灰と幻想のグリムガル 聖騎士、追加しました   作:2222

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閑 話  電気羊はアンドロイドの夢をみる

 

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 俺ひとりなら、わりとどういう状況でもやっていける。

 

 生きるだけなら簡単だ。

 なんとでもなるし、なんとかなる。どうにかなる。

 大丈夫だ。

 

 

 だけど時折、同じ夢を見る。

 

 大した夢じゃない。

 

 

 晴れた日、場所はわからない。

 森の中、いやダムロー旧市街だろうか、それとも義勇兵舎の中庭か?

 

 見覚えがあるようでない、どこか。

 

 日のあたる暖かな場所。

 居心地がよくて、安心できる場所だ。

 

 

 

 そこにみんながいる。

 

 何年も前というわけでもないのに、ひどく懐かしい。

 

 ハルヒロがいる。

 シホルとユメがいる。

 モグゾーとランタがいる。

 

 みんな座り込んで、それぞれが好きなものを食べながら、なにか話している。

 

 ハルヒロはパンを千切りながら丁寧に食べているし、ユメは干し肉を片手に、足を崩して笑っている。

 モグゾーの弁当は相変わらずたっぷりあるし、シホルが食べているのはドーナツだろうか。

 ランタは相変わらず食べ方が雑だな。

 

 そう思って、少しだけ笑う。

 

 声は聞こえないけれど、みんな寛いでいて、安心しきった笑顔で楽しそうだ。

 

 懐かしいじゃれあい。

 

 

 俺はそれを見るたびに考える。

 

 まだ、みんなそんなふうに過ごしているだろうか。

 それとも、もうみんな変わってしまったのだろうか。

 

 あの貴重な時間は、どうなってしまっただろう。

 

 

 

 ほんの少し、誰も気がついていないほど少しだけ輪から外れたところに俺の姿もある。

 俺はいつも通り笑顔を浮かべている。

 

 俺は、会話に加わることもなくみんなを眺めている。

 俺が何を考えているのかは、わかっている。

 

 

 どこか居心地が悪いのに、その輪に入りたいとも思っている。

 

 けど俺みたいな奴がそこに入る資格はないとも思っている。

 

 そういう顔だ。

 

 実際そう思っていたし、手の届かなくなってしまった今もそう思っている。

 

 みんなお人よしだ。

 人のいい、善人だ。

 

 俺とは違う。

 

 これは未練なんだろうか。

 選択を後悔してるのだろうか。

 

 

 ならどうして俺は、俺の顔はあんなに楽しそうなんだろうか。

 どうして少し前屈みで、様子を見ていて、会話に加わるタイミングを見計らっているように見えるんだろう。

 

 まるで、背中を押してくれる誰か、を待ってるみたいだ。

 

  

 

 

 生きるだけなら簡単だ。

 

 俺ひとりなら、やっていける。大丈夫だ。どうにかなる。

 

 

 なのにどうしてそんな夢をみるのだろう。

 

 目が覚めれば、忘れてしまうのに。

 

 

 誰かが、俺を呼ぶ声がする。

 

 

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