インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

38 / 46
今回からバトル開始です。ちょっと駆け足気味ですが楽しんでいただければ
幸いです。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第30話

~~前回までのあらすじ~~

ある日、異世界のゴジラの記憶の流入と言う経験をした機龍。

そして彼の体は来るべき戦いに備えて進化を始めていた。

そんな中、太平洋の某所にあった企業の研究室では紅蓮の悪魔

こと、デストロイアの幼体が捕獲され保管されていた。だが、

その施設の別の幼体の群れが襲撃。

企業の幹部や警備員を虐殺したデストロイア達はまるで

引き寄せられるかのようにIS学園と向かった。

そして、そこでは既に戦いに備えた機龍が居たのだった。

 

 

機龍が、戦いが近い事を直観していた一方、別の角度から

それを感じていた天才が居た。そう、束だ。

今、再び束の邸宅の地下室に千冬と真耶、更にスコールや

オータムと言った大人たちが集められていた。

スコール「それで博士。お話と言うのは?」

束「うん。ちーちゃんとまややんには前話したんだけど、実は

  よくない事が起きてるみたいなんだよね」

オータム「良くない事、だと?」

束「そう。これを見て」

と言って、キーボードを操作する束。その操作に合わせて、ディスプレイ

に太平洋を中心とした地図が映し出された。

そして、その地図の上にはいくつも赤い点が点示されていた。それが

意味するのは……。

スコール「これは。……最近頻発している船舶の消失事件の

     ポイントですね?」

束「そう。このポイントは船舶が最後に確認された地点を

  表しているんだよ。そして、こっちは私が観測した、

  正体不明のエネルギー」

再びキーボードを叩くと、別のディスプレイに青い点が描かれた

地図が現れた。そして、二つの地図が重なると……。

オータム「嫌って程一緒だな」

その場の4人の感想を代弁するように、感想を漏らすオータム。

殆ど青い点と赤い点の誤差は無く、重なっていた。

しかも……。

 

真耶「なんだか、点がどんどん日本に近づいていませんか?」

点の横には、襲われた日付が描かれていた。そして、それは

今日に近い、つまり最近になるにつれて東から西へと動いていた。

束「そうなんだよ。そして、それを総合するのなら、ある程度

  結論が出せるんだけど。……この船を襲った『何か』は、

  確実に日本を目指している。そして、その存在は恐らく、

  ISでも既存の兵器の類でもない。多分、これは——」

と、その時。

モーラ「怪獣の仕業でしょう」

部屋の自動扉が開いて、束の言葉を遮るようにモーラが現れた。

一方、彼女の言った怪獣と言う単語に疑問符を浮かべるスコール達。

   「束さん。そこから先は、私に話をさせてください。

    恐らく、この事件の説明には当事者である私の方が適任かと」

束「うん。わかった。じゃあ二人に説明、お願い」

モーラ「ありがとうございます。……スコールさん、オータムさん」

束に礼を言ったモーラは、スコール達の方に向き直った。

   「私からお二人に、話さなければいけない事があります。

    機龍の事、私の事、そして、これから起こり得る可能性の

    事を」

 

そう言って、モーラは以前、一夏達に全てを見せたように、精神世界で

二人に全てを伝えた。

異世界の事。怪獣王ゴジラの事。怪獣の事。3式機龍の事。自分、モスラの事。

そして、この世界へと転生した事実を。

 

