やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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比企谷八幡は炎の刻印を知る

side八幡

 

「ほいじゃ、行ってくるぞ~。」

 

週も終わりの金曜、今週最後の授業日の為、俺はテキパキと登校の準備を進める。

 

特に体育も無ければ、苦手意識のある理科科目もない日だ、気軽にやり過ごさせてもらうとしようか。

 

それに、最近は学校に行けば良い事もあるってもんだ、休むとかサボるとかもったいなくて出来やしねぇぜ。

 

「・・・、お兄ちゃん、なんか変わったね、前までもっと怠そうだったのに・・・。」

 

鼻歌交じりに準備していた事を不審に思ったのか、小町が訝しむ様に尋ねてくる。

 

そんなに浮かれていた様に見えたのか?

だとすれば、本当に変わったもんだと自分でも思うまである。

 

「そうか?まぁ、俺を見てくれる人が三人もいるんだ、これで変わらなきゃ嘘だぜ。」

 

先生に戸塚に、それから、川崎も。

俺の事を真っ直ぐあるがままに見詰めてくれる人達だ。

 

こんな人たちが出来るなんて考えても見なかったし、望む事さえ諦めていたかもしれない。

 

でも、見つかったならそれでいい、俺はその人たちの為に戦う事を心に決めているから。

 

「・・・。」

 

「・・・?どうしたよ?」

 

そんな俺を見て、小町は何とも言えない表情を浮かべる。

それはまるで、面白くないものを見たとでも言いたげな・・・。

 

「・・・、何でも無い、ほら、早く行かないと遅刻するよ。」

 

「お、おう・・・?」

 

なんか感じわりぃな・・・。

ま、気にする事でもないか。

 

そんな事を考えながらも、俺は家を出て、慣れきってしまった通学路を進んで行く。

 

つい三カ月前までは自転車通学だったが、今はベムラーのせいで自転車が御釈迦になったから徒歩で通学している。

 

尤も、本気出して走ればそれこそ3分かからずに着ける位に俺の身体が強化されているのも事実だけどな。

 

それは兎も角、幾ら底上げされてたとしても、それを扱う俺の地力が低いままじゃまともに戦うなんて出来やしない。

 

も少し鍛えないとな。

と言っても、鍛え方なんてまだまだ分かったもんじゃないけどさ。

 

そんな事を漠然と考えながらも通学路を進んで行くと、俺の後方からバイクのエンジン音が聞こえてくる。

 

聞きなれた重低音と振動に振り返ると、一台の白いバイクに跨った一人の男性がこっちに向かって来ていた。

 

誰かなんて確かめる必要も無い、この人は、俺がこの世界で最も信頼している内の一人だからな。

 

「おはようございます、先生。」

 

「おはよう八幡君、今日も良い天気だ。」

 

俺が挨拶をすると、彼はヘルメットのバイザーを指で跳ね上げ、目元を柔らかく緩めて笑う。

 

ホント、イケメンはこれだけで絵になるよね、俺なんて、笑ってもキモい言われるだけだし。

 

あ、因みに奉仕部内で既に数回言われてます、はい。

 

あの時、怪獣のスパークドールズが手元に在ったら、ライブして踏みつけてやろうかとも考えたけど、考えるだけに留めておいた。

 

何せ、俺は曲りなりにもウルトラマンなんだ、人を傷付ける訳にはいかねぇ。

 

「乗って行くか?近くまで送るけど。」

 

「いや、遠慮しときます、贔屓っぽく見られちゃいけないでしょ?」

 

「それもそうだな、気を遣わせてしまったね。」

 

誘いを断っても嫌な顔一つせず、贔屓について尋ねると、そうだったと言わんばかりに笑い飛ばす。

それにつられて、俺も表情が綻んでしまう。

 

何と言うか、俺を試してるのかそうじゃないのか分からん人だ。

たまにある物騒な発言も、俺の出方を試していると考えると納得いく様な部分もある。

 

けどまぁ、この人なりの接し方なんだろうね、これも。

 

「ま、最近何かと物騒だ、色々と気を付けてな。」

 

「分かってます、それなんですけど、今度格闘戦のコツとか教えてくれませんか?」

 

先生の言葉に応えつつ、俺は拳を構えてお願いしてみた。

 

ギンガは他のウルトラマンに比べて光線技に秀でていても、格闘戦だけはあまり得意じゃないって言うのが本音だ。

現に、重量級の怪獣を相手にした時は何も出来ずに吹っ飛ばされるのがオチだったしな。

 

先生も先生で、俺が強くなって怪獣封印して、それでウルトラマンの力を手に入れられるんだから、お互いにとってもメリットしかない状況だ、断る理由もない筈だ。

 

