インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回はデストロイアとの決戦の後半です。
自分なりに衝撃の展開を用意してみました。
お楽しみに。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第32話

~~前回までのあらすじ~~

突如として現れたデストロイアに対して、怪獣化して立ち向かう

機龍とモスラ。そんな二人と共に戦うため、ISを纏い参戦した

一夏達12人の専用機持ち。

彼、彼女たちはデストロイアの弱点である超低温の兵装、

機龍のアブソリュート・ゼロを3匹まとめて撃ち込むために

力を合わせて戦った。

だが、あと一歩の所で3体のデストロイアが合体し、

デストロイア・不完全体となった。

しかも、運の悪い事にアブゼロが不発に終わってしまったのだった。

 

 

機龍≪う、ぐっ!≫

何とか、倒れた態勢から体を起こして立ち上がる機龍。

  ≪まさか、合体するなんて……≫

立ち上がった機龍は開いていた胸部ハッチを閉じて、クロウを

構えた。

一夏「機龍!大丈夫か!?」

機龍≪うん、何とか致命傷にはなってない。けど……≫

一夏「まさか、アブゼロは……」

機龍≪……。残っているエネルギーは、38%。足りないんだ≫

オータム「八方ふさがりって奴かよ!」

ラウラ「いや!合体して一匹になったのなら、包囲殲滅を!」

 

と、その時、デストロイアの背面の触手の先端が光った。

機龍≪危ないっ!!!≫

それに真っ先に気付いた機龍がスラスターを使って前に飛び出した、

次の瞬間。

   『『『『キュゴォォォォッ!!』』』』

その先端からODRがまとめて発射され、結果的に一夏達の

盾となった機龍の体中に命中した。

   『ドガガガガァァァァァンッ!』

  『ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!』

それによって、体中から火花を散らした機龍が背中から倒れこんだ。

一夏「機龍っ!!?」

   『KYUUUUUUII!!』

倒れた機龍へと駆け寄る一夏と、フォローするべく不完全体の

周囲を飛び回って突風を起こし引き付けるモスラ。

  「機龍!大丈夫か!?」

機龍『う、うん。何と、か』

通信機越しに返事をしながらも、体のスラスターを使って態勢を

立て直す機龍。

と、その時。

   『ドォォォォンッ!』

空中で爆発音が響いた。そして、そちらに視線を移すと……。

 

機龍≪モスラァァァァァァッ!≫

羽を撃ち抜かれたモスラが体中から煙を上げながら学園島の沿岸部に

落着した。

  ≪お兄ちゃん達はモスラをお願い!僕は奴を抑える!≫

一夏「ッ!待て機龍!」

機龍『お前だけは、許さないっ!!!!!』

   『KYUAAAAAAAAAANN!!!!!!』

仲間を傷つけられた怒りから一夏の制止も聞かずに

不完全体に突進していく機龍。

 

それを複雑な表情で見送る事しかできない一夏達。そんな時。

スコール「ともかく、今は落ちたフラワーを回収に行きましょう。

     どのみち、死角の減った今のデストロイアを相手に

     するのは無謀過ぎるし、何より彼の邪魔になりかねないわ」

ラウラ「しかし!」

スコール「現実を見なさい……!現に私たちの武装は奴らに対して

     殆ど効かなかったわ。私も悔しいけど、怪獣を相手に

     できるのは怪獣だけよ。私たちは、私たちに出来る事を

     しましょう」

と、流石に一夏達以上に修羅場を潜ってきただけあって冷静な

スコールに、ラウラも食い下がった。

その後、一夏達は移動したのだが、その先で見つけたのは……。

 

簪「ッ!モーラさん!」

海岸で、人間の姿に戻り砂浜に横たわるトーガ姿のモーラだった。

咄嗟に近くに着地してIS、打鉄弐式を解除し、駆け寄って抱き起す簪。

楯無「簪ちゃん!モーラちゃんの容体は?」

簪「致命傷、とかは無いみたい。擦り傷とか掠り傷とかは

  あるけど、それ以外は大丈夫みたい」

鈴「とりあえず、一安心って所ね」

楯無「……。そうね。まずはモーラちゃんを博士達の所まで

   運びましょう。次はどうするか決めるのは、それからよ」

その言葉に頷き、移動する一夏達。モーラは気絶していたため、

簪がお姫様抱っこで運んだ。

 

