インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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デストロイア戦の前半です。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第31話

~~前回までのあらすじ~~

紅蓮の悪魔、デストロイアとの戦いが近い事を直観していた機龍。

一方の束も機龍とは別の角度から戦いが近い事を知り、それを

千冬、真耶、スコール、オータムに話した。

その翌日。千冬はその事を専用機持ちである一夏達11人と

レイン、フォルテたちに説明するべく13人を招集した。

だが、朝になって一夏達が登校したその時、IS学園島の

すぐそこにデストロイアが姿を現した。

避難警報が出る中、機龍とモーラは1組、つまりはクラスメート達の

眼前で力を解放。それぞれが『3式機龍』、『モスラ』となって、

デストロイア討伐に動き出した。

 

 

   『KYUAAAAAAAAAAAN!!!』

今、本来の姿を取り戻した3式機龍は、改装備のままズシン、ズシンと

音を立てながら走る。

そして、それに気づいたゴーレムⅢ達が道を開ける。次の瞬間。

   『ビィィィィィィッ!』

機龍の口が開き、2連装メーサー砲が放たれる。それが、

一体の集合体デストロイア、(※以降、集合体Aと記述)

(もう一体は集合体Bと記述)に命中した。更に……。

 

   『バシュバシュバシュッ!』

   『ズドドドドッ!』

   『ヒュヒュヒュヒュヒュンッ!』

バックパックのロケット砲に誘導弾、左手のレールガンを撃ちまくる。

   『ドガガガガガッ!』

放たれた銃弾やロケット弾の嵐が集合体Aに襲い掛かり爆発する。

だが、晴れた爆炎の下から現れたのは、大して傷を負っていない、

つまり殆どダメージを受けていない集合体Aだった。

機龍『硬い!いや、実体弾が効かないのか!?だったら!!』

   『KYUAAAA!』

短く吠えた機龍は右手をスパイラルクロウに変化させ、回転させ

ながら更に突進した。

とうとう海岸部に到着したまま足を進める機龍。

ザバザバと海水をかき分けながら機龍が進む。そして。

機龍『はぁぁぁぁぁぁっ!』

   『KYUAAAAAAAN!!!』

咆哮と共にまず左手で集合体Aの長い首元目掛けて張り手を繰り出す。

   『OOOOONN!』

張り手が命中した部分から火花が飛び散り、悲鳴を上げる集合体。更に。

   『ブォオンッ!』

   『ズガッ!』

返す刀で繰り出されたクロウの一撃が更に胴体を切り裂いた。

張り手以上に火花が飛び散り、集合体Aも悲鳴のような咆哮を

上げていた。

機龍『行ける!このまま!』

まず最初に、こちらを粉砕しようと考えた機龍が右手を引き絞り、

突き出そうとした刹那。

   『キュゴォォォォォッ!』

   『ボガァァン!』

  『ぐあぁぁぁっ!!』

   『KYUAAAANN!?』

突如として機龍の背中にODRが命中し、爆発した。

驚き悲鳴を上げる機龍。彼はすぐさま振り返ったが、その目に

映ったのはもう一体の集合体であるBだった。

そして、そのBの周囲の海面には、ゴーレムⅢの残骸がぷかぷかと

浮いていた。

  『そんな!?ゴーレム達が、こんな簡単に!』

僅かに注意がそちらに向いた、その時。

   『OOOONN!』

一瞬の隙を突き、集合体Aの触手が機龍に叩きつけられた。

   『ドォォォンッ!』

機龍『ぐぅぅぅぅっ!?』

気づくのが遅れた機龍は、数歩ほど後ろへ弾き飛ばされてしまう。

倒れこそしなかった物の、態勢を立て直した前を見た時には、

集合体のAとBが並んで機龍を睨みつけていた。

  『それでも、僕は……!』

 

だが、それを前にしても構えを崩さない機龍。

  『絶対に負けない!』

   『KYUAAAAAAN!!!!!』

再び咆哮を上げた機龍が、集合体の二体めがけて突進していった。

 

 