といっても、こんな事口実にしか過ぎない。

俺が強くなる理由は只一つ、護りたい人を護る、それだけだ。

 

「あぁ、俺も常々考えていたところだよ、まぁ、次の休み辺り、どこか広い場所で相手してやろう、時間が許す限りね。」

 

「はい、お願いします。」

 

俺の腹積もりを知ってか知らずか、彼は柔らかく笑んで快諾してくれた。

 

これで後は気兼ねすることなく、俺は強くなる事だけに集中できる。

 

『見つけたぞ!織斑一夏ぁ!!』

 

そう思った時だった、カラスの様な醜い声が俺達の耳を打つ。

 

俺と先生は弾かれるようにその声がした方へ目を向けると、カラス頭の怪人がそこには居た。

 

「お前は・・・!」

 

「コルネイユ、懲りない奴だな。」

 

この前、大和を怪獣化させた張本人にして、闇の尖兵。

 

先生の真似じゃないけど、負けてるんだったらそのままにして二度と出て来なけりゃ良かったのにさ!

 

警戒するように構えつつ、俺は身体で携帯を隠し、知ったアドレス、アストレイメンバーの内の一人であるセシリアさんにメールを打つ。

 

内容は至ってシンプル、『救援求む』、これだけだ。

 

これで暫くすれば、誰かしら駆けつけてくれる、このカラス頭が何かしようとも対処できる筈だ。

 

『カカカ・・・!負けっぱなしは気に喰わねぇ!今日こそお前達を殺してやるよぉ!!』

 

そんな俺の思惑を知ってか知らずか、コルネイユは挑発するように言いつつ、奴は何かリモコンの様なものを掲げ、中央のボタンを押し込む。

 

すると、何処から現れたか、ロボットの様な戦闘員が現れた。

 

恐らくは、ショッカー戦闘員みたいなポジションなんだろうけど、変身前には耐えそうだ。

 

やっべ、これ、不利じゃね・・・!?

 

「ちっ・・・!生憎、黙って殺される訳にはいかねぇぜ!」

 

とはいえ、黙って殺される訳にはいかない。

朝っぱらから戦うのは些かキツイが、今はそんな事を言ってる場合じゃなかったな。

 

ギンガスパークを懐から取り出し、何時でも戦える様にスタンバイする。

この際、コイツに正体ばれても良いや、どうせ、今日封印するつもりなんだしな。

 

『おぉっと!ギンガぁ!貴様の相手は俺じゃない!』

 

「なっ・・・!?」

 

もう正体がばれているだと・・・!?

そうか、大和に近付いたのも、俺がウルトラマンだと知っていたからか・・・!?

 

恐らく、大和が選ばれたのは、心に抱えた闇のせいもあるだろう。

だが、俺と同じ学校にいたって言うのも大きな要因の一つだと、ここで分かった。

 

クッソ・・・!半分俺のせいじゃねぇか・・・!!

 

いや、悔やんだ所で何にもならねえ、今は仇討も兼ねて戦うしかねぇな!!

 

『貴様の相手はコイツだぁ!!』

 

カラス野郎が天にその腕を掲げると、俺達の背後から地響きが聞こえてくる。

 

俺が振り返ると、そこには黒い塊のような巨大な奴がいた。

 

棘が着いたボールに手足を生やせばそうなるだろうという怪獣らしき存在は、俺達の方へ一直線に向かってくる。

 

「行くぜ、ギンガっ!!」

 

「待て、八幡君!!ソイツは・・・!!」

 

先生の静止の声も聴かず、俺はギンガスパークからギンガのスパークドールを呼び出し、光に包まれ赤い巨人となる。

 

大地に降り立ち、玉の様な黒い奴に向かって叫ぶ。

 

『こっからは俺が相手だ、行くぜ玉っころ!!』

 

ファイティングポーズを取り、ソイツに殴りかかる。

 

だが、その黒い奴は腕に着いていた楯の様なもので俺の拳を受け止め、弾き飛ばす。

 

『このっ・・・!』

 

殴られない様に身を屈めつつ、俺はキックとパンチを交えた攻撃を繰り出す。

 

だが・・・。

 

『かっ・・・!?硬っ・・・!?』

 

まるで効いていない・・・!ゴメスでも怯むくらいには効果あったんだぞ・・・!?