千冬たちと合流する一夏達。

束「もーちゃん!」

そして、彼らが下りてくるなり、簪の方に駆け寄る束。

簪「傷は少ないですし、気絶しているだけです。命に

  別条はありません」

束「よ、良かった。けどとりあえず!くーちゃん!」

クロエ「はい」

束が名を呼ぶと、クロエがストレッチャーと救急箱を持って現れた。

束「もーちゃんの応急手当をお願い」

クロエ「はい。お任せください。簪さん、モーラさんをストレッチャーの

    上に寝かせてください」

簪「は、はい!」

頷き、そっとモーラをストレッチャーの上に下ろす簪。

千冬「フラワーはこれで良いが……」

束「まだ、何も解決してないんだよね」

そう呟き、二人は遠くに見える機龍と不完全体の戦闘を見つめていた。

 

機龍は、何とか不完全体を倒そうと前進を続ける。

メーサーやレールガン、ロケット弾の類はデストロイアの集合体

相手にも有効打にならなかった。それが不完全体に進化したのだ。

尚更有効な攻撃ではなくなったと考えての行動だ。

だが、接近した所で有利にはならなかった。

不完全とはいえ、その戦闘力は集合体を上回っていた。

どうやら、背中の羽はまだ完全ではなく、今の所は飾りの

ようだが、何時飛行するかは分からない。だが、格闘戦となると、

鋏に加えて2対の触手もある。

 

合計3対の近接武装を振り回すデストロイア不完全体の前に、

3式機龍は追い詰められていた。既に、その装甲の各部から

スパークが散っている。

致命傷は何とか避けているが、今の機龍にはその致命傷を

避けながら何とか懐に飛び込んで、ほんの僅かな攻撃を

繰り出すのが精いっぱいだったのだ。

 

   『OOOOOONN!!!』

   『KYUAAAAAN……』

どこか勝ち誇ったかのようなデストロイアの咆哮と、

尻すぼみな、疲労が混じった機龍の声を聞けば、どちらが優勢

なのかは一目瞭然だ。

 

その時。

一夏「クソッ!」

毒づいた一夏が再び白式を展開して飛び立とうとした。だが。

千冬「止さんか馬鹿者!今の貴様が行って何ができる!

   エネルギーも体力も消費しているお前が行った所で

   何ができる!」

と言う、的を射た言葉に一夏は黙り込み、拳を握りしめる。

その時だった。

 

一夏「そうだ!あれだよ千冬姉!京都の時に使った機龍の力!

   えっと、確か、エクストラアビリティを使えれば!」

と、叫ぶ一夏。周りの者達も、それだ!と言いたげだ。

だが……。

束「それは無理だよ、いっくん」

無情な束の一言がその可能性を打ち砕いた。

一夏「そんな!?どうしてですか!?」

束「あれは、リュウ君からのエネルギー供給があって初めて

  使えるスキルなんだ。けど、今のリュウ君はあの巨体を

  維持、運用し、更にメーサーなどにエネルギーを割り振ってる。

  その上でみんなにエネルギー供給なんてしたら、リュウ君は

  すぐにあの巨体を維持できなくなるよ」

と言う言葉に、一夏達は呆然とした。

 

一夏「じゃあ、じゃあ俺達に出来る事は何もないって言うんですか!?」

束「……そうだね」

一夏「あそこで、あそこで俺達の仲間がたった一人で戦ってるんですよ!?