一方、上空でも……。

   『KYUUUUUUII!』

   『OOOOOON!!』

翼を広げるモスラとデストロイア飛翔体が激しい空中戦を

繰り広げていた。

追うデストロイアと逃げるモスラ。

そしてデストロイアはODRを吐きかけるがそれを華麗に

回避するモスラ。そして、モスラはデストロイア以上の

旋回性を駆使して円を描くように飛行し逆にデストロイアの

背後を取った。

 

元より固定されたデストロイアの翼以上にフレキシブルな羽を

持つモスラの方が旋回性能では勝っていたのだ。そして。

背後から急接近したモスラはデストロイアの背中にひっかき攻撃を

繰り出した。

   『OOOOOONN!!!?』

悲鳴を上げながら逃げようと体を揺さぶるデストロイア。

しかし、次の瞬間モスラは体をドリルのように横に回転させた。

それによって、背中を巨大な羽で叩かれたデストロイアは……。

   『OOOOONN!?』

   『ザッパァァァァンッ!』

バランスを崩して失速。そのまま海面に叩きつけられた。

 

だが……。

   『OOOOONN!!!』

すぐさま海面を割るようにしてモスラに向かって行く飛翔体。

そう、モスラには機龍やゴジラ、デストロイアのような光線などの

決め技が無いのだ。

だが、それでも………。

モスラ『私は、あなた達には負けない!』

   『KYUUUUUUII!!』

モスラもまた、決意を固めながらデストロイアとのドッグファイトを

再開した。

 

 

そして、もう一方の逃げた一夏達。

機龍と別れてから数分後。モノレールの駅前に到着した一夏達。

駅前では、今まさに各学年とクラスで生徒達の点呼を確認していた。

だが、生徒達の目はそんな事よりも別方向を向いていた。

 

   『KYUUUUUUII!!』

   『『『OOOOOONN!!!』』』

   『KYUAAAAAAANNN!!!!』

 

そう、今まさに激闘を繰り広げている5体の怪獣たちの方にだ。

機龍と集合体二匹が組み合う度に海面に巨大な水柱が上がり、

モスラと飛翔体が少しでもこちらに近づけば暴風が吹き荒れた。

メーサーやODRが発射される音、モスラや飛翔体、ロケット弾が

空を裂く音が絶え間なく聞こえてくる。

 

そんな中、一夏や箒、簪にマドカ達9人が機龍達の戦いを見つめ、

奥歯を噛みしめていた。

その時。

楯無「一夏君!簪ちゃん!」

束「お~い!いっく~ん!みんな~!」

そこへスコールとオータムを連れた束と、別方向から楯無が走ってきた。

箒「姉さん!」

簪「お姉ちゃん!」

束「良かった。みんな無事みたいだね」

一夏「は、はい。俺達は。……けど、機龍が」

そう言って、視線を彼女から3式機龍の方へと向ける一夏と

それを追う束や箒達。

 

束「……予想より、早かったんだ」

一夏「え?」

不意の言葉に、一夏が疑問符を漏らす。他の者達も、一夏と

同じように驚き疑問符を浮かべている。

束「ここ最近頻発していた、船舶の消失事件。その犯人は、

  多分あの赤い怪物なんだ」

一夏「じゃあ、知ってたんですか!?あんなのが居るって」

束「確証はなかった。あったのは、未知のエネルギーが

  現場付近で確認されたって事くらい。本当は、今日の朝

  ちーちゃんの口から専用機を持ってるいっくん達にだけ、

  話すはずだったんだけど……」

そう言いつつ、自分も機龍達の方を向く束。

 「タッチの差で、奴が現れる方が早かった」

簪「一体、何なんですかあれは」

そんな基本の様な質問に束は……。

 

束「分かっている事は少ないけど、言える事はあるんだ。

  恐らく奴は、リュウ君やもーちゃんの『前世』の同類だ」

その言葉は、機龍達の過去を知る人物達だけが分かる答えだ。

 

二人の前世、つまり、怪獣の同類と言う事だ。

 

 「奴らには目的なんてものはない。あるのは、動物的なまでの

  破壊衝動。自分以外の全てを滅ぼす悪魔。『デストロイア』」

一夏「デストロイア……!」

束の口から漏れたその名を聞き、一夏達はデストロイアを睨みつける。

 

