やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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三人は手を取り合う

noside

 

『行くぞ!!』

 

『応!!』

 

先じたギンガに続く様に、ビクトリーとXも走り出し、高らかに吠える悪魔へと向かって行く。

 

『小賢しいぃ!死ねッ!死ねぇぇ!!』

 

先程までの攻勢から一転し、コルネイユは焦りが滲む叫びを上げながらも攻撃を開始した。

 

最早勝ちが決まっていた所に、現時点での切り札とも呼べるウルトラマン、ギンガが降り立ったのだ、それにつられ、ビクトリーもXも勢いを取り戻して向かって来ているのだ。

 

いや、それだけでは無い。

これまでいがみ合っていた三人のウルトラマンが、今は一つの意思の下に動いている、そう感じられた。

 

故に、焦っているのだ、このまま押し切られる事を、恐れているのだ。

 

『沙希!アイツの脚を止めてくれ!俺と彩加で厄介な目を潰す!!』

 

『あいよ!しくじらないでよね!!』

 

『任せて!!』

 

八幡の指示を快諾し、沙希はファイブキングコルネイユの正面に回り込む。

 

『これを喰らえ!ビクトリウムスラッシュ!』

 

『小賢しいぃ!!』

 

蹴りから立て続けに放たれるエネルギー波をガンQアイズを掲げて吸収し続ける。

 

だが、それは本体が硬直すると同義であり、八幡達はそれを狙っていたのだ。

 

ビクトリウムスラッシュの連続で足止めされている隙に、ギンガとXはファイブキングの左後方へ回り込む。

 

『行くぜ!ギンガスパークランス!!』

 

ギンガはギンガスパークを槍状にしたギンガスパークランスを手に、刺又の要領でガンQアイズを固定、光線を吸収できない様にホールドした。

 

『しまったぁぁぁっ!?』

 

『今だ!!』

 

『ウルトラマンガイアの力、ロードします!』

 

裏を掻かれたコルネイユは驚愕の声を上げ、その隙に彩加はエクスデバイザーにウルトラマンガイアのサイバーカードをロード、力の行使に踏み切った。

 

『フォトンエッジ!!』

 

頭部より放たれた赤い刃はガンQアイズに直撃、それまで手こずっていたのが嘘のように爆砕させた。

 

『ガァァァッ!?』

 

『よっしゃっ!』

 

左腕を、防御の要を破壊されたコルネイユは絶叫し、八幡はガッツポーズを取りながらも離脱、追撃を免れる。

 

『おのれぇぇっ!!』

 

押され始めた事に苛立ち、コルネイユはゴルザヘッドから熱線を照射、周囲もろともウルトラマンたちを狙う。

 

『沙希ちゃん!僕の後ろへ!』

 

『分かった!!』

 

『Xバリアウォール!!』

 

沙希を庇う様に立ち、彩加はバリアウォールを展開、熱線を容易く防いだ。

 

『よそ見は禁物だぜ!!』

 

その隙に八幡は背後へ回り込み、背中の突起物をランスの一閃で斬り飛ばした。

 

『ゲェェェッ!?』

 

『やった!』

 

『負けてられないね!あたし達も行くよ!!』

 

悶絶するように光線を撃つのをやめたファイブキング目掛け、Xとビクトリーは走り出し、ファイブキングの胴にストレートパンチを浴びせかける。

 

『『ハァッ!!』』

 

全く同時に上段蹴りを叩き込み、一旦距離を取るべく大きく下がった。

 

『逃がすかぁぁっ!!』

 

だが、コルネイユもそうさせてくれるほどやさしくないのだろう、レイキュバスシザースから火炎球を放とうと、ビクトリーとXにその爪先を向ける。

 

『させるか!ウルトラマンメビウスの力よ!!』

 

しかし、彼等はもうボッチでは無い。

ギンガが割り込む様に降り立ち、先達より与えられた力を解放した。

 

『くらえぇぇッ!!』

 

『メビュームバーストォ!!』

 

二つの火炎球が全く同時に放たれ、コンマ一秒も経たない一瞬で激突、その熱量と威力を相殺し、周囲に凄まじい爆風を巻き起こす。

 

だが・・・。

 

『ウルトラマンダイナの力よ!!』

 

攻撃を実行する直前と最中は防御不可能な絶対的な隙となる。

それを見極めていたビクトリーが飛び出し、ギンガの真上へ跳躍し、腕を十字に組む。

 

『ソルジェント光線!!』

 

闇を切り裂く稲妻が迸り、レイキュバスシザースに直撃、木端微塵に破壊した。

 

『ガァァッ!?』

 

『ナイスアタック、沙希!!』

 

『ナイスアシスト、八幡!!』

 

大きく仰け反ったコルネイユを尻目に、八幡と沙希はハイタッチを交わし、左右に並び立った。

 

『良い動きだ!流石だな!』

 

『凄いね二人とも!!』

 