流石に大人な二人だけあって一夏達のように泣いたり怒ったり、とすることは

無かったが、表情は驚き、曇っていた。

オータム「それが、あいつの過去で、命に拘る理由の根底って所か」

スコール「……。それで、どうして今になってそんな話を?」

モーラ「はい。ここからは、私と機龍の推測です。彼と私がこの世界に

    第2の生を受けた以上、私たち以外の他の怪獣に同じことが

    起こらないという保証はありません。ましてや、人間を敵と

    みなす怪獣ならば、謎の消失事件についてもある程度説明が

    できます。ISを含めた既存の兵器以外で、これらができると

    したら、怪獣だけです。そして、それが存在しないという

    証明よりも、居るかもしれないという証明の方が簡単です。

    私や機龍と言う、転生怪獣の前例があるのですから」

ス・オ「「………」」

束「とにかく」

と、沈黙を破るように声を上げる束。

 「今後、もしかしたらその怪獣がここに来るかもしれないから

  警戒が必要だって事を4人に伝えたかったんだよ」

ここ最近、彼女がするようになった真面目な表情に、真耶は

驚き、他の3人も表情を硬くする。

 「今、急ピッチでゴーレムⅢの量産はしているけど、それで倒せる程

  甘くはないと思うから。覚悟だけはしておいたほうがいいかもね」

千冬「覚悟、か。……明日、専用機持ちを全員集めてこの事を話す。

   構わないな?」

束「うん。……いっくん達にも、覚悟してもらうだろうね。もし、

  戦いになれば、それは今までにないヤバい戦いになるだろうからね」

その言葉を最後に、大人たちは別れて戻って行った。

 

 

だが、彼女たちの予想を裏切るように、戦いの幕開けへの時計は、

既に秒読みに入っていた。

 

 

翌日、朝の事だった。

一夏達10人、マドカ、レイン、フォルテの全員に、メールが

送られていた。そこには……。

   『専用機持ちは全員、朝9時半に生徒会室に集合せよ。

    なお、これらは授業等の全ての事よりも優先される』

と言う内容が書かれていた。

 

そして、10人は朝から食堂に集まっていた。

一夏「なぁ、みんなは見たか?今朝の連絡」

と、みんなが集まってすぐにその話題を切り出す一夏。

その問いに、残りの9人が思い思いに頷いた。そこへ。

レイン「ちょっち良いかい?」

更に残りの専用機持ちであるレインとフォルテが食事を

乗せたお盆を持って現れた。

フォルテ「ウチらも相席良いっすか~?」

と言う言葉に、少しばかり席を詰めて空きを作り、そこに座る二人。

レイン「あんたらの所にも来たんだろ?メール」

楯無「えぇ。と言っても、それ以上の事は私も知らないんだけどね?」

フォルテ「生徒会長もっすか?」

楯無「招集をかけたのは織斑先生みたいね。と言っても、先生も

   学園側には理由を教えていないみたいね。学園長にも

   念のため確認したけど知らないって言われちゃったわ」

レイン「って事は、呼び出しくらった理由は先生に聞け、って事か」

セシリア「……。何事もなければ良いのですが」

と、言うセシリアの言葉に一夏達の表情が引き締まる。そんな中、

機龍とモーラは……。

 

機龍『近い。……わかる。感じる。何かが、いや。奴が近づいている』

モーラ『時間は、限りなく少ないという事なのでしょうか?』

元怪獣の第六感が二人の中で鐘を鳴らし続けていた。

 

そして、食後。一夏達12人は校舎へと向かって歩いていた。

皆、呼び出しの理由を話し合う中、その後ろを数歩遅れて

歩いていた機龍。

機龍『わかる。僕たちが呼ばれた理由が。多分』

そう思いながら一夏達を見上げる機龍。

  『言うべきなのかな。戦いが近い事を。でも、

   お兄ちゃん達を不安にはしたくない。けど、黙った

   ままで居るのも』

と、悩みを膨らませていた。やがて……。

  『伝えるべき、だよね。危機が迫っている事を』

そう思った時、機龍の足が止まった。

簪「あれ?機龍?」

それに気づいて振り返った簪と、更にそれに気づいて足を止め

振り返る一夏達。

 「機龍?どうかしたの?」

疑問に思って声をかける簪とそれを見ている一夏達。

そんな中で、一人モーラだけが分かったような面持ちをしていた。

機龍「みんなに、話しておきたい事があるんだ」

簪「え?」

一夏「そう、か。まぁとりあえず校舎の方に行こうぜ。ここじゃ

   立ち話も何だし」

機龍「……うん」

小さくうなずき、歩き出そうとした機龍。やがて数分後。

教室にたどり着く一夏達。だが、扉の敷居を跨ごうとした、その時。

 

