やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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6月25日9時半頃、
本文中のスパークドールズを
ウルトラマンジャックからウルトラマングレートに変更しました。


戸塚彩加は真実に触れる

noside

 

「じゃあ、先生達も、ウルトラマンなんですね・・・?」

 

コッヴとの戦闘の後、一夏と共にアストレイを訪れた彩加は、濡れた身体を拭きながらも一夏に尋ねていた。

 

テーブル席に向かい合う様に座り、ホットティーとパンケーキを出され、既に今日に至るまでの流れを聞いていた。

 

俄には信じられない話であったが、一夏がスパークドールズや怪獣の事を詳しく伝えたため、彩加は彼を一先ず信じる事にしたようだ。

 

「あぁ、とは言え、今は力を取り戻すために身を潜めている、俺の仲間達も、力の根源を探しに出ている。」

 

彩加の質問に答えつつ、一夏は今、自分と仲間達が置かれている状況を話した。

 

その表情からは悔しげな表情が見て取る事ができ、自身が戦えない事を悔やんでいる様にも見えた。

 

しかし、それを浮かべるのも一瞬のことで、次の瞬間には表情は引き締められ、その瞳からは彩加の様子を窺う様な気色だけが窺えた。

 

『やはり、以前の大決戦が引き金となったのですか?』

 

「それ以外に理由は無い、現に、君も含めた三人のウルトラマンが、怪獣のいない世界に現れる意味も無いだろう。」

 

デバイスの中にいるXからの質問を肯定しながらも答え、彼は自分達がウルトラマンとして戦った、現時点での最後の戦いを思い出していた。

 

世界と世界の狭間で戦い、様々なウルトラマンや味方してくれる怪獣たちと共に、悪のウルトラマンや怪獣たちと戦い続け、闇の支配者と刺し違える形で封印した、その日の事を・・・。

 

「だが、控えめに言っても状況は良くないな、彩加君も知っているだろうが、先に現れた二体のウルトラマン、ギンガとビクトリーは対立している。」

 

『なんですって・・・!?』

 

「・・・。」

 

一夏の苦悶に満ちた告白に、Xは驚愕の声を上げ、彩加は押し黙るようにして俯いてしまった。

 

彼もウルトラマンになったばかりとはいえ、ウルトラマン同士で争う事を嘆いているのだろう。

 

「ウルトラマン同士でつぶし合っていたら、それこそ闇の支配者の思うツボだ、止めたいところだが、正体が分からないからな。」

 

『そんな・・・。』

 

一夏の言葉に、Xは愕然としたように語気を弱めた。

 

ウルトラマンとして生きてきた彼は、それなりに多くのウルトラマンと共に戦ってきたのだろう。

そこには、同じウルトラマン同士で戦う様な事は無かった。

 

だからこそ、今、この世界で起きているウルトラマン同士の争いは、彼にとっても考えたくない事実だろう。

 

「だから、君に頼みたい事が有る、ウルトラマンとしてでは無く、一人の男としてあの二人を止めてくれ、それは多分、君にしか出来ない事だから・・・。」

 

「先生・・・。」

 

申し訳なさそうに、だが、彩加なら出来るという信頼を表しながらも頭を下げる一夏に、彩加はどう答えればよいモノかと言わんばかりに返答に窮した。

 

自分の手に負える問題ではないと感じてはいる。

だが、誰かに頼られ、誰かの支えになれる機会はこれまで皆無と言っていいほど無かった。

 

だから、彼には頼られる事が嬉しかった。

出来る限り、力になりたかったのだ。

 

「どれだけ出来るか分からないけど、僕とXでやってみます。」

 

『あぁ、勿論だ!ウルトラマンは、争う為に存在する訳じゃ無い、私もそれを伝えたい。』

 

彩加の覚悟に共鳴し、Xもまた、ウルトラマンとして、同士討ちをやめさせるべく戦う事を決意した。

 

その決意は固く、二人の気概が伝わってきた。

 

「ありがとう、彩加君、X・・・、俺も出来る限りのサポートはさせてもらうよ、戦いやすいようにね。」

 

二人の思いに感激しながらも、一夏は顔を上げて微笑んだ。

 

その表情には安堵以外の感情は無く、只々、彩加とXの動向とこれからを案じていたのだろう。

 

「紅茶も冷めてしまったね、パンケーキも温くならない内に食べてくれ、ウチの夏季新作だ。」

 

