリスクとリターンを考えて行動していた彼等しからぬ事であったため、せめてもの反省会としゃれ込んでいるのだろう。

 

「ギンガの力も、俺が引き出し切れてないだけでまだまだ限りない筈なんだけどなぁ・・・、それに、先生の話聞く限りじゃ、あの三体は比較的相手にしやすいタイプの怪獣か・・・、動きが早いヤツ出てきたら困るよなぁ・・・。」

 

ギンガスパークを眺めつつ、八幡はタメ息を吐いてベッドから降り、勉強机の前に腰を下ろした。

 

「ま、考えても仕方ねぇか・・・、予習でもして・・・。」

 

ギンガスパークを懐に戻し、彼はカバンから筆記用具と参考書を取り出した。

 

今は考えた所で出来る事は何一つない。

それに加えて、今の自分はウルトラマンである前に学生だ、本分である勉学を疎かにする事は出来ない。

 

正にその時だった、彼の部屋の扉がノックされる。

 

『お兄ちゃ~ん、今良い~?』

 

ノックの後、甘えるような声が扉の向こうから聞こえてくる。

普通ならば、いきなり扉の向こうからそんな声が聞こえれば怪しむところなのだろうが、彼にはその声の主が分かっていた。

 

「空いてるぞ、小町。」

 

「えへへ~、お邪魔します!」

 

彼が入室の許可を出すと、扉を開けて彼の妹、比企谷小町が入ってくる。

 

八幡の持つ特徴的なアホ毛を持った黒髪と、天真爛漫と言うべき明るさを兼ね備えた少女で、彼とは二歳年下である。

 

「何の用だ?今から予習でもして、後は寝ときたいんだが・・・。」

 

「予習は良いけどその後・・・、これだからごみぃちゃんは・・・。」

 

唯一と言っていい心を開ける相手である小町が来てくれた事に、八幡は僅かに表情を綻ばせるが、どうせ面倒事が待っていると分かっている為に、めんどくさそうな表情を浮かべる。

 

それを察した小町も、呆れた様に苦笑していた。

 

だが、八幡の行動原理は、なるべく人と関わりたくないという事に帰依しているという事と、その原因を知る小町は、ただ呆れるだけでそれ以上何も言わなかった。

 

「お兄ちゃんって、今ほーし部って言う何でもお悩み解決する部に入ってるんだよね?」

 

「奉仕部な、強制入部で発言権なんか無いけどな。」

 

「なにそれ・・・、織斑先生がそうしたの?」

 

小町の質問に、八幡は無意識の内に忌々しげな表情を浮かべて答えていた。

 

その事に自分でも驚いているのだろうか、言い終わった後に、自分は何を言っているんだと言う様に口を噤んだ。

 

だが、それに気付いた小町は、自分が知る限りで兄に干渉しようとする人物を思い返し、彼がやったのかと尋ねた。

 

「いや、平塚っていう別の教師だ、なんでか知らんが面倒事ばかり押し付けてきやがる、織斑先生は俺を助けようとしてくれてるみたいだが・・・。」

 

「だが?どしたの?」

 

現状一番の協力者であるのは一夏だと明らかにしつつも、彼は少し表情を顰める。

 

それに気付いた小町は、どうしたと言わんばかりに尋ねた。

 

「あの人と俺以外の奉仕部の関係が最悪でなぁ・・・、織斑先生と平塚先生は会う度にガン飛ばしあうし、由比ヶ浜は阿保だし、雪ノ下は口悪いしで居心地も悪い、まぁ、やる事はやるけどな。」

 

苦笑しながらも話す八幡は、奉仕部入りした後に起こった事を思い返していた。

 

雪乃からはこれまでの比では無いレベルの暴言を受け、結衣からは常に冤罪紛いの言いがかりを受けているのだ。

 

その中で、幾ら人の悪意に晒されてきた彼でも、一夏の様に常に彼の為を思って行動してくれている様な人と共にいれば変わってくるもので、浴びせかけられる暴言に苛立つ様になっていた。

 

それは、一夏の若い頃の様な悪意を全て敵だと見做す様になっているだけかもしれないが・・・。

 