と、その時、一夏が駆けだそうとした。だが。

スコール「待ちなさい」

その肩に手を置いたスコールが一夏を止めた。

僅かに振り返る一夏。

    「最初に言っておくわよ?あの怪物は生半可な敵じゃない。

     あなた達だって見たでしょう?ゴーレムⅢの装甲も

     シールドバリヤーも何ら役に立たなかったわ。行けば

     死ぬかもしれないわよ?」

千冬「そいつの言う通りだ」

更に一夏達の方に歩み寄る千冬と真耶。

  「この戦いはISによる戦闘などではない。ましてやISの

   試合ですらない。一瞬の油断は即ち、死に直結する。 

   お前達に、命がけでデストロイアと戦う覚悟があるのか?」

その問いかけに、一夏達は………。

 

一夏「覚悟があるとか、そこはまだ、俺にはわからない。

   けど!」

一夏は、決意の籠った目で姉を、千冬を真っ直ぐに見つめる。

  「だからってここでじっとしてるなんてできない!

   機龍も、モスラも!俺達の大切な仲間なんだ!

   あいつらが戦ってるのに、俺だけ後ろでただ黙って見てる

   なんてできねぇ!」

千冬「……死ぬかもしれないのだぞ?」

一夏「例えそうだとしても、俺は死なない!死んでも死なない!」

と、頓珍漢ながらも、その秘めた思いは熱く、気高い。

千冬「……。だ、そうだ。お前達はどうする?」

そう言って、千冬は一夏から箒達の方へと視線を移した。

 

その視線の先に映ったのは、各々が大切な想い人と歩みを共にし、

悪魔と戦う覚悟を持った、決意の瞳だった。

  「聞くまでもない、と言った所か」

そう言ってため息をつく千冬。そして、彼女は……。

  「良いだろう!行きたければ行け!但しこれだけは言っておく!

   絶対に死ぬな!良いな!」

8人「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」

その言葉に、一夏、箒、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、簪、楯無が

頷いた。

そして……。

束「二人とも。お願い」

スコール「はい」

オータム「あぁ、了解だ」

真耶「私も行きます。私だって、今は専用機持ちです。

   何より、生徒だけを危ないところへなんて行かせられません」

束の依頼で、頷くスコールとオータム。更に自分から志願する真耶。

そして……。

マドカ「私も行く」

簪「マドカちゃん」

マドカ「……私にだって、戦う理由くらいはある」

 

その言葉を合図に、12人は頷いた。そして。

 

一夏「行くぜ!『白式!』」

箒「参るぞ!『紅椿!』」

セシリア「目覚めなさい!『ブルー・ティアーズ!』」

鈴「行くわよ!『甲龍!』」

シャル「出番だよ!『リヴァイヴ!』」

ラウラ「起きろ!『シュヴァルツェア・レーゲン!』」

簪「お願い!『打鉄!』」

楯無「行きましょう!『ミステリアス・レイディ!』」

真耶「起きて!『リヴァイヴ・スペシャル!』」

オータム「来い!『アラクネ!』」

スコール「出番よ。『ゴールデン・ドーン』」

マドカ「行くぞ!『黒騎士!』」

 

各々が決意を表すかのように、愛機の名を呼ぶ。そして、

それぞれのISスーツの上から、鋼鉄の鎧、ISが装着されてゆく。

やがて装着の光が止むと、そこには己が愛機を纏った12人の

姿があった。

 

そして、彼、彼女たちは束や千冬たちに背を向けると、共に戦う

仲間の元へと飛び出していった。

そんな中、千冬は……。

千冬『誰一人、死ぬな。生きて、帰ってこい』

心の中でそう思いながら、固く拳を握りしめるのだった。

 

 

そして、戦いは……。

   『KYUAAAAAANNN!!』

今、機龍は触角を掴んでいる集合体Aをブンブンとスラスターで

回転しながら振り回していた。

そして、振り回されていたAがもう一体のBにぶち当たった。

   『ドゴォォォンッ!』

   『ザッパァァァァン!』

余りの威力に吹っ飛ばされ、学園島から離されるように海面に

落ちる集合体B。更に。

   『ブォォォォンッ!ブチッ!』

突如として集合体Aの触手が千切れてAも投げ飛ばされてしまった。

その先には。

   『ドッガァァァンッ!』

ヨロヨロと起き上がったBと吹っ飛ばされたAが真正面から

激突し、またしても盛大に吹っ飛んだ。

機龍にとっては幸運と言うべき事だった。

 