「はい!頂きます♪」

 

待たせてしまったと言わんばかりに、食べろと勧める一夏の言葉に頷き、彩加は行儀よく手を合わせてパンケーキに口を付ける。

 

シロップとフルーツの甘い口どけに頬を綻ばせる彩加を、一夏は微笑ましそうに眺めながらも、彼等三人のこれからについて憂いていた。

 

「(ギンガはまだしも・・・、ビクトリーの変身者は未だ分かってない、か・・・、ホント、情けない限りだ・・・。)」

 

姿を隠すのが巧妙なのか、それとも自分の腕が落ちたのか、彼は自嘲気味に嗤った。

 

だが、彼はここで気付いていれば良かったのかもしれない。

 

三人のウルトラマンは既に、顔を合わせているという事に・・・。

 

sideout

 

noside

 

「はちまーん!川崎さーん!お弁当一緒に食べよっ♪」

 

彩加がウルトラマンとなった翌日、彼は友人である(と思っている)八幡と沙希に声を掛け、昼食時を共にしようとしていた。

 

「おぉ!良いぜ!今日は俺が弁当作って来たんだ!川崎も行くよな?」

 

「あたしも良いよ、昨日約束してたし、二人の誘いを断るワケないって。」

 

ボッチである八幡と沙希は、基本的には独りを好み、理由が無ければ特に人とつるむ事をしない人種だった。

 

それは、ボッチ同士としても適用されるものであり、本来ならこの二人が同じ場所で食事を採るという事は考えられない事だった。

 

だが、そんな彼等の仲を取り持ち、繋げたのが戸塚彩加と言う少年だった。

 

彼の純粋さが、人に裏切られ続けてきた八幡と沙希の心を徐々に癒し、三人でいる事に抵抗がなくなる程になっていた。

 

とは言え、まだまだ三人だけの世界だ、八幡と沙希がそれ以上を望まないし、彩加もこの三人でいる時間を邪魔されたくは無かったのだ。

 

「ありがと~♪八幡の料理って初めてだよね?楽しみだなぁ。」

 

「あたしの舌は味にうるさいよ?大丈夫かい?」

 

「ハードル上げないでくれよ、妹や親がいない時に軽く作る程度だから、大したものは入ってないって。」

 

感激する彩加と、軽口を言う沙希、そしてそれに対して楽しげに苦笑する八幡。

 

つい一か月前までは関わりが無かったというのに、今ではすっかり落ち着いているようだ。

 

他愛のない雑談をしながら、昼食時の定番である屋上に移動し、三人は八幡が作って来た弁当を広げる。

 

男子が作るにしては珍しく、バランスは元より、色彩にも気を配った品々が並べられていた。

 

「うわっ、凄いね!タコさんウィンナーまで作ったの!?」

 

「へぇ、やるじゃない、盛り付けも見た目もカンペキだね、専業主夫希望は伊達じゃないってこと?」

 

「よせやい、褒めてもこの後のマッ缶しかでねぇぜ、まぁ、何はともあれ、食べてみてくれよ。」

 

手放しで褒める彩加と、感心した様にニヤリと笑む沙希に、八幡は何処か照れくさそうに笑いながらも食べてくれと勧めていた。

 

家族がいない時に、たまに料理を作る彼だが、それなりに腕は有る方だと自負している。

 

もっとも、彼が以前食したシャルロットや沙希の弁当と比べれば、まだまだ程度はたかが知れているだろうが・・・。

 

しかし、それを食す沙希と彩加の表情には、ただただ心からの笑みが浮かんでいた。

 

味や見た目などと言う物は後付けだ、ただ、比企谷八幡と言う一人の男が、自分達の為だけに料理を作ってくれたのだ。

 

彼等にとって、これ以上に無い歓びではないだろうか?

 

「おいし~♪」

 

「冷めてもこの味、ね・・・、結構良い腕してるじゃない、これで働けたら貰い手多いよ?」

 

「冗談ばっかり言うなって。まぁ、考えとくよ。」

 

野菜炒めを頬張る彩加と、卵焼きを口にする沙希は、それぞれ感心した様に舌鼓を打っていた。

 

それを見て気を良くしたか、八幡は少し得意げな表情を浮かべていた。

 

当たり前の様な、これまでもそうしてきたかのように温かな雰囲気が、そこには確かに存在した。

 

『(良い人間だな、君の事を友達として見ている、優しい二人だ。)』

 