「お兄ちゃん・・・、なんか口悪くなってない・・・?」

 

「多分、あの人の影響だな、先生のな・・・、で、そんな世間話しに来たわけじゃないだろ?」

 

小町に指摘され、その原因に心当たりがある彼は苦笑しながらも、そんな事を言いに来たんじゃないだろと言わんばかりに尋ね返す。

 

その言葉に、小町はそうだったと言う様な表情をしながらも要件を話し始めた。

 

「実はさ、小町と同じ塾に通ってる川崎大志君が依頼したいみたいなんだよね~。」

 

「おい待て、小町に唾着けようなんて謂い度胸してやがる馬の骨は・・・!?」

 

小町に接触してきたのが男だと分かるや否や、八幡は表情を険しくし、その男について聞き出そうとしていた。

 

恐るべしシスコン、妹に近付く男は許すまじという考えの下で動いているのだろうか。

 

「必死過ぎてキモいよお兄ちゃん・・・、心配しなくても、大志君はオトモダチ類オトモダチ科止まりだから♪」

 

「(つまり男として認識してないと・・・、こいつ・・・。)」

 

呆れながらも、八幡を安心させるために敢えて酷薄に言い放った小町の言葉に、八幡は僅かな嫌悪感を抱く。

 

誰からも軽んじられ、認識されない事の辛さを知る八幡だからこそ、認識していないというワードは少々頭にクルらしい。

 

「で?その大志って奴に会って、依頼を聞いてくれって事か?」

 

だが、それで一々言及しては話が進まないと考えた八幡は、話の続きを求めた。

 

「そういう事~!今から連絡するから、良いよね?」

 

「どうせ拒否権無いしな、良いぜ、聞いてやる。」

 

断ってもどうせ言いくるめられるか脅されるかして付き合わされるのだから、断らずに最初から従っておいた方が遥かに楽だと断じ、彼はさっさと上着を着て出掛ける準備を整える。

 

「行くぞ、駅前のファミレスで良いだろ、さっさと呼び出せ。」

 

「ちょっ!?早いってお兄ちゃん!?」

 

早く事を済ませたいと言わんばかりの行動の早さに、小町は仰天しながらも連絡と同時進行させながらも兄を追ったのであった・・・。

 

sideout

 

side八幡

 

駅前のファミレスに到着した俺と小町は探しやすいように窓際の席に座り、大志とかいう男の到着を待った。

 

正直な話面倒の一言に尽きるが、ここに来るまでに小町にその男の依頼の大まかな要件を聞いておいた。

 

どうやら家族、それも姉に関する依頼らしい。

しかもその姉貴が、総武高の生徒で、更に言えば俺とタメらしい。

 

だからこそ、話位は聞いてやりたい。

家族ってもんは、一番大切な存在だからな・・・。

 

「あっ、こっちこっち~!お兄ちゃん、来たよ!」

 

「ん・・・?」

 

小町が手招きすると、入り口から小町と同年代位の男がこっちに歩いてくる。

 

短く切りそろえた、青みがかった髪を持った少年・・・、どっかで似た様な髪色したヤツを見た事ある様な気がするな・・・。

 

そう言えば、屋上で見かけたあの女、それがコイツの姉貴か?

 

「どうもッス、比企谷さん、それと、お兄さん。」

 

「おう、お前が大志って奴か?話はある程度聞いた、けど、俺をお兄さんと呼ぶんじゃねぇ。」

 

小町と付き合ってすらねぇのに、如何にも家族みてぇな言い方は気に障るぜ。

 

「もう!話が進まないから穏便に!大志君も座って、何か頼む?」

 

「ドリンクバーだけで良いッスよ、依頼だけお話しするッス。」

 

まぁいい、受けるかどうかはともかく、話位は聞いてやろうじゃねえか。

 

「小町から大体の話は聞いてる、で、お前の姉ちゃんはどんな奴だ?」

 

「は、はい・・・、ウチの姉ちゃんは川崎沙希って名前なんです、人付き合いは苦手なんすけど、昔っから親が共働きであんまり家にいなかったんで、家事とか俺達兄弟の面倒は全部姉ちゃんが熟してくれてました。」

 

えっ何そのラノベヒロインみたいなハイスペック、本当にそんな奴いるの?

