やはり俺が元スプリガンなのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

20 / 21
更新が不定期ですが、日曜になるべく
頑張ってみます!






第20話 川崎の事情

 

 

 

自宅はいい。心が安らぐものだ。人には居場所が必要だと言うけれど、それはとても大事なものだ。勿論、俺にも必要だ。現在はリビングでゴロゴロしている。ただ怠惰を貪っている訳ではない。連絡を待っているのだ。およそ異性からの華やかなものとは違い、業務的な無骨な連絡だ。

 

へぇ~へぇ~へぇ~♪

スマホにメール受信の音が鳴った。普段ならほとんど無視するのだが、待ちわびていた連絡かもしれないので確認する。

 

 

 

 

「さすがアーカムの情報部だな。仕事が早いぜ。」

 

 

 

翌日の放課後、奉仕部に集まる面々。どうやら川崎の素行調査と、解決案をみんな考えてきてくれていた。アニマルセラピーとか、ジゴロ作戦とか。一番まともだったのが、平塚先生に説得してもらうだった。なんだよ、ジゴロ作戦って。失敗臭がプンプンする。

素行調査については、アマチュアなりに調べてあったのだろう。市内にある二件の店が挙がっていた。どちらかはもう知ってるけどな。

 

 

 

「みんな聞いてくれ。俺も調べてみたんだ。それにより解った事がある。」

 

 

 

そこで名推理を披露した。

アーカムの情報部使ったけど。

 

「川崎は、市内のホテル内にある『エンジェル・ラダー』で働いている。年齢は詐称しているらしい。動機についてだが、ある程度の予想は出来ている。オイ、大志。小町に近づくな。」

 

 

「ち、近づいてないッス!来た時からこの距離ッス!」

 

「比企谷くん?貴方は重度のシスコンね。」

 

話してる最中に近づくとは…油断のならん餓鬼だな。やはり駆逐するべきか?まぁいい。話を戻そう。

 

 

「続きだ。川崎は大学費用を稼ぐために働いている可能性がある。調べによると、川崎家は決して裕福ではない。大志の塾の費用に、下の兄弟の事も考えれば、川崎の学費に割く余裕などない。」

 

 

「確かに…姉ちゃんが変わったのは俺が塾に入ったぐらいからッス!」

 

 

「さらに付け加えるなら、総武高校は進学校だ。意識の高い奴なら、この時期から予備校やら考え始めるもんだ。きっと川崎は大学に行きたかったんだろうな。」

 

 

 

俺が話を終えると、雪乃も、由比ヶ浜も、小町も、大志も、学生の悩みとしては大きすぎる悩みだった事を痛感したようだ。ちなみにシリアスな展開なので、今回は戸塚は呼んでいない。

 

 

 

「そんな…じゃあ、俺、どうしたらいいんスか……。」

 

 

 

皆が一様に沈黙する。

川崎の悩みは大志に伝わった。次は、川崎に大志の想いを伝えなきゃならんな。やっぱり兄弟は大事だもんな。

 

 

 

 

「俺に考えがある。雪乃、由比ヶ浜、頼めるか?」

 

 

 

 

その日の夜。市内のホテル前で俺達は待ち合わせをした。ちなみにホテルはアーカム傘下のホテルなので、すでに話は通してある。つまり俺達が未成年者として、ホテル内で止められる事はなくなった訳だ。

待ち合わせ時間になると、色気が半端ないドレス姿の二人組が現れた。由比ヶ浜は胸元が強調された(お約束)ドレスで、雪乃のドレス姿は、妖艶でミステリアスな美しさがあった。例えるなら某マンガの魔女、侑子さんみたいだ。素直に見惚れてしまった。

 

 

 

「こんばんは、比企谷くん。」

 

「ヒッキー。お待たせ!」

 

 

 

ずっと見惚れてると、二人が何かモジモジしてるので、小町の指南どおりに誉めることにした。

 

 

「なんつーか、そのまぁ、二人共、綺麗だぞ。」

 

 

 

正確には片方はエロくて、片方は綺麗だったんだが。二人は誉められたのが嬉しかったのか、顔を赤らめ上機嫌になり、終始ニコニコしていた。ここで立ち止まってるのも人目につくので、ホテルに二人をエスコートして、エレベーターに乗り込んだ。

つーか、ホテルにエスコートって、なんか響きがエロくない?

