インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回は戦闘シーンがほとんどありません。
それとヒロインですが、一夏には箒、鈴、シャルが確定で
機龍のヒロインは簪、セシリア、真耶で確定してます。
楯無は今の所、機龍サイドにしようと思ってます。
ただ、ラウラをどっちのヒロインにするか迷ってます。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第3話

前回までのあらすじ

セシリアと決闘する事になってしまった機龍と一夏 だが、機龍自身は

戦いを拒んだが、望む望まないを関係なしに戦う事になってしまった

かつて、破壊の限りを尽くし、同族を傷つけた力を嫌悪していた機龍

しかし、試合は開始されてしまい、本来の姿である『3式機龍改』に

戻った機龍は何とか試合を開始した だが、力に対する嫌悪からセシリアに対して

引き金を引けない機龍 それでも咄嗟に放ってしまったメーサーが

セシリアを掠ったのを見て、機龍は機能を停止、気絶してしまった

 

医療班によって医務室に運ばれた機龍

その部屋には一夏、箒、千冬、真耶、セシリアの姿があった

一夏「機龍。大丈夫なのか」

真耶「医師の人の話では、極度のストレスによる疲労が原因だそうです」

千冬「まさか、こいつがここまで戦いを拒んでいたとは。.

   今回は私の落ち度だな。もう少し慎重になるべきだった」

箒「……。織斑先生は、何か知っているんですか?」

千冬「?いきなりどうした?」

箒「いえ。ただ、姉さんと親しい先生なら、何か聞いていると思っただけです」

千冬「成程。……確かにアイツから機龍についてはいくつか聞いたことがある。

   が、それがどうした?」

箒「私は、どうして機龍が力を拒むのか、気になったもので」

セシリア「この方は、倒れた時もうわ言のようにつぶやいていました。

     『力なんかいらない』と」

千冬「……。望んで手に入れたわけでもない力は、嫌悪の対象でしかない。

   そう言う事だろう。」

真耶「え?どういう事ですか?」

千冬「悪いが、ここから先は機龍のプライバシーに関わる。

   私の口からは話せない」

 

その時、ゆっくりとだが、機龍が目を覚ました

機龍「こ、こ、は」

一夏「機龍!?お前、目、覚めたのか!?」

真耶「織斑君、病人の近くで大きな声はダメですよ。」

一夏「は、はい」

機龍「一、夏。……僕は」

上半身を起こし、そう言いかけて、フラッシュバックする試合の記憶と、

それと重なる過去の戦い

  「っう!ごほっ!げほっ!」

咄嗟に口元を抑える機龍 嘔吐はしなかったが、むせ返る機龍

一夏「機龍!お前、大丈夫なのか?」

落ち着きながらも、今度は頭痛に襲われ、頭を押さえる機龍

機龍「僕は……!僕は……また……僕は、誰も、殺したくなんか。

   僕は、殺したくなんか無いんだ……!そ、れ、なのに、僕はまた。

   あの姿に……僕は、僕は戻りたくないんだ。

   ……なのに、……うぐっ!ああぁぁぁぁ!」

瞳の色を失い、呟くと頭を押さえながらまた倒れた機龍

一夏「機龍!?おい機龍!?しっかりしろ!」

箒「一夏、騒ぐな」

一夏「け、けどよ!」

咄嗟に機龍に駆け寄る一夏とそれを止める箒。

箒「また眠っただけだ。お前が取り乱しても始まらないだろう」

一夏「……わかった」

真耶「……それにしても。……『殺したくない』、ですか」

セシリア「まさか。彼は?」

真耶「えぇ。言いたくはありませんが、機龍君はその。……この年で、

   殺し合いを。それも、本物の戦いを、経験しているとしか、

   考えられません」

一夏「そんな!?こいつは。……機龍はなんで、そんな」

箒「ショックの様子から見ても。……トラウマの限度を超えている。

  もう治るとは考えられないな。それに」

一夏「何だよ?」

箒「機龍は『戻りたくない』、そう言っていた。それに、機龍が

  あのISを展開した時も。あれはISではない様に思えた。

  機龍が言った『あの姿』とは、あの銀色の姿の事じゃないのか?」

真耶「ま、待ってください。それはいくら何でも飛躍しすぎでは?」

そんな時だった。

 