バリアを解いた彩加も八幡の左隣に並び立ち、コルネイユを迎え撃つべく構えた。

 

最早、いがみ合うなどと言う選択肢は消え失せ、ただ、大切な友と共に戦うという想いだけが彼等を突き動かしていた。

 

『クソッタレぇぇぇ・・・!こうなりゃ逃げ遂せて・・・!!』

 

状況が最悪な事に気付いたのだろう、コルネイユは残った翼を広げ、飛んで逃げようとした。

 

超古代竜メルバの飛翔速度はマッハ6と怪獣達の中でも高速の部類に入り、逃げるだけならば十分すぎる速度を持っていた。

 

だが、それを逃がすほど、ウルトラマンたちも甘くは無かった。

 

『ギンガクロスシュートォ!』

 

『ビクトリウムシュートッ!』

 

『ザナディウム光線ッ!』

 

それを許さんと言う様に三体のウルトラマンが動き、それぞれの必殺光線で両翼と残っていた超コッヴレッグの光弾発射口を狙い違わず貫いた。

 

『が、ガァァァッ・・・!?そ、そんなバカなぁぁぁ!?』

 

思いも寄らぬ反撃に、その底力に愕然とし、逃亡できなくなったコルネイユは絶叫した。

 

『これで最後だ!!』

 

『ありがとよ、俺達の仲を取り持ってくれてな!!』

 

三人のウルトラマンが、絶対に逃がさんと言う様に立ちはだかり、完全に消し去ってやると言わんばかりに構えを取った。

 

『や、やめろ・・・!お、俺は丸腰だぞ・・・!?こんな俺を殺るというのかぁぁ!?』

 

命乞いのつもりか、コルネイユはもう攻撃の手段が無い事を告げ、何とか逃げようとしている様子が窺えた。

 

その見苦しさは、八幡達の怒りに火を注ぐ行為にしかならなかった。

 

『行くぞ!』

 

『あいよっ!』

 

『力を合わせよう!!』

 

だが、堪忍袋の緒がとっくの昔に切れていた三人がその程度で止まるはずが無かった。

 

彩加は再びウルトラマンガイアのサイバーカードをデバイザーに読み込ませ、八幡と沙希はこれまで使わなかった技の使用に踏み切る。

 

『行くぜ!!ギンガエスペシャリー!!』

 

『ビクトリウムエスペシャリー!!』

 

『フォトンストリーム!!』

 

ギンガとビクトリーの単体最強技、エスペシャリーと、ガイアより授けられた最強の光線技、フォトンストリームの合わせ技。

 

それは、彼等の絆を象徴する、最強にして最高の友情が詰まった技だった。

 

『『『ダブルエスペシャリーストリィィィム!!』』』

 

全てを呑み込む光の奔流が奔り、ファイブキングに押し寄せ、呑み込んで行く。

 

『ゲ、ゲェェェェッ!?ば、バカなァァァァ・・・!?』

 

避ける事すら出来ず、その圧倒的なエネルギーに呑み込まれたコルネイユは、断末魔の叫びと共に消えていった。

 

それは、この世界に降り立った悪魔が消え去った、何よりの証だった。

 

『や、やった・・・!』

 

『勝ったんだ・・・!!』

 

それを認めた彩加は歓喜に震える声で、沙希は感動を籠めた歓喜の叫びで勝鬨を上げた。

 

強敵を討ち倒せたこと、そして、友と初めて手を取り合えたことが何よりも喜ばしいのだろう。

 

『俺は、護れたんだな・・・。』

 

それを誰よりも感じているのは、他でもない八幡自身で在ろう。

裏切られたという思い込みを棄て、信じる心で掴み取った初めての本物と共に戦えたのだから。

 

八幡は喜びそのままに変身を解き、アストレイの店先に降り立った。

 

そこに人影は無く、周囲の人間は全て避難している事が窺えた。

 

彼を追う様に、沙希と彩加も変身を解除、三人で向かい合うようにして地に降り立つ。

 

「「・・・。」」

 

八幡と沙希は、先程まで共闘していた事が嘘の様に重苦しい雰囲気を漂わせながらも睨み合っていた。

 

敵を倒す事と、互いの為に戦いはした。

だが、喩えそうであっても、蟠りが解け切っている訳ではないのだ。

 

「八幡・・・、沙希ちゃん・・・。」

 

その二人の間に立つ彩加は、只々、事の趨勢を見守る事しか出来ず、何も言わずにいた。

 

最初に戦っていたのはこの二人だ、ならば、後から来た自分は何も言えないと分かっていたのだろうか?