 

   『ドクンッ!』

  「っ!!」

唐突に、機龍の心臓が跳ねた。そして、それは……。

モーラ「機龍っ!!」

機龍の前を歩いていたモーラもまた、血相を変えて振り返った。

同時に、目を見開いた機龍もまた、振り返って窓の方へと

駆け寄った。

マドカ「ん?……何をしているんだ?」

そこへ、遅れて登校してきたマドカがやってきた。しかし、

その時彼女は手首の端末が起動した事に気付いて足を止め、

視線をそちらに向けた。

 

ゴジラ「感じる。感じるぜぇ!」

マドカ「ゴジラ?」

いきなり現れたかと思うと、鬼のような凶悪な笑みを浮かべる

ゴジラに、少しばかり戸惑うマドカ。

ゴジラ「来やがった……!来やがったぜ、悪魔がぁっ!」

端末の中で、ゴジラが吠えた、次の瞬間。

 

 

   『カッ!』

学園の海岸のすぐ近くで、海面が……。

   『ドォォォォォンッ!』

文字通り、爆ぜた。

 

   「「「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」」」

いきなりの事で、周囲から女子生徒達の悲鳴が聞こえて来た。

そんな中でも、機龍とモーラは窓から見えるその爆ぜた地点を

見つめていた。

そこへ、一夏達が駆け寄ってくる。

一夏「な、何なんだ今の音!?」

機龍「わかんない。……いや、でも、これだけは言える。

   『何か』が、来た……!」

静かに海の方を睨みつける機龍と、その表情の険しさのために

機龍から目が離せなくなる一夏。その時。

箒「ッ!一夏!あれを!」

一夏「え?」

突如として聞こえた箒の叫びで意識を戻された一夏は、彼女が

指さす方へと視線を向け、気づいた。

 

先ほど爆ぜた海面が、今は白く泡立っている事に。

ラウラ「一体、何が起こっているというのだ」

シャル「……。あ!あそこ!!」

事態が飲み込めないラウラと、何かに気付いて海の一点を

指し示すシャルロット。

彼女が指し示した一点では、海の青と泡の白の合間から、赤い何かが

次第に見え始めていた。

そして……。

 

 

   『OOOOOOOON!!!』

突如として、生き物とはかけ離れた、身の毛もよだつような唸り声が

響いた。かと思うと……。

   『バシャーンッ!』

海面を割るようにして、その下から赤い怪物、『デストロイア・集合体』

が姿を現した。

 

その集合体は、幼体と姿こそ似ているものの、差異があった。

まず、長い首の付け根辺りから長く太い触手が2本生え、更に胴体の

前面には一対の鋏の様な物が追加されていた。

そして、その最もたる違いは、身長だ。

幼体ではほんの2、3メートルだった大きさが、今や40メートル。

本来の3式機龍にも届きそうな程の大きさへと巨大化していた。

 

簪「何、あれ」

デストロイア集合体を見た簪は、驚きから僅かに後退ってしまった。

あれこそ、まさに『怪獣』。怪しき獣と表現できるであろう怪物。

と、その時。

   『ヒュンヒュンッ!』

IS学園の校舎を追い越すように、3機のゴーレムⅢが飛来し、

デストロイア集合体へと向かって行った。

そして、集合体の眼前で散開した3機は三方から左肩や左手、背面武装

によるビーム攻撃を開始した。

集合体の方も、黙ってそれにやられるつもりはなく、口から光線、

『オキシジェン・デストロイヤー・レイ』(※以降『ODR』と短縮)を

上空の3機に向かって放って来た。

何とかそれを回避しながらも攻撃を続けるゴーレムⅢ達。

 

