ガリ勉少女を愛くるしげにするためには、   作:ひょっとこ_

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今回の話で、だいぶ読者の方が離れてしまうかもしれません。
直前まで修正しようかと悩み続け、結局そうすることはせずに書き上げましたので、急な登場になってしまいました。
クラレンスの力の一端が明かされます。


第三話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がハリー・ポッター?」

 

 向かいの席に座っていた黒髪の少年が、若干面倒くさそうな顔をしながら、僕の問いかけに反応してくれた。

 

「うん、そうだけど……君もこの傷のことを聞きたいんだろ?」

 

 無造作に伸びた前髪を掻きあげて、彼は、額にできた傷跡を見せる。

 

「……お洒落?」

「違うよっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ごめん。とにかく君が有名だってことくらいしか知らなかったものだから」

「大丈夫だよ、気にしないで」

「よかった。僕は、クラレンス・A・オブライエン。アリスって呼んでね」

「アリス……? うん、まあ、よろしくアリス。僕は、ハリー・ポッター。ハリーでいいよ」

「よろしく、ハリー」

 

 と、一通りの挨拶をすませたところで、脇腹をつねる彼女の相手に戻らなければ。

 実はさっきからハーマイオニーが、ハリーの横に座っている赤毛の少年と睨めっこをしていて、これはこれで放っておけない感じだったんだけど……。

 

「ハーミー。ちょっと、痛いかな……?」

「……アリスのバカ」

 

 ああ、まぁ。

 たしかに、今のは僕の不手際かな。女の子を脇に、別の人と話し込んでしまったから。

 さて、どうやって機嫌をとったものかな。

 

「ところで、アリス。……その、そっちの子とは仲がいいの?」

 

 そっぽを向いてしまったハーマイオニーの気を引こうとあれこれ考えていると、ハリーがやや遠慮がちにそう聞いてきた。

 そっちの子とは、まぁ、まず間違いなくハーマイオニーのことだよね。

 やっぱり、知り合いだったんだ。や、赤毛の子とも睨めっこしてたし、そうなんだろうなぁとは思ってたけれど。

 

「うん。幼馴染で、一番の親友、かな……」

「へぇ、そうなんだ」

「あ、紹介しておくよ。ハーマイオニー・グレンジャー。同じ寮だし、仲良くしていこう。そっちの赤毛の子も。ね?」

「……ロナルド・ウィーズリー。ロンでいいよ。まぁ、よろしく」

 

 赤毛の子――ロンが、自己紹介をしてくれたことで、この場の四人がそれぞれ、お互いを知ったことになる。

 うん。友達一号、二号、といったところかな。

 どうやら、これで楽しい学園生活の第一歩を踏み出せたようである。

 と、思っていいんだよね……これ……。

 ハーマイオニーとハリー、ロンがどこか牽制しあうように視線を刺しあうのを横目にしつつ、僕はとりあえず夕餉に集中することにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食後、ダンブルドア校長の言葉を拝聴し、校歌を全生徒で歌った後、僕ら一年生は、各寮の監督生――寮での監督権限を持つまとめ役の上級生――に従って、それぞれの寮へと向かう運びとなった。

 ちなみに、グリフィンドールの監督生は、ロンのお兄さんのパーシー・ウィーズリーで、見た感じいかにも監督生って肩書きが似合いそうな人だった。

 しばらく寮への道を右へ左へ上へ下へと進んでいると、唐突に、列がその歩みを止めた。

 見れば、中空に杖の束が一つ浮いており、なんとそれがパーシー目掛けてばらばらと飛びかかってきているではないか。

 何事かと目を凝らせば、杖の束を手にした朧げな人影はふわりふわりと浮かんでいるのが、視界に写った。

 

「霊、ゴーストか……」

「それって、食堂とかで見たあの……?」

 

 思わず口をついて出た言葉に、隣にいたハーマイオニーが反応する。

 

「ああ。少し悪戯好きなやつみたい」

「ふぅん」

 

 にしても、目を凝らさないと霊を捉えることができないなんてなぁ。

 少し鈍っているのか、それとも日本のものとは存在の仕方が違っているのか。どちらにせよ、ホグワーツでも訓練は続けた方が得策かな……。

 

「ピーブズ! 姿を現せ!」

 

 鬱陶しい杖に痺れを切らしたパーシーが中空の杖束に向かって怒鳴り散らす。

 すると、仄暗い光をした目に、感じの悪い笑みを浮かべた意地の悪そうな顔つきの小男が姿を現す。

 

「おおぉぉぉぉ! かわいい一年生! ああ、なんて愉快!」

 

 杖を投げつけることが、だろうか。

 いや、だとしたらずいぶんとレベルの低い悪戯だ。

 校歌斉唱の時、とびきり遅い葬送行進曲で歌っていたあの双子の方がよっぽど悪戯の才能がありそう。

 

「ピーブズ、行ってしまえ! さもないと、血みどろ男爵に言いつけるぞ!」

 

 パーシーが実に腹立たしそうに叫ぶと、小男の霊、ピーブズが一瞬怯んだ。

 血みどろ男爵。たしかそんなゴーストがいたっけな。なるほど、その彼が対ピーブス用秘密兵器といったところなのだろう。

 だが、しかし。

 ここには僕がいるのだから、わざわざ血みどろ男爵を呼び立てる必要もないだろう。

 こういった性質の霊は、訓練にはちょうどいい手合いなのだし、活用しない手はない。

 ということで、パーシーを挑発し続けるピーブズを睥睨し、九字を切る。

 

「悪霊退散、急急如律令」

 

 少しだけ力を乗せた言霊を飛び回るピーブズにぶつけてやる。

 

「いっ、てぇぇぇぇ! なんだこりゃあ!? 誰だ、なにしやがった!?」

 

 まぁ、軽めの仕返しってやつだよ。今日は、僕も早く眠りたいし。

 突如として発生した痛みに一通り喚いたピーブズは、憤慨したようで、興醒めだとその姿を消した。

 

「な、なんだったんだ……?」

 

 この場のみんなの気持ちを代表したように口にしたパーシーは、やがて気を取り直したようで、僕らの先導を再開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この手の異能はあまりハリーポッターの世界観には合わないのでは、と悩み続けておりましたが、まぁ、好きに書かせていただくことにいたしました。
ご寛恕ください。

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