 

 

 

「ところでさ、ヒッキーの服装もカッコいいよね!や、紳士的な意味でさ!」

 

「私もそう思うわ。比企谷くん、ドレスコードを知ってたのね?そのアルマーニ、とても似合っているわ。」

 

 

「ん?あぁ、ありがとさん。」

 

 

 

全部アーカムからの支給品だけどな。こんなの高校生で持ってたらおかしいだろ。

 

俺の両腕は塞がった。右腕由比ヶ浜、左腕雪乃。どこの合体ロボだよ。もはやエスコートというより、捕らわれ宇宙人の気分だ。それにしても腕に柔らかいものが!意識が、感覚がぁぁぁ!これが、神聖モテモテ王国なのか……!

 

 

エレベーターを降りて、エンジェル・ラダーに入っていくと、川崎がいた。さすがアーカムの情報は正確だな。俺達は川崎の前のカウンター席に座った。

 

 

「いらっしゃいませ。何をお飲みになりますか?」

 

 

「私はペリエで。」

 

「え?あ、や、あたしも同じのを!」

 

 

 

由比ヶ浜、テンパりすぎだろ。あと雪乃さん、馴れてますね。ブルジョワなんですね、わかります。

 

 

「俺は、ブルームーンを頼むよ、川崎沙希。」

 

 

「はい、かしこま、なっ!なんでアタシの名前を!?」

 

 

「俺達は大志の依頼でここに来た。奉仕部と言えばわかるか?」

 

 

 

目の前の川崎は驚いていたが、俺達が学校の奉仕部として来ていることを告げると、途端に冷めた表情になった。ここ最近の活躍で、奉仕部の知名度は上がっているらしい。(由比ヶ浜調べ)

 

 

「そんで?あんたらはアタシのバイトを辞めさせに来たの?」

 

 

「それも含めて要求は3つだ。深夜バイトを辞めること、家族にお前の想いを打ち明けること、最後は仕事終わったら駅前のマックに5時半に集合な。」

 

 

「なんなの、ソレ?なんでアンタの要求を飲まなきゃいけないワケ?アタシに何のメリットもなくない?それに、人の家庭の事情にまで口を出さないでほしいんだけど。」

 

 

 

言ってる事はごもっともだ。だから俺はちゃんとメリットを提示してやる。その上で選択肢がないって事もな。

 

 

「まぁ聞け、川崎。お前が働いてる理由は知っている。だから、このバイトを辞めさせても、また別のバイトを始めるだろ?だが、俺には解決策の用意がある。話だけでも聞きに来てくれないか?」

 

 

「……わかった。仕事あがりに行くよ。その時に解決策とやらを聞かせてよ?」

 

 

 

交渉成立だ。先にいくつかの要求を提示することにより、本命の要求以外を破棄することで通りやすくする。交渉術のテクの一つだ。

 

 

「じゃあ、お代は置いておくぞ。」

 

 

「…ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」

 

 

「あぁ、そうそう。ブルームーンの意味を知っているか?」

 

 

「は?アンタ何を言ってるの?」

 

 

「知らないのか?バーデン失格だな。カクテル毎に意味があるんだよ。ブルームーンの意味は、『出来ない相談』『奇跡の予感』だ。」

 

 

 

ホテルを出たら二人が話しかけてきた。さっきまで君ら空気だったよね?

 

「ヒッキーすごいね。なんか大人の世界ーって感じがしたよ。」

 

 

「確かに…あの交渉術は見習いたいものね。それに解決策が気になるわね。どうするの?比企谷くん。」

 

 

「全てはあとで話すさ。早朝5時半に、もう一度集まってもらってもいいか?」

 

 

 

あんまり深夜や早朝に、年頃の女の子を連れ回すのは良くないと思う。だから俺は二人の意思確認をした。

 

 

「もちろん行くわよ。最後まで見届けさせてもらうつもりよ。」

 

「あ、あたしも!左に同じだし!」

 

 

 

そこはお前、右に同じだろ?アホの子は健在だな。じゃあ、クライマックスといきますか。

 

 

 

 




大志の依頼は次回解決予定!

八幡の解決策とは?



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。