しかし、戦いはまだまだであった。機龍はこれまでの戦闘で

デストロイア達の事を調べに調べまくっていた。

機龍『打撃やクロウによる斬撃は有効。でも、ミサイルとメーサーは

   あまりダメージを与えているようには見えない。

   ……いや、それ以前に、逆効果なのか?』

そう思いながらも、起き上がろうとするAとBを睨み構えて

居る機龍。

  『もし、メーサー兵器のような高温で敵を焼き払う武器に

   対して耐性や適応性を持っているのだとしたら、下手に火器で

   攻撃すると、こちらが不利になるかもしれない。

   かといって、クロウで奴らを倒せるか……』

そう思っていた機龍だったが、その時。

 

   『ドォォォォォンッ!』

二匹のデストロイア集合体に無数の銃弾や砲弾が命中して爆発した。

機龍『ッ!今のは!』

驚いて攻撃があった方を向く機龍。その時。

簪「機龍っ!!」

巨大な機龍の顔の横に打鉄弐式を纏った簪が現れた。更に、機龍の視界に

砲撃を加えるラウラやオータムの姿が映った。

機龍≪みんな!それに、スコールさん達まで!どうして……≫

スピーカーを通して語り掛ける機龍。

 

一夏「そんなの、決まってるだろ!俺達も戦うためさ!」

機龍≪ッ!?そんなのダメだ!奴の吐く光線はISのバリヤーなんて

   簡単に貫通するんだ!そうなれば、みんなが!≫

一夏「だからって、お前らだけに戦わせておけって言うのかよ!?」

機龍≪少なくとも、僕は奴の破壊光線を防げるだけの装甲がある!≫

一夏「でも痛くないわけじゃないんだろ!?」

機龍≪そんな事より、僕はみんなを!誰か一人でも大切な仲間を

   失う事の方が怖いんだ!≫

一・機「≪………≫」

互いの意思をぶつけ合い、沈黙する機龍と一夏。

 

機龍≪もう、嫌なんだ。失うのは≫

そう言って、機龍は心の中で泣いた。短い間だったけど、

傍に寄り添ってくれた大切な人、≪中條義人≫。

そして、彼との別れを、悲しみを経験した機龍だからこそわかる。

 

二度と会えないという絶望。守れなかったという虚しさ。

無力な自分に対する、自責の念。

機龍は神様ではない。失った命を再生する事などできはしない。

それが、≪命≫なのだとわかっているから。

 

だが、それでも……。

一夏「大丈夫だ!!」

機龍≪ッ!≫

一夏の叫びが、機龍の中に響く。

一夏「俺、この前お前に言ったよな!お前を守るって!!」

それは、束が越してきた日。湯船に浸かりながらも誓った、

二人の約束。

  「それに、お前だって言ってくれただろ!

   俺達の事、守ってくれるって!」

機龍≪あ≫

スピーカーから彼の声が漏れる。

一夏「お前が俺達を守るって言うのなら!俺達もお前を守る!

   だから、一緒に戦おうぜ!機龍!!!」

 

一夏の叫びが機龍の中に響く。

波紋のように、広がって行く。機龍の心に染み渡る。

一夏の、仲間の言葉が銀龍の心を温めていく。そして……。

 

 

   『OOOOOON!!』

   『キュゴォォォォッ!』

集中砲火を受けていた集合体の一体が一夏の白式めがけて

ODRを放って来た。

箒「ッ!一夏!」

咄嗟に箒の叫びが響く。慌てて視線を戻した一夏だが、避けられない。

 

誰もが当たると思った。だが。

 

 

   『バシュゥゥゥ……』

放たれたODRは、その進路に割って入ってきた機龍の回転する

クロウに命中し、霧散してしまった。

咄嗟に腕で顔を守っていた一夏が、恐る恐る腕をどけた時、

機龍と目が合った。

一夏「機龍」

機龍≪……。お兄ちゃん。それにみんなにも、お願いがあるんだ≫

一夏から視線を外し、真正面にデストロイアを捉える機龍。

そして……。

 