束「もう~箒ちゃんは、結構勘が鋭いんだから、困るんだよね~」

箒のポケットから束の声が聞こえてきた

咄嗟に取り出した携帯には彼女の顔が映っていた

箒「ね、姉さん!?」

束「やっほ~箒ちゃん」

箒「な、何の用ですか、こんな時に」

束「こんな時だから、だよ。ついさっきリュウ君のメンタルデータを見たら

  0どころかマイナスに下がりっぱなしだったからね。さっきまでの

  会話も聞かせてもらったよ」

一夏「束さんは……機龍の過去の事、知ってるんですか!?」

束「うん。元々リュウ君を見つけたのは私だからね。一通りは聞いているよ。

  彼の、過去の『傷』の事は、ね」

一夏「まさか。……機龍は本当に、人殺しを?」

それを聞いた束は黙ってしまった。そして数秒後

束「いっくん。それに他のみんなにもあらかじめ言っておくよ。

  もし、リュウ君の過去が知りたいのなら、後戻りできなくなる覚悟を

  しておいてね」

真耶「それって、どういう意味ですか?」

束「そのまんまの意味だよ。もし、リュウ君の過去を聞いて、それを外に

  公表しようとしたら、そいつは私が潰す」

それを聞いて表情が硬くなる一夏達。

 「私には、リュウ君を起こした『責任』があるんだ。だから、

  リュウ君を守る義務もある。リュウ君の事を国がしれば、

  全力でリュウ君を捕まえに来る。

  そうなれば、リュウ君はもう、『人間を信じられなくなる』。

  だからこそ、聞いたら後戻りできないよ?それでも良いの?」

それを聞かれた一夏達は……。

一夏「構わない。俺はこいつが傷ついてるなら、救ってやりたい。

   そう思ってます」

それを聞いた箒や真耶もうなずき、セシリアは……

セシリア「私も構いません。覚悟はあります」

    『私も知りたい。あの涙の理由を』

束「わかった。でも、約束してもらう事があるんだ。

  今日君たちにリュウ君の過去を私が話したことは

  彼自身には内緒だからね。わかった?」

頷く4人

 「それじゃ。まずは機龍の過去について話すね」

そうして語られ出したのは、まずは……。

原爆実験で生み出された機龍、『初代ゴジラ』の話。

人の手によって生まれたゴジラが人の手によって

死ぬまでの経緯。

 「人間の最終兵器で、機龍は骨だけを残して、太平洋に沈んだんだ」

真耶「ひどい……!」

そして次に語られたのは、ゴジラの骨を使って作られた機械のゴジラ。

メカゴジラ、機龍の事だった。

箒「じゃあ、やはりあの姿が……!?」

束「そう。あれがリュウ君の本来の姿。本物は60メートルを超える

  サイズ、だそうだよ」

そのまま語られる同族、息子かもしれないゴジラとの三度に渡る戦い。

一夏「そんな!?……機龍は。家族かもしれない相手と殺し合いを

   したって言うんですか!?」

束「そう。……そして、最後の決戦の最中、自我に目覚めたリュウ君は、

  人の手を離れ、動けないゴジラを抱えて、日本海溝に沈んだ。

  はずだった。

  でも、機龍はなぜかこの世界に来てしまった。人間の姿になって、ね。

  機龍が力を嫌う理由、それは自分の家族を傷つけた事、

  今まで殺戮を繰り返してきた事、それが理由。彼に取っての力は、

  『血塗られた力』でしかないからだよ。殺人なんてもんじゃない。その手は、

  同族と、何千何万と言う人の血で汚れているんだ。

  機龍の中にあるのは『異世界の怪獣』の力なんだよ」

それを聞いて驚愕する4人 

 

