ハイスクールD×D-Formal Abnormal-   作:素品

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基本的に作者は設定厨。設定資料があれば原作なくても楽しめる人間です。

あと、今作では一誠ハーレムが激減します。それこそ先輩二人と聖女+不死鳥くらいしか残りません。あとは全員一人立ちします。

ということで、教会ツインズとオリ主の邂逅回

イリナさんの性格は再現不可編


一節 教会の獣
第一話 獣は料理好き


教会という組織がある。

 

聖地奪還を主眼とした十字軍、テンプル騎士団を母体とし東方・西洋の総てが悪魔殲滅という不退転の宿願の元一つとなり、神の威光と無垢なる信仰によって無力な子羊たちを守護する、祓魔師(エクソシスト)の本拠地だ。

 

十字軍遠征以前にまで遡るならば悪魔祓いそのものの歴史は古く、そして深い。

 

そんな歴史の中でも、有り余る武勇と力を語り継がれる者たちが幾人もいる。

 

特に現代の中では『最恐』とまで謂わしめた女性祓魔師、『最強』と称される神器遣いの少年の名が真っ先に挙がるであろうが、その中でも神の信徒であるなら誰もが畏れ嫌う『最凶』の存在があった。

 

曰く、神を貶める人非人。

 

曰く、人の皮を被る怪物。

 

曰く、異形。

 

その身には神の呪いか悪魔の奇蹟か数多の怪物を宿し行使する、その様から名付けられた忌み名は【十の王冠を拝する獣(エンブリオ)】。

 

黙示録の獣と同列に呼ばれる男は、人の崇める光に背を向けながら悪魔を狩り続けている。

 

◇ ◇ ◇

 

「・・・・・・ここ、なのか?」

 

「ここのはず、なんだけど?」

 

イギリス某所、一件のアパートメントを前にし、一枚のコピー用紙を片手に持った聖職衣に身を包んだ少女が二人いた。

 

燦々と降り注ぐ日の光に流れていく入道雲が夏の風情を感じさせる陽当たりのいい物件。周りを見れば走り回る幼い子供たちの笑い声や母親たちの談笑が聞こえ、近場には幾つもの店舗が並ぶ良立地。

 

ここが"例の男"が住む場所だと思うと釈然としない二人だったが、ありふれた平和と日常に満ちた風はお構い無しに頬を撫でていく。

 

「本当にここなのか、イリナ?」

 

「ここの筈なのよ、ゼノヴィア・・・・・・」

 

噂に聞く男のイメージとは真逆の印象を受ける住まいの環境に、ゼノヴィア・クァルタと紫藤 イリナは、半ば途方に暮れる思いで立ち竦んでいた。

 

「まぁいい、さっさと行こう」

 

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 

割りと大雑把な嫌いがあるゼノヴィアがズンズンと進んで行くのを追うように、栗色の髪を揺らしながらイリナも階段に足をかける。とにもかくにも動かぬ限り事態は進まない。決意を新たに、資料にあった名前と同じ表札が貼り付いた部屋の前まで移動する。

 

妙な緊張感が走る体を奮い立て、インターホンを押した。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

ピンポーン、という間の抜けた音が鳴ったが、扉の向こうが動く気配はない。

 

そんなことを二度、三度と繰り返したが、依然として家主が現れる気配は一切なかった。

 

「居ないのか?」

 

「いえ、鍵は開いてるわ」

 

イリナがドアノブに手を掛けると、それは何の抵抗もなく回った。

 

無用心だとも思ったが、そもそも教会の出頭命令をガン無視した所為で自分たち自ら出向く羽目になったのだから不法侵入くらい大目に見ろと、貯まる鬱憤をそんな八つ当たりに込めながら、ゼノヴィアは"布に包まれた長物"を、イリヤは"懐に忍ばせたもの"を確認し、少しの躊躇いを見せながらも扉を開け放つと、

 

「ん? なんだ、この香り・・・・・・」

 

ふわりと鼻腔を擽る嗅ぎ慣れない匂いに怪訝な表情を作るゼノヴィアだが、それは悪臭などといったものとは程遠い、空腹を誘うような温かなものだった。

 

たちまちリードに繋がれた犬のように匂いに誘われるまま部屋の奥へと進んでいくが、イリナは当惑に足を捕られ動けないでいる。

 

なぜ、どうして、こんなところで"この匂い"がする。

 

あり得ない、と思いながらも僅かに残る冷静な部分に相方を追えと急き立てられながら、漸く地から離れた足で踏み出し進んだ。

 

