コーネリアはハッキリ言ってレイスを見下していた。兄と姉が発足した部隊とは言っても歴としたブリタニア人のみで構成された訳じゃない寄せ集めのハッタリお遊び部隊。それがコーネリアのレイスに対する評価だったが……今は違っていた。
自身と自身の騎士達がアッサリと敗北したナイトオブラウンズに真っ向から戦いを挑み、一矢報いたのだ。しかも改造してるとは言ってもサザーランドの型落ちのグラスゴーでだ。
更にコーネリアの頭を悩ませているのはブリタニアとイレブンのハーフであるリョウトだ。
彼はナイトオブワン、ビスマルクの義息子だと聞いた。だとするならば親の栄光にすがり付くだけの子供なのではないかと思っていたのだが、その考えは既に粉砕されていた。
『はああああぁぁぁぁぁぁっ!』
『また強くなったなリョウト!』
激しい戦いを繰り返すグラスゴー・カスタムとサザーランド。最早、ラウンズ同士の戦いなのではと錯覚さえしてしまいそうな戦いにコーネリアは言葉を失っていた。
「リョウトめ……この間、直したばかりのグラスゴー・カスタムをもうあそこまでボロボロにしとるのか」
「グラン博士!?」
いつの間にかコーネリアの隣にはグランが立っていた。気配も感じさせずに近づいたグランにコーネリアは飛び退く様に下がった。
「お、お久し振りです……グラン博士」
「うむ。コーネリアの嬢ちゃんも元気そうじゃの」
本来なら皇族にしてはいけない様な喋り方のグランだが、ブリタニア皇族の大半はこの事に目を瞑っていた。現皇帝のシャルルの恩師と呼ばれるグランを咎めようとすれば却って咎めようとした側が悪いとされる程である。
「しかしグラン博士……私はもうお嬢ちゃんと呼ばれる年齢では……」
「何を言うとるかワシからみりゃ、どいつも子供じゃよ。特にお主等姉妹はオムツを交換した事もあるんじゃ今更じゃよ」
自分の年齢を皮切りに『お嬢ちゃん』呼ばわりを止めさせようとしたコーネリアだがグランには通用しなかった上に少々、恥ずかしい事を言われる始末だった。
そもそもグランはシャルルでさえ『坊主』呼ばわりをしているので、コーネリアがそれを覆そうとは無理な話である。
「で……どうじゃったリョウトは?」
「どうとは……いえ、貴方には隠し事は昔から無理でしたね。正直に言えば経験の浅い若造と思っていましたが……今のアレを見てしまうと」
グランの問いにコーネリアは口を閉ざしてしまう。経験の浅い若造どころかラウンズ並みの力を持つリョウト。それを認めないのは自身の見る目の無さを露呈させる様なものだ。
「ひゃひゃひゃ……己の過ちに気づくのも成長と言うものよ。しかもリョウトはまだまだ伸び代がある。冗談抜きでラウンズ昇格も夢では無かろうよ」
「ま、まさか……」
グランの発言に本当にリョウトがラウンズ入りするのではと想像した。そして、その光景に違和感が無いと思った、その時だった。
『おおっと!ノネットさんに一泡ふかせるとは見事だが、逆らったオシオキだ!』
『ちょっ………待っ……へぐっ!?』
サザーランドがグラスゴー・カスタムの腕を取ると間接を極めて地面に叩きつけた。
『奇襲は見事だった、褒めてやるぞー』
『言ってる事とやってる事が……って折れる!カスタムの腕が折れるって!』
サザーランドは器用にもグラスゴー・カスタムの腕ひしぎ十字固めで折ろうとしていた。
「何をしてるんだ、あの人達は……」
試合を見ていたコーネリアはハァと溜め息を吐いた。
先程、ノネットが言っていた奇襲とはグラスゴー・カスタムが武器を片手にサザーランドに襲いかかろうとした。そしてそれを迎え撃とうとしたサザーランドだが、ここでグラスゴー・カスタムは動きを変えたのだ。
武器を振り下ろすのではなく、直前で武器を投げたのだ。そしてそれはアッサリと回避されるのだが回避さた方に機体を傾けて、動きに会わせてグラスゴー・カスタムはサザーランドの顔面に拳による一撃を与えたのだ。
普通なら接近戦となれば武器は必須だが、それを逆手にとって直接殴りに行く奇襲は見事にもノネットですら引っ掛かったのだ。
弟分の成長を喜んだノネットだが一杯食わされた悔しさから反撃に出た。それがKMFでプロレス染みた戦いの切っ掛けとなったのだ。今ではノネットの優勢である。
何故かユーフェミアもノリノリでマイクを通してカウント等をしている。
「まったく……困った人達だ……」
呆れた風に呟くコーネリアだが、その表情は目の前の光景を楽しんでいる様にも見えた。