  ≪僕に、力を貸してほしいんだ。あいつを、デストロイアを

   倒すために……!≫

静かに熱くなる思いをできるだけセーブしながらも叫ぶ機龍。

そんな彼の思いは、届いた。

一夏「あぁ、そうだ!そうだな!!俺達の力で、あいつらを

   ぶっ飛ばそうぜ!」

そう言って、雪片を構えた白式が機龍の隣に並ぶ。更に

二人の周囲に、箒達や簪たちも集まってきた。

 

そして、機龍は改めて、共に戦う仲間の心強さを理解していた。

機龍≪僕たちの、僕たちの力で……!お前達を、倒す!!!≫

   『KYUAAAAAAAAAANNN!!!』

大きく咆哮した機龍が、スパイラルクロウを構えて突進していった。

そして同時に、一夏達もまた、愛機を駆って空を駆けだした。

 

 

 

 

機龍が、体のスラスターを生かして集合体Aに向かって突進していく。

AはODRを吐きかけてくるが……。

機龍『うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

   『KYUAAAAAAAAANNN!!!』

前面に突き出したスパイラルクロウが回転し、それを打ち消す。そして。

   『ドガァァァァンッ!』

機龍と集合体Aが正面から激突し、そのまま盛大に吹っ飛んだ。

派手に水飛沫をあげながらゴロゴロと転がって行く二匹。

そこに集合体Bが援護に行こうとするが……。

 

一夏「お前の相手は、俺達だっ!!!」

   『ズバッ!』

   『OOOOOONN!!?』

次の瞬間、集合体Bの長い首の背面を一夏の雪片が切り裂く。

悲鳴をあげながらもBは一夏の方に体を向け、ODRを発射しようと

するが……。

   『ドゴォォォォンッ!』

今度は発射寸前の顔の前でグレネードや火球の様な物が連続で

さく裂した。

シャル「ほらほら!こっちだよ!」

それは、シャルやスコールによる攻撃だった。

そこへ……。

 

千冬『全員、よく聞け!』

通信機越しに千冬の声が聞こえて来た。

  『今の所奴の吐く光線は口からしか出ていない!

   絶対に奴の正面には立つな!止まらずに的を絞らせずに

   動き回れ!一撃必殺だが、当たらなければどうという事はない!」

8人「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」

 

千冬からのアドバイスに、生徒である一夏達が返事を返す。

 

 

今、機龍は集合体Aと取っ組み合いをしていた。

機龍『まずは、こいつを倒す!はぁぁぁぁぁぁっ!』

心の中で機龍はそう叫びながら、強烈な張り手でデストロイアの

頭を張り倒す。

そのまま倒れた体を抑えつけ、何度も何度もスパイラルクロウで斬り付ける。

  『僕は、みんなを守るんだぁぁぁぁぁっ!!!』

   『KYUAAAAAAAANNN!!!』

魂の叫びが、咆哮となって周囲に響き渡る。

 

そして、もう一体の集合体を相手にしているのは、一夏の白式、箒の紅椿、

鈴の甲龍、シャルのリヴァイヴ、マドカの黒騎士、スコールの

ゴールデン・ドーンが相手をしていた。

残りのセシリアや簪、楯無たちは飛翔体と戦うモスラの援護に

向かった。

 

簪「行っけぇぇぇぇぇぇっ!!!」

飛翔体の背後を取った簪の弐式から山嵐が発射され、その背中に

着弾した。

   『OOOOOONN!!』

致命傷にこそならなかった物の、背後からの奇襲に驚く飛翔体。

と、その時。

オータム「貰ったぁっ!!」

飛翔体の後頭部にオータムのアラクネが取りついた。そして……。

    「そらぁっ!!」

アラクネの第2の腕から射出された特殊繊維のワイヤーがデストロイアの

顔をぐるぐる巻きにしていく。

   『OOOOOON!?!?』

驚き首を振ってアラクネを落とそうとする飛翔体だが、八本の足を

表皮に突き立てているアラクネはそう簡単には落ちなかった。

オータム「はっはっは!これで、どうだぁっ!」

最後の一巻き、とばかりにワイヤーを縛り付けたオータムが飛翔体の

体を蹴って離脱した。更に……。

 