一夏「あれって、確か束さんの無人機」

彼がそう言うと、近くに居た生徒達の間に安堵のような様子が

広がって行った。

彼女たちの中で、ISとは世界最強の武装。それが3機も居るの

だから、この勝負はすぐに終わると考えていたのだ。

 

だが、一方で機龍とモーラの心臓は未だに高鳴っていた。

機龍『変だ。奴はあそこにいる。なのに、まだ不安が拭いきれない。

   何かを見落としている?でも、何も?』

そう思い、ODRを吐きまくっている集合体の左右に素早く目を

向ける機龍。

と、その時機龍は、集合体から少し離れた地点がまた泡立っているのに

気づき、そして、確信した彼はすぐさま窓を乱暴に開け放ち、

ゴーレムⅢ達に向かって叫んだ。

 

  「気を付けてぇ!敵は、『そいつ』だけじゃなぁぁぁぁいっ!!!」

 

 

機龍が叫ぶのと、『もう一体』の『それ』が飛び出してくるのは

殆ど同タイミングだった。

   『ザッパァァァァンッ!』

   『OOOOOOOON!!』

海面を突き破り、今度は集合体とは異なる、鳥のような形に変化した

デストロイア、『飛翔体』が咆哮と共に現れた。

そして、咄嗟の事で反応できずにいる無人機の一機に向かって、

飛翔体が突進。そして……。

   『バギャッ!』

振り返ってそちらを向いたゴーレムⅢをかみ砕いた。

残骸となって、かみ砕かれたゴーレムⅢが落下していく。

シールドバリヤーも絶対防御も無い。それすらもかみ砕くデストロイア

の顎。

その時、残った二機の内の一機が、仇討ちのように飛翔体の方へと

体を向けた。だが。

   『キュゴォォォォッ!』

その時、突如として海中からODRが放たれ、二機目のゴーレムⅢの

背中に命中。

   『ドガァァァァンッ!』

ODRをモロに食らったゴーレムⅢは爆散してしまった。

そして、その場に、2体目の集合体。つまり3体目のデストロイアが

海面を割って現れた。

 

   「「「「「…………」」」」」

余りの事の連続に、一夏達を含めた大勢の生徒達は放心し、

悲鳴を上げる事すら忘れて立ち尽くしていた。

そして、最後の一機となったゴーレムⅢは、2体目の集合体の

ODRを回避したところで飛翔体の体当たりを喰らってバランスを

崩し、そこへ更に一体目のODRを受け、爆発四散した。

 

余りの事に、呆然とする生徒達。と、その時。

ようやくではありが、学園内に緊急事態発生の空中ディスプレイと

サイレンが響き渡った。

そして、先ほどの十倍以上の、40機近いゴーレムⅢが

デストロイア達に向かって行った。

放送『緊急事態発生!緊急事態発生!生徒及び職員はこれから

   指示する場所に移動せよ!各自、学園モノレール駅に

   集合せよ!繰り返す、モノレール駅前に集合せよ!

   これは訓練ではない!』

そして、その放送が流れた次の瞬間、教室から生徒達が溢れ出し、

廊下を駆け出して行った。

 

そんな中で、機龍は、窓枠から見えるデストロイア達の方を

見つめて居た。

機龍『まさか、こんなに早くに来るなんて……!』

そう思いながら拳を握りしめる機龍だったが……。

一夏「機龍!何してんだ!行くぞ!」

肩を掴まれ、名前を呼ばれた事で我に返った機龍。

機龍「う、うん」

一夏の後ろでは、混乱しないようにとセシリアやシャルロットが

1組の生徒達をまとめていた。

と、そこへ。

千冬「お前達!何をしている!」

スーツ姿の千冬が走ってきた。

セシリア「織斑先生!一組は全員揃っていますわ!行方不明の方は

     おりません!」

千冬「そうか。よくやった。聞け!我々は今すぐ避難する!

