インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回で、前回出て来た悪魔の正体がわかります。まぁ、恐らく皆さんは
既に分かっていると思いますが。



インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第29話

~~前回までのあらすじ~~

新たな仲間、友人を迎えた機龍達。束とスコール達もIS学園に

住み込み、マドカも束の娘として篠ノ之の姓を貰い、『篠ノ之円』

として一夏達のクラスへ編入してきた。

ドタバタながらも楽しい日々を送っていた機龍達。

しかし、一方で束は新たなる怪獣の出現を予想し、千冬は胸騒ぎを

覚えるのだった。

そして、そんな中で亡国企業の幹部会は『一匹の悪魔』を

捕えていたのだった。

 

 

マドカの入学パーティーから数日が経ったある日の深夜。

 

 

今、機龍は夢を見ていた。

 

機龍『ここは……』

何処か白黒な世界に居る機龍。そして、『それ』は流れ出した。

  『何、これ』

余りの事に驚く機龍。それもそのはず。何故なら流れ出した映像とは、

自分と同じ種族『ゴジラ』と様々な怪獣の戦いの映像だったのだ。

4足歩行で体中がトゲトゲな怪獣から始まり、巨大な猿の怪獣、

自分の知るのとは少し違うモスラ、翼竜の怪獣、黄金の三つ首龍。

自分と似て非なる銀色な鋼鉄の龍。

それだけではない。多くの怪獣たちが戦う映像が、機龍の前に

現れては消えて行った。

それを、唯々呆然と見ている事しかできない機龍。

  『これ、は。……記憶が、流れ込んでくる。これは、

   分岐世界の僕(ゴジラ)の記憶?』

幾度となく繰り広げられる死闘。そのすべてを制する黒の巨龍。

そして、最後は……。

 

 

   『AAAAAAAAAAN!!!!』

 

謎の咆哮と共に、機龍の前に翼を広げ、一角を持った直立歩行の

『何か』が降り立って来た。

機龍は、呆然とその巨大な『何か』を見上げていた。

と、その時。

ゴジラ『感じる。感じるぜぇ、この『力』ぁ!あぁ忘れねえ!

    あの時のだぁ!』

唐突に、機龍の中に居る初代ゴジラが憤り始めた。そして、

肉体を共有しているからこそ、機龍は目の前に居る『何か』の

持つ力を確信した。

機龍『こいつが、こいつが持っている、力は……!』

 

と、その時、『何か』の角が煌めき、大きくなっていった。

  『オキシジェン——』

次の瞬間、その角が機龍めがけて振り下ろされた。

  『デストロイヤー!』

そして、光が機龍を包んだ。

 

 

  「はっ!!?」

機龍の意識が光りに呑まれた次の瞬間、現実世界の機龍が飛び起きた。

  「ハァ、ハァ、ハァ……!」

  『あれは、夢、なのか?』

息を荒らげ、体中を汗だくにしながらも、機龍は額に右手を当てて

先ほどまで見ていた夢をリピートしていた。

そんな中でも群を抜いて印象的なのが、最後の赤い『何か』。

  『違う、夢じゃない。やっぱり、あれは』

と、思っていた時だった。

簪「ん、んん?機龍?」

機龍のすぐ隣で、彼の腕を抱いて眠っていた簪が目を覚ました。

 「機龍、どうしたの?」

瞼を擦りながらも未だに半分閉じた眼を見ながら、機龍は……。

機龍「あ、ごめん。起こしちゃったかな。ちょっと喉乾いちゃって」

簪「あ、そう、なんだ。ふ、あ~~~」

頷いてから欠伸をする簪。

機龍「まだ寝てていいよ。もう少し時間があるから」

簪「うん。それじゃあ、お言葉に、甘えて」

と言うと、簪はポスンとベッドに倒れてまた眠ってしまった。

 