楯無「ミストルテインの槍、発動っ!!!」

自分が持ちえる最大火力を飛翔体の背中にぶつける楯無。

   『ドゴォォォォンッ!』

   『OOOOOON………』

盛大な音と共に背中から煙を出しながら飛翔体が落下していった。

だが、まだまだだ。

   『KYUUUUUUII!!!』

そこへ更に、モスラが突進してきて翼チョップでデストロイアを

弾き飛ばした。

グラグラと錐揉み回転をしつつ、セシリア、ラウラ、真耶達からの

砲撃を受けながら海へ突っ込み盛大な水柱を上げる飛翔体。

 

それぞれの特徴を生かしたコンビネーションで、デストロイアを

翻弄する一夏やモスラ達。だが……。

 

   『ガキィィィンッ!』

箒「くっ!?何と言う硬さなのだ!こいつの外皮は!」

背後から接近した箒の斬撃は、外骨格に阻まれて弾かれてしまった。

更に援護射撃をしている真耶やラウラの攻撃も、大きなダメージを

与えているとは、言い難い状況だった。

 

 

フォルテ「苦戦、してるみたいっすね」

それを、愛機コールド・ブラッドを展開しながら後方で戦闘の様子を

見ていたフォルテ。

レイン「だ、そうだぜ。先生」

と言って、フォルテの傍に居たレインが千冬に報告をする。

千冬「そうか。……束、何か分かったか?」

報告を聞いた千冬は、自分の隣に立ってノートパソコンを凄まじい

速度でタイプしている束の方に顔を抱けを向けて聞いた。

 

束「い~や~。あんまり。体の構造とかはわかってるし、

  さっきからこの辺に発生している未知の化合物も解析を

  続けてるんだけど、弱点になりそうなのは~」

千冬「そうか」

と短く答えると、視線を戦闘空域の方に向ける千冬。

  『奴の強さは、その破壊力と堅牢な防御だ。それさえ

   突破できれば……』

そう思っていた時だった。

 

束「ッ!わかったよちーちゃん!あいつの弱点が!」

と言う束の言葉に千冬はすぐに彼女の方に向き直って近づき、

彼女のパソコンの画面をのぞき込んだ。

千冬「本当か?」

束「うん!さっきから奴の放っている光線に混じって周囲に

  拡散していた未知の物質の正体は微小化した酸素、

  『ミクロオキシゲン』だったんだ!で、それを分析した

  んだけど、こいつの弱点は温度なんだ!この物質は

  原子の隙間に入って物体を破壊する効果があるんだけど、

  ある程度の極低温にまで冷却されればその効果を失って

  液化するんだ!」

千冬「つまり、奴をその極低温まで冷凍させれば……」

束「うん!勝機はあるよ!」

と、テンションが高い束の声は周囲に広がり、それに聞き耳を

立てていた生徒や教師たちも僅かに安堵する。しかし。

 

静寐「で、でも!どうやってあいつらを冷やすんですか!?」

と、近くに居た静寐から疑問の声が上がった。

レイン「う~ん。フォルテ、お前アビリティで氷操れるんだから何とか

    なんね~か?」

フォルテ「無茶言わないでくださいっすよ!?あんなデカいのを

     3体もなんて無理っすよ!?」

と、思い出したように語るレインと明らかに驚き拒否するフォルテ。

しかし、この時千冬は思い出した。機龍がまだ学園に来たばかりの

頃、ISの訓練の際に彼が言って居た、彼自身が持つ『必殺の武装』の

事を。

 

千冬「いや、サファイアのコールド・ブラッド以外にも手はある」

と言う言葉に、彼女の方に視線を向けた束は気づいた。

束「3式絶対零度砲。……『アブソリュート・ゼロ』」

フォルテ「な、ナンスかその明らかにヤバそうな名前」

と、若干ひきつった笑みを浮かべるフォルテ。

束「リュウ君の、3式機龍の胸部ハッチの中に隠された、リュウ君が

  持ちえる最強の破壊力を持った兵器だよ。その名の通り、

  -273.15℃の絶対零度の光弾を撃ち出す兵器。それが、

  アブソリュート・ゼロ」

本音「じゃあ!それを使えばあいつらを倒せるんですか!?」

と、希望を得たような瞳で質問する本音。しかし。

 