その様子を見ながらも、Xは感心した様に小さく、彩加にだけ聞こえる様に呟いていた。

 

騒ぐことなく、それでいて落ち着いた雰囲気を醸し出している三人の関係を、好ましく思っているのだろう。

 

「(うん、僕の大好きな、大切な人達だよ、僕を真っ直ぐ見てくれた人と、そんな人を心から想ってくれる人だから、ね。)」

 

その言葉に応えつつ、彩加は自分の掌を見る。

 

ウルトラマンの力を得た、この手で何をすべきか。

 

一夏に頼まれた、ウルトラマン同士の争いを止める事も確かにやるべき事ではある。

 

だが、それ以上に、彼を動かしていたのは、目の前にいる八幡と沙希だ。

 

恐らく、沙希は八幡の事を好いている、友情的な物では無く、それこそ男女間で成立する特別な感情だろう。

 

そして、八幡はその事を薄らと感じてはいるだろうが、彼のこれまでを考えて、沙希の身に悪いことが降り掛からない様に身を引いている節がある。

 

そんな彼を、彩加は離れられない様に一緒にいる事で、さりげなく沙希と触れ合う時間を増やしていた。

 

そんな温かい想いを持つ彩加だからこそ、抱く想いがあった。

 

「(八幡と川崎さんの関係を護るためにも、僕が戦うんだ、他のウルトラマンが争っても、せめて僕とXで二人を護るんだ。)」

 

大好きな、掛け替えの無い友を護りたい、そのために自分の力を使いたいと。

 

「(三人でいるのが、いつの間にか当たり前になるなんてな・・・、俺も変わったもんだ。)」

 

嬉々として自分の作った料理を食べてくれる沙希と彩加を見つつ笑む八幡もまた、ある種の感慨にも似た心地を抱いていた。

 

これまで、人から裏切られ、欺かれ、そして蔑まれてきた八幡は、自ずと他人と距離を取るようになった。

 

自分に味方してくれる人間なんている筈も無い、だったら一人でいた方が遥かに楽で、傷付かなくていいと。

そう諦めて、これまでの日々を過ごしていたのだ。

 

そんな彼が、今は他人に向けたことが無い様な柔らかい笑みを向け、言った事も無い様な軽口を躊躇いなく発している。

 

これは、彼にとって大きな変化である事は疑いようも無かった。

 

「(やっぱ、嘘は吐けないもんだな・・・、この雰囲気を、俺は楽しいと思っている、か・・・。)」

 

考えれば考えるだけ気恥ずかしくはなったが、悪い気はしなかった。

 

なにせ、このような気持ちになるのは生まれて初めてなのかもしれないのだから。

 

「(決めた、俺はギンガの力で、怪獣やビクトリーからコイツ等二人を護る、それが、俺の下に力が来た意味だ。)」

 

自分が家族以外で初めて出来た、心をある程度許せる間柄の二人を護る。

 

それこそ、自分がウルトラマンとして為すべき事だと、今の八幡は思っていた。

 

「(ふぅ・・・、すっかり、あたしも馴染んじゃったか・・・。)」

 

外では滅多に出さない笑みを浮かべ、頬が若干突っ張っている事に気付きながらも、沙希はそれも悪くないと、もう一度笑みを浮かべる。

 

何時しか、三人でいる事が当たり前になりつつある。

今迄存在しなかった、友と言う存在が出来ている様な気もしている。

 

これまで、人から邪険に扱われ、貶され続けた過去もあり、何時しか彼女は人に期待する事を諦めていた。

 

だからこそ、深夜バイトと言う危ない綱渡りも、誰にも相談せず、一人で背負い込んだのだ。

 

だが、それを救ってくれたのは、常に不敵な笑みを浮かべた男と、自分と同じ様な境遇の少年だった。

 

誰かから救われるなど、当時の彼女は考え付かなかっただろう。

しかし、それは現実に起こり、結果として救ってくれた少年と話す機会をくれた人物も現れた。

 

それは、彼女にとっても僥倖に等しいモノであったモノだから、今もこうして、毎日のように自然と集まって、何をする訳でも無く、ただ穏やかな時を過ごしていた。

 

一か月前の彼女ならば抱かなかったであろう、家族とはまた違う心地良さを、彼女は心の底から感じていたのだ。

 

それは、彼女の心が、比企谷八幡と言う少年と、戸塚彩加と言う美少年に救われた証左でもあった。

 