大した歩数を稼ぐこともなく視界は直ぐに広がり、棚賃の割には面積のあるダイニングに着く。

 

整頓されている、というよりは純粋に物が少ない印象が強い部屋。そんな情報を視覚から脳の隅に押しやり、すぐさまにキッチンの方へと視界を走らせた。

 

この匂い。

 

とても郷愁を掻き立てられる、母の手料理の匂い。

 

これは間違いなく―――

 

「? 何してるの、ゼノヴィア?」

 

カウンターの影に視線を落としたままに動かない彼女を見つけた。

 

普段からあまり感情を表情に出すことの少ないゼノヴィアだが、まるで道端で雪男とスレ違ったような、つまりは奇妙奇天烈な物を発見したような困惑しきった顔をしている。

 

ちょいちょい、と人差し指で影の向こうを示すゼノヴィアに言い知れぬ不安を感じながらも、恐る恐るに身を乗り出すように覗き込む。

 

最初に見えたのは、床の上に置かれた人一人分は有るような大きな置物。

 

というか、まんま人間がいた。

 

「~~~~っ!!?」

 

声にならない悲鳴を上げながら思いっきり背後の壁に貼り付くイリナだが、反対にゼノヴィアはゆっくりと男の背後へと近づく。

 

改めて見ると男は日本で言うところの"正座"の姿勢で微動だにせず、ただ一心に何かを見詰めているではないか。

 

"それ"が何なのか分からず、疑問符を浮かべるゼノヴィアに、それは唐突に"ピーーーッ"というけたたましい音を鳴らし始めた。

 

突然のことで反射的に背中の物に手を伸ばしかけるが、危惧するようなことは発生しない。じゃあ、今のは何の音なのか? そう思い直して男の背越しに見える、家電品らしき物は彼女にとって見覚えのないもののため、何なのか判別することできない。

 

すると、音が鳴り止み数秒、男がそれのボタンらしきものを押すと、上蓋が緩慢な動きでその中身を晒しだした。

 

「あれ、それって"炊飯器"?」

 

戦線復帰したイリナの声と共に"それ"、炊飯器は己が成した仕事の成果を三人に示す。

 

そこには地味色に燦然と輝く、『炊き込みご飯』があった。

 

◇ ◇ ◇

 

「お代わり、頂けるだろうか」

 

「ペース早ぇなお前いいぞ遠慮せず食せ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

なんだこの状況は。人生未だ十七年と少しという若さだが、それでも紫藤 イリナという心がこれほどに困惑で満たされることはなかった。

 

というのも現在、先程まで正座していた変人、もといこの部屋の主と思われる『目に黒い包帯を巻いた男』と、彼が作った料理で昼食を共にしているということにだ。

 

紫藤 イリナは日本人だ。

 

部屋に入った時に嗅いだ、日本固有の出汁と味噌の香り。

 

日本に居たのは物心ついての数年程度だったがその香りは頭が、何よりも日本人としての血が覚えている。

 

「どうした? さっきから箸が進んでねぇけど、もしかして食えないものあったか?」

 

そう言って心配気に声を掛けてくる彼にどう返すべきか、そう思い本日の献立を見渡す。

 

まずは主食の炊き込みご飯。主菜に海老や白身魚の天ぷら、副菜には葉物野菜のお浸し。そして豆腐と玉ねぎにワカメを入れた味噌汁と、昼食には少々重めのラインナップ。

 

だがしかし、日本食離れて早数年。そんなイリナに、この布陣は忘れかけた日本の血を揺り起こさすには十分過ぎた。

 

「・・・・・・いえ、大丈夫です」

 

どれもこれも美味い。

 

天ぷらなんて揚げたてであるから美味いのは当たり前だとしても、味噌汁の全身に染み入るような独特の旨味、何よりも大豆の魔術師こと日本が代表する調味料、『醤油』の存在があるのは大きい。

 

そして、主食たる炊き込みご飯。

 

通り一辺倒な鰹出汁ではない、複数の素材から取られた合わせ出汁の地味深さ。大きめに切られた筍や椎茸、人参たちもよくその出汁を吸収し、米たちも彼らの味をよく吸い上げており、もはやこれだけで十分にご馳走である。

 

となりのゼノヴィアも、最初こそ醤油や味噌の塩っ気に難色を示していたが、慣れてしまえばこれこの通り。表情こそ変わらぬが、その瞳には星屑が煌めいている。

 

日本文化初の彼女でもこれだ、純日本人であるイリナに至っては、先程から祭り囃子と一緒に理性に的確なボディーブローを撃ち込んでくる本能を抑えるのに必死であった。

 