 

腕が痺れるような感覚に顔を顰めていると、奴の左腕の楯から剣が伸び、俺の胴を袈裟斬りした。

 

『ぐっ・・・!!これならっ・・・!!』

 

傷みを堪えつつ、後方へ吹っ飛ばされると同時に、俺はギンガの必殺光線、ギンガクロスシュートを放つ。

 

光線は真っ直ぐ突き進み、その身体にぶち当たり、何事も無かったように霧散した。

 

『光線が、無効化された・・・!?』

 

なんてこった・・・!!格闘戦でも破れない、ギンガお得意の光線技も無意味・・・!

 

コイツは、マズイっ・・・!!

 

焦る俺に、ソイツは無情にも迫ってくる。

 

勝ち目は薄い、だが、俺は逃げない。

 

護りたいヤツがいるから、あの二人を護るから・・・!!

 

sideout

 

noside

 

「八幡君・・・っ!!」

 

ギンガと黒い丸玉、リフレクト星人の戦闘を横目で見ながらも、レイビーク星人コルネイユが呼び出した機械人形、チブロイドを相手取っていた。

 

繰り出される拳を回避しつつ身を屈め、脚を払って腹部に肘打ちを叩き込んで無効化する。

 

次々に襲い来る敵を相手取りながらも、彼の表情は冴えない。

 

命令されるがままに戦う人形程度に、歴戦の猛者である一夏が負ける道理は無い。

 

だが、数が非常に多い上にコルネイユの存在もある、多勢に無勢とはよく言ったものだ、その表情に余裕は無い。

 

更に、八幡が一夏の忠告を聞く暇も無く飛び出した事で、ギンガはリフレクト星人の性質を知らぬまま戦いを挑んでしまっている。

 

リフレクト星人は非常に強固な外装を持っており、その外装には特殊な仕掛けがあり、それが光線技を全て反射し、無効化してしまう。

 

無論、光線エネルギーを使わない打撃技なら破壊も可能なのだが、純粋な強度も非常に高いため、今のギンガでは破壊する事も困難であった。

 

それを伝えられなかった事を悔やみ、一夏は自身の失策に歯噛みした。

 

「あちらもカバーしてやりたいが・・・!これではな・・・!!」

 

本来ならば、この手に在る緊急用の力で加勢したいところだが、今はそんな隙さえない。

 

いや、寧ろ加勢しに行こうとしたところで、敵がそれを許すはずもない。

 

『カーッカッカッカッ!!これで貴様も終いだぁ!』

 

彼の焦りを感じ取ったか、コルネイユは高笑いを上げて彼に向かって行く。

 

そのカラスの爪の様な手もまた、人間にとっては脅威に成り得る。

 

「チッ・・・!使うしかないか・・・!?」

 

奥の手、否、禁じ手にも近い手でこの場を乗り切ろうと、彼が動こうとした、まさにその時だった。

 

「伏せて一夏!!」

 

「っ!!」

 

背後から自分に向けて発せられた女性の声に従い、一夏は瞬時に身を屈める。

 

すると、彼の頭上を数発の銃弾が通り過ぎ、彼に迫っていたチブロイド数体とコルネイユに襲い掛かる。

 

『ガァァァッ・・・!?』

 

銃弾に貫かれたチブロイドが爆発四散し、コルネイユは銃弾が直撃した肩口を抑えて呻く。

 

その狙いは正確無比であり、一夏に掠る事さえなかった。

 

「今よっ!!」

 

「応っ!!」

 

仲間の声に弾かれ、彼は瞬時に体勢を整え、レイビーク星人コルネイユの肩口に手刀を横薙ぎして叩き込む。

 

『ガァァァ!!き、貴様らぁぁ・・・!!憶えてやがれぇぇ・・・!!』

 

手刀を受けたコルネイユは肩口から紫色の血飛沫を迸らせながらも、吹っ飛ばされる勢いに乗じて逃げ去った。

 

その姿が見えなくなると、一夏は戦意を緩め、自身の背後に立つ、亜麻色の髪の女性に微笑みかける。

 

「助かったよ、相棒、君は最高だ。」

 

「貴方の相棒は何人いるの?でも、間に合ってよかった。」

 

軽口交じりで礼を述べる一夏に苦笑しつつ、その女性、リーカ・S・ヒエロニムスは安堵した様に微笑んだ。

 

どうやら、八幡から送られた救援要請を見たセシリアから連絡を受けて、愛車である薄桃色のバイクを飛ばして来たのだろう。

 

一夏との間柄は最早語るに及ばず、その絆は戦友を通り越し、血を分けた兄弟姉妹よりも強固なものになっている。

 

一仕事終えた事で、彼等の間には少々穏やかな空気が流れるが、爆発音や地震の如き地響きがそれを遮る。

 

彼等がその方向へ振り向くと、リフレクト星人に転がされたギンガが呻くように身を捩り、何とか立ち上がろうとしている所だった。

 