束「でも、問題が一つだけある」

静寐「え!?」

束「アブソリュート・ゼロは一回撃つために機龍の内部にある

  エネルギーの40%を使うんだ。連射はできないし、

  外せば一気にエネルギーを消費したリュウ君が不利になる」

千冬「一発限りの必殺技、というわけか。だがどうする?敵は

   3体も居るのだぞ?」

束「ふっふっふ。大丈夫だよちーちゃん。確かにアブゼロは

  当たんないと意味ないけど、その分、3匹まとめて命中

  させればいいんだよ!」

と、自信満々に言ってのける束。そして、彼女は機龍達へと

通信を開いた。

 

 『リュウ君!みんな!聞こえる!?』

一夏「束さん!」

機龍『束!?うん!聞こえるよ!』

束『良い?これから言う事をよく聞いて!そいつの弱点は超低温なんだ!

  つまり、ガチガチに凍らせる程の冷凍攻撃が弱点って事だよ!』

シャル「冷凍攻撃!?」

鈴「で、でもどうやってこいつを凍らせれば!?」

束『大丈夫!それはリュウ君の持つアブソリュート・ゼロを使えば

  いけるよ!』

機龍『ッ!そうか!』

と、返事をしながらも一匹の集合体を抑え込んでいる機龍。

一夏達も攻撃を回避しながら通信をしている。

 

束『でもアブゼロは撃てるのは一発だけなんだ!』

オータム「はぁっ!?それじゃあ意味ねえじゃねえか!」

束『でもでもそれも大丈夫!威力が高い分、3匹まとめて

  ぶつければそれでいいんだ!行けるよね!リュウ君!』

その言葉に、機龍は……。

 

機龍『うんっ!!』

自信に満ちた返事を返す。

束『だったら後はやるだけだよ!あいつら3匹、まとめて重ねて

  団子にしちゃえっ!!』

機龍『うんっ!一夏、スコールさん!少しだけそいつの気を

   引いててください!』

一夏「任せろ!」

短い返事と共に通信は切れた。そして、機龍はと言うと、

未だに自分の下で暴れているデストロイアの首を両手で抑え込むと。

機龍『お前達の好きにはさせない!』

そう言って首を後ろに引き、次の瞬間。

  『喰らえェェェェェッ!』

それをハンマーのように前に倒す。そうすれば……。

   『ゴガァァァァァンッ!』

   『OOOOOON!?!?!?!』

機龍の石頭がデストロイアの頭に頭突きをかました。

流石の一撃に悲鳴を上げ、傷が出来たのかデストロイアの

頭の辺りから緑色の血液のような物が吹き出した。

機龍が掴んでいた腕を離すと、集合体Aはフラフラと後ろへ

後退った。

今の一撃で、頭が混乱しているのだろう。

 

機龍はそれを見逃さずに、両手で触手を一本ずつ掴んだ。そして……。

   『KYUAAAAAAAN!!!』

   『ブォォォンッ!』

咆哮をあげながらスラスターを全開にして、クルクルと回りだす機龍。

それによって遠心力で体が宙に浮くデストロイア集合体A。

そして、周回数が二桁に届こうかと言うその時。

 

  ≪一夏!スコールさん!みんな!≫

スピーカーを通して叫ぶ機龍。それを聞いたスコールが。

スコール「全機散開!こいつから離れなさい!」

的確に命令を下した。それによって、集合体Bからパッと

離れる一夏達。それを見た集合体Bは一夏達を目で追うが……。

そこへ。

 

機龍『行っけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』

   『KYUAAAAAAANNN!!!!!』

咆哮と共に機龍が集合体Aを全力で投げ飛ばした。そして、それに

気づいてBが振り返った次の瞬間……。

 

   『ドガァァァァァァァァァンッ!!!!!』

盛大に2匹がぶつかってひっくり返った。今の一撃で半ば

気絶したのか、足こそピクピク動かしているものの、起き上がれそうには

なかった。

 

