やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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戸塚彩加は大地と共に立つ

noside

 

『うわぁぁっ!!』

 

敵に突かれたダメージに呻き、彩加は大きく吹っ飛ばされる。

 

ウルトラマンXに変身して戦う彩加の動きは、傍目から見てもキレが良いとは言えないモノだった。

 

『しっかりしろ!彩加!!身体が追い付いてないぞ!!』

 

『わ、分かってるけど・・・!』

 

呻く彩加を叱咤するように声を上げるXだったが、彩加は苦い顔をして言い返すだけで逆転の手立てが全くない事に歯がみしていた。

 

そんな彼が今相手にしているのは、二体の金属生命体だった。

 

モノアイを持ち、右腕が槍状になった灰色の異形、アパテー。

デュアルアイを持ち、右腕が銃の様な形状となった異形、アルギュロス。

 

二体の金属生命体は、不気味な笑い声を上げながらもXと彩加に迫って行く。

 

その歩みの一歩一歩が、さながら死刑執行へのカウントダウンと思える様に・・・。

 

『くっ・・・!!』

 

『立て!立つんだ彩加!!』

 

ダメージに呻く彩加に立つように叫ぶXだったが、それよりも早く、二体の怪物は距離を詰めてくる。

 

だが・・・。

 

『ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!!』

 

『ウルトライブ!ウルトラマンビクトリー!!』

 

その時、天よりギンガとビクトリー、二体のウルトラマンが降り立ち、アパテーとアルギュロスを蹴り飛ばした。

 

反動を利用し、華麗にバク宙して地面に着地する。

 

しかし・・・。

 

『ちっ・・・!ビクトリー!!』

 

『ギンガ・・・!また会ったね・・・!!』

 

この二体のウルトラマンは互いにいがみ合っていた。

 

ファーストコンタクトが最悪だったこの二人、今だ分かり合えずにいたのだ。

 

『後でカタを付けてやる・・・!』

 

『こっちのセリフだ・・・!』

 

火花を散らす様に呻きながら、二体のウルトラマンはよろめきながら立ち上がるアパテーとアルギュロスに向かい合う。

 

『行くぜ!ウルトラマンメビウスの力よ!!』

 

『ウルトラマンダイナの力よ!!』

 

さっさと勝負を着ける心積もりなのだろう。

二人は、先達より授かった力を解放する。

 

ギンガの左腕に装着されたブレスレットがメビウスの力を示し、ビクトリーの右腕に装着されたブレスがダイナの力を示した。

 

『メビュームシュート!!』

 

『ソルジェント光線!!』

 

メビウスの必殺光線、メビュームシュートと、ダイナの必殺光線、ソルジェント光線が其々怪獣に突き刺さり、地に倒れ伏して盛大な爆発を上げる。

 

『よし・・・!』

 

『これで邪魔者はいなくなったね・・・!!』

 

『えっ・・・!?』

 

敵を倒した途端に、仇敵を見付けたと言わんばかりの怨嗟の声で、互いを睨み合うギンガとビクトリーに、彩加は驚きの声を上げた。

 

話には聞いていた、二人のウルトラマンが、互いにいがみ合っていたのだ。

 

『待ってくれ・・・!君達もウルトラマンなんだろ・・・!?何故争う必要がある・・・!?』

 

その事を知っていながらも、それを信じられなかったXは、二人の争いを止めようとした。

 

『黙ってろ・・・!お前は邪魔なんだ!!』

 

『これはあたし達の問題だ・・・!!口出しするな!!』

 

そんなXを鬱陶しそうに睨みつけながらも、二体のウルトラマンは攻撃態勢に移る。

 

『待って・・・!話を・・・!!』

 

『ギンガスラッシュ!!』

 

『ビクトリウムバーン!!』

 

割って入ったタイミングが不味かった、二体のウルトラマンの頭部より放たれた光線が狙い違わずXの胴部に直撃、盛大な火花を散らして大きく吹っ飛ばす。

 