   なのに、俺は。俺は」

叫びながらも、次第に彼の音量は低くなり、その場に膝をついた。

 

箒「一夏」

そんな彼を思い、そっと肩に手を置く箒。

一夏「俺は、約束したんだ。あいつを守るって。なのに、結局、

   俺には何もできないのかよ……!畜生。畜生……!」

拳を握りしめ、それを地面に叩きつける一夏。

 

そして、それは専用機持ちである簪やラウラ、スコール達も

感じていた思いだ。機龍の過去を知り、覚悟を知っているからこそ、

その傍に立って共に戦う事が出来ない今の自分が歯痒い。

だが、光明が消え去った訳ではない。

 

束「……一つだけ、可能性があるよ」

と言う、彼女の言葉に一夏は俯いていた顔を上げた。

 「万が一の時の為に、少し前から考えていた試作プログラムが

  あるんだ」

箒「それは、一体」

束「……これは、リュウ君が京都で見せた自分とISを繋いで

  ISの一時的なブーストを可能にしたエクストラアビリティ。

  それをISのみで再現し、逆にISからリュウ君に

  エネルギー回路を接続し、更にSoNのようにまたISへと

  戻ってくる。機龍とISを繋ぎ、無限のエネルギー回路を

  作るためのシステム。ISから送り込まれたエネルギーは

  リュウ君の体内で圧縮され、ISに還元される。それをまた

  リュウ君に送り込む。そうやって繰り返す事でエネルギーを

  驚異的なレベルで圧縮し、力に変えるんだ」

一夏「じゃ、じゃあ、それが出来れば俺達は機龍と一緒に

   戦えるんですか?!」

束「そうだね。……但し、二つ、問題がある。このシステム発動の

  為にはかなりの量のエネルギーがある。ISコア数機の

  エネルギー全てをつぎ込めば可能だけど、それじゃあ

  戦えなくなるから意味は無いんだ。これをするのは、

  そこそこの数の有人ISから少しずつエネルギーを

  抽出して使うんだ」

シャル「数機の、有人ISから?」

ラウラ「教えてください博士!その人数とはどれほどなのですか!?」

束「……。『12人』。これだけの数が必要なんだよ」

静かに語る束。

 「けどね。あと一つだけ問題があるんだ。それはSoNと

  同じだよ。絆で繋がった人間でなければ、この12人に入る事は

出来ない。

リュウ君からどんな形であれ、信頼されている事」

その言葉に、後ろで聞いていた生徒達は騒めく。

 

だが……。

一夏「12人か。ギリギリセーフじゃないですか」

箒「あぁ、そうだな」

鈴「ホントギリギリ。けど」

シャル「うん。そうだね」

ラウラ「揃っているではないか。12人など」

簪「これって、機龍の人徳のおかげだね」

オータム「はっ!あいつは無駄に交友関係が広いからな!」

スコール「オータム、あなたの照れ隠しバレバレよ?」

楯無「こういうの、運命って言うのかしらね?」

真耶「運命ですか。それも良い響きですね」

セシリア「つまり、12人とは私たちの事ですわね」

マドカ「ふん。まさか、こうなるとはな」

 

各々の言葉を述べる『12人』。そう、その数は既に揃っていた。

そして、彼彼女たちは機龍を信頼していた。例え、元の立場も

主義や主張が異なったとしても、機龍が今まで紡いできた

絆が今、力になろうとしていた。

 

 

数分後、エネルギーを補給したISを再び纏った一夏達が

横一列に並んでいた。その背中には、束がコードを接続していた。

束「有線接続確率。アップロード、開始!」

彼女がパソコンのエンターを押した次の瞬間、新システムが

すごい勢いで12人のISにダウンロードされていった。

そして……。

 「アップロード、完了!」

束のパソコンに映っていたパーセンテージが100%となった。

 「みんな!リュウ君への思い、思い出を頭の中にイメージして!