いたらいたでとんでもない位の優良物件だろうに。

 

そんな奴が何か問題でも起こす訳無いだろうに・・・?

 

「でも、ここ最近家に帰ってくるのがずっと夜遅いんですよ、夜の三時、酷い時は四時とか五時もあったッス。」

 

「もしかして、お姉さんが不良化したって思ってるの?」

 

「そうとしか、思えなくて・・・。」

 

小町の問いに、大志は苦い顔をして頷く。

家族思いの姉が、非行に手を染めているなんて思いたくないって言うのが人情なのは、俺にもよく分かる。

 

つい一か月前までは、俺にも信じられる人間なんて家族しかいなかったんだ、親父は兎も角、小町の事を思う気持ちは今も変わっちゃいない。

 

「姉貴を疑ってやるな、なんか事情があるかも知んねえだろ。」

 

だから、せめて家族同士で疑い合って欲しくは無い、俺の勝手な押しつけでも、それだけは言いたかった。

 

「だから、お前だけは姉貴の事を信じてやれ、俺も出来るだけの事はする。」

 

「お兄さん・・・。」

 

「だからお兄さん言うな、安心しろとは言えないが、何とかする。」

 

ま、俺も話を聞いちまった以上、無視するのも寝覚めが悪い。

この一件を俺が解決すれば、少しは奉仕部の奴等も黙るだろうし、俺にデメリットは然程無い。

 

打算的な感情が無い訳じゃないが、断るべき依頼じゃないのは確かだ。

 

「あ、ありがとうございます!お願いするッス!」

 

「礼よりも先に、お前の姉貴の事、分かる限り全部話せ、そっからだ。」

 

「は、はい!!」

 

だから、俺は動く。

誰かの為でもあり、自分の為でもあるこの依頼を遂行するために・・・。

 

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side八幡

 

で、週が明けた月曜、俺はその川崎沙希とかいう女子生徒の行動把握に努める事になった。

 

対策とかトーク術考えてたら夜更かししちまって、うっかり寝過ごして二時間目からの重役出勤だ、まぁしゃあねぇわ。

 

大志からの情報から髪は長くポニーテール、目付きは少しキツめのお姉さんだそうで・・・。

やっぱ、俺が屋上で出会ったあの女子生徒と特徴が一致してるんだよなぁ・・・。

 

まぁ、探しやすいから良いけど。

 

ちなみに今日の二時間目は織斑先生の数学Ⅱだ、何とか誤魔化せばいいんだよ。

 

「やぁ比企谷君、重役出勤とは恐れ入る、週明けでボケてるのか?」

 

一時間目が終わった後の教室に入ると、既に織斑先生がスタンバイしていて仕方ないと言わんばかりの表情で俺を見ていた。

 

これってアレよね、弟がやんちゃした時のアニキの顔だよな・・・。

まぁ、あの人位の歳なら分からなくもない。

 

まぁ、この人になら素直にホントの事言っといた方が得だな、後々協力も貰えそうだし。

 

「すんません・・・、依頼の調査で夜更かしを・・・。」

 

「そうか・・・、大変だな、まだ眠かったら寝てていい、今日はプリント配るだけだ、次の授業で答え合わせするだけだからな。」

 

依頼の下りはぼかして伝えたが、彼は苦笑するだけに留めてサボりさえ容認してくれるみたいだ。

 

そんなことで良いのか教師。

まぁ、そんな事は考えなくていいか。

 

先生に一礼し、席に着こうと動こうとしたその時だった。

 

「・・・、おはようございます。」

 

俺と同じ遅刻組か、青みがかったポニーテールの髪を持った女子生徒が入ってくる。

 

ソイツは何時だったか、屋上で一悶着やったあの愛想の悪い女じゃねぇか・・・。

ウチのクラスだったとはな、灯台下暗しとはよく言ったもんだぜ。

 

「君も遅刻か、川崎君?隈が少し酷い、君も寝てていい。」

 

「・・・、はい・・・。」

 

川崎、だと・・・?

