遊戯王の小説が出来上がってしまっているではないでしょうか~
と、いうわけで投稿するっきゃないでしょ。不定期でな。ではでは~
1.「ディスペアー」
ふむ……どういうことなのだろうか、これは?
紫色の長い髪を靡かせ、男は腕を組み、唸る。
「ここは『幻想郷』か?しかし……俺は転生……いや、その前に死んだのか?」
こういうのは転生したというお決まりのパターンなのだが、死んだという記憶など心当たりはない。
だが、男が今見ている光景に驚くこともなく、冷静に周りを観察する。自然が広がり、どこを見ても森ばかり。
ここが幻想郷だという確証は一向もないが、男は直感的にここが幻想郷だと感じたのだろう。仕方ないと男はため息をつきながら歩を進めようとする。すると、
「あ?何だこの袋……」
男は足元に黒い袋を見つけ、中身をあさる。出てきたのは……
「デュエルディスク!?それにこれは俺のデッキ……」
それは自作したデュエルディスクに自分が愛用したデッキ。それにもう一つ……自分が作ったカードも一緒に入っていた。
「プロキシのやつまで……ん!?これは……本物のカードになってる?一体どういう……」
そう言いかけた時、森の奥から同じ形のデュエルディスクを左腕につけた人が現れる。だが、その人からは生気の宿った瞳をしておらず、だらしなく口を開けっ放しにしている。
「GXのデュエルゾンビ!?」
前世の記憶を一気に引っ張って目の前のソレがどういうものなのかを一瞬で把握する。
あのゾンビのようなデュエリストはそのまんまデュエルゾンビと命名されており、デュエルだけを求めるという存在。
「デュエル~……デュエル~……」
「くっそ、やるしかないのか……」
ジャキンという音とともにデュエルディスクに内蔵されているモーメントが回転を始め、お互いのデッキが自動的にカットされる。
そして世界がデジタル化していく……これは遊戯王ゼアルのARビジョンというシステム。疑似世界でデュエルするというこれもデュエリストとして憧れた場所。男は内心の興奮を抑えきれずにいた。そして、口を大きく開き、高らかに宣言する。
「「デュエル!」」
男 LP8000
ゾンビLP8000
「俺のターン~」
先行をとったのはデュエルゾンビ(以後、ゾンビ)先行ドローはないので手札を1枚抜き取り、デュエルディスクに入れる。
「モンスターをセット~。カードを1枚伏せ、ターンエンド~」
ゾンビ 伏せモンスター×1
伏せカード×1
「私のターン!ドロー!」
勢いよくデュエルディスクのデッキの一番上のカードをドローする男。一人称が私に変わっていることにゾンビは何の反応も示さないが、デュエリストとしてのプライドだけは持ち合わせているようだ。真剣(?)なのかは見た目では分からないが、敵である男をしっかりと見ている。
「これだよ……こんなデュエルを望んでたんだ!やるからにはゾンビが相手だろうと手加減なく……あ!?」
手札を見た男は俄然とする。それも当然だろう……自分のデッキを自信満々でディスクの方にセッティングしたのはいいが、どうやらARビジョンでデュエルディスクを使って、デュエルできることに興奮しすぎてしまったようで、デッキの確認もせずにデュエルディスクに装着してしまっていたのだ。それから導き出される答えは一つ。
「(オリジナルカードの方のデッキだー!?)……だが、これでもデュエル出来るように調整はしてある……デメリットは意外ときついが、このデッキで戦ってやる!それに……」
男はドローしたカードを見る。そこには見れば禍々しさ故に恐れ慄く者さえ出てきそうな……それこそ、本当の
「私は手札から『ディスペアー・ソルジャー』を召喚!」
『ディスペアー・ソルジャー』ATK1600
現れた兵士からはゾンビのように生気を感じられず、目は白目をむいている。剣を持つ力も明らかに弱く、盾はもはや足元に落としている程だ。だが、男は何よりソリットビジョンで自分が作ったカードが出てきたことに嬉しくてたまらないらしい。
「そして効果発動だ!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、手札の『ディスペアー』カードを1枚墓地に送ることで1ドローする!更に、ドローしたカードがレベル4以下の『ディスペアー』モンスターだった時、特殊召喚できる!ドロー!」
またもや勢いよくドローする。チラッと引いたカードを確認し、ニッと笑みを浮かべる。
「ドローしたカードは『ディスペアー・ナイト』!こいつはレベル4モンスターだから特殊召喚する!来い!