  それが、力になるんだよ!」

と言う束の言葉が響く。そして……。

一夏「機龍」

彼が呟き、頭の中に機龍との出会いの記憶が呼び起こされる。

 

一番最初の出会い。戦い。更なる出会い。戦いと和解。

今まで共にしてきた記憶が蘇る。

それぞれの、彼らが持つ記憶が頭の中に浮かび上がる。

機龍との絆を強く思い描く。

その≪魂の絆≫が新たな力を呼び起こす。

次第に、彼らの思いが強くなっていくと12人の体をSoN発動時と

同じような黄金の光が包んで行く。

 

そして、一夏が大きく息を吸い込む。

 

 

 

 

  「機龍ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」

 

 

一夏の大ボリュームの叫びが周囲に響き渡る。

 

その声に、デストロイアと向かい合っていた機龍が僅かに

振り返った。

 

そして、一夏と機龍達13人の眼前に、そのディスプレイは映し出された。

そこには……。

 

 

 

 

 

——最大共鳴能力≪レゾナンスアビリティ≫、発動!!——

 

——エネルギー回路、≪∞-PATH≫、形成!!——

 

 

ディスプレイにその文字が浮かび上がった次の瞬間。

  「受け取れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

一夏達12人から黄金の光の波が機龍の背びれに向かって

放たれた。

それが機龍の背びれに命中し、彼の中にエネルギーを流し込んでいく。

そして、同時に……。

 

機龍『これは……』

彼の心の中に、黄金のエネルギーと共に一夏達の心もまた、流れ込んできた。

 

一夏『機龍!お前は一人じゃないぜ!』

 

箒『私たちが、仲間がいる!だから諦めるな!』

 

鈴『ここまでやったんだから、負けたら承知しないからね!』

 

シャル『僕たちの思い、受け取って!機龍!』

 

オータム『良いか!私らにここまでやらせたんだ!無様な姿

     晒したらただじゃおかねえからな!』

 

スコール『あなたが紡いできた絆の力、あの怪物に見せてやりなさい』

 

真耶『機龍君!負けないでください!みんなが、あなたを応援しています!』

 

ラウラ『お前は一人ではない!私たちはいつでも、お前の傍にいる!』

 

セシリア『私たちの絆の力、それが機龍の力になるのですわ!』

 

楯無『お姉さんたちの力、受け取りなさい!機龍君!』

 

マドカ『……負けたら許さん。勝て』

 

想いが、機龍の中に流れ込んでくる。そして、最後は……。

 

 

簪『機龍ぅぅぅぅっ!負けないでぇぇぇぇっ!!!』

 

 

簪の思いが響く。

 

と、その時、不完全体が口と触手から、合計で5本にもなる

ODRを一つに束ねて発射してきた。その威力は、集合体時の

それの威力を上回っていた。

 

だが……。

 

ゴジラ『相棒!見せてやれ!俺とお前の!いや、俺達みんなの

    力って奴をッ!!!!』

 

彼の中のもう一人の自分が、最後の一押しをする。

 

そして、次の瞬間。

 

 

機龍≪うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!≫

   『KYUGAAAAAAAAAANN!!!!!』

魂を震わせる程の叫びと共に、機龍が黄金のエネルギーに

包まれたスパイラルクロウを突き出す。

そして、そのクロウは眼前に迫っていたODRを一撃で

霧散させてしまった。

 

   『OOOOON!?!?』

余りの事に、さしものデストロイアも驚愕している。

その時だった。

  ≪僕には、守りたい人たちが居る!≫

スピーカーを通して、機龍の声が辺りに響いた。その声を、一夏達を

始めとした大勢の生徒達が聞いていた。

  ≪僕に色んな事を教えてくれた人や、僕を正してくれた人。

   僕を友達だって言ってくれる人。それだけじゃない。

   この世界で生きている人々を、僕は守りたい!

   僕が守るために生み出されたからじゃない!僕自身の意思で!

   思いで!僕は……!僕は、この世界を守る!!!!≫

彼の叫びに呼応するかのように、黄金の光が彼の中に吸収されていった。

 

  ≪僕は一人じゃない!みんなから受け取った、この力で!