対して機龍は、簪が眠ったのを確認すると、ゆっくりとベッドを出て

シャワー室の前にある洗面台でコップに水を汲み、一気に飲み干した。

機龍『仮に、仮にあれが本当だったとしても、記憶なら過去の出来事のはず。

   大丈夫だよね。きっと』

機龍は、そう思いながら鏡を覗き、弱気な顔を自分がしている事に

気づくと、両手で頬をパン!と叩いた。

  「しっかりしろ、僕!弱気、ダメ!よしっ!」

と、気合を入れた機龍はベッドへと戻って行き、横向きに寝ている簪の

額に掛かった髪の毛を払いながら。

  『みんなの笑顔も、命も、この世界も、僕が守る』

と、決意を新たにし、握りこぶしを作ったのだが、その時。

  『あれ?』

不意に、自分の右手を見つめる機龍。彼は二、三度拳を作っては

開いてを繰り返した。

  『何だろう。前より力が、上がってる?』

もう一度拳を握り、深呼吸をしてから目を瞑り内なる自分を確かめた。

機械が自己診断プログラムを走らせるように、機龍も自分の機能を

生かして体の中を走査した。そして……。

  『やっぱり。肉体が変化している。……でも、今までこんな

   事は無かったのに、どうして今になって』

と、疑問に思う機龍だが答えは出なかった。

 

しかし、のちに彼は知る事になるだろう。この変化は、彼の本能自身が

戦いに備えるために引き起こした事なのだと。

 

 

やがて、朝になって簪たちと共に食堂に集まる機龍。今ここに居るのは、

クロエとマドカを抜いた10人だ。

みんながみんな、思い思いの朝食を食べていた。

一夏「あ~、気が付けばもう冬もすぐそこだな~」

円形のテーブルに揃ってみんなで食事をしていた一夏が外を

見ながらそう呟いた。

鈴「そうね~」

シャル「秋、か~」

と、相槌を打つ鈴やシャルロット。そこへ。

楯無「そして近づく中間考査~♪」

学生にとっての痛恨の一撃たる殺し文句が放たれた。

次の瞬間、一夏、鈴、箒の表情が暗くなる。

モーラ「だ、ダメですよ楯無さん!皆さんにダメージを与えちゃ!」

シャル「僕たちも勉強手伝うから!ね!?」

機龍「そ、そうだよ!3人寄れば文殊の知恵って言うし!みんなで

   勉強すればきっと大丈夫だよ!」

と、そんな風に機龍達は一夏達を励ますのだった。

簪「じゃ、じゃあ今度みんなで勉強会しましょう。ね?」

一夏「そ、そうだな!」

鈴「そうよね!みんなで勉強すれば……!」

と、そんな一言で勉強会をする方針になった。

その後。

マドカ「勉強会、だと?」

朝のHR前に教室で合流したマドカにもその事を伝える機龍。

機龍「うん。折角だからマドカちゃんも誘おうと思って」

マドカ「そうか。……考えておく」

と、言いつつも密に笑みを浮かべるマドカだった。

 

しかし、そんな中で機龍には懸念があった。そして……。

機龍「モーラお姉ちゃん。ちょっと良いかな?」

モーラ「はい、何ですか?」

機龍「少し、話したい事があるんだ。屋上に来てもらえるかな?」

と、モーラが独りの時に話しかけて誘う機龍。

モーラ「わかりました。では、放課後にそこで」

機龍「うん、ありがとう」

 

そして、放課後。

既に陽が落ちるのも早くなった今日この頃。夕暮れの4時過ぎの

屋上に二人の姿があった。

モーラ「それで、お話と言うのは?」

機龍「実は……。今日変な夢を見たんだ」

静かに告白する機龍だったが、彼は僅かにモーラが息をのんだのを

見逃さなかった。

  「もしかして、モーラお姉ちゃんも?」

モーラ「……。はい」

しばしの沈黙の後に頷くモーラ。

   「確かに私も変な夢を、いえ。異世界の『私』の記憶を

    見ました。あなたも、なのでしょう?」

機龍「うん。……ゴジラの戦いの記憶だった。四つ足のトゲトゲ

な怪獣や、まるで僕みたいな機械仕掛けのゴジラ。

色んな怪獣と戦うゴジラの、僕の記憶。それが頭の中に

流れ込んできたんだ。これって……」

モーラ「わかりません。ただ」

機龍の問いに首を振りながらもモーラは……。

   「今まで無かった事が起こった。こういう事はその、

    非常に言いずらいのですが……」

機龍「何かの、前触れって事?」

モーラ「……。はい。そう捉え警戒した方が良いと思います」

そう言われた機龍は、沈み行く太陽を見つめ、そして。

 

