ブリタニア軍のとある施設。そこでリョウトは頭を痛めていた。
「俺が部隊の隊長って……ありえねー」
リョウトはグラスゴーカスタムの肩の上で胡座を掻きながらビスマルクから渡されたデータを見ていた。
リョウトの悩みは先日、ビスマルクから言われた「レイスの部隊長候補」の件だ。
いくらリョウトが兵士として優れているとは言ってもまだ14歳。部隊を一つ預かるなんて到底無理な話である。
リョウトは渡されたデータを見ている内にレイスの実情を把握し始めていた。
まず用意されたKMFは大半がグラスゴーだった。しかもリョウトのグラスゴーカスタムの様に改造機でグラスゴーの面影が無くなっていた。
そしてこの後に来るレイスのメンバーはやはりスネに傷を持つ者で構成されているらしく、少なくともKMFのパイロットは正規の部隊に組み込めない者だ。
「おおぃ、リョウト!」
「ん?……爺さん!?」
突然名を呼ばれ、リョウトはグラスゴーカスタムの肩から身を乗り出す。
其処に居たのはハゲ頭に白衣を纏った初老の男が居た。
男の名はグラン・ブリュイルト。KMFの研究者でリョウトのグラスゴーカスタムの整備員でもある人物である。
「なんで爺さんが此処に!?」
「ワシも【レイス】に配属なんじゃよ」
リョウトはグラスゴーカスタムの肩から素早く下りるとグランの下へと降りる。
「爺さんも【レイス】に?」
「そーじゃよ。そもそもワシ以外にグラスゴーカスタムを整備できると思うてか?」
グランはグラスゴーカスタムの足先に腰を掛けるとコンとグラスゴーカスタムの足を叩く。
「それに【レイス】に配属されるKMFはワシが施した改造機。ワシが直々に整備せにゃならん」
「つまり魔改造の巣窟か……」
グランの言葉を聞いたリョウトはタラリと汗を流した。
グランはKMFの研究者として有名だがマッドサイエンティストとしても有名だった。
危険な改造や武器の作成などに置いては右に出る者は居ないと言わんばかりに。
しかしその魔改造がリョウトのグラスゴーカスタムの様な改造機へと反映されているのだ。
「魔改造とは言ってくれるな。じゃが旧式のグラスゴーなんじゃそんくらいせんと敵に遅れをとるぞ」
「その性でマトモに乗れずに廃棄されたKMFが数知れないと思うんだけど?」
グランの作るKMFや改造機は性能が高過ぎたりピーキーなセッティングで正規の軍人にも乗りこなせないのが殆どだった。
「その魔改造機に乗れる人材が揃う部隊と聞けばワシが行かぬはずがなかろう?」
「ああ……部隊の発足前に不安材料が増えた……」
楽しそうに笑うグランにリョウトは更に【レイス】に対する不安が増すのだった。
『グラン・ブリュイルト』
ハゲ頭に白衣を着た老人。
ブリタニア軍でKMFの研究者として有名な存在。
しかし魔改造や兵器開発者としても有名でマッドサイエンティスト。
【レイス】の所属になりKMFの開発および整備員となる。
イメージはDr.ワイリー