って、今週デュエルじゃないからなんもないっす
何を言っているんだ先々週の私は・・・
「ゲホッ!ゴホッ!」
「全く……信じられない!」
「す、すまん……」
「謝って済む話じゃない!」
「はい、すいません……」
俺は今……博麗神社の客間に敷かれたベットの上に横たわり、頭の上にはどっかから妖精から作られたという氷を入れたビニールを乗せられ、霊夢に叱られている。どうしてこうなっているかと説明を入れようかと思ったが、魔理沙が来たので彼女に説明を任せよう……体が怠いんでね……
「いよっす!どうだ霊夢?『風邪ひいているのに4回、しかもそのうちの1回は命を懸けたデュエルをした大馬鹿デュエリスト』の調子は?」
何も言い返せねー。まさか、そこにデュエルがあるからさと霊夢に言い訳したら拳骨を喰らったでござる。その分、氷を追加されたが……それに十数分間続く霊夢の説教も色んな意味で耳が痛いし、体に響くだけで頭に入ってこない。霊夢は一通り説教を言い終わって、疲れたのか、お茶をグイッと一杯飲み、食材と薬を買いに人里へと出かけていった。残ったのは魔理沙だけ……そういえば魔理沙と二人きりになったのは今回が初めてかもしれないな……
「なぁ……嵯峨」
「……ん?」
「ぶっちゃけた話をするとさ……」
な、なんでござんしょ?
「霊夢とデキてるのかぜ?」
「……デキてるって?」
「付き合っているのかって話だぜ」
「んな馬鹿な……まだ会ってから1日しか経ってないぜ」
「1日しか経ってないのによくあんなに仲良くなってるなって話だぜ」
「それがデュエルモンスターズ」
キリッ、あ、引かないで魔理沙。
「はぁい嵯峨君?紫お姉さんだよ~」
わぁい、紫お姉さん……頼むから俺の体の上に乗んないで……風邪ひいているから重いじゃなくて金縛りレベルなんだよ。紫さんの体を支えられない。
「何の用っすか」
「まずは異変解決おめでとう、そしてありがとう。明日にでも風邪は治るでしょうし、
明日には宴会を開くことを独断で決めて教えに来ました」
「余計に具合が悪くなりそうな気がするんですがそれは……」
「病み上がりにお酒はきついだろうぜ……」
「まぁまぁ……後は『招待状』よ」
「『招待状』?」
「そう……デュエル大会のね」
「いつっすか!」
「食い気味になるほどなのかぜ!?」
「まぁ、元々は黒幕をおびきだすために大会だったのだけど、貴女のおかげでまともな大会になりそうよ」
「……んなこと言われてもな……俺だけの力で勝ったわけじゃないからな……な?」
「おう!」
「ウフフ……あ、そうそう……この戦いタッグ形式だから……魔理沙は『アリス・マーガトロイド』と組む……っと」
アリス・マーガトロイド……魔理沙と同じく、魔法の森に棲む魔女。
『マリ×アリ』とかの人である……偏見じゃないです。
「おいおい……それだと俺のパートナー決まってるみたいな言い方だな」
「ええ、霊夢でしょ?」
「霊夢だろうぜ?」
「……なんでそうなる」
「「性格(ついでにデッキ)の相性が良いから!」」
「ぐぬぬ……何も言い返せん」
「それに優勝賞品もあるわよ」
「おおっ!なんか本格的だな!」
「見直したかしら魔理沙!」
「うんうん!」
「馬鹿にしてたことを否定しないのな……」
それからしばらくの時間がったのち、熱が下がって体が軽くなったのを機に自分のカードプールを確認する。
『おっ。やっと俺様のデッキを作るのか』
「と言っても、俺のデッキと相性が良いからいつものにギミックを追加する程度になっちますがな」
『ヒャハハハ!ならどうせならこのカードを使え』
「採用」
『早いな』
「ロマンカードじゃないか~……ん?じゃあ、この『白紙のカード』は?」
『さて、招待状にあった奴だ。俺様は知らないな』
一体このカードは……まさか『シューティング・スター・ドラゴン』なわけでも『レジェンド・オブ・ハート』な訳でもないだろう……しかも扱えないし……おろ?招待状の封筒の奥にのりで何かくっついている……底の方にくっついていて気づかなかった。
また手紙?