   行くぞ!ついてこい!」

女子「「「「「「「「「「は、はいっ!」」」」」」」」」」」

 

機龍が出遅れた事もあり、奇しくも千冬に先導された一夏達1組が

最後に校舎を出る事になった。そんな中で、機龍は……。

機龍『あれが、あの夢の奴なのか』

横目でデストロイアとゴーレムⅢの戦闘を見ながら走る機龍。

  『いや、でも、夢で見たのとまだ姿が違う。まさか、

   今はまだ進化の途中なのか?なら、まだっ!』

 

そう思った直後、機龍が逃げる列から飛び出し、足を止めた。

本音「あ!せ、先生!リュウ君がっ!」

そして、それに気づいた本音たち生徒と千冬が足を止めた。

千冬「機龍!何をしている!避難するぞ!」

機龍「………」

千冬「機龍!」

彼女の声に、答えない機龍としびれを切らして叫ぶ千冬。

しかし……。

 

機龍「織斑先生。みんなを連れて、先に避難してください」

一夏「なっ!?何言ってるんだよ機龍!お前も一緒に!」

そう叫ぶ一夏の声に答えるように、機龍はゆっくりと振り返って

薄っすらと笑みを浮かべながらも首を横に振った。

機龍「ごめんね、お兄ちゃん。でも、それだけはできないんだ」

一夏「できないって。なんでだよ!?」

咄嗟に、駆け寄ろうとする一夏だったが、彼の肩を掴んで

モーラが止めた。

  「モーラ」

モーラ「一夏さん。ここからは機龍の、いえ。機龍と『私』の戦いです」

そう言うと、彼女は一夏から手を放し、機龍の方へと歩み寄って並んだ。

   「機龍、あなたは皆さんに自分の気持ちを伝えてください。

    露払いは私が」

機龍「良いの?」

モーラ「あなたの方が、私より皆さんと過ごした時間が長いはずです。

    私は、一言で十分です」

そう言って、笑みを浮かべたモーラはクラスのみんなの方へと

向き直ると、表情を真剣な物へと変えた。

   「皆さん。短い間でしたが、『お世話になりました』」

そう言って頭を下げるモーラ。しかし彼女の言い分を理解できない

生徒達。

静寐「な、何言ってるのフラワーさん。それって、完全に

   お別れの言葉なんじゃ」

そんな風に言っている静寐と、同じような表情をしている生徒達。

 

モーラ「………」

と、その時。無言を貫いていたモーラの体を光が包んだ。

余りの光量に彼女たちは目を逸らした。やがて光が弱まり、彼女たちが

視線を戻した時には、モーラは既に、初めて機龍達と出会った時の

トーガの姿に戻り、そして、その背に煌めく4枚の羽を広げていた。

   「「「「「………」」」」」

余りの事に、モーラの事を知らない生徒達が呆然としたまま開いた口が

塞がらない状態になってしまった。

 

モーラは無言のまま、僅かに地面から浮かび上がると、羽を羽ばたかせて

飛び上がって行った。

それを目で追う生徒達。と、次の瞬間、更に大きな光がモーラを

包んだ。そして、その光が収まった時。

 

 

 

   『KYUUUUUUII!!』

 

生徒達は、呆然となった。それもそうだろう。

何故ならそこに、『巨大な生物』である『モスラ』が浮かんで

いたのだから。

そして、『モスラ』と言う『本当の肉体』を取り戻した『モーラ』は

悪意の元を叩くために、飛翔していった。

それを見送る機龍と生徒達。

 

静寐「ね、ねぇ、これって、どういう事?あ、あの、蝶って、

   フラワー、さん?」

事態を飲み込む事ができない静寐や他の生徒達が目を見開き

デストロイア飛翔体との空中チェイスを始めるモスラを見ている。

 