   僕は戦う!!!世界を、命を護るためにぃぃぃぃッ!!!≫

次の瞬間、彼の叫びに合わせて体から黒いオーラの様な物が

吹き出してきた。

 

一夏「ッ!?あれって!?」

それを、後方で見ていた一夏達が驚いた。

やがて、現れた黒いオーラは巻き戻るかのように、機龍の体に

まとわりつき、その銀色の体表を黒く染めて行った。

千冬「黒く、染まっていく?ゴジラに代わる気か?」

束「ううん。違うよちーちゃん。あれは、リュウ君とゴジラの

  二人でやってるんだ」

 

やがて、機龍の全身が黒く染まると、機龍の黄色い瞳から、

より一層強い光が漏れ始めた。

更に……。

簪「あ!見て、あれ!」

そう言って簪が指さした場所、顔を流れる赤いラインから始まり、

機龍の各部に向かって赤いラインが更に流れて行った。

さながら、彼の黒い体の上を血管が走っているかのようだった。

やがて、機龍の胸の中央に赤い円が描かれた。そして……。

 

   『KYUGAAAAAAAAAAANNNN!!!』

 

ゴジラと機龍が一体となった咆哮が周囲に響き渡った。

 

そして、今まさに絆の力を糧に、機龍の『最強』の力が覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『赤き灼熱の機神龍』・『バーニングメカゴジラ』!!!

 

 

黒き体に巡る赤き血潮が、銀龍の力となる!

 

今、破滅の力は救世の力となって、悪しき悪魔を滅ぼす!

 

 

一夏「あれ、は」

と、バーニングメカゴジラに見惚れていた一夏達だったが、

次の瞬間。

   『パァァァァァァァッ!』

突如として、一夏達12人の機体を銀色の光が包み込んだ。

束「来た来た来たぁっ!!いっくん!みんな!それが君たちの

  最強の力、レゾナンスアビリティによってのみ発動する、

  ISの頂点に立つIS、究極のISの姿、モードHOV!!

  Holly knight Of AVALON!!!

  ゴジラと言う怪獣王と歩みを共にする聖騎士達だよ!!」

千冬「相変わらず、お前のネーミングセンスは……」

束「いやいや~!やっぱりこういう時こそカッコつけないとね!

  と、言うわけで、いっくん!箒ちゃん!みんな!

  サクッとあいつをやっつけちゃってよ!」

 

一夏「はい!みんな、行くぜぇ!!!」

彼の掛け声に合わせて、一夏達も飛び出していった。

 

   『OOOOOOONN!!!』

バーニングメカゴジラを前にして、不完全体が触手と

鋏を振り回しながら突進してくる。

だが、次の瞬間。

 

   『KYUGAAAAAAAANN!!!』

バーニングメカゴジラの背びれが赤く光ったかと思うと、その口から

メーサーとも、黒龍形態の熱線とも異なる赤い熱線、『赤色熱線』が

放たれ、不完全体の胴体に命中し吹き飛ばした。

背中から海面に落ち、盛大に水柱を上げる不完全体。

と、その時機龍の近くに一夏達が集まってきた。

 

一夏「機龍!」

機龍≪ッ、お兄ちゃん!みんな!≫

一夏「一緒に戦うぞ!」

機龍≪ッ!うんっ!!≫

頷き、心の中で笑みをこぼす機龍。

  ≪トドメは僕が決めるから≫

一夏「おう!だったら、まずは俺達だっ!」

 

叫び、駆け出す一夏に続く箒や簪たち。

   『OOOOOONN!!!』

それを見たデストロイアはODRを吐きかけてくるが、そのすべてを

回避する一夏達。

今度は、先端にODのエネルギーを集めた触手で切り裂こうと

するが……。

鈴「遅いっ!!」

銀色のエネルギーを纏った鈴の牙月や一夏の雪片、マドカの

フェンリルブロウ、箒の空裂・雨月、楯無の蒼流旋が

不完全体の四肢に傷を作って行った。

   『OOOOONN!?!?』

それによって悲鳴を上げるデストロイア。だが、それだけではなかった。

   『ドガドガドガァァァァァァンッ!』

悲鳴を上げた所に、ラウラや簪、シャルや真耶、スコールやオータム達の

砲撃が命中する。

各部に傷を作り、緑色の血液を吹き出すデストロイア。

束『今だよリュウ君!そいつを細胞ひとつ残らず、

  焼き払っちゃえ!!!』

機龍『わかったっ!!!みんな離れて!』

一夏「あぁ!!」

 