「(悪くないね、誰かの為に戦うってのも・・・、決めた、比企谷も戸塚も、あたしが護る、多分それがあたしのすべき事だから。)」

 

ビクトリーが彼女の下に来たのは、彼女の家族を護ろうとする心に惹かれてのこと。

それを家族以外の者に向けた所で、ビクトリーの意思は彼女から離れる事は無いだろう。

 

だからこそ、必要とか義務とか、そんなしがらみを捨ててでも、彼女は戦うと決めた。

 

大切な人を護るために、そして、今ある心地良い空間を護るためにも。

 

三人が三人とも、互いの秘密を知らぬが故に、自分以外の二人を護りたいと心から願う。

 

唯一絶対に正しい行為だと、信じて疑わない程に。

 

「「(もう、失わない、失いたくない!)」」

 

「(二人が幸せになるためにも、僕が戦う!)」

 

それが、互いを苦しめていると気付かぬままに・・・。

 

sideout

 

noside

 

その夜、臨時休業という下げ札が出されたアストレイの店内には、七人の男女の姿があった。

 

全員がテーブルを囲う様に座り、神妙な面持ちで用意された酒に口を付けていく。

 

普段なら定休日である火曜日以外休む事が無いこの店だったが、どうやらこの日は特別だったようだ。

 

余談だが、この日は沙希のアルバイトが入っていたが、店長であるセシリアが臨時休業である旨を伝えていた為に、沙希は八幡を誘って彩加の部活動を見学していたとか・・・。

 

それは兎も角・・・。

 

「ふぅ・・・、ビクトリーの正体が、まだ分からない、か・・・。」

 

「二番目のウルトラマンのことね、でも、ギンガ、八幡君と対立し続けるなら、私達でなんとかしないと。」

 

金髪を短く切りそろえた男性、コートニー・ヒエロニムスは、テキーラが注がれたグラスを置きつつも一息つく。

 

そんな彼の言葉に同意するように、隣にいた亜麻色の髪を持った女性、リーカ・S・ヒエロニムスはやるべき事を見据える様に呟いていた。

 

彼等の意見は、この世界に現れた最初のウルトラマンであり、この店のメンバー数名とそれなりに交流のある八幡を護るという答えだった。

 

自分達に協力してくれるスタンスを明確にし、尚且つ年端もいかないのだ、近くで手助けしてやりたいというのが本音なのだろう。

 

「それにはアタシ等も同意するけどさ、ビクトリーだって怪獣と戦ってるんでしょ?」

 

「あぁ、仮にもウルトラマンなんだ、一度ぐらい話をしても良い筈だ。」

 

そんなヒエロニムス夫婦の意見に同意しつつも、違う解を示した者達がいた。

 

それが、神谷宗吾とその妻、神谷玲奈であった。

 

仮にもビクトリーもウルトラマンである事には間違いはない。

それに加え、行動の問題点がある事は些か否めないとしても、既に怪獣を数体屠っている上に、一般人に出した意図的な被害は全くなかった。

 

これが本物の悪のウルトラマンならば、動く者、存在するもの、ありとあらゆるものに攻撃を仕掛けている事は想像に難くなかった。

 

だからこそ、一度正体を突き止め、話を聞くことが先決と、彼等は考えたのだろう。

 

「宗吾達の意見には僕も賛成だね、それに新しいウルトラマン、Xが現れたんだ。」

 

「彩加さんと言う事には驚きを隠せませんが、彼ならば大丈夫でしょう。」

 

そんな彼等の意見を肯定する様に、静観していたシャルロット・D・織斑と、セシリア・A・織斑は自分達の意見と、先日、夫である一夏が明らかにした情報を話す。

 

彩加はこの店の常連であり、彼等ともそれなりに面識が深い。

 

故に、任せてみたくなったのだろう。

純粋な彼に、ささくれ立った二人のウルトラマンの関係を取り持つ役割を・・・。

 

「それはいい、だが、俺達の力が戻らなければ、誰に期待しようとこの世界を抜ける事は不可だ。」

 

自分の妻達と盟友たちの言葉を聞きながらも、結局は自分達が何も出来ていないと自嘲するように、一夏が言葉を発した。

 

自分達家族と違い、彼等は所詮この世界が巻き込まれたとばっちりに、更に巻き込まれた存在だ。

 

そう思うと、彼は彼等に任せたままという選択肢を選び続ける事には些か難色を示している。

 