やはり、この女が川崎沙希か。

 

同じクラスなら尚更都合が良い、内偵はやり易い。

 

「あぁ、少しだけ用件が。」

 

「ん・・・?」

 

思わぬ幸運に、柄にもなく笑みを浮かべてしまったが、ぼっち生活で磨かれた八幡イヤーが織斑先生が川崎に発した言葉を拾った。

 

本人にしか届かないレベルの声で発せられたから、俺の耳にも僅かにしか届かなかったが、授業終わりに話がある的な感じなのは分かった。

 

さて、ここから先はステルスヒッキーの腕の見せ所だ、隠密尾行は大の得意だからな。

 

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数学の授業が終わった後、一夏は沙希を連れて人気の少ない場所に赴いていた。

 

男性教諭と女子生徒という組み合わせは、一見していかがわしい関係を疑わせるに十分な材料だが、当の本人達にその雰囲気は無かった。

 

「(俺のターゲットに織斑先生が関わってるなんて、どういう了見だ・・・?)」

 

二人の後をできる限り気配を消して尾行する八幡は、その組み合わせを疑問に思ったが、なるべく気配を出さない様に聞き耳を立てていた。

 

「さて、ここで良いだろう、川崎君、いや、今は沙希ちゃんとでも呼ぼうか。」

 

「(えっ・・・?)」

 

一夏が唐突に口調をプライベートな物へ切り替えた事に驚いた八幡は、思わず身を乗り出してしまいそうになるが、それを理性で押し留めて物陰に隠れて様子を窺う。

 

「そろそろ、俺も庇い切れそうにも無い、考え直す気は無いか?」

 

「まだ、目標の半分にも行ってないんで、辞められません。」

 

「・・・、そうか、できるだけ手を回す様にしておく。」

 

「(織斑先生が手を回すほど大きな事柄なのか・・・?川崎は一体何をやってるんだ?)」

 

話の全貌が見えなかった彼は、その答えを探ろうと思考を巡らせる。

だが、答えは一向に見えてこないが・・・。

 

「だが、これだけは言わせてくれ、無茶だけはするな、セシリア達には事情は話してるからフォローする様に頼んでる、何かあれば彼女達を頼れ。」

 

「はい。」

 

「(あの店が全体的に絡んでる・・・?金の問題か・・・?そういえば、兄弟も多いって大志のヤローが言ってたな・・・、じゃあ、親の借金・・・?)」

 

一夏の発言からキナ臭い何かを感じ取った八幡は、自分の手に負える問題では無いのではないかとも感じていた。

 

非行程度ならば、情に訴えるなり法的手段を用いるなり、手段を選ばなければ解決できるが、金銭問題だけは如何しようも無い。

 

「よし、もう良いぞ、呼び出して悪かったな、あぁそれと、奉仕部の女子と平塚教諭には気を付けろ、厄介事持ってくる事に関しては天才クラスだからな。」

 

「(ホント、奉仕部関連嫌いなんだなあの人・・・・、まぁ、分からなくはないか?)」

 

一夏のあまりの言い草に苦笑しか出ない八幡だったが、あながちその通りかもしれないと思い直す。

 

確かに、奉仕部を通せば結衣を通してある程度情報は集まるし、雪乃を焚き付ければ即座に行動に移って貰える心強さはある。

 

だが、それは今回の様に事を荒立ててはならない時以外での事だ、派手にしていい時とそうなってはならない時がある。

 

雪乃は言わずと知れた正義の女であり、良くも悪くも真っ直ぐすぎる存在だ、相手の行動の問題点のみを理路整然と突いて行くだけでは、穏便に済ませられる筈の事も拗れてしまう恐れがあり、今回の件の様に裏のある様な依頼には向いていない。

 

結衣は情報を集めるだけならともかく、その過程で余計な情報を流してしまう恐れがある、それに加え、雪乃に感化されて何かしないとも限らない。

 

故に、彼は今回は単独行動を選んだのだ。

 