一夏「千冬姉は、知ってたのか!?機龍がこんなだって事!?」

千冬「束から、大よそは聞いていた。だが、ここまで力を拒絶

   するとは。計算外だった」

箒「姉さんは、姉さんはどうしてこいつを学園に入れたのですか!?」

束「……。私としては、リュウ君に少しでも幸せな学園生活を

  送ってほしかった。そこならちーちゃんや箒ちゃん、それに

  いっくんも居るから、少しはリュウ君も元気になるかと思ったんだけど」

千冬「結果は逆効果になってしまった、と言う訳だ」

一夏「あの、機龍はこれからどうするんですか?学園には」

束「それは、わかんない」

千冬「少なくとも、決めるのはコイツだ。私達が口を挟むことじゃない」

一夏「そう、ですよね」

束「みんなに、最後に言っておくね。できれば、機龍には、この世界を

  好きになってほしいんだ。私が歪めてしまった世界でも。

  その為に、みんなには協力してほしいんだ!この通り!お願い!」

画面に映っていた束が頭を下げた

千冬「束、お前らしくないぞ。なぜそこまでこいつに拘る?」

束「……。リュウ君を見てたら、思ったんだ。人間に翻弄されて、

  最後の最後まで報われないなんて、悲しすぎるって。

  ISを作って、こんな世界にしちゃった私だけど、せめて」

箒「姉さん」

千冬「こいつだけは救いたい、か?」

束「今更、って言いたいのは十分わかってるつもりだよ。

  でも、お願い。リュウ君に少しでもいいから、生きる幸せを教えてあげて。

  ……必要が有ったら、リュウ君の端末か、箒ちゃんのを使って連絡して、

  それじゃ。」

そう言うと束との通信は切れた。

その後、沈黙がその場を支配した。やがて……

千冬「織斑、篠ノ之、オルコット。お前達は部屋に戻れ。

   後は我々で何とかする」

一夏「はい」

箒「わかりました」

そう言って部屋を出て行く3人。

千冬「それと、私から言っておく事がある。力は使い方を間違えれば

   機龍のように、何もかもを失って、罪と罪悪感だけを背負う事になる。

   力の使い道とその意味を。見失うなよ、ガキども」

セシリア「……はい」

 

廊下に出た三人だったが……

一夏「オルコット、話がある」

セシリア「……。何ですの?」

一夏「お前との試合、俺は正々堂々とお前と戦う。

   負けるつもりは無い」

セシリア「……その言葉、そっくりそのままお返ししますわ」

箒「……」

それだけ言うと、セシリアと一夏達は別れた。

皮肉にも、この一件が彼女達の『力』に対して深く考えるようになった

一因だった。

 

その頃、医務室に残っていた真耶と千冬。

千冬「山田先生は、こいつの事をどう思っている?」

真耶「かわいそう、とは思っています。人間に生み出され、殺され、

   眠りから掘り起こされて、利用され、家族と戦わされ……。

   この子の幸せは、一体どこに。うぅ」

語り始めるのと同時に涙を流し始める真耶

  「どうして、こんな子供が罪を背負わなければならないのですか?

   どうして……世界はこんなにもこの子に残酷なのですか?」

千冬「それは全て過去の事だ。ましてや異世界での出来事だ。

   我々にはどうしようもない」

真耶「だったら。私は教師として、この子を正しい方向に導きます。

   せめて、この子には笑顔でいてほしいから」

千冬「そうですか。……私はこれで」

真耶「はい。後は私に任せてください」

その後、千冬も医務室を後にした。

 

それからしばらくして、落ち着きを取り戻した機龍が目を覚ました

機龍「山、田……先生」

真耶「はい、先生ですよ。機龍君、もう大丈夫ですか?」

機龍「はい。……すみません、迷惑をかけてしまったみたいで」

真耶「いいえ、気にしないでください。これも先生の務めですから」

すると機龍は立ち上がってベッドから降りようとした

  「あの、大丈夫ですか?まだ寝ていた方が」

機龍「大丈夫です。……もう、問題なしです。」

そう言って薄く笑ってくれるけど、とてもそうは見えない

真耶「そうですか。とにかく、今日はもうこんな時間ですし、

   自分の部屋に戻って、ゆっくり休んでください」

機龍「はい、ありがとうございます」

真耶「それと。私に相談出来る事や力に成れる事があったら遠慮なく

   声を掛けてください。生徒の心をケアするのも、教師の務めですから」

機龍「はい。……失礼します」

そう言うと、機龍は医務室を後にして、自分の部屋へと戻って行った

残された真耶は……

真耶「そう、あの子のために、私がしっかりしなきゃ……!」

そう息巻いていた

 