相手が禁じ手に近い技を、スパークドールズへの強制封印という反則技を持っていたとはいえ、それでも力を持っていた自分達の不手際を認めざるを得ない部分もある。

 

だからこそ、彼自身は、自分のミスに尻拭いをさせている様で、この数か月間気が気でないのだ。

 

それを八幡達の前では、わざとちら見せする程度で済ませているのは、一重に彼が人を扱う事に長けている証左でもあった。

 

八幡は簡単に人を信用しない、だから、最初は仕事のため、ビジネス関係である事を強調して接触する。

それがある程度慣れてきたら、本心とも取れる言葉や弱気な面を出して惹きつけると言った、悪どい手口を使っていたのだ。

 

だが、それで自分の傍に来てくれるなら好都合、自分は彼に良い顔して、信を得られればいいのだから。

 

「それはいい、もうあと二~三か月もすればこの世界に来て一年だ、収穫なしというのは、些かマズイ。」

 

だが、それはそれだ。

今の集まりは成果を報告する事が主題であり、スパークドールズの収集具合の確認も兼ねていたのだ。

 

無論、彼の仲間達はそれを分かっていて、先に一夏側からの情報を受け取り、それについて意見を交わすという方法を取っていた。

 

しかし、何も情報や収穫が無いわけでも無い。

 

今回は、とっておきの収穫があったのだ。

 

「俺とリーカが見つけたのは、怪獣二体にウルトラマンが3体だ。」

 

「ネオスにセブン21、それから、私自身の力よ。」

 

コートニーとリーカがテーブルにパズズとアリゲラ、そしてウルトラマンネオスとウルトラセブン21のスパークドールズを並べ、次の報告者にバトンを繋げる。

 

「アタシたちは、怪獣系は見つからなかったけど、ウルトラマンが4体見つかったわ。」

 

「驚いたよ、その内の一人は玲奈の力だったからな。」

 

そこに加える様に、玲奈はウルトラマンパワード、ウルトラマングレート、そしてウルトラマンヒカリのスパークドールズを並べていく。

 

「私達は怪獣が3体と、シャルさんのウルトラマンだけでしたわね。」

 

「これだけでも、戻って来たのは僥倖だよ、ホント・・・。」

 

他の者達よりも収穫が少ない事を悔やんでいるのか、少々弱気な発言だったが、二人はテーブルの上に、グドン、サドラ、アーストロンを並べていく。

 

「・・・、そうか・・・。」

 

テーブルに置かれるスパークドールズ達と、リーカの左腕に輝くブレス、そして、玲奈とシャルロットが握るツールを見て、一夏は小さく嘆息する。

 

力を取り戻せたことはこれからの幅を広げるにあたって非常に有意義である事に間違いはない。

 

だが、自分達の力が戻りつつあるという事は、もう一つの側面を持っていた。

 

「闇の支配者の封印が、解かれたか・・・。」

 

誰が呟いたか、その一言に店内の雰囲気が一気に重くなるのを全員が感じた。

 

自分達のウルトラマンは、闇の支配者を封印するために全エネルギーを用い、スパークドールズとなった。

 

それが今、自分達の手元に戻って来ているという事は、封印が破られてる事を証明するに他ならなかった。

 

「もう、時間は残されていない、急いで残りのウルトラマンを集めるぞ。」

 

集いを締めくくるように発せられた一夏の言葉に頷き、全員はグラスに残っていた酒を一息で飲み干し、それぞれの夫婦が、自失のある店の奥へと消えて行った。

 

明日もそれぞれに仕事はある、故に今は身体を休める事を先決にしたようだ。

 

だが、その背中には、何とも言えぬ重みが漂い、彼等に余裕が無い事を悟らせていた。

 

この世界に蔓延りつつある脅威を憂いてか、それとも、別の何かか・・・。

 

その答えは、当人たちにしか知り得なかった・・・。

 

sideout

 




本作裏主人公が一堂に会しました。

実力面ではまさに鬼とも呼べるレベルにいる彼等ですが、影に隠れて行動しているので、本筋では今だ目立つ点は少ないでしょう。

しかしながら、次回からもう少し絡む要素も出てくると思いますので、お楽しみにと添えさせて頂きます。

それでは次回予告

今すぐできる事は何のか、本当に大切なものは何か。
立ちはだかる闇を超えようとする彼の前に、銀色の巨人が姿を現す。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている。

比企谷八幡は炎の刻印を知る

お楽しみに

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