束の声に頷き、機龍は両足をアンカーとするために爪を

海底に突き刺し固定する。機龍の警告を聞き、咄嗟に後方へと

飛び退る一夏達。

  

  ≪僕たちの力で!この世界の未来を!≫

機龍の背びれが赤く発光する。エネルギーがどんどんとチャージ

されていく。そして、次の瞬間。

  ≪掴み取るっ!!!≫

   『KYUGAAAAAAAANN!!!!』

咆哮と共に、機龍の口から彼の最大火力が放たれた。

 

メーサーの共振効果を熱線に付加し威力を上げた熱線。

『ハイパーメーサー熱線』。

黄色い稲妻状のエフェクトを纏った赤色熱線がデストロイアに

命中する。

だが、それだけでは終わらずにバーニングメカゴジラは熱線を

デストロイアの全身に撫でつけるように照射し続ける。

それによって、不完全体の各部が塵になって消えていく。だが、

それでも機龍の照射は終わらない。

 

だが、ぶっつけ本番の大技に急激な進化は機龍の体に大きな負担と

なって現れた。

   『ズキンッ!』

機龍『ッ!?』

鈍い痛みを感じる機龍。だが、それでも彼はハイパーメーサー熱線を

吐くのをやめない。

そして、最後にデストロイアの胴体が残った時。

  ≪これで、最後だァァァぁぁぁぁっ!!!≫

機龍は持てる力の全てを熱線に注ぎ込んだ。結果、これまでの

熱線以上に極太になった熱線が、残っていたデストロイアの胴体、

首、頭を飲み込んで、塵へと返していった。そして……。

 

   『カッ!!』

   『ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!!』

一瞬、光が瞬いたかと思うと、デストロイア・不完全体の居た地点で

強大な爆発が発生した。加えて、メーサー熱線とその爆発によって

大量の海水が蒸発。周囲を膨大な量の水蒸気が覆って行った。

それを遠くから見守っていた一夏達は呆然としていた。

 

 

やがて数分後。爆発によって発生した水蒸気は数分経っても

晴れる気配が無かった。

だが……。

 

   『ズシン……ズシン……ズシン……ズシン』

水蒸気の中から、重い何かが歩く音が聞こえて来た。そして、

それは水蒸気の中から姿を現した。それは……。

 

バーニングメカゴジラ、機龍だった。次の瞬間……。

 

 

 

 

一夏「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

   「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」」」」」」

歓喜の叫びをあげる一夏と、それを見た大勢の生徒達が喜びの

叫び声を上げていた。悪魔が滅ぼされた事を喜ぶ生徒達。

そして、機龍が戻ってきた事を知った一夏は、彼が上陸しようと

している砂浜の方へと向かった。

箒「私たちも行くか」

シャル「うん。そうだね」

箒の提案に頷き、11人は一夏に続く形で砂浜へと降りて行き、

着地するとISを解除した。

そして、更にその場に走ってくる束や千冬、クロエや生徒達。

 

そして、彼、彼女たちは今まさにザブザブと海水をかき分けながら

歩みを進めてこちらに向かっているバーニングメカゴジラを

見上げていた。

誰もが笑みを浮かべ、機龍を待っていた。やがて、彼の体を

流れる赤いラインが消滅し、体も銀色に戻って行った。

誰もが驚きつつも、彼の雄姿に見惚れていた。

 

 

 

 

 

 

 

だが、次の瞬間。

   『バチバチッ!』

   『ドガドガァァァァンッ!』

何と、機龍の各部でスパークが瞬いたかと思うと、各部から

小規模な爆発が連続して巻き起こった。 

箒「なっ!?」

束「そんなっ!?」

簪「機龍っ!?!?」

驚きを隠せない一夏や束達。

やがて、爆発が収まると、機龍の体を光が包み込んだ。次第に

小さくなる光。その発光が止まったのは、光のサイズが人間の

子供サイズになった時だった。

そして、その光の中から、ボロボロになった機龍が姿を現した。

 