『そのカードは貴女の心を映すカード。平たく言えばスペルカードみたいなものよ。これは異変を解決してくれた貴女へのお礼の気持ちとして受け取ってちょうだい』
ほーびか……褒美なら仕方ないな……と言えど、クリアマインドしたことない俺にこのカードは危ない賭けじゃないですかね……俺
『それ俺様の力じゃねえか』
良いツッコミをありがとう……さて、そろそろ寝るとしますかね……
――――翌日――――
チュンチュンと雀の囀る音と共に目を開けた嵯峨。ぐぐっと背を伸ばし、台所へと向かう……どうやら霊夢はまだ起きていないようだ。まだ朝早いし……早すぎるかもな。
さて、ちゃっちゃっと朝飯作るか。流石に材料に余裕はあるしな……よし。
トントントントンというリズミカルな音が不意に止む。人間は突然、繰り返されていたことがなくなると違和感を感じるようになる……それは眠りが浅い人にはそれが強く感じ、目を覚ますことも多々ある。それは霊夢も例外ではなかった。
「……何の音?」
重い瞼をこすりながら音がした台所へと向かうと、
「あ、おはよう霊夢」
すっかり元気になった嵯峨が笑顔であいさつした。その眩しい笑顔に霊夢の眠気はどこへやら、吹っ飛んで行ってしまった。
「あ、おは……よう……あんたって……料理できたんだ」
「まぁ、兄貴に勝ちたいと思って切磋琢磨した技術の一つだけどな。これでも妹、弟たちには評判がいいんだぜ?」
「あんた何人家族なの?」
「いいや、一人っ子だ」
「は?」
意味が分からないと霊夢は首をかしげる。嵯峨はできた料理をさらに乗せ、居間に持っていく。霊夢も慌てて料理を持っていく。一通り置いた後、嵯峨は一呼吸置いて、
「霊夢、さっきの話は食後にしよう」
「え、ええ……そうね」
「「頂きます」」
パクッ……霊夢が先に食べる。さて、お味の程は……
「……おいしい」
眼を見開くほどでしたか、それは嬉しい。そして十数分後、二人の皿には綺麗さっぱり何も残っていなかった。
「ふ、いい食いっぷりだったな霊夢。明日は宴会だから夕食は控えめにしておくぞ。それに食った分、消化するためにも一時間後にはジョギングするぞ」
「なんで私用のスケジュール作ってんのよ」
「私生活が変化したら確実に君は甘えるだろ?」
「ぐっ……何も言い返せない」
昨日のお返しだ。ざまぁみそづけ……
「あ、食後の話」
チッ、そっちは憶えてやがったか。
「……別に面白い話じゃない。俺たちは孤児院っていう……実親に捨てられた身寄りのない奴らが集まる場所で育った仲間たちだ」
「親に捨てられた?」
「外の世界じゃな、親が事故にあっていなくなって引き取り先がいない奴とか、金がねぇから捨てられた奴もいるし、病気で親が死んじまったとかよくあるんだよ。絶の兄貴もそういうクチさ」
「……ごめん」
「いいさ。いずれ紫さんが勝手に言いそうだったしな」
「それもそうね」
と二人で笑う。
「おっと、そうだ……ほれ」
「ウチんとこの酒じゃない。明日宴会なのに飲むの?」
「当たり前だ、まずはお互いの労役を称えるのと次のデュエル大会でのパートナーになったお祝いとして……」
「なるほどね……じゃあ、」
「「乾杯」」
今日の最強カードもなし。次回をお楽しみに!