「なぁ、お嬢さん方。食いながらでいいから聞きたいことあるんだけど、いいか?」

 

「んむ?」

 

「あ、はい。なんでしょうか?」

 

「俺に用があって来たんじゃねぇの?」

 

「「あっ」」

 

半ば夢中に成りかけていた二人だったが、包帯男の言葉に本来の目的を思い出す。

 

慌てて取り繕おうとするイリナだが、対してゼノヴィアはマイペースに食事を続行している。そんな彼女が色々窘めるようなことを言われるのを眺めながら、包帯男は口を抑えて肩を震わせているのだった。

 

凸凹コンビ、二人はまさにそんな感じである。

 

「それで、お前が【(ビースト)】でいいんだな?」

 

「・・・・・・あぁ、まぁ、そうだよ」

 

詰め寄るイリナを左手で制し、右手のフォーク(箸は断念)で海老を突き刺しながらゼノヴィアが問いかけに、包帯男は渋々ながらに頷いた。

 

どうやら本人自体は、この呼び名を好んではいないらしい。

 

「こう言ってはアレだが、本当にお前がそうなのか? 噂とは似ても似つかないが」

 

「噂じゃ、俺っつーのはどういうアレなんだよ。いや、いい。大体分かってる」

 

どうせ怪物とかそんなんだろ、手を合わせながら空になった茶碗を重て片付けながら男は呟くように溜め息を吐く。

 

そんな彼に次はイリナが質問を飛ばした。

 

「"その目"だけど、見えてるの?」

 

そう言って彼女が指差したのは、男の視界を隙間なく塞ぐように巻かれた黒い包帯。

 

誰がどう見ても、今の男は盲目の状態だ。

 

そうでありながら食器の出し入れや食材の調理を問題なくこなし、今も自分を指すイリナの指を凝視している。

 

「確り見えてるよ。目の前に青い髪に緑のメッシュ、栗色のツインテールの女の子が二人いるのも、はっきり分かる」

 

男の返答は、肯定だった。

 

二人の髪色を、二人それぞれを見ながらに答えてみせる。

 

「ということは、その包帯のお陰で見えてるってこと?」

 

「魔導具の類いか?」

 

「どっちも正解。一応、異端審問(インクジエイター)にも認可は通してる品だよ。見える物より、見えないモノの方がよく見えたりするけどな」

 

一頻り笑うように言い放つ彼だったが、つまりは"そんなもの"を使わなくてはいけないような理由があるということに他ならない。

 

今回の仕事において、この男の存在はかなり大きい。

 

前評判抜きにしても、単純な戦闘能力で言えば教会でもこの男に勝る者はいないと言う。『最強』が繰り出す天変地異の中を平然と突き進んで来たという話すらあるくらいだ。

 

 

 

 

 

―――誰がこの獣と匹敵し得ようか。誰がこれと戦うことができよう―――

 

 

 

 

 

ヨハネの黙示録 13章の一節。

 

誰が最初にそう称したかは分からない。

 

だが、彼にはそう揶揄されるだけのものを持ち、そう囁かれ続ける力を奮うことができる存在だ。

 

事実、教会の元で働く者でありながら、彼に信仰心はない。金で雇われ、得るために悪魔と戦っている。神の為に戦う彼女たちからすれば、そんな不埒な理由で戦う者と一緒にされるのは我慢ならないだろう。

 

そうだとしても、神の愛は深く、それでいて分け隔てないもの。

 

「とりあえず、自己紹介だな。これから一時の仕事仲間だとしても、名前くらいは知っておきたい」

 

ともかくも、事は既に起きている。

 

男に仕事の内容を伝える。急がねば甚大な被害が出ることも。

 

ここ数世紀でも類を見ない大事件が始まる。

 

「俺は賽之目(さいのめ) 双六(すごろく)。少しの間だろうけど、よろしく」




~賽之目 双六~
種族:???
性別:男性
身長:177
年齢:24
属性:中立・善
特技:家事全般,日曜大工
好きなもの:家族,料理
嫌いなもの:食べ物を粗末にするヤツ

???:???

忌み名:十の王冠を拝する獣(エンブリオ) etc

容姿:適当に切られた限りなく黒に近いダークブルーの髪と、目を塞ぐように巻かれた黒い包帯が特徴。黒地の軍用ジャケットに同色のボトムスが仕事着。

その内、キャラ設定も纏めます。

今回の主人公はゴッドイーターのアレコレを能力としていますが、彼を遊びで瞬殺するようなキャラもモリモリ出てくるのでよろしくお願いします

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