既にカラータイマーは点滅し、戦える時間は多く残されていない事を彼等に悟らせていた。

 

「リーカ!」

 

「分かってる、行ってくるわ!」

 

一夏の言葉に頷きつつ、彼女は一歩前に踏み出し、左腕を構える。

 

一瞬だけ彼女の左腕に炎が現れたかと思うと、それは紅いブレスの様な物へと形を変える。

 

それを右手で手首から肘の方へ撫でると、そのブレスの中心に有る紅いクリスタルが光を宿し、眩い光が辺りに零れる。

 

「メビウーーーースッ!!」

 

一度身を屈めた直後、腰を捻って左腕を天に掲げる。

 

すると、彼女は強烈な光に包まれ、その姿を銀色の巨人に変えていった。

 

それは、無限の未来を象徴した、銀色のウルトラマンだった。

 

sideout

 

side八幡

 

『あ、あれは・・・?』

 

何度黒球に転がされた事か、最早体力も限界に近付いていた時だった。

 

俺を庇う様に立ちはだかる、見た事のないウルトラマンが現れ、ヤツを蹴り飛ばした。

 

『ウルトラマン・・・?』

 

助けてくれたとは言え油断は出来ない。

何せ、油断のせいで蹴り飛ばされた経験があるんだ、敵と思っておいていい位だろう。

 

黒球との距離が離れた事を確認して、そのウルトラマンは俺の方へ近づき、カラータイマーから光を放ち、俺にエネルギーを分け与えてくれた。

 

『立ち上がって、ギンガ、いいえ、八幡君、貴方はここで終わりじゃないでしょ?』

 

『女の人・・・?もしかして、織斑先生の仲間の・・・?』

 

差し出された手を掴んで立ち上がり、その言葉の真意に気付く。

 

どうやら、この人は俺の事を想ってここに立っていてくれるらしい。

だとすれば、これ以上に無い強力な味方だな。

 

『私はリーカ、またの名を、ウルトラマンメビウスとも言うわ、詳しい事はまた後でね、今は戦うわ!』

 

『はい!』

 

リーカさんが変身したメビウスに頷きながら、俺はもう一度ファイティングポーズを取り、黒球に向かい合う。

 

だが、格闘も光線も通じない、コイツをどうやって倒すんだ?

 

『このリフレクト星人の外装は単純な防御力だけじゃなくて、光線を反射させる力があるの。』

 

『それは、分かります、だったら、どうやって破るんです?』

 

『決まってるわ、防御力を上回る打撃を打ち込む、それだけよ。』

 

何て脳筋な考え・・・、いや、確かにそれ以外に攻略法は無いよね。

 

でも、どうやってその攻撃を出すんだ?

 

『私がお手本を見せる、あるウルトラマンから教わった技をね。』

 

『は、はぁ・・・?』

 

お手本って・・・、先生じゃあるまいし・・・。

 

『シェアッ!!』

 

疑う様な目をする俺を尻目に、彼女は高く飛び上がり、右脚を突き出してリフレクト星人に向かって行く。

 

只の蹴りじゃダメなはずだろうに・・・?

 

それを見越したか、リフレクト星人は左腕の楯を掲げ、そのキックを易々と受け止めた。

 

『ハァッ!!』

 

だが、その瞬間、メビウスは高速で回転し始める。

 

しかも、摩擦熱が起きているのか、強烈な炎が上がる。

 

するとどうした、今まで怯む事が無かったリフレクト星人が後退するどころか、その威力に耐えかねて吹っ飛ばされた。

 

驚きつつリフレクト星人を見ると、奴は左腕の楯が粉々に粉砕されており、その技の威力の高さを如実に表していた。

 

『何っ・・・!?』

 

驚く俺を尻目に、彼女は華麗に後方宙返りし、俺の真横に華麗に着地する。

 

『その姿・・・!?』

 

だが、それだけじゃなかった。

メビウスの身体の模様が変わっていた。

 

その模様はまるで、炎の如し煌びやかな印象を受けた。

 

そう言えば、先生に教えられたっけ、戦闘状況に合わせた姿になれるウルトラマンがいるって事に。

 

これも、恐らく攻撃力を増大化させるフォームと考えると何の不思議も無いか。

 

『単純な攻撃力が弱くても、工夫次第でどうにかなるわ、貴方のウルトラマンだって、姿は変えられなくても出来る筈よ。』

 

『俺の出来る事・・・、やってみます!!』

 

無い物ねだりしてもダメ、だったら工夫を凝らしてどうにかする。

それも一つの手、か・・・!!

 

だったら、これしかないよな!!