体のあちこちには酷い裂傷があり、大半が機龍の内部構造、つまり

機械構造まで露出している物だった。

特に左肩や右足の腿辺りなど、肉がごっそりと落ちており、余りにも

痛々しい状態だった。

そんな状態のまま、フラフラと歩みを進める機龍。

一夏「機龍ッ!!!」

咄嗟に駆け出す一夏とそれに続く箒や束、生徒達。

 

あと数歩で一夏と機龍が接触するかと思われた時。

   『フラッ!』

  「ッ!?機龍!?」

前に向かって倒れそうになった機龍を咄嗟に抱きかかえ、砂浜の

上に膝をつく一夏。その周囲に束達が集まる。

  「機龍!しっかりしろ!機龍!」

束「くーちゃん!私の家に緊急生命維持用の生体ポッドが

  あるから!持ってきて!」

クロエ「は、はい!」

咄嗟に叫ぶ束とそれに従うクロエ。

 

やがて……。

 

機龍「一、夏」

機龍の閉じられていた瞳が、僅かに開いた。

同時に、機龍の口が僅かに動いて一夏の名を呼ぶが、その声はまるで

壊れたマイクを通したかのように、所々掠れていた。

  「デスト、ロイ、ア、は?」

聞かれ、束の方を向く一夏。

束「……さっき爆発があった海域周辺に生命反応及び動体反応

  は無いよ。完全にやっつけたよ」

機龍「そう。良かっ、うぐっ!?げほっ!げほっ!」

   『ビシャッ!』

良かった、と言おうとした直後、咳き込み血反吐を吐きだし、既に

ボロボロなIS学生服の上着を赤く染めた。そして、更に口の端からも

細く赤い、血の川が流れていた。

一夏「とにかく喋るな!今クロエが何か持ってきてくれるから!」

と、念押しをする一夏だったが……。

 

機龍「ね、え。一夏。僕は、守れた、の、かな?」

一夏「あぁ、そうだ!そうだよ!お前がみんなを守ったんだ!

   もうデストロイアも居ねえ!だから安心して休んでろ!」

機龍「うう、ん。……もう、『終わり』なんだ」

 

その言葉に、周囲の人間たちが愕然となる。

一夏「何だよ、それ。終わりって何だよ!?」

愕然としながらも、叫ぶ一夏。

機龍「自分の、体の、こ、とは、自分が、一番、わか、る、から。

   わかる、んだ。自分が、今、どれほど、ダメージを、

   負っているか」

一夏「ふざけんなよ!それって、『死ぬ』って事だろ!?」

機龍「……。多分、そう、だね」

そう言いつつも、更に血反吐を吐く機龍。既に彼の瞳からは

色が殆ど失われ、目元には隈が出来ていた。

その時、何とか立っていた簪の足が震え、機龍の横、砂浜の上に

へたり込んでしまった。

受け入れられない、と言いたそうな表情を浮かべる簪。

 

  「簪、楯無、さん。ラウラ、お姉ちゃん。セシリア、お姉ちゃん。

   ごめん、ね。もう、傍に、居てあげられない、かも、しれない」

静かに告げる機龍を見て、名を呼ばれた4人が涙を流し始める。

  「箒、お姉ちゃん、鈴、お姉ちゃん。シャルロット、お姉ちゃん。

   これから、も、一夏と、仲良く、ね?喧嘩は、ほどほど、に、ね」

彼のアドバイスのような言葉に、箒達も泣きだす。

  「束」

束「リュウ君」

名を呼ばれ、彼の近くに座り込む束。

機龍「僕を、起こして、くれて、ありがとう。束の、おかげで、僕は、

   みんなに、出会えた」

その言葉と、血まみれながらも精一杯の笑顔を浮かべる機龍に、束もまた、

声を上げながら号泣し始めた。

 