その後、重い足取りで部屋へと戻った機龍

機龍「ただいま」

簪「機龍?……お帰り。大丈夫なの?」

機龍「何、が?」

簪「見てたよ。試合中にいきなり倒れたの。大丈夫なの?」

それを聞いて心臓が跳ね上がる機龍

機龍「だ、大丈夫だよ。……馴れなくて、ストレスで倒れただけ、

   だから、心配、しなくて、良いよ」

そう言ってベッドに腰かける機龍

簪「でも。……なら、どうして……機龍は『泣いているの?』」

そう、知らず知らずのうちに機龍は涙を流していたのだ

機龍「あ、あれ?変、何で。止まらない。……おかしいな」

そう言いながら手で涙を拭く機龍だが後から後からと、止めど無く

溢れてくる涙 

その理由、それは『簪にあの姿を見られたくなかった』から

 

簪や一夏と同じ多くの人を殺した力に科学と言う『枷』を付けた機龍

出来る事なら人には見られたくは無かった

機龍が試合中に倒れたのも、多くの生徒が見ている、と言うのが一因だった

ましてや、ルームメイトの簪はもっての外だった

  「ゴメン。なんでもない、何でもないから……。気にしないで」

簪「でも」

機龍「ゴメン、本当に何でもないから」

そう言って俯きながら必死に涙を拭おうとする機龍

簪「……」

するとベッドに腰かけた機龍の前に周り混んでその肩に手を置いた

 「機龍。私には、あなたがどうして泣いているか、わからないけど。

  もし、私に出来る事があったら教えてね。協力するから」

機龍「簪。……ありがとう」

そう、機龍が呼びかけると、機龍は眠るようにしてベッドに倒れてしまった。

 

眠ってしまった機龍に毛布を掛けて、再びパソコンに向かい合う簪

だが、その表情は暗かった

簪『私って、ひどいよね。機龍が私を頼ってくれるのに、

  優越感を感じてる。……私って、最低だ』

そう思いながらパソコンを操作する簪だったが、その表情は暗かった

 

そして翌日

普通に登校してきた機龍

自分の席に着席するが、周りの視線が気になってどうしても気分が

優れない機龍

と、そこに一夏達が入って来た

一夏「機龍?お前、大丈夫なのか?今日くらい休んだ方が」

機龍「ううん、大丈夫。……ゴメン、みんなには迷惑かけたみていで」

一夏「気にするなよ。俺達はダチなんだからさ。困った時はお互いさまさ」

箒「それに、機龍はまだ幼い。我々と同じことをするのも、無理が

  あったのだろう。体は大事にな」

機龍「篠ノ之さん」

箒「私の事は箒で良い。苗字は被っているわけだしな。」

機龍「箒。……ありがとう」

一夏「そういや、苗字が同じって事は、機龍は箒の弟か?なんて」

箒「な!?お前は突然何を言いだすのだ!」

機龍「箒、お姉ちゃん?」

そう言って箒を見上げる曇りのない視線 

それを見て、顔を赤くする箒

一夏「お?まんざらでも無さそうだな」

箒「う、うるさい!」

そう言って二人に背を向ける箒

一夏「まぁまぁ、そう拗ねるなって」

機龍「一夏」

一夏「ん?」

機龍「一夏、お兄ちゃん」

機龍が一夏を見上げながらそう言った瞬間。

   『ブハッ!』と後ろの方で音がした

見ると複数の女子が鼻血を出しながら倒れた。

 

一夏「お、おい!なんか急に人が倒れたぞ!」

機龍「こういう時は担架を持ってくる?」

原因となった男子2人はその理由を知らなかった

と、そこに千冬が入って来た

千冬「ほら、席に着け。授業を———何で鼻血を出して

   倒れている奴らがいるんだ?」

その後、復活した女子たちを交えながら、授業は始まった

 

そしてその日の放課後 

セシリアと一夏による、代表を決める最後の戦いが始まろうとしていた

一夏のピットに集まる箒と機龍

当の一夏は灰色のようなISを纏っていた

千冬「良いか、一次移行まで待っている余裕は無い。今は初期設定の状態だが、

   行けるな?」

一夏「あぁ、もちろん!」

機龍「一夏お兄ちゃん」

一夏「機龍?どうした?」

機龍「こ、こういうのは、不謹慎かもしれないけど。『頑張ってね』」

一夏「あぁ!行って来るぜ!」

そう言うと一夏のIS『白式』がカタパルトから射出された

 