機龍「そう、だよ」

やがて、機龍が静かに語りだした。生徒達の視線が機龍に集まる。

  「あれが、モーラお姉ちゃん。ううん。モスラ本来の姿なんだよ」

どこか、真剣な面持ちで戦うモスラを見上げながら語る機龍。やがて、

彼は千冬の方へと向き直った。

  「織斑先生」

千冬「あぁ、何だ?」

機龍「みんなを連れて、先に逃げてください。僕とモスラは、

あの怪獣を叩きます」

千冬「……戦うのか?」

機龍「奴は、恐らく僕やモスラと同じです。異世界からここへと

   やってきた怪獣です」

語りながらも、一度デストロイアの方を向く機龍。一方の生徒達は

こんがらがって話についていけなかった。

  「であれば、同じ怪獣として。僕たちがケジメを付けるべきだと

   思います。そして何より。……みんなを守る事が、僕の戦う理由

   ですから」

そう言って、最後に笑みを浮かべた機龍。

 

その時。

本音「危ないっ!」

咄嗟に本音が叫んだ。視線を移した時、集合体の一匹が今まさに

こちらに向かってODRを放とうとしていた。

 

誰もが慌てて伏せ、目を瞑り、死を覚悟したその時。

 

 

 

機龍「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

 

 

   『KYUAAAAAAAAAAANN!!!!!』

 

 

機龍の体が、光に包まれた。

 

その数秒後に、ODRが放たれた。それは一機のゴーレムⅢを

撃破してなお、生徒達に向かって行った。

誰もが固く目を閉ざしていた。その時。

 

   『ブォォォンッ!』

   『バシュゥゥゥゥ……』

巨大な何かが空を裂く音と共に、何かが霧散したような音が響いた。

 

やがて、ゆっくりと目を開ける一夏達。そして同時に、彼女たちは

今自分達が巨大な『何か』の影の中に居る事に気付いて、影の元を

見上げ、三度驚愕した。

 

それは、見慣れたはずの、見慣れた銀色の、巨大な背びれだった。

そして、彼女たちを守るように円を描いているのもまた、見慣れたはずの

銀色の尻尾だった。

その時。

機龍『早く逃げてください』

目の前の巨大な影の主、『3式機龍』のスピーカーを通して声が

聞こえて来た。

機龍は、本能が促した力によって、本来の姿へと戻る力を手にした。

そして、今まさに彼の友人に向かって来たODRを右手の

スパイラルクロウで相殺したのだった。

 

そして少女達は気づく。それは、自分達が見慣れたはずの3式機龍の、

本来の巨大な姿なのだと。やがて。

千冬「何をぼさっとしている!移動するぞ!」

先生としての彼女の怒号によって、我に返った生徒達は

彼女に促されるまま、機龍の背中を何度も振り返って見ながら、

走った。

 

そして、そんな中でも、一夏達はできる限り機龍の、3式機龍の背中を

見つめていたのだった。

 

 

そして、機龍は……。

機龍『これで、僕の正体は世界中に広まるかもしれない』

クロウ状態の右腕を戻しながらも、機龍はそんな事を考えながら、

前を見つめていた。

そこでは、モスラと戦うデストロイア飛翔体と、二匹のデストロイア

集合体がゴーレムⅢの部隊と戦っていた。

 

機龍の爪が、ギュッと閉じられる。

  『でも、それでも、僕には、守りたい場所が、友達が、世界が、

   在るんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

   『KYUAAAAAAAAAAANN!!!!!』

 

大きく遠吠えを上げて、機龍は『ズシン!ズシン!』と足音を

させながらデストロイアに向かって突進していった。

 

 

 

今まさに、世界最大の死闘の火蓋が切って落とされた。

機龍とモスラは戦う。

この世界を守るために。

悪魔を倒すために。

 

さぁ、決戦の始まりだ!!

 

 

     第30話 END

 




ここ最近はなんだか投稿する話が大体8000字前後にまでなっていますが、
その分、今のこの作品に対して意欲がピークになっている事と、字数の
少なさ故すぐに次も書き上げられると思います。お楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。