「しっかし、まあ……予想通りな状況だな」
『よもや……ここまでとは……』
リョウトがグラスゴー・カスタムの中で呟いた一言にケインも驚いた様子で戦場を見ていた。
それと言うのもノネットの操るサザーランドがコーネリア、ダールトン、ギルバートの操るサザーランドを完膚なきまでに叩き潰したからだ。
『さ、流石はナイトオブラウンズ……』
「かなり一方的だったけど……ノネットさんだからなぁ」
クレスはハッキリ言って、ノネットの強さに引いていた。それもその筈。コーネリアは皇族でありながら、第一線で戦う云わば、武人。それに従うダールトンやギルバートも当然、かなりの強者なだがノネットはそれを意にも介さずに終始圧倒し続けたのだ。引かなかったのはノネットの強さを知るリョウト、オデュッセウス、ユーフェミアの三人だけだった。
『ハハハッ以前よりも強くなられましたなコーネリア殿下』
『圧勝しといて、その台詞ですか』
そんな中、ノネットの乗るサザーランドがコーネリアの乗るサザーランドを立たせていた。
学校の先輩後輩の間柄だったと以前、ノネットから聞いていたリョウトは仲が良いんだなとボンヤリと眺めていた。
『さぁて、第二試合だ!準備は良いかリョウト!』
「いや、休憩挟んだ方が良いんじゃないのノネットさん?」
コーネリア達が模擬戦開始前の位置に戻るとノネットからの通信が入る。リョウトは今さっき模擬戦を終えたのだから休憩を挟むべきだと考えたのだが返ってきたのはノネットの笑い声だった。
『ハッハッハッ!私を誰だと思ってるんだ?問題ないから試合を始めるぞ!』
「はーいはい……っと」
リョウトはノネットの返答に説得は不可能と悟るとケインとクレスを引き連れて、試合場へと向かった。
『隊長殿、エニアグラム卿はいつも、あの調子なのですか?』
「ああ、いつもあんな感じ。パワフルな人だよ」
『まったく勝てる気がしないんですけど……』
模擬戦が始まる前から若干意気消沈となっているリョウト達だが模擬戦開始時間となり、顔つきが変わる。
「相手はナイトオブラウンズだ。小細工を仕掛けたいけど、ぶっちゃけ無駄に終わるから各自の判断で臨機応変に行くぞ」
『『Yes、My Lord』』
ケインとクレスの返事に満足したリョウトはグラスゴー・カスタムを走らせた。それに随伴する様にクレスのグラスゴー・リッパーも走り出す。
『お、なんだ特攻か?』
対するノネットのサザーランドはカスタムとリッパーを迎え撃つ形で二体を同時に相手をし始めた。
カスタムの斧やリッパーのナイフを交互に避けながら、確実にカウンターを入れてくるサザーランドにクレスは舌打ちをした。
『ああーっもう!こっちのは当たらないのに相手のは当たるって嫌なかん……へぎゅ!?』
『ほらほら、無駄口を叩く暇があるのかな?』
愚痴を溢した瞬間にサザーランドの蹴りがリッパーを捉えた。装甲の薄い、リッパーはそのまま倒れてしまった。
『はい、終了!』
『痛たたっ……ちょっとケイン!援護無しってどうなのよ!』『無茶を言わないでください。ナイトオブラウンズ殿は此方が援護射撃しにくい様に射線を被せてくるから撃てないんですよ』
ノネットにしてやられたクレスはケインに援護しろと叫ぶがそれは無理だとケインが答えた。
実はノネットはフルバレットが援護出来ないように、わざとカスタムやリッパーとの距離を詰め、射線を重ねていた。こうする事で牽制にもなるし、位置も把握しやすくなるのだ。
『次はそっちだ!』
『おや、ご指名ですか!』
サザーランドはカスタムとの接近戦を一時中断して、フルバレットへ向かっていく。先程と違って存分に撃てる状況になったフルバレットは全砲門を開いてサザーランドを蜂の巣にしようとする。
『スゴい弾幕だな……だが、甘い!』
『な、なんですと!?』
フルバレットの弾を避けながらサザーランドが何かを振りかぶって投げる。それはリッパーに装備されていたナイフだった。投擲されたナイフはフルバレットの右腕に刺さり、フルバレットの右腕は使用不可となった。
それと同時にサザーランドはフルスロットルでフルバレットに迫る。使えなくなった右腕側の弾幕が弱まったのを確信するとサザーランドは自前のスタントンファでフルバレットの頭部を破壊した。破壊されたフルバレットはズズンと音を立てて、倒れてしまう。
『さて……これで後はリョウトだけだな』
「本っ当に……無茶苦茶だよね」
自身の部下をアッサリと倒されたリョウトは内心焦っていた。部下と言っても自分が倒すのに散々苦労した相手だ。それが目の前、しかも1対3の状況の乱戦で自分を残してアッサリと1対1の状況にさせられたのだから堪ったものではない。