やがてセシリアの機体『ブルー・ティアーズ』と相対する白式

セシリア「……来ましたわね」

一夏「悪いな。待たせちまって」

セシリア「そのような事は気にしていません。謝罪は不用です。 

     さぁ、始めますわよ!」

そう言うと、持っていた武装『スターライトmkⅢ』からエネルギーが

発射され、一夏の肩に命中した

    「あなたには負けませんわ!絶対に!」

一夏「奇遇だな。俺も負ける気なんか無いぜ!」

そう言いながら近接ブレードを展開する白式

セシリア「あなた。中距離専用のブルー・ティアーズ相手に近接戦だなんて

     舐めていますの?」

一夏「生憎、俺の機体はこれしか武器がなくてね!けど、素手よりは

   何倍もマシだ!」

そう言って切りかかる一夏

 

その様子を千冬や真耶と一緒に見ていた箒と機龍

箒「一夏」

機龍「大丈夫」

箒「機龍?」

機龍「一夏お兄ちゃん、強い。簡単には負けない。それに、

   今は『あの子』とまだ完全に分かりえてないだけ。

   お兄ちゃんは、まだ強くなる」

箒「あの子と、わかりあう?何の事だ?」

機龍「お兄ちゃん、まだ完全に白式と分かり合えてない。だからまだ噛み合って無い。

   でも、わかり合えた時、一夏お兄ちゃんはもっと強くなる」

そう、確信を持った瞳で話す機龍。

そこで機龍の言っている事が、一次移行の事だと気づいた箒

そして、近くで聞いていた千冬が口を開いた

千冬「と言うか、なぜお前は一夏を兄と呼ぶ?」

真耶「そこは今気にする所ですか!?」

と、千冬の一言に反応する真耶

機龍「……何となく?みんな年上?だから?」

所々疑問符を浮かべながらもそう言う機龍

千冬「はぁ。まぁ良い」

真耶「あ、でも織斑君の弟なら織斑先生はお姉さ———」

千冬「そこから先は、言わないでくださいね」

真耶「あぅ。はい」

千冬の剣幕に押され、それ以上言えなくなってしまう真耶

 

やがて試合の時間は30分に達しようとしていた

セシリアのブルー・ティアーズは五体満足で大してダメージが無いのに

大して、一夏の白式はかなりの数を被弾し、エネルギーの残量も

100を切っていた

セシリア「まさか、私のブルー・ティアーズを相手に初見で、ここまで

     耐えるとは。少々あなたを見くびっていたようですわね。

     謝罪しますわ。」

一夏「まさか。代表候補から褒められるとは思ってもみなかったぜ。

   その、悪かったな。この前はその、色々と」

セシリア「それは……。私も同罪ですわ。力と地位に溺れ、

     女尊男卑の風潮に染まってしまったのも事実」

一夏「そうか。……だったら、ここからは俺とお前の1対1の

   真剣勝負だ。クラス代表の候補だとか何て気にせず、

   全力で戦うぜ!」

セシリア「望む所ですわ!」

その時、一夏の白式が光に包まれ、灰色に近かった色は

白に変わった それが白式が本当の意味で『一夏の専用機』になった証だった

    「成程、あなたは今まで初期設定で戦っていた、と言うわけですね?」

一夏「あぁ!戦いは、ここからだ!」

 

そして再び戦いを始めた二人

結果は―――――セシリアの勝利で終わった

理由は一夏が自分の武器『雪片弐型』の特性を理解していないためだった

ビットを撃破してティアーズに肉薄したまでは良かったのだが、

白式の単一仕様能力『零落白夜』をよく理解していなかったため、

雪片にエネルギーを使い切ってしまった

今はピットで絶賛落ち込んでいる一夏

千冬「全く。……『とりあえずは、千冬姉の名前は守るさ!』、だったか?」

一夏「うわあぁぁぁ!やめてくれ~!それはもう既に俺の黒歴史なんだ~!?」

機龍「?」

箒「あれだけ息巻いていたのに、最後は些細なミスであっけなく敗北か」

   『グサッ!』と一夏の心を貫く言葉と言う凶器

千冬「少しだけ勝てると思った過去の自分を殴ってやりたいよ」

   『グサッグサッ!』とさらに突き刺さる言葉

それを聞いて真っ白になってしまう一夏 そこに

機龍「だ、大丈夫、一夏お兄ちゃん、最後までがんばってた。

   偉いと思う」

うなだれる一夏の前で少しでも元気付けようとガッツポーズをする機龍

それを見た一夏は

一夏「俺はお前みたいな優しい弟ができてうれしいぞ~!」

と言って機龍を抱きしめた

機龍「ふぇ!?一夏お兄ちゃん!?」

もしここに一部の女子が居たら、確実にピットの中は血の海になっていただろう

 