 

『行くぜ!ダブルギンガセイバー!!』

 

何時もは右腕にしか展開しないギンガセイバーを両腕に展開し、二刀流の様に構える。

 

と言ってもただ斬りかかるだけじゃ無意味だ。

ならどうするか?答えは至極単純、さっきの物まねだ!

 

『シェアッ!!』

 

上空高く飛び上がり、腕を突き出し、そのまま回転の勢いを加えながらも一気に急降下、ドリルの様に突っ込んで行く。

 

『私も、リハビリかねて行くからね!』

 

メビウスも飛び上がり、俺に合わせる形で回転蹴りを繰り出す。

 

さっきのダメージが尾を引いているのか、リフレクト星人は中々起き上がれず、遂には俺達二人の合体技をまともに受けてしまっていた。

 

強烈な技を二発も同時に喰らえば、如何に強固な外装も用を為さない。

 

今迄手こずっていたそれは簡単にひび割れ、反対側への突貫を許した。

 

俺達が揃って地面に着地した直後、背後で盛大な爆発が巻き起こり、リフレクト星人がスパークドールズへと還って行った。

 

これで、ミッションコンプリート、だな・・・。

 

俺は彼女に向き合った後、示し合わせたように変身を解き、人のいない場所に降り立つ。

 

俺の前に立ったのは、亜麻色の髪を持った小柄な女性だった。

 

ってか、この人もセシリアさんとはタイプの違う美人さんだな、告白して即フラれそうだ。

 

尤も、もうそんな事しないけどな。

 

「助かりました、貴女が来てくれなかったら、俺は勝てなかった・・・。」

 

その女性、リーカさんに頭を下げつつも、俺は内心で渦巻く不甲斐無さに押し潰されようとしていた。

 

折角ウルトラマンの力を持ったのに、何も出来ず、ただ助けられただけ。

結局、俺独りでは何にも出来やしなかった。

 

それが、たまらなく悔しかった。

 

「でも、負けてはいなかったわ。」

 

「えっ・・・?」

 

そんな俺を宥めるつもりか、彼女は柔らかく微笑みながら思いもかけない言葉を投げかける。

 

負けていないとはどういう事なんだ・・・?

俺は、まったく歯が立たなかったというのに・・・?

 

「貴方が諦めずに戦っていたから、私の救援が間に合ったの、貴方が折れなかったから、私は貴方と共に戦えた。」

 

俺の姿勢を褒める様に、彼女は笑った。

 

でもそれは、逃げたくなかったから。

逃げたら、護りたい人を護れないから。

 

だから逃げられなかった。

 

それでも、それが評価されてんなら、悪い気はしない、かな・・・?

 

「最後まで諦めず、不可能を可能にする、それがウルトラマンよ、だから、信じる事を諦めないで、それがきっと、閉ざされかけた未来を切り拓くから。」

 

「信じる事を、諦めない・・・、それが、ウルトラマン・・・。」

 

自分に言い聞かせる様に呟く。

 

ウルトラマンとしてどうあるべきなのかなんて、今まで考えた事も無かった。

 

でも、やるべき事、やらなくちゃいけない事は分かってる。

俺が抱えるその想いは間違いなく、ウルトラマンとして進むべき道は決まってるかもしれない。

 

行けるかどうか分からないけど、それでもやるしかないのは分かる、だってそれが、ウルトラマンなんだから。

 

「この世界を護るために、私の力を使って、私を信じてくれるなら。」

 

俺の覚悟を見たか、彼女は優しく微笑みつつ左腕のブレスを俺に突き出しつつ、それを光らせる。

 

そして、光が俺の右手に持つギンガスパークを包み、一体化する。

 

「これは・・・。」

 

「じゃあね、今はこの街を、お願いね。」

 

呆然と固まる俺を尻目に、彼女は悪戯っぽく微笑みながらバイクに跨り、投げキッスをして颯爽と去って行った。

 

それは、大人の色気を醸し出しつつ、何処か子供っぽさが滲むモノだったが、今の俺にとってはどうでも良い事だった。

 

ウルトラマンに信じて貰えるって言うのも、悪いもんじゃないな・・・。

 

「俺、やってみます、不可能を可能にする、そんなウルトラマンに。」

 

颯爽と去って行ったその背に向けて頭を下げつつ、俺はもう一度決心した。

 

戦って、勝つ事で護ると。

それが、俺に与えられた唯一無二の天命だと信じて・・・。

 

sideout

 

 




次回予告

何度も立ち上がり、何度も挑む。
その心に闘志がある限り、本当の戦いはこれから始まるのだ。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている

川崎沙希は熱闘を知る。

お楽しみに

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