というか弾が活躍しすぎですね。もっと一夏か主人公を有能キャラにすれば弾の活躍を減らせたのでしょうか。具体的にはあまりにもやることなすこと完璧すぎて「さすいち!」って言われるくらい。
「──これでよし、と」
弾は何やらコピー用紙に書き込んだ。そして折り畳んだそれを、職員室の入り口に向かって放り投げる。
「さて、期待してくれているところ非常に申し訳ないが、今回はおふざけ抜きで行くぜ」
「あ、別に期待してない」
織斑千冬が招集した専用機所持者、それに加えて篠ノ之束がいる職員室から離れるように移動しつつ、弾と一夏は静かに作戦会議を始める。
「分かっていることをまとめるぞ。
【1、『アマテラス』はヘリに追いついていない】
【2、今すぐ使える味方はいない】
【3、推測だが『アマテラス』は何故かフルスペックを発揮していない】。以上だな」
「お、おう」
「一夏、ここからはスピード勝負だ。何としても他の連中……というより、篠ノ之束よりも先に手を打たなきゃならん」
いろいろと聞きたいことはあるが、一先ず頷く一夏。束の名を出され、先程の様子を思い出した。
──『相手が何だろうと関係ないよ。世界でただ1機の第4世代『紅椿』なら、どんな相手でも楽勝だよ。だから気にせずぶちのめしちゃおうよ』
そう口にする束から、一夏は狂気じみた何かを感じ取っていた。今の束は何をしでかすか分からない。箒や鈴がユウを傷つけることは無いだろうが、そこに束が関わるとなると、あまり楽観もしていられなかった。
「で、良い考えって?」
一夏の問いに対し、弾はどこから取りだしたのか、IS学園のフロアマップを広げて説明を始めた。
「とりあえずパッと思いついたのは3つだ。1つ目は、外部への射出用カタパルトを使う」
「カタパルト?」
「ああ。第三アリーナの試合で使っただろ。あれの外向けのやつがある」
そもそもIS学園とは、現代における最強の兵器が、世界中で最も数多く存在する施設である。有事の際にIS学園にある機体を派遣できるようにするため、当然アリーナ以外にも射出機が存在する。
「なあ弾、そのカタパルトを使ったところで追いつけるのか? 結局初速が変わるだけだろ?」
「それでも結構変わるもんだぜ? お前が出発した後に細工してカタパルトを使えないようにすれば、ほかの連中の足止めにもなる。それと追いつけるかどうかについては問題ない。絶対に追いつける。断言できるな」
「どういうことだ?」
「ユウの専用機『アマテラス』は、速度と火力にステータスを極振りした機体だ。先に動いたアマテラスを捉えることができる機体なんていない。それを連中は今から追いかけるってんだろ? つまり後追いでも十分追いつけるような策か、もしくは【情報】があると見た」
「あ、そうか。その【情報】っていうのが……」
「そう、俺の上げた3つ目の推測だ。『アマテラス』がフルスペック状態なら、悠長に人集めして会議なんて開いてる場合じゃない。政府から連絡が回ってきたってことは、政府はアマテラスの位置を補足できていることになる。恐らくその位置情報から移動速度を見て、追い付けると判断したんだろう」
少なくとも話を盗み聞きした情報によると、学園側、および政府はこれからことの解決にあたろうとしている。逆に言えば、今から動いても十分間に合う算段があるということになる。
「つまり今のアマテラスは、並の速度で追いつける状態ってことだ。ま、それでも飛行機なんかと比べりゃ全然速いんだけどな」
そういえば、と前置きして、弾は一夏へ向き直った。いつの間にか二人は校舎の外に出ていたらしい。鮮やかな光を湛える月が、夜を静かに照らしていた。
「すっかり忘れてたけど、今のうちに返しとくわ」
そう言って弾は、一夏に右手をビシッと差し出した。
「お前の部屋の鍵」
弾の手に握られていたのは、なんと一夏の部屋の鍵だった。
「……なんで? いつ? どうやって?」
「お前が寝てる間にちょちょいと」
「えっ、俺の部屋に何したんだよ」
「変なことはしてないぞ。ちゃんと洗ったし」
「マジで何したんだお前」
§
現在IS学園はテロ事件の影響で、いくらかの機能が停止している。電源装置に対する攻撃を受け、物理的に断線している部分もあった。
そして停止している機能の中には、学園のいたるところに設置されている防犯カメラも含まれていた。トラップ等はまだ作動しているが、それが仮に発動したとしても確かめる術が無い。
そう、つまり今、仮に何かが起こってしまった時、何が起きたのかを調べるには、現場へ直接赴かなければならないのだ。
「では、篠ノ之の『紅椿』を中心として──」
職員室兼臨時会議室にて。織斑千冬が話を纏め始めた時だった。
「織斑先生! 大変です!」
扉を勢いよく開けた山田真耶が職員室に飛び込んできた。その手には折れ目のついた紙片が握られている。
「どうした?」
「実は今、職員室前にこんな紙が……」