その後、箒に連れられて一夏は寮に戻って行った

真耶や千冬も仕事のために戻ると言って行ってしまった

残された機龍は第3アリーナをピットの端から見つめた後、

寮に戻るために通路を歩いた すると、その先から

セシリアが現れた

セシリア「あら?まだ残ってらしたのですわね。」

機龍「うん。……少し、考える事があってね」

『考える事』と言う言葉に反応するセシリア

セシリア「そう言えば、あなたにも謝罪しておかなければ

     なりませんでしたね。先日の無礼、

     今ここで謝っておきます。申し訳ありませんでした」

機龍「いえ。謝らなくてい良いです。あれは、事実ですから」

  『僕に、誰かに謝ってもらう権利なんか、無いんだ』

セシリア「そう、ですか。……あの、少しお話をしたいのですが、

     よろしいでしょうか?」

機龍「え?はい。わかりました」

セシリア「では。……なぜ、あなたは戦いを拒むのですか?」

    『彼の過去は聞きました。でも、私は彼自身の口から、

     理由を知りたい』

機龍「……僕は、昔。……自分の力で、多くの人を傷つけてしまい

   ました。怒りで我を忘れ、暴力の限りを尽くして、そして、

   今度はその力で、自分の大切な家族を傷つけてしまった。

   もう、嫌なんです。

   誰かと戦うのも。そのせいで傷つくのも。

   そして。みんなが僕の周りから居なくなっていくのが、

   辛いんです。だから」

そう言いながら、かつての記憶を思い出し、瞳を潤ませる機龍

  「ごめんなさい。これ以上は」

セシリア「いえ。大丈夫ですわ。私の方こそ、辛い事を思い出させて

     しまったようですし、すみません。

     話してくれた事、ありがとうございました」

そう言うとセシリアは去って行った。

 

その後、自分の部屋に戻る機龍

機龍「ただいま」

簪「お帰り機龍」

パソコンに向かっていた簪が眼鏡を外して眼がしらをマッサージしながら

答えた

機龍「?簪?どうしたの?大丈夫?」

簪「え?ううん、大丈夫。ちょっと目が疲れてね」

機龍「最近は夜寝るのも遅いみたいだし、大丈夫?」

簪「大丈夫」

機龍「?これって。……ISの設計図?」

簪「あ!?こ、これはその!」

簪のパソコンをのぞき込んだ機龍

機龍「う~ん。……簪、ここはこうした方が良い。そうすれば

   エネルギー伝達効率がもっと高くなる」

その言葉に驚く簪。

簪「え!?機龍、わかるの!?」

機龍「うん。理系、機械工学は得意」

簪「そう、なんだ」

 『私、こんな子にまで』

機龍「……簪、提案があるんだ」

簪「何?」

機龍「簪は、僕に協力するって言ってくれた。だから僕も

   簪に協力する。……ダメ、かな?」

機龍の上目使いを見て、顔を赤くする簪。

簪『うぅぅ。一瞬機龍を抱きしめようと思ってしまった。でも』

 「でも、手伝ってもらうのは……ちょっと」

機龍「じゃあ、機龍は簪に貸しがある。その分を手伝う」

簪「貸し?」

機龍「うん。昨日の夜、簪は機龍にやさしくしてくれた。だから、

   その分の優しいを返す。」

簪「機龍。……わかった、ありがとう。」

 『やっぱり。……私って最低だ』

機龍に手伝ってもらいながら、そう思う簪だった。

 

そんな中でも、新たな出会いがすぐそこまで迫っていた。

そして、本当の意味で銀龍が再び大地に立つ日もまた、近づいていた。

     第3話 END

 

 




次回からセカンド幼馴染こと、鈴が登場します。
お楽しみに。
今更ですが、自分がだんだん姉ショタに目覚め始めている
気がするこの頃です。

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