そして、上空でも……。

   『OOOOONN!!!』

飛翔体が楯無を追ってチェイスを繰り広げていた。

楯無「ほらほら!こっちよ!」

と、挑発を続ける彼女を追うデストロイア飛翔体。だが、次の瞬間。

ラウラ「そこだぁっ!」

デストロイア飛翔体の巨体を、ラウラのレーゲンが持つAICが

抑え込んだ。

   「ぐっ!?くぅぅぅ!モーラ!今だぁぁぁっ!!」

   『KYUUUUUUII!!』

ラウラの言葉に反応するように、動けない飛翔体の背後に迫るモスラ。

そして、次の瞬間、モスラは全ての足を飛翔体の背中に引っ掛けた。

それに合わせてラウラもAICを解除。同時にモスラは飛翔体を

伴って急上昇していく。

   『OOOOON!?!?』

暴れる飛翔体だったが、モスラの拘束からは逃れられなかった。

そして、モスラはある程度急上昇すると、そこから更に急な

楕円軌道を描いて今度は急降下していった。

 

降下する真下には、動けないデストロイア集合体が居た。

そして、急降下したモスラは地上数百メートルの地点で拘束を

解除。飛翔体を集合体の二匹に向かって、『投げた』。

制動をかける事も出来ずに落ちていく飛翔体と、羽を大きく広げて

速度を殺して滞空するモスラ。そして……。

 

 

   『ドガァァァァァァァァァンッ!』

飛翔体が残りに二匹の上に落ちた。その衝撃で、本日何度目になるか

分からない盛大な水柱が上がった。

それが一夏達の視界を塞ぐが、機龍の目とレーダーをもってすれば、

その先を見る事など簡単だ。

 

 

機龍『今だっ!』

そう思った機龍の胸部ハッチが開く。機龍は既に、パーツを部分単位で

交換していたため、その胸の中には、既にアブゼロが装備されていた。

そして、両手を広げ、己が胸に力を集める。

 

開いたパーツの先端から光が発せられ、それが次第に中央に集まって行く。

そして、その中央に巨大な青い光球が生まれ、更に大きくなっていく。

青い雷撃のようなエフェクトが氷結の光球の周りを走っている。

 

力はたまった。後は、それを撃ち放つのみ。

 

一夏「ぶっ放せぇ!機龍ぅぅぅぅぅぅっ!!!!」

その言葉が、機龍の心を後押しする。機龍がアブソリュート・ゼロの

光を放とうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが。

 

   『ビカッ!』

   『キュゴォォォォォォォッ!』

   『ドガァァァァァァァァンッ!!』

   『KYUAAAAAAN!?!?!?』

それよりも早く、デストロイア達が居ると思われる場所から

紫色の光線が発せられ、機龍の胸に命中し、アブゼロの光が

消えてしまった。

   『ドォォォォンッ!』

光線の威力に押され、後ろに倒れて水しぶきを上げる機龍。

鈴「なっ!?」

一夏「機龍!」

シャル「まさか、失敗……!?」

 

驚く鈴やシャルロット。機龍の元へと駆け寄る一夏。

と、その時。

 

 

 

   『OOOOOOOOOOOONNN!!!!』

先ほどの光線の余波で出来ていた水蒸気の中から、咆哮が

響いてきた。そして、その水蒸気が晴れた場所には……。

箒「何だ。『奴』は」

率直な感想を口から漏らす箒。

 

 

そう、そこに居たのは、複数のデストロイアではない。

 

 

集合体の体に飛翔体のような翼を2枚生やし、触手と鋏、尻尾の数が

倍になった新たなデストロイア・『不完全体』がそこに居た。

 

 

束「まさか、合体した!?」

それを後方から見ていた束が呟き、生徒達は怯え、千冬は奥歯を

噛みしめていた。

 

 

まだ、戦いは終わらない。勝つのは、人類と機龍・モスラか?

それとも、悪魔が勝利するのか?

 

その答えは誰にも分からない。

 

だが、これだけは言える。戦いは、これからなのだと。

 

     第31話 END

 




この回で、オリジナルのデストロイア・不完全体が現れました。
最初は完全体と戦わせようと思ったのですが、体格差や技の差を
考えると、機龍に勝ち目が無いかな~?っと思ったので、集合体と
殆ど変わりませんが、不完全体なんてものを考えてみました。
ご了承ください。

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