千冬の目の前でがさがさと紙片を広げる。覗き込む千冬。直後、千冬の表情が凍り付いた。周囲の代表候補生たちが何事かと紙片を覗き込もうとするも、千冬がその紙片をくしゃりと握りつぶしてしまう。やがて静かにため息をつき、小さくぼやいた。
「たしか教員用のラファールは全滅だったな……束、すまないが篠ノ之と共に来てくれ」
「ん? どったのちーちゃん」
その紙には角ばったカタカナで、シンプルな文章が記されていた。
──ムジンキ ノ コア ハ イタダイタ
そう、つまり今、仮に何かが起こってしまった時、何が起きたのかを調べるには、現場へ直接赴かなければならないのだ。
§
「さっき弾が職員室に投げた紙って何なんだ?」
「あれは俺の作戦パート2だ」
射出機にセットされた『白式』を前に、そんなことを話しながら弾は着々と作業を進める。
「というわけで、これが俺の作戦パート3だ」
「こんな小型のIPカメラなんてよく持ってたな」
「まあ俺のじゃないけどな」
一夏が展開した『白式』に取り付けられた複数のIPカメラ。まるで隠しカメラの様なサイズのそれは、丁度一夏の死角を映すように配置されている。
余談だが、IPカメラとはネットワークを経由して、映像をパソコンなどにリアルタイムで転送することができるカメラである。そしてこの超小型IPカメラ『見守るくん~大事なお宝から愛するあの人まで~』は、メーカー希望小売価格7,800円である。
全く関係の無いことだが、弾は『見守るくん』を取りつけながら、心の中で鈴に感謝すると共に謝罪した。またしても全く関係の無いことだが、鈴が設置したものを、一夏の部屋から勝手に持ち出したことに罪悪感を感じていたのだ。
「取り付け完了だ」
「おう、ありがとな。これで『アマテラス』対策は万全ってわけか」
「そういうことだな。ヘッドセットの着け心地はどうだ?」
「大丈夫だ。ちゃんと通話もできてる」
「そういや携帯の充電は大丈夫か? 土壇場でバッテリー切れなんて起こされるとさすがに困るぞ?」
「寝てる間に充電してたし大丈夫だって。初期型のポンコツじゃないんだからそう簡単にバッテリー切れなんて起きないだろ」
呑気な会話を繰り広げながら、一夏は『白式』の調子を確かめるように、左拳を握って開いてと動かした。問題はない。やるべきことは分かっている。
一夏は小さく、されど力強く呟いた。
「ユウ、今行くからな」
§
「…………」
ヘリの内部を沈黙が支配する。IS学園を発ち、もう随分と経過した。じきに沖縄へと到着するだろう。しかし男を含む4人は、捜査官としての勘とでも言うべきか、皆一様に落ち着きのない表情をしていた。ある者はしきりに窓の外を気にしている。ある者は手を組み足を組み、そわそわとしている。
いつもなら二人の女性からヘリの操縦が下手だのなんだのと文句が飛んでくるのだが、今日はそれも無い。
一体どうしたことか。我々は厳しい訓練を積んできた。数々の国際犯罪に対処してきたのだ。この程度の任務に怯えているというのか。
男は心を落ち着けるべく、自身らの現状を再度頭に書き起こした。
特別捜査官が4人。そのうち2人はISを所持している。2人とも適正はB+。稼働経験も積んでいる。実力は確かだ。さらにこのヘリには、劣化版ではあるものの、ISのハイパーセンサーが持つレーダー機能と同様のものが搭載されている。敵の機体が近付けばすぐにアラートが鳴り響き、距離がヘリの射程範囲内に入ると音が変化する。さらに、同様の装備を持つヘリがあと2機もいる。時間差をつけて出発したため離れた位置にいるが、その分囮としての役割を十分こなしてくれるはずだ。
何度も確認するが、しかし一向に安心感を得られない。何かが自分たちの認識の埒外からやってくるのではないか。そんな気がしてならない。
(たしかに今回は大物だが、それにしたってこの異様な感覚は何だ……)
気が付くと、ヘリを操縦する手の平にはべったりと汗が滲んでいた。
早くこんな任務終わってくれ。そう願いながら小さく舌打ちした時だった。
「っ! 敵性反応!?」
突如として鳴り響くアラート。それもただのアラートではない。その音は、敵が既に射程範囲内にまで潜り込んだことを声高に叫んでいた。
ヘリ内に緊張が走る。女性2人はヘリの扉を開け放ち、外へ飛び出すと同時にISを展開した。
何の前触れもなく近付いてきた敵対者。一体どこにいるのかと、男たちは広がる夜空へと視線を巡らせた。
「いない?」
レーダーを見る。反応はすぐ近く。否、もはや重なり合おうとしていた。そして気付く。
「──しまった! 下か!」
急遽回避しようと機体を右へ傾ける。その直後、男はたしかに見た。白金色を基調とした機体。否、機体というにはあまりに優美で、無骨さに欠けたデザイン。背面のウィングスラスターさえも気品を感じさせる。そして片手に握られた長刀が、先程までヘリがあった場所を切り裂いた。
(あれは確か第三世代、『アマテラス』……!)