『う、うわぁぁぁっ・・・!!』

 

地に叩き付けられたX、彩加は痛みに呻く。

幾らテニスで身体を動かし、怪我をする事も幾度かあったとしても、格闘技など、人を傷付ける事を嫌っている彼にとって、その痛みは未だに慣れぬものだった。

 

『シェアッ!!』

 

『ディヤッ!!』

 

そんな彼を顧みる事無く、二体のウルトラマンは互いを討たんと、一撃必殺の拳や蹴りを打ちあい、躱し合い、全く譲らぬ戦闘を繰り広げていた。

 

『ギンガセイバー!!』

 

『ビクトリウムスラッシュ!!』

 

光の剣と輝く脚がぶつかり合い、凄まじい光が辺りを包んだ。

 

『何故なんだ・・・?どうして彼等は争うんだ・・・!?』

 

目の前の光景に納得できないXは、憤りを籠めた言葉を漏らしていた。

 

ウルトラマンは、全宇宙のバランスを保つ存在、そのためには、ウルトラマン同士で争っている場合では無いのだ。

 

故に、ウルトラマンの力がありながら、分かり合おうとしない二人のウルトラマンに対して、怒りに近い感情を抱いていたのだ。

 

だが、その戦いは、突如として飛来した何かによって中断させられた。

 

鈍色のブーメラン状の何かが幾つも飛来し、ギンガとビクトリーに襲い掛かる。

 

 

『ガァッ・・・!?』

 

『うわっ・・・!?』

 

それは狙い違わずギンガとビクトリーの首や胸、脚などを正確に攻撃し、二体のウルトラマンを怯ませ、地に倒した。

 

その隙を逃さず、ブーメラン状の何かは形を変え、拘束具の様にギンガとビクトリーの手首と足首、そして首に絡み付きながら地に突き刺さった。

 

『こっ、のっ・・・!?』

 

『外れないっ・・・!!』

 

それは見事に力が入りにくい場所に食い込み、尚且つ地中に深々と突き刺さって固定されてしまっていた。

 

如何にウルトラマンの力でも外す事は困難だった。

 

その彼等にトドメを刺そうと、その怪物は姿を現した。

 

金属生命体 ミーモス。

アパテーとアルギュロスの破片が融合し、誕生した金属生命体のキメラと呼ぶべき存在だった。

 

『っ・・・!!やめてっ・・・!!』

 

その光景に、彩加は残っている力を振り絞り、ミーモスにタックルを喰らわせ、何とか足止めをしようと組みつく。

 

だが、ミーモスは不気味な声を上げ、Xなど目に入らぬと言わんばかりに蹴り飛ばし、その先へと進撃する。

 

『やめ・・・ろ・・・!!』

 

カラータイマーが点滅し、力が抜けていく様な感覚を覚えながらも、彼は立ち上がろうと足掻いた。

 

だが、無情にも敵は進み、遂には二体のウルトラマンを間合いに捉え、槍のようなモノを出現させ、ギンガの咽元に突き付ける。

 

未だ拘束から逃れられないギンガと、次の標的であるビクトリーは何とか逃れようともがくが、それはびくともしなかった。

 

無情なる槍が振りかぶられ、ギンガを貫こうとした。

 

まさにその時だった。

 

『デヤァァァァッ!!』

 

空より舞い降りた光の巨人が、急降下の勢いそのままに、ミーモスの胴に蹴りを叩き込んだ。

 

ギンガとビクトリーからミーモスを引き離し、盛大に土煙を巻き上げながら着地した赤いウルトラマンは、着地の体勢から紅い光球を連射し、怪物を盛大に吹き飛ばした。

 

『あ、あれは・・・!!』

 

『新しい、ウルトラマン・・・?』

 

その姿にXは驚愕し、彩加は呆ける様に呟いた。

 

見た事も無いウルトラマンが自分達の前に姿を現す事だけでも驚きだが、それだけでは終わらないのが現実と言う物だ。

 

