「頭……痛くなりそう」
「あはぁ~僕の目にはもう既に頭痛は始まってると見たよ」
エリア11に来たリョウトは政庁を訪ねてクロヴィス暗殺の事を調べようと思っていた。だがそれは意外な形で妨害される事となる。
クロヴィスの代理として現在エリア11の統治を一時的に任されたジュレミア卿がイレヴンの『枢木スザク』をクロヴィス暗殺の犯人に仕立て上げたのだ。
リョウトがその事を知ったのはエリア11に向かう飛行機の中でエリア11に到着した頃には枢木スザクの裁判が始まる僅か前となってしまったのだ。
なんとか抗議しようとしたのだが意見は受け入れてもらえず、仕方なくリョウトはオデュッセウスに連絡を取ったがすぐに裁判を取り止める事は叶わず、しかもギネヴィア曰くでは真犯人じゃないにしても何か知っているかも知れないから情報を吐かせろと言われてしまったのだ。
途方に暮れるリョウトだったが偶然にもロイドと再会し、事の経緯を聞かされて冒頭に至る。
「私達が証言出来れば彼の無実を証明できるんだけど……」
「法廷は特派の証言を認めない……と。実際、純血派からかなりの圧力が掛かってますしね」
『ブリタニア軍は生粋のブリタニア人のみで構成されるべし』その考えの元、集ったものたちによる軍の一大派閥。
純潔派の考えからすれば、名誉ブリタニア人が軍にいるのは許されざることだ。
だからこそ、スザクがクロヴィス殺害の槍玉にあげられたのだ。
「ま……計画が少しばかりザルですけどね」
「行くのかい?」
座っていた椅子から立ち上がるとリョウトは特派の施設から出ていこうとしたがロイドに呼び止められる。
「今回の一件はレイスにも特命が掛かっています。裁判の取り止めが叶わなくても枢木ばかりに不利な裁判が進まない様にしますし……証拠も貰えましたしね」
そう言ったリョウトの手には一枚のデータディスクがあった。これはスザクが乗っていたKMFランスロットの起動データで、これには搭乗していた者の起動時間や通信ログなどが記録されている。つまりこれはスザクのアリバイとなり、スザクがクロヴィスの暗殺を行うことが不可能だった事を示す証拠となるのだ。
特派の証言は認めなくても、第一皇子と第一皇女の管轄部隊であるレイスの証言はいくら純血派としても無視は出来ない筈。リョウトはそう考えていた。
「あっは~ヨロシクねぇ。彼はキミと並ぶほどの優秀なデヴァイサーだから手元に残したいんだぁ」
「正式に作られたランスロットを乗り回す奴か……気になりますね」
リョウトがスザクに興味を示して助けようとしているのは、これも理由の一旦でリョウトは過去にサザーランドにランスロットのパーツを組み込んだ試作機ランスロット・プロトに搭乗したがそれでも高性能の機体だと感じていた。それの完成版となれば性能もハネ上がり、スペックを見たリョウトは冷や汗を流した程だ。何故ならば現在最新式であるグロースターを遥かに上回る性能でブリタニア本国で開発中の新型と肩を並べる程の機体。それを初見で乗りこなすデヴァイサーともなればリョウトが興味を示すのも当然と言えた。