「はい、御心配どうもありがとうございます。」

 

彼が視線を戻すと、丁度沙希が一夏に頭を下げて教室へと戻って行く所だった。

どうやら、話が終わったのだろう。

 

「(あの店に行けば、大まかな事は分かる、ってか・・・、今日にでも行ってみるか?)」

 

織斑一夏とその仲間達がいる店に関わりがあるというならば、何時でも来てくれと言われた自分が顔を出しても何らおかしい事は無い。

 

だから、自分が動く、そう決めた様だ。

 

気付かれずに離脱しようと思ったその時だった。

 

「・・・、盗み聞きは感心しないぞ、八幡君?」

 

彼のすぐ真横から一夏の呆れた様な声が聞こえてきた。

 

「うわっ・・・!?き、気付いてたんですね・・・?」

 

「俺に気付かれないレベルになるには、後十年修行するんだな。」

 

何時の間に近付いたのかと言う様に目を丸くする八幡に、彼は苦笑しながらも頭を撫でた。

 

それは、悪さをした子供を優しく諭す父親の様な表情でもあり、弟を見守る兄の様でもあった。

 

「で、君が探りを入れているという事は、やはり奉仕部の活動か?悪いけど、今回ばっかりは川崎沙希の肩を持ちたい、事をこれ以上悪くしたくないんだ。」

 

だが、今回の件で、一夏は八幡の肩を持つ事は出来ない。

先程の会話からも分かる様に、彼は今回は沙希の側に着いている、事を余計大事にしてしまう奉仕部の邪魔すらするだろう。

 

だが、一夏の表情からは八幡への申し訳ない表情が見て取れ、味方してやれない事への悔しさが垣間見えた。

 

「・・・、川崎の家族からの依頼は、俺が直接受けました、雪ノ下や由比ヶ浜には、通してません。」

 

それを汲み取った八幡は、自分もそこに加わる事を覚悟し、一夏に奉仕部とは関係無い事を告げた。

 

「何・・・?本当か・・・?」

 

その言葉に驚いたか、一夏は僅かに目を見開いて彼を見た。

 

八幡の事をある程度信頼している一夏は、八幡の事を信じたいという想いと、リスクを減らして沙希を護りたいという想いが鬩ぎ合っていた。

 

「はい、昨日、川崎の弟から直接依頼を聞きました、俺は雪ノ下の連絡先を知りませんし、由比ヶ浜ともクラス内では関わりません、だから、昨日から今まで、俺は奉仕部のメンバーと平塚先生には連絡を取ってません、信じて下さい。」

 

その彼の想いを感じ、八幡は一夏の目を真っ直ぐ見据えた。

信じて欲しいと言う想いと、偽りの無い想いを籠めて。

 

彼は気付いてはいないだろうが、その眼は嘗ての一夏が自分の事を信じて貰う為に取った目と全く同じったのだ。

 

その熱に折れたか呆れたか、一夏はタメ息を吐いて苦笑した。

 

「分かった、君の事を信じるよ。」

 

「っ!ありがとうございます!」

 

その言葉を聞いた八幡は、普段の腐った目が気にならない程に表情を輝かせた。

 

嘘や欺瞞を嫌う彼だからこそ、真っ直ぐ曝け出した本音を受け入れてくれた事が嬉しいのだろうか。

 

「放課後に時間をくれ、依頼人の少年にも、君にも俺の知る限りの事情を話そう、隠し事はしない、君のためにも。」

 

「分かりました、連絡しておきます。」

 

一夏の言葉に了解し、八幡はすぐに大志へメールする事にした。

待ち合わせ場所は昨日のファミレスに決定し、塞がっていた道が切り開かれようとしていた。

 

「今日で終わらせよう、彼女を迷いから救い出すんだ。」

 

「はい!」

 

二つの想いが重なる時、新たな道は開く。

それは、必ずや光が満ちる未来へと続くだろう・・・。

 

sideout




次回予告

理由を掴めねば糾弾も加護もしてはならない、それがなければ、只の欺瞞でしか無いのだから。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている。

比企谷八幡は手を差し伸べる

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