そのウルトラマンはギンガとビクトリーを無視し、戦う意思を見せていたXに歩み寄り、胸のライフゲージから光を溢れさせ、Xのエネルギーを回復させた。

 

『立って、彩加君、君はこんな所で挫けちゃダメだよ。』

 

『ど、どうして僕の名前を・・・?』

 

差し出された手を掴んで立ち上がった彩加は、その声の主に問いかける。

 

何故自分の事を知っているのか、そして、何故自分を助けてくれたのか。

 

分からない事尽くめの中で、彼は答えを探し出そうとしていた。

 

『僕はウルトラマンガイア、またの名を、シャルロット・D・織斑、何時もご利用ありがとうね♪』

 

『し、シャルロットさん・・・!?』

 

『知り合いか・・・?いや、織斑と言う事は・・・?』

 

名乗るシャルロットの言葉に驚く彩加に、Xは冷静に声を掛けつつも彼女の正体に目星を付けていた。

 

彼等に最初に接触してきた、織斑一夏の関係者だと・・・。

 

『一夏から話は聞いてるよ、でも、戦う時は躊躇っちゃダメ、躊躇ったら自分が死ぬ事になるからね。』

 

『で、でも・・・!』

 

やんわりと、だが、それでも確かな意思をぶつけられた彩加は、どうすれば良いと言わんばかりに叫ぶ。

 

確かに護りたい相手はいる、だが、そのために力を行使する事も正しいとは思えなかったのだ。

 

『戦うための優しさは、敵に向けるモノじゃないよ、その意味を僕が見せてあげる。』

 

そんな彼に、自分なりの戦い方を示すつもりなのか、シャルロットは一歩前に踏み出し、両腕を上に突き挙げ、光を解放、一気に全身に纏わせる。

 

その光が晴れた時、ガイアの姿は変わっていた。

 

赤と銀、そしてプロテクターの金と黒だけだった体色に青いラインが加わり、全身の筋肉が隆起したガイアの究極

の姿、スプリームバージョン。

 

漸く体勢を立て直したか、ミーモスは邪魔者から先に消すと言わんばかりに走り、一気にガイアとの距離を詰めていく。

 

『ハァッ!!』

 

だが、ガイアは臆することなく迎え討ち、腕を取って背負い投げの要領でミーモスを地に叩き付ける。

 

『護るためには、覚悟を決めるんだ、戦う意思を強く持って!それがウルトラマンだよ!!』

 

『っ・・・!』

 

自分にも護りたい者がいる。

目の前にいる怪物は、その者達を脅かす脅威以外の何物でもない。

 

それに加えて、自分は護るための力を持っている、脅威から大好きな二人を護るために戦える力を。

 

それを改めて理解し、彩加は拳を握り締め、意を決した様に前に進んで行く。

 

『戦う・・・!僕も、僕達もウルトラマンだっ!!』

 

『そうだ!行くぞ彩加!!』

 

彼に戦う覚悟が宿った事を見たXは彩加の想いに呼応し、身体のラインを光らせ、起き上がろうとするミーモスを掴み、豪快に放り投げる。

 

『でぇぇいっ!!』

 

落下先に待っていたシャルロットは、片手でその巨体を持ち上げ、大きく回転させて地に叩き付ける。

 

ミーモスは強烈な衝撃をもろに受け、最早よろめく事しか出来なかった。

 

だが、それでも攻撃は止まらない。

 

『イーッ!サァーッ!!』

 

倒れるミーモスの脚を掴み、Xはジャイアントスイングをかまし、大きく振り回した後、最も勢いが着いた所で放り投げた。

 

ミーモスは受け身を取る事すら出来ずに地に叩き付けられ、戦闘を続行する事は不可能に見えた。

 

『トドメだよ!!』

 

『行くぞ、彩加!!』

 

『うん!』

 

シャルロットの掛け声に応える様に、Xと彩加は必殺の意思を籠めた光線の発射体勢へと移る。

 