機龍「モスラ」

モーラ「はい」

彼女の方は向かずに彼女の真名で呼ぶ機龍。

機龍「僕は、この世界を綺麗だと思う。一夏達と過ごせる毎日が

   楽しくて仕方がないんだ。……人間の本性がそれだけじゃない事は

   僕自身わかっているつもりだよ」

静かに語る機龍の言葉に聞き入っているモーラ。

  「でも、それでも。……例え僕の存在が公になったとしても」

そう言いながら機龍はモーラの方に向き直った。

  「僕は、3式機龍として、この世界を守る」

 

僅かに煌めく黄金の瞳がモーラを真正面から捉える。その瞳を

見たモーラは……。

モーラ「であれば、私も貴方と共に戦いましょう。守護獣モスラとして。

あなたの傍に寄り添うと決めたモーラ・S・フラワーとして。

この世界を。私の友人たちを」

機龍「モスラ。……ありがとう」

お礼を言う機龍は、彼女に向かって右手を差し出した。

それに答え自分も握手を返すモーラ。

 

二人は戦う決意を固めた。この世界を、命を護るために。

 

 

 

 

一方、太平洋上の某所にある亡国企業の研究島では……。

 

相も変わらずカルト結社のような恰好をした幹部会の役員たちが

『奴』の幼体が入ったポッドを見つめていた。

11「まさか、このような生物が存在していたとは」

9「何とおぞましい姿よ。まるで悪魔じゃな」

声からして、女性と思われる11と老人と思われる9の声が

聞こえる。

 

やがて、役員14人の横にブカブカな防護スーツを来た科学者らしき

人物が現れた。

0「来たか。現状、分かっている事を報告しろ」

科学者「はい。先ほどこの研究生物から回収した肉片を調査した所、

未知の化合物が検出されました。現在化合物の解析を

行っています。また、この個体そのものが微小生命体の

集合体であると確認されました」

5「集合体だと?」

科学者の報告に、顎に手を当ててから目の前のポッドの方を

見つめるミスター5。

 「これがか?」

科学者「はい。実際に肉片を採取し拡大したところ、微小生物の

    塊である事が確認されました。推測を申し上げれば、

    この生物は今後も増殖と進化を続け、更に巨大化する可能性が

    あります」

4「今この場で巨大化する可能性は?」

科学者「それはありません。現在このポッド内には筋弛緩効果を

    持った液体を常時投入しており、ポッドが破壊されでも

    しない限り動き出す事はありません」

0「そうか。そのほかに報告する事はあるのか?」

科学者「現状、最大の疑問は謎の化合物です。当面はその解析を

    お待ちいただくしかないかと」

0「わかった。解析はお前達に任せる。できる限り早く

  成果を示せ」

科学者「はい。失礼します」

と、科学者が礼をして踵を返して歩き出した時だった。

 

   『ドォォォォンッ!』

   『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』

不意に爆発音が響いて、彼らが立っていた地面が揺れた。

そして時を置かずに警報を意味するサイレンと赤い赤色灯が

あちこちでクルクルと回り始めた。13人がザワザワと

騒めき始めた。

3「爆発。まさか、攻撃か?」

6「アメリカでしょうか?それともロシアの」

こんな事態にもあって彼らが冷静な理由。それはつい先日

手に入れた優秀な駒、ダミー・ゴーレムの存在があったからだ。

能力が劣るとはいえ、物量で勝るISがある以上、安易に攻め込まれた

としても問題ないと考えていたのだ。

そして、ミスターワンが近くにあった通信機の方へと

駆け寄った。

1「おい!この爆発は何だ!報告しろ!」

通信機が呼びかけた先は、この島の警備を担当している中央監視室だ。

監視員「き、緊急連絡!地下施設の発電所付近で爆発が発生!

    浸水が始まっています!加えて、施設内に多数の動体反応を

    検出しました!」

1「何だと!?相手はどこだ!CIAか!それとも」

監視員「さ、先ほど数名の武装警備員とゴーレム改が確認に向かい

    ましたが、突如として連絡が途絶え——」

と、その時。

   『ドゴォォォォン!』

ミスターワンの耳に、通信機越しの破壊音が響いてきた。慌てて

耳を話す1。と、その時。

   「な、何だこいつ!来るな、来るなぁっ!」

   『パンパンッ!』

通信機の向こうから悲鳴じみた叫びと銃声が響いたが……。

   『キュゴォォォォォッ!』

   「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

次の瞬間、向こうから聞こえて来たのは何かを噴射するような

音と監視員の男性の悲鳴だった。

そして、それを最後に通信が途絶えた。

1「おい!どうした!返事をしろ!おい!」

返事のない通信機に怒鳴る1。しかし、返事は帰ってこなかった。

そして、その様子と通信機から漏れた悲鳴を聞いていた役員たちは

流石に慌てだした。

11「これは、非常にまずいのでは……」

0「やむを得ないか。まぁ、よい。ここは大して重要度の高い

  施設ではない。ここを放棄する。各々は脱出を」

と言うミスターゼロの言葉に13人は頷いた。

 「ミスターワン、上の者達と連絡を取れ。脱出の用意を」

1「は、はい」

頷いた1は、すぐに通信機を調整して通話回線を切り替えた。

 「おい、聞こえるか。上階警備室」

と、呼びかけた、その時。

 

   『ドゴォォォォンッ!』

14人の幹部と科学者が残っていたポッドの部屋の壁が崩落した。

慌ててそちらを向く15人。その時。

 

   『GIIIII!』

崩落した壁の向こう側から、『奴』が現れた。

1「なっ!?」

それを見た15人は驚かざるを得なかった。

そう、それこそ、今まさに彼、彼女が前にしているポッドの

中の眠れる怪物と同じ姿形をした怪物だったのだ。

 

科学者「あ、あぁ。……うわぁぁぁぁぁっ!」

余りの事に叫びながら逃げ出す科学者。と、その時、壁を壊して

現れた幼体の口元が煌めいたかと思うと……。

   『キュゴォォォォォッ!』

その口元から、まるで霧のような光線が科学者めがけて噴射された。

それは寸分違わずに科学者を捉え……。

   「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

その体に命中した。

 

そして、次の瞬間、科学者の着ていた服が溶け、更には中に居た

科学者の体までもが溶け、最後は骨も残らずにドロッとした

水のような無色の液体となって『消えた』。

余りの事に驚き声が出ない役員たち。と、その時。

   『GIIIII!』

   『キュゴォォォォォッ!』

2体目の幼体が、1体目の閉じ込められていた幼体のポッド

目掛けて、光線を噴射した。

そして、光線が命中したポッドが一拍置いてひびが入り…。

   『バリィィィィンッ!』

粉々に砕け散った。その砕けたガラスから身を護るために

ローブで体を隠す役員たち。

そして、彼らが視線を戻した時。

   『GI、GI』

封印から解放された1体目の幼体の目が、僅かに開こうとしていた。

1「ば、バカなっ!」

 

余りの事で現状を認識できていない役員たち。

と、その時、2体目の口元が僅かに輝いている事に気付いた

ミスターゼロは近くにあった脱出扉を開けて飛び込んだ。

それに遅れて、走りこんできたミスターワンが強制閉鎖スイッチを

叩いた。

一瞬の警報の後、隔壁がすぐさま降りて来て脱出扉を塞いだ。

すぐさま、向こうからドンドンと壁を叩く音が聞こえて来た。

11「出せ!何をしている!私たちも出せ!」

7「開けろ!ここを開けろぉ!」

向こう側から悲鳴と怒号が聞こえるが、それを無視して駆け出す

ミスターゼロとワン。そして、少しの間の後、二人は背後から

聞こえる絶叫も無視して走り出した。

 

そして二人は非常用のジグザグな階段を走っていた。だが。

   『ドゴォォォォンッ!』

踊り場で身を翻したゼロと、それに続こうとしたワン。

だが、次の瞬間踊り場の壁を突き破って現れた3体目の幼体が

ミスターワンに突進し、押し倒した。

1「う、ぐ、た、助け、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

咄嗟にミスターゼロに助けを求めるワンだったが、ゼロは彼を一瞥した

だけで止まらずに階段を駆け上がり、そして直後、彼の断末魔と

幼体の第二の口が肉に食らいつく嫌な音だけが響いた。

 

それから走り続けたミスターゼロは、何とか地上部分へと通じる

緊急通路からうっそうとした地表、オンボロに偽装された建物の

近くへと出た。

0『そうだ!私さえ、私さえ生き残っていれば!企業はまだ!』

彼にとって、1から13の役員でさえも企業の利益のための

手ごまにしか過ぎなかったのだ。

 

逃げられたと思いながら、建物の中に隠されたヘリに乗るために

格納庫へと近づく0。

だが、次の瞬間。

   『キュゴォォォォッ!』

   『ドゴォォォォンッ!』

突如として謎の化合物、『ミクロオキシゲン』が吹きつけられた

ヘリとそれを格納していた格納庫が一瞬にして爆発した。

咄嗟の爆風で顔を覆う0。

0「一体何が、っ!!」

慌てて視線を戻した時、燃え盛る残骸の向こうから、炎の壁を

越えていくつもの怪物、『デストロイア』の幼体がゆっくりと

向かって来た。

 「ば、バカな……!」

僅かに後ずさりをしたその時。

 

   『ドォォォォンッ!』

背後で爆発音が下かと思うと、先ほど0が出て来た非常用

通路が吹っ飛んで、その下から3体の幼体が現れた。

 「まさか、怪物は、他にも。……クソッ!」

体中から冷や汗を流しながら、0は咄嗟に懐から護身用の

拳銃を引き抜いた。

 「私は!」

   『パンッ!』

 「私は、こんな所で!」

   『パンッ!パンッ!』

数発の銃弾がデストロイア・幼体に命中するが、幼体たちはそれに

よって怯むどころか意に介してすらいない。

 「私はこんな所で終わる人間ではない!私は、世界を!」

恐怖と絶望が染み渡る中で、必死に拳銃を撃つ0。だが。

 「私はァァァァァァッ!」

 

 

 

   『『『『『キュゴォォォォォッ!!!』』』』』

 

 「ぎゅあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

全てが終わった時そこに残っていたのは、ミスターゼロが

付けていた、何も描かれていなかった仮面が、真っ二つに

割れて残った欠片だけだった。

 

 

 

そして、ごく一部の者にしか知られていなかったその島は、

海中に出来ていた地下施設の爆発の影響で崩壊。海の底へと、

誰にも知られる事なく沈んでいったのだった。

 

 

 

戻って場所はIS学園。一夏達が、『悪魔』が解放されたという事実を

知らないまま、既に数日が経過していた。

今日もまた、食堂で朝食を取っていた時の事だった。

アナウンサー「続いてのニュースです。つい先日ハワイ沖で消息を

       絶っていた商船の乗組員らしき人物が海上を漂流して

       いた所、近海を捜索していたアメリカ軍の艦船に

       保護され一命をとりとめました」

モーラ「また、沈没事故ですか」

ニュースの内容を聞いた10人の目が食堂に備え付けられていた

テレビの方に向いた。

鈴「何かここ最近、急に増えて来たわね~」

シャル「うん。それも太平洋の、ハワイとかの近くばかりでね」

と、言って居る内にもニュースの内容は続いていた。

アナウンサー「保護された乗組員の男性はハワイの病院へと搬送され、

       一命をとりとめました。しかし、男性はうわ言のように

       何かを呟いており、未確定情報ではありますが、

       『赤い悪魔』、と呟きそれが来る、と言って居るようです」

その時、機龍の手が『ピクッ』と震えた。

 

   『AAAAAAAAAAN!!』

 

そして、機龍の頭