見覚えがある。自国の最新機だ。その『アマテラス』が、ヘリの真下から飛びだすように現れた。それも明確な敵意を持って。目の前で起きている事態を、男は一瞬、上手く呑み込めなかった。
男だけでは無い。ヘリの外、ISを展開していた女性二人も動揺している。
「何がどうなって……」
「考えるのは後! 一先ずあれを抑えるわよ!」
両名共に打鉄を纏い、『アマテラス』へと斬りかかる。しかし両者ともあっさりと躱され、次の瞬間、『アマテラス』はその姿を跡形もなく消していた。
「さっきもこのステルス性能で近づいたってわけね」
ハイパーセンサーのジャミング。『アマテラス』に搭載されている第三世代型兵器の一つだ。しかし『シュヴァルツェア・レーゲン』の停止結界や『甲龍』の衝撃砲などにも言われるように、第三世代型兵器には一つ、致命的な欠点がある。
「でも消えてる間は攻撃できないんでしょ?」
「ええ、攻撃の瞬間は必ず姿を見せる。そこを叩くわ」
某イギリス代表候補生を除き、基本的に第三世代型兵器はイメージインタフェースの制御に思考を割かなければならず、他の攻撃行動と同時使用することは不可能だ。
「っ! 危ないっ!」
「えっ?」
それは直感だった。一瞬だけ感じた空気の流れのようなもの。それに反射的に反応し、隣にいた相方を押しのけ、咄嗟に刃を振り抜く。やがて何かが激突する感覚と、炸裂する剣戟。甲高い悲鳴を上げる刃に、そこに敵が居ることを確信する。
空間が揺らぎ、ヴェールが剥がれるようにして姿を現したのは、やはり『アマテラス』だった。『アマテラス』の操縦者はまるで眠っているかのように静かで、何も語らない。
「このぉ……っ!」
つばぜり合い。ぎりぎりと刃をかみ合わせる両者。そこに先程突き飛ばされた女性が後ろから回り込む。
「貰った!」
風切り音を震わせ、『アマテラス』の背面めがけて剣を振り下ろす。閃いた刃はしかし、瞬時に展開された何かによって弾かれた。光り輝く幾何学模様。魔法陣のような、はたまた薄い円盤のようなそれは、『アマテラス』の持つ堅牢な盾だった。
そしてそのまま、『アマテラス』は能力を発動させる。
「……? 何か熱く──!?」
「まずい! 離れて!」
周囲の温度が急激に上昇する。揺らめく陽炎。『アマテラス』の持つ長刀から、火柱がうねりを上げた。赤く煌めき、夜の海を照らしていく。
『打鉄』を纏った女性警官2人は、その場から強引に方向転換を図る。対する『アマテラス』は無言のまま、うねる火柱を横薙ぎに振るった。逃がさないとでも言わんばかりに、意志を持ったかのような炎が2人へと迫る。
灼熱の刃が『打鉄』の装甲に触れようとした──その時。
「──やめろおおおおッ!」
青白い刃が、灼熱を切り裂いた。
「えっ!?」
「今度は何!?」
炎が分散していく。直後、『アマテラス』と2機の『打鉄』との間に白い影が割り込んだ。
助かった。否、目の前の存在に助けられたのだと気付いた2人の女性警官は呆けた顔で呟く。
「織斑、一夏……?」
顔くらいは知っていた。名前くらいは知っていた。しかしこんなところに何故彼が? めくるめく状況の変化に思考が止まる。
「──っ」
ここに来て、仄かに感情の動きを見せる『アマテラス』。炎を手元に手繰り寄せ、目の前の敵と相対する。
「……ユウ」
彼方より飛来した白い剣士は小さく呟いた。今度こそ彼女を守るのだと。決意を新たに刃を向ける。
「助けに来た。一緒に帰ろう」
名前:凰鈴音
性別:メス
年齢:16
誕生日:不明
スタイル:
容姿:小柄茶髪ツインテール。腋と八重歯がよい。
専用機:神龍じゃない方のシェンロン
初登場:番外編
・原作ヒロインズが一人。セカンド幼馴染の称号を持つ。通称《2組のリン》。
・下田ボイスがチャームポイント。
・一夏のことを愛しているが、素直になれないお茶目さん。
・優ととっても仲良しだよ。
・弾のことはそれなりに異常だと認識している。
・作れる中華料理は酢豚だけ。
・原作とは異なり、部活動をせず、基本的に趣味に時間を費やす。
・趣味でつけている日記『一夏観察日記』は現在Vol.97。
・実は特に理由も無くヤンデレとなった。(ゴルゴムのしわざ)
・ヤンデレとしてのバックボーンが無さすぎて完全にファッションヤンデレと化す。
・隠しカメラや盗聴器の扱いに関しては学生のレベルを超えている。超高校級のカメラマン。
・原作で誕生日が祝われた描写も無く、本人が主張した様子も無い。
→自身の誕生日を忘れているという主人公系女子にありがちな現象?
→或いは自身の出生について何も知らない。家庭環境に激しく難有りという可能性が微粒子レベルで存在している。