 

「・・・、沙希・・・。」

 

「八幡・・・。」

 

先程の流れで、互いをファーストネームで呼び合っているが、それはまだ些細な事であった。

 

本当に重要なのは、すれ違いが起こった原因だった。

 

「最初の時、あの時俺を蹴り飛ばした訳を、教えてくれないか・・・?」

 

「ッ・・・!」

 

重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは八幡だった。

 

自分が攻撃されたのは自分にも非がある。

そう考えたのだろうか、彼は逃げる事無く間違いを直視しようとしていた。

 

だが、沙希はその原因を口に出して良いモノかと躊躇していた。

 

間違いを直視し、受け入れようとしてくれている事は純粋に受け入れるべきだろう。

 

しかし、その間違いに直面した時、果たして八幡は沙希の傍に、隣に立っていてくれるのかという恐怖が過ぎっていたのだ。

 

「頼む、俺は逃げたくないし、知らないまま笑っていたくない、これから先、お前達と友達、いや、それ以上の仲で在るためにも、俺は知らなきゃならないんだ。」

 

だが、八幡は彼女の懸念をあっさりと否定、これから先も友としてあり続ける為に知りたいのだと。

 

その眼には、何にも揺るがぬ真っ直ぐな想いと、逃げない意志が宿っていた。

 

「・・・っ。」

 

その想いが伝わったからか、沙希は言葉を選ぶ様に逡巡した後、重々しく口を開いた。

 

「あの時、弟と妹が、ギンガが弾いた敵の攻撃に巻き込まれて、怪我、して・・・。」

 

「ま、まさか、大志が、俺のせいで・・・!?」

 

遠慮がちに、だが、それでも克明な怒りが含まれていた。

 

それに気付いた八幡は、愕然とした表情を浮かべた。

 

自分の戦いの余波で傷付いた人間がいたとは、これまで露程にも思わなかったのだろう。

 

「俺は・・・、俺は、なんて事を・・・!」

 

あまりのショックに、彼は膝を付き、地面に手を付いた。

 

自分は誰かの為に戦っているつもりでいた、だが、本当はそうでは無かったのだ。

それが、彼が知らず知らずに犯していた間違いだった。

 

「あの時は、ただ憎さだけで戦ってた・・・、でも、あんたを見て、あんたがそういう奴じゃないって、漸く分かった・・・、だから・・・。」

 

項垂れ、沙希の顔を見ようとしない八幡に、沙希も屈んで彼の頭を抱きすくめた。

 

「勘違いして、ゴメン・・・、ちゃんと話を聞いてればよかったね・・・、だから、ゴメン・・・。」

 

「沙希・・・!」

 

憎さだけで突き進んでしまった自分が悪かったと詫びる沙希に、八幡はそんな事言うなと言わんばかりに抱き返した。

 

「俺が、もっと周りを見ていたら、お前を、大志たちを傷付けなくて済んだんだ・・・!」

 

八幡もまた、自分の非を認めて謝罪する。

 

自分のやる事しか見ていなかったから間違えたと、今、ハッキリと理解したのだろう。

 

「すまなかった・・・!俺のせいで、俺がッ・・・!」

 

「八幡・・・!沙希ちゃん・・・!!」

 

謝罪する八幡と沙希を、彩加はその小さな身体で抱きすくめた。

 

「僕こそゴメンね・・・!僕がもっと早く止めてあげられたら、八幡達は苦しまなくて済んだのに・・・!!」

 

『彩加・・・。』

 

友を想う彩加の心に、Xもまた、何も言えなくなった。

 

彩加自身に直接的な対立の原因は無い。

だが、それでも、これ以上傷付く八幡と沙希、大切な友を見たくは無かった。

 

「でも、これからは、僕達三人で一緒に戦おう・・・!」

 

だからこそ、彩加は二人を許し、受け入れる事が出来るのだ。

罪を憎めど、人を憎まない彩加の言葉は、何よりも真っ直ぐだった。

 

「彩加・・・。」

 

「あぁ・・・、傷付けちまった分は、一緒に戦う事で癒して行こう。」

 

その言葉に、沙希と八幡は何処か救われた様に笑い、立ち上がった。

 

真っ直ぐな想いだからこそ染み渡り、

 

「うん!僕達3人で!!」

 

「あぁ!」

 

「もちろんだよ!」

 

しっかりと手を握り合い、共に戦っていく事を誓った。

 

今だわだかまりが解けたわけではない。

だが、彼等の絆は、それを超えていけると、3人は感じていた。

 

「さて、先生の様子を見に行かないとな。」

 

「そうだね、まぁ、生きてるでしょ。」

 

「あ、あはは・・・、二人ともちょっとひどいよ・・・。」

 

先程までの盛り上がりは何処へやら、一夏の事をついでに見に行こうと言う様にアストレイの店内に入って行った。

 

ついで扱いされているが、三人とも自分達の為に戦ってくれた一夏の事を案じてはいた。

 

一夏が時間を稼いでくれなければ、一夏の仲間達が立ち上がる勇気をくれなければ、彼等は戦えなかったのだから・・・。

 

だから、彼等はこれからも戦っていくだろう。

信じる者達の為に、そして、自分達が歩むべき未来の為に・・・。

 

sideout




次回予告

何れ辿り着くであろうその領域、彼等はそこへ至る道筋を示された。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

三人は家族を見る

お楽しみに

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