そのすぐ近くでは、スコールやオータム、マドカもまた、泣いてはいないが、

悔しそうな表情を浮かべ、奥歯を噛みしめていた。だが……。

 

一夏「ふざけんなよ!」

そんな中で、納得できていない一夏が叫ぶ。彼の目から大粒の涙が

流れ出し、抱かれている機龍の頬に落ちる。

  「俺達、約束したじゃねえか!?冬休みになったら、俺や箒や

   鈴、シャルロットやお前、簪やみんなと一緒に、もう一度

   京都に行こうって!そう約束したじゃねえか……!」

絞り出すように、一夏の口から言葉が紡がれる。

  「それだけじゃねえ!もっと、もっと一緒に遊ぼうって

   約束したじゃねえか!一緒に夜更かししたり、

   色んなとこ行って、思い出作ろうって、この前約束

   したばかりじゃねえかよ……!」

嗚咽混じりの一夏の言葉が、周囲の人間の心に刺さる。

機龍「ごめん、ね、一夏」

一夏「謝るなよ。……謝るくらいなら、生きろよ!生きてくれよ!?」

二人の言葉が、周囲の生徒達の涙を誘う。

 

  「何で、何でいつもお前ばっかり傷つくんだよ!?

   何で、なんでなんだよ畜生……!」

やり場のない怒りをぶつけるかのように、一夏の右手の拳が

砂浜に突き刺さる。その時。

   『スッ』

機龍の右手が、弱々しくも一夏の頬を撫でた。

機龍「……良いんだよ。これで、僕、は、ようやく、誰かを

   守る事が、でき、た」

そう言って、機龍もまた、笑みを浮かべながら涙を流し始めた。

  「かつて、大勢の、人、を殺、し。そして、仲間、を、その、手に、

   かけようとした、僕、が、ようやく、誰か、を、

   守る事が、できた、ん、だから」

機龍の頬を伝う涙が、砂の上へと落ちていく。そして、彼の弱り切った

姿を見て、一夏も、箒達も、束も、誰もが泣いていた。

  「みんなを、守れた、の、なら。それ、で、良いんだ」

一夏「機龍………!」

機龍「ねぇ、一夏。僕、の、罪は、赦された、の、かな?」

 

一夏「ッ!お前に罪なんてない!お前は今まで、たくさん辛い事を

   経験してきた!人間たちに酷い事されても、お前は

   俺達の事を『友達』だって言ってくれたじゃないか!?

   そんなお前が、罪なんて背負ってる訳ねえ!」

涙を流しながらも叫ぶ一夏。周囲の、彼の過去を知る箒達も、

その目から涙を流しながらも、頷く。

機龍「そう、か。……一夏、僕、は、幸せ者、だよ。この、世界で、

   みんなと、出会えた、から」

一夏「あぁ!そうだな!俺も、お前と出会えた事、すっげぇ嬉しいよ!

   けど、けどよぉ!だからこそ生きてくれよ!俺、お前に

   紹介したい奴がまだ居るんだよ!」

機龍「そ、う、なんだ。一夏、みんな」

 

僅かに、機龍の左手が上がる。

 

一夏の手が、それを掴もうとする。

 

だが。

 

 

   ≪ありが、と、う≫

 

 

   『トサッ』

 

 

その左手は、一夏が掴むよりも先に、砂浜の上に、落ちた。

 

 

左手があった場所を、呆然と見つめてから、機龍の顔へと

視線を向ける一夏。

 

一夏「機、龍?」

 

彼の視線の先に映ったのは、瞳を閉じ、海風に銀色の髪を

揺らす、機龍だった。

  「機龍?」

 

もう一度、彼の名を呼ぶ。だが、彼は反応しない。

 

一夏の顔が、次第に歪んでいく。

 

周囲の者達も、大粒の涙を流し始める。

 

そして………。

 

 

 

 

 

 

 

 

  「機龍ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」

 

 

 

白昼の海辺に、一夏の絶叫が木霊した。

 

     第32話 END

 




もはや、何かを書く事さえネタバレになりそうなので、これだけ書きます。

次回をお楽しみに。

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