同時に、ガイアも必殺の一撃を見舞うべく、体勢を移行させた。

 

『ザナディウム光線!!』

 

『フォトンストリーム!!』

 

二つの光線はミーモスに突き刺さり、跡形も無く消し飛ばした。

 

『なんて威力だ・・・、これが、ガイアの力・・・。』

 

その凄まじい威力に、Xは呆然と呟いた。

 

そんな彼を見つめる様に、ガイアはXと向かい合った。

 

本体が消滅すると、ギンガとビクトリーを拘束していた杭も消えたのだろうか、既にギンガとビクトリーは姿を消していた。

 

救出する手間が省けたと言わんばかりに、ガイアとXは同時に変身を解き、シャルロットと彩加として向かい合った。

 

「お疲れ様彩加君、最後の投げは良い気合が入ってたね、気に入ったよ。」

 

「助けてくれてありがとうございます・・・、でも・・・。」

 

柔らかく、それでいて褒める様に笑うシャルロットに、彩加は何とも言えない表情を作った。

 

褒められる事は嫌いではないし、相手は既に何度も顔を合わせている知り合いの女性だ。

 

だが、だからこそ受け入れられないのだろう。

如何に怪獣や異生物とは言っても、知人が暴力を振るう処など見たくもあるまい。

 

「なるほどね、知り合いが殴り合いしてたら嫌になるよねぇ、まぁ、気持ちは分からなくないかな。」

 

そんな、迷いとも甘さとも取れる彩加の弱さを否定することなく、彼女はそれに一定の理解を示した。

 

甘さや迷いは、戦いにおいては命取りになる最大の要因ではある。

 

しかし、それだけを突き詰めてしまえば、ただの修羅に成り果ててしまう事の恐ろしさを、シャルロットは知っていたのだ。

 

「だから、その気持ちを失くさないでね、君が想った事は正しいし、尊重されるべきだよ、でも、優しさが君を殺しかねない事、それだけは忘れないでね。」

 

「シャルロットさん・・・。」

 

力強く話すシャルロットの言葉に、彩加も知らず知らずの内に力を籠めて頷いていた。

 

それを見たシャルロットは優しく笑みながらも頷き、変身ツールであるエスプレンダーを彩加に見せる様に掲げた。

 

「優しさを貫ける強さを君に託すよ、君が僕を信じてくれるなら、この力を使って進んでね。」

 

その言葉と同時に、エスプレンダーから光が迸り、それは彩加の手に収まるエクスデバイザーを包み込んだ。

 

『こっ、これは・・・!』

 

Xはその光の強さと温かさに驚き、彩加は僅かに目を細めた。

 

その光はすぐに収まり、エクスデバイザーの画面の上にガイアの姿が描かれたカードが現れた。

 

「これが、ウルトラマンガイアの力・・・。」

 

『あぁ、迸る力強さを感じるよ。』

 

その力に驚嘆している内に、彼等の視界からシャルロットの姿は消えていた。

 

その気配の消し方は、最高峰の戦士のみに許された、洗練された動きだった。

 

だが、そんな事は気にも留めていなかった。

 

誰かから信頼される事、それが彼にとって初めての事だったに違いない。

 

故に、彼の瞳にはこれまで以上の光が宿っていた。

 

「僕達の道、これからだよね、X!」

 

『あぁ!先達が力を貸してくれたんだ、私達が新しい道を往こう!』

 

力を託されたからにはそれ相応の応え方が必要となってくる。

 

だが、それがどうしたというのだ。

託されたからには我武者羅に進んで、その想いを見せてやれば良い。

 

それが、自分達のこれから進むべき道だと、今分かったのだから・・・。

 

sideout

 




次回予告

三人のウルトラマンの争いは、彼等に何を齎しているのか。
その先に見える未来は、どの様な物なのか・・・。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている

織斑一夏は苦悩する

お楽しみに

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