コードギアス ナイトオブワンの義息子   作:残月

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模擬戦

 

 

 

【レイス】のメンバーは着々と集められた。

 

 

正規の軍人では無く現地の引き抜きやスネに傷を持つ者が集められた部隊だけに規律は悪かったが優秀な人材は揃っていた。

 

 

「ではこれよりグラスゴー・カスタムとグラスゴー・フルバレットの模擬戦を行う!」

 

 

此処はブリタニアの軍事施設の演習場。そこでナイトオブワン・ビスマルクの号令が響き渡る。

ある程度、人数が揃ってきた【レイス】に規律と仲間意識を高める為の模擬戦となった。

模擬戦でパイロットの士気を高め、その後のKMFの修理等を行う事でそれぞれの分野の向上心を高めようという目論見なのだ。

 

 

 

「フルバレット相手だとこっちが不利だよなぁ……」

「ハハハッ全力でやらせてもらいますよ隊長殿」

 

 

リョウトとケインは既にそれぞれのグラスゴーに搭乗していた。

コクピット内でぼやくリョウトに対してケインはノリノリである。

 

 

「ノリノリだなケイン」

「隊長殿に胸をお貸し頂けるなら私はその胸に弾を撃ち込んでみたいのですよ」

 

 

 

ケインはリョウトを隊長と呼び、リョウトはケインを呼び捨てにする。これは着任してからケインがリョウトに頼んだことだった。

「自分には敬語は結構です。名も呼び捨てで。私は隊長殿と呼ばせて頂きますが」

との事だった理由を尋ねたが教えて貰えず今日に至ったのだ。

 

 

「では仕合始めッ!」

「では行きますよ隊長殿!」

「おうっ!って、ヤバい!?」

 

 

ビスマルクの号令と共に開始される模擬戦。先手を打ったのはケインだった。

ケインはフルバレットの背面式大型ガトリングを構えると何の躊躇いも無く引き金を引いたのだ。

バラまかれる弾丸にリョウトはグラスゴー・カスタムの右膝を折りながら旋回しつつ加速して避ける。機体にもコクピットにも相当な負担だが弾が当たるよりは良い。リョウトは弾を避けながらアサルトライフルを引き抜くとフルバレットに向かって引き金を引いた。

 

 

「やりますな隊長殿。あの弾幕を避けながら反撃の一手を撃つとは」

「クソッ!余裕持ちやがって!」

 

 

ヌケヌケと賞賛を送るケイン。対するリョウトは焦っていた。そもそもグラスゴー・カスタムとフルバレットでは性能も戦い方も違いすぎる。

今はアサルトライフルで地味な反撃をしているが銃も弾もフルバレットの方が圧倒的なのだ。

リョウトは逃げつつアサルトライフルの反撃をするしか手が無かった。

 

 

「どうすっかな……こっちの弾が先に無くなり……あ、弾切れ寸前」

 

 

リョウトはグラスゴー・カスタムに装備されているアサルトライフル×2で地味な反撃をしていたのだがフルバレットよりも先に弾切れになりかけていた。

 

 

「どっちも後、一斉射で終わるくらいか……ならいっちょ賭に出るか」

 

 

リョウトは意を決するとグラスゴー・カスタムをフルバレットに向けて発進させる。

 

 

「おや、特攻ですか?それは悪手と言わせてもらいます!」

「ぐっ!?流石に凄い弾幕だな!」

 

 

グラスゴー・カスタムが真っ直ぐにフルバレットに向かってきたのを確認するとケインはフルバレットの砲門を全て開放した。

大量の弾幕がグラスゴー・カスタムを襲うがグラスゴー・カスタムは地面を滑る様に回避し続けていた。

 

 

「素晴らしい!まるでKMFが舞っているかの様です!」

 

 

褒めながらも手を緩めないのがケインらしい所である。

 

 

「しかーし!その回避能力では、いずれ疲れて当たってしまいますよ!」

「ちっ!」

 

 

ケインの言う通りグラスゴー・カスタムは被弾し始めていた。グラスゴー・カスタムは左腕に被弾し片腕が破壊されて無くなっていた。

 

 

 

 

離れた場所ではビスマルクが模擬戦の様子を見ていた。

 

 

「グラスゴー・カスタムではフルバレットの弾幕をかいくぐるには困難だ……どうする気だ、リョウト?」

「なんじゃ、息子が戦っとるのに淡白な反応じゃの」

 

 

模擬戦を見ていたビスマルクに話し掛けたのはグランだった。

 

 

「グラン博士、お久しぶりです」

「お前さんも息災な様じゃな、何より何より」

 

 

ナイトオブワンに気軽に話し掛けている事が異常な光景だがグランはブリタニアの中でもかなりの古株でビスマルクも昔は色々と世話になっていた。

 

 

「リョウトの奴、無茶苦茶じゃな。グラスゴー・カスタムの性能をギリギリまで引き出して弾を避けておる。じゃがあんな戦い方をしていれば機体が保たんわい」

「やはり、そうですか」

 

 

リョウトの戦いを並んで見ているグランとビスマルク。そして徐にグランが口を開いた。

 

 

「………シャルルの坊主やマリアンヌの嬢ちゃんはまだ、あの計画を進めてるのか?」

「皇帝陛下やマリアンヌ様をその様な呼び方をするのは世界広しと言えど博士だけです」

 

 

明らかに不敬罪となる発言をしたグランだがビスマルクは苦笑いで答えた。

 

 

「皇帝陛下もマリアンヌ様も計画を続行しています。諦める気は無い……と仰っております」

「フン、全てを虚無にする様な計画なぞワシは反対じゃがの」

 

 

ビスマルクの発言にグランは鼻を鳴らす。

 

 

「しかし皇帝陛下もマリアンヌ様も博士に……」

「わぁかっとるわい。ワシはある種の後見人みたいなもんじゃ。世界がどうなろうと結末を見る為にの」

 

 

言葉を繋ごうとしたビスマルクだがグランは言葉を切った。

 

 

「そんな事よりもワシはお前さんの息子の方がよっぽど気になるわい。見てみい、相撃ちに近い形じゃが性能差を覆して勝ちよった」

「……………機体はボロボロの様ですが」

 

 

 

話に夢中になっている間に模擬戦が終わった様でボロボロのグラスゴー・カスタムがフルバレットに辛くも勝利を収めた様だった。


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