」
『ディスペアー・ナイト』ATK2000
次に現れたのは馬に跨った鉄の鎧を着た騎士。騎士の鎧はボロボロに朽ちており、所々には敵の攻撃であろう矢が刺さっていて、馬もソルジャーの時と同様に白目をむいており、だらしなく口を開け、舌を出している。
「そして墓地に送られた『ディスペアー・ハッカー』の効果!このカードを特殊召喚する!」
『ディスペアー・ハッカー』DEF0
現れたのはハッカー……見た目は廃人ネトゲオタクのそれと何ら変わりはないが、大量のパソコンを両手で捌くようにタイプしている姿はハッカーに見えなくもない。廃人ネトゲオタクの印象が凄すぎるからか、こいつに関してはソルジャーやナイトといった不気味さをある意味では感じられない。
「そしてナイトはお互いが効果ダメージを受けていないターン中は攻撃できない……が、ハッカーは特殊召喚に成功した場合、お互いに300ポイントのダメージを与える!ぐっ!」
男 LP8000→7700
ゾンビLP8000→7700
「たった300ポイントダメージを受けただけでこの衝撃……このスリル!いいねぇ……味を占めちまったじゃんかよぉ!」
テンションが上がりすぎてキャラが早速ブレブレになってきてしまっている男だが、デュエルは続く。
「バトルだ!『ディスペアー・ナイト』でセットモンスターを攻撃!」
ナイトは馬を走らせ、力が入っていない剣を振り下ろし、裏側で置かれているモンスターを破壊する。
だが、破壊されたのは……
『エレキトンボ』DEF100
「……っち。『エレキトンボ』か……」
「戦闘破壊されたので~……デッキから~……『エレキングコブラ』を特殊召喚~」
『エレキングコブラ』ATK1000
「サーチ効果付きのダイレクトアタックできるやつか……」
「更にトラップ発動~『雷の裁き』発動~。お前の『ディスペアー・ソルジャー』を破壊する~」
「何!?くそが……メインフェイズ2に入り、カードを1枚伏せて、私はターンエンドだ」
男 LP7700
手札3
ディスペアー・ナイト ATK2000
ディスペアー・ハッカーDEF0(ソルジャーの効果で攻撃力で0)
伏せカード1枚
ゾンビにターンが回る。
「ドロー~。俺は永続魔法『エレキュア』を発動し、バトル~『エレキングコブラ』でダイレクトアタック~」
「ぐぅぅ!」
永続魔法『エレキュア』の効果で雷族モンスターの攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時、その数値分ライフを回復するという効果あるので、ゾンビの上空から光が降り注ぎ、(傷はないが)回復していく。
男 LP7700→6700
ゾンビ LP7700→8700
「『エレキングコブラ』が~直接攻撃によってダメージを与えたので~デッキから『エレキ』モンスターである『エレキリギリス』を手札に加える~」
「……」
『エレキリギリス』は他の『エレキ』モンスターを攻撃対象と効果対象にさせないというトンデモ効果を持っているため、男は顔をしかめた。GXのデュエルゾンビなんだから切り込みロックしてればいいんだよ……と、
「メインフェイズ2で~魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動~。手札の『エレキツツキ』を捨て、デッキから『エレキリギリス』を特殊召喚~」
『エレキリギリス』DEF0
「!……早速か……」
「俺は『エレキリギリス』を通常召喚し~ターンエンド~」
ゾンビ LP7700
手札2
『エレキリギリス』DEF0
『エレキリギリス』ATK0
『エレキングコブラ』ATK1000
「私のターン!私は2体のモンスターをリリースし、『ディスペアー・ジャイアント』をアドバンス召喚!」
『ディスペアー・ジャイアント』ATK2800
地面を砕き、現れたのは上半身裸の巨人。巨人というだけはあって、とんでもない迫力だが、相変わらず棍棒を持っていたとしても握る力は弱く、息が荒い。そしてなによりこの不気味さは絶望を感じさせる。だが、対戦相手はゾンビ……そんなことは微塵も感じるわけがなく、ボーっとしている。
「そして『ディスペアー・ジャイアント』の効果!アドバンス召喚に成功した場合、リリースしたモンスター1体を特殊召喚できる。戻れ!『ディスペアー・ハッカー』!そしてハッカーの効果でお互いは300ポイントのダメージを与える!」
『ディスペアー・ハッカー』ATK800
男 LP6700→6400
ゾンビ LP8700→8400
「ダメージにはあらかた慣れた……私は魔法カード『綻びゆく絶望』を発動!お互いが効果ダメージを受けたターンのみ発動でき、私の場の『ディスペアー・ジャイアント』の攻撃力以下の相手モンスターを全滅させる!崩れろ!バトルだ!『ディスペアー・ハッカー』と『ディスペアー・ジャイアント』でダイレクトアタック!」
ゾンビ LP8400→7600→4800
「私はカードを2枚伏せ、ターン終了だ。」
男 LP6400
手札1
『ディスペアー・ハッカー』ATK800
『ディスペアー・ジャイアント』ATK2800
「俺のターン~1枚目の『エレキリン』を召喚~。」
『エレキリン』ATK1200
「そして~魔法カード『魔霧雨』を発動~。俺の『エレキリン』の~攻撃力以下の守備力を持つ~相手モンスターを~全て破壊する~」
ディスペアーモンスターの守備力は全員が0となっていて、『魔霧雨』によって全て破壊されてしまう。
だが、『魔霧雨』のデメリット効果としてこのターンはバトルフェイズが行えなくなってしまう。
「カードを1枚伏せてターンエンド~」
ゾンビ LP4800
手札1
『エレキリン』ATK1200
「私の……」
ドクンッ!胸が脈打つ……この瞬間をずっと待ち望んでいた……自分でも引くぐらい楽しんでいる……
「ターンッ!」
カードを引く。ただ引くだけで風が吹くほどの勢いである。
「私は2枚の伏せカード『強欲な贈り物』を発動。相手はデッキからカードを2枚ドローする。」
明らかにデメリットでしかないカードを発動した男はククッと笑う。
「私は魔法カード『絶望への道標』を発動。墓地の『ディスペアー』カードを任意の枚数除外して、除外した枚数、デッキからカードを墓地に送ることができる。私が除外するのは『ディスペアー・ソルジャー』1枚……よってデッキから1枚墓地に送る……フッ……墓地に送られたのは通常魔法の『混同する絶望』だ。そして墓地の『ディスペアー・ジャイアント』の効果発動!このカードを除外して墓地のレベル4『ディスペアー』モンスターを攻撃力を0にして、攻撃表示で特殊召喚する。甦れ!『ディスペアー・ハッカー』、『ディスペアー・ナイト』!そして『ディスペアー・ハッカー』の効果でお互いに300ポイントのダメージを受ける。」
『ディスペアー・ナイト』ATK→2000→0
『ディスペアー・ハッカー』ATK800→0
男 LP6400→6100
ゾンビ LP4800→4500
「そして私は……2体のモンスターをリリース!這い上がれ……絶望の
『ディスペアーアイズ・クレイジー・ドラゴン』ATK3000
地面に亀裂が生じ、地獄のような暗い奈落の底から這い上がって来たソレは竜の形をしているが、あくまでも空想上の生き物なのでどのような姿かはわからないが、この眼に睨まれたゾンビは感情を失ってさえも恐怖の表情を浮かべている。そう絶望を感じているのだ。
「『ディスペアーアイズ・クレイジー・ドラゴン』の効果発動!召喚に成功した場合、お互いは自身の手札の枚数×300ポイントのダメージを与える!『ディスペアー・ハウリング』」
「チェ―ン~カウンター罠『エレキャンセル』発動~。手札の『エレキツツキ』を墓地に送り~相手モンスターの召喚を無効にし~破壊する~」
「チェーンだ。カウンター罠『魔宮の賄賂』発動。相手の魔法・罠を無効にして破壊し、相手は1ドローする」
チェーンが逆処理で解決するので『魔宮の賄賂』で『エレキャンセル』が破壊され、ゾンビは1枚ドローする。そして『エレキャンセル』の効果が無効化されているので、『ディスペアーアイズ・クレイジー・ドラゴン』の召喚は無効化されず、そのまま効果が発動する。ただ、男は手札が0枚なのでダメージはない。
ゾンビ LP4500→3000
「そして私は墓地から魔法カード『混同する絶望』を発動!このカードを除外し、お互いは自身の墓地のカードの枚数×100ポイントのダメージを受け、この効果を使用した後にモンスターを特殊召喚する度に相手に200ポイントのダメージを与える」
ゾンビ LP3000→2100
「バトルだ!『ディスペアーアイズ・クレイジー・ドラゴン』で『エレキリン』を攻撃!『ディスペアーバースト』!」
ゾンビ LP2100→300
「……こいつで終わりだ!墓地から魔法カード『絶望の道標』の効果発動!自分フィールドの『ディスペアー』モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを与え、その後、その『ディスペアー』モンスターの攻撃力を0にする!」
ゾンビ LP300→0
ライフが0になった瞬間にゾンビが倒れて、ARビジョンが終了する。ソリットビジョンで現れた『ディスペアーアイズ』を眺めながらデュエルディスクが元に戻る。
「ふぅ……久しぶりにデュエルモードになったな……」
デュエルモードというのはこの男だと1人称が俺から私になるようなことである。言わば、中二病モードである。男は倒れているゾンビを見る。倒れている姿だけを見ると、隈があるだけでただの人間と一緒だ。
まあ、元々は人間なのだが……
「こいつがいるってことは『ユベル』もいるのか?」
男はその可能性があることを懸念する。『ユベル』というのはモンスターの精霊でGXの主人公である子供時代の『遊城 十代』の相棒でヤンデレ。アニメでもTFでも酷かった。そいつとデュエルで負けたデュエリストがゾンビとなり、ゾンビに負けたら、負けた奴もゾンビにというバイオみたいな方法で人間をデュエルゾンビへと変えていった。でも『ユベル』は十代に諭され、一緒にいるはずなのに今更こんなことするわけもないだろう……
男は少しの間、考えるが……ふと、木の根元に寝かせているゾンビを見る。デュエルゾンビを元の人間に戻すには主犯を倒さなければいけないという凄い分かりやすい方法でしか、直すことができない。でなければ永遠にデュエルを求めるゾンビのままである。
「ん?……ククッ……あはは……か~~んた~~ん!」
男はゾンビのデュエルディスクからデッキを抜き取る。デッキがないのならデュエル出来ないというシンプルな考えだったのだが、男は妙に喜んでその場から立ち去る。外の世界にいた時もアンティなんて日常的にやっていた男からすれば正当防衛と称して、大量のカードが手に入ることに喜びを感じているのだ。
「さてと……幻想郷にデュエルゾンビ……つまり異変ってことだな。ということは『博麗 霊夢』が流石に動いているか……なら行くべき場所はただ1つ」
目的地を決めた男は森の中を歩き始めた。
どうだったろうか?