リョウトがレイスの部隊長になってから三年が経過した。
その間に様々な事件があったがブリタニア第一皇子と第一皇女の部隊としてレイスは凄まじい成果を挙げていく事になる。
時にはテロリスト鎮圧へ。時には違法を犯した貴族を捕まえに。時にはオデュッセウスと共に牧場へ。
激務に対して一小隊程度の規模でしかなかったレイスだが今では中隊規模の大きさになっていた。
そして、リョウトは現在、エリア11へと赴いていた。
「で……なんだい、今日は半日も第三皇子様のチェスのお相手かい?」
「まーね……悪い人じゃないんだけど流石にしつこかったよ」
リョウトは以前、すき焼きを食べに来た『春日屋』に来ていた。食事をする傍ら、ブリタニア第三皇子のクロヴィスの事を店の店主に話していた。
レイスとしてリョウトは視察でエリア11へと来ていたのだが、その合間を縫ってクロヴィスの相手をしていた。本日はクロヴィスが半日ほど時間があるからと、チェスの相手をさせられていた。
「悪い人じゃないねぇ……俺等、日本人には優しくない人なんだがなぁ……」
「クロヴィス殿下はテロが嫌いな人だから、日本に蔓延るテロリストが嫌いなんだと。あの人は日本が嫌いなんじゃなくてテロを起こす日本人を嫌ってるんだよ……後は純血派の暴走かな」
店主の愚痴に答えたリョウト。リョウトのクロヴィスに対する意見は三年ほどの付き合いとなる身からの経験則の様なものだった。
クロヴィスはテロリストとなっている現在の日本人を嫌っていた。その理由の大元は嘗て、溺愛していたルルーシュとナナリーの事を考えていたからだ。
日本に人質として送られた二人に会いたいと願っていたクロヴィスだが、ブリタニアと日本の戦争となり、二人は死んだとされた。
この時、クロヴィスの頭の中で『何故、日本人は二人を守らなかった』と怒りを露にしたのだ。
故にクロヴィスはエリア11となった日本を早く、平和にさせようと躍起になりイレブンとなった日本人にキツい対応をしていたのだ。テロリストを壊滅させる事が二人への供養になると言わんばかりに。
「テロと言えば……ナオトさんは?」
「ん……ああ……最近は忙しいみたいで店にも顔を出しゃしないな……ま、たまに来る時は元気にしてるよ」
リョウトがテロとして気に掛けたのは以前、エリア11に来た際に出会った『紅月ナオト』の事だった。
彼は不正をしていたブリタニア軍人へと一歩も引かずに立ち向かったのだ。その事でリョウトと知り合い、仲良くなっていた。リョウトは仕事でエリア11に来ると必ず春日屋に来ており、その度にナオトと会って話をしていた。
リョウトはブリタニアの特務隊。ナオトはテロリスト。
本来なら相容れない関係だが二人はそれを抜きにして、親交を深めていた。ナオトは妹の事や親友の事を。リョウトは仕事であった事を話す。
対極の関係に居ながら二人は親友と言える程の関係となっていたが、今日はナオトが居ないとリョウトは少々へこんだ。
「ま、元気なら良いさ。また来るよ」
「おう、気を付けてな」
リョウトは一息つくと、代金を支払って店を出た。
店の店主からナオトは元気でやっていると聞いて、また次に来た時に会えるだろうと考えていたのだ。
しかし、リョウトの考えは外れた。
この数日後にリョウトはナオトが行方不明になったと連絡を受ける。
本国に戻ったリョウトだがリョウトはレイスとして各国のテロリストの情報を常に集めていたのだが、エリア11の情報の中の犠牲者の欄に『紅月ナオト』の名を見つけてしまったのだ。
リョウトは仕事中にも関わらず、その場で膝を着いて崩れ落ちそうになった。周囲の部下が何事かと寄ってくるがリョウトは『なんでもない』と彼等を解散させる。
リョウトはエリア11に赴いたら、この事を調べないと、と決意を決めたが、それは叶わない結果となる。
何故ならば、この半年後に第三皇子のクロヴィスが何者かに暗殺されたとの報を受けるのだから。
『リョウト・T・ヴァルトシュタイン』
年齢 17歳
日本人の父とブリタニア人の母を持つハーフ。
10歳の頃に両親が死に、帝国騎士のビスマルク・ヴァルトシュタインがリョウトを引き取った。
現在では中隊規模になったレイスの部隊長となっている。
長かった髪を肩くらいまで切り、後ろで一纏めにしている。纏めている髪留めは母親の形見。
三年前まではオデュッセウスとギネヴィアくらいしか皇族との関わりがなかったが、後にシュナイゼル、コーネリア、ユーフェミア、クロヴィス、カリーヌとオデュッセウスやギネヴィアを通じて、関わることとなり、皇族に振り回される日々を送っている。
更に義父であるビスマルクがナイトオブラウンズである事からラウンズ全員と顔見知り。此方も振り回される事が多い(主にノネット)
エリア11となった今でも日本と呼び、そこで出会ったナオトとは年の差はあるが親友に近い間柄となっている。
エリア11に立ち寄った際には春日屋に行くのが楽しみの一つで、そこでナオトと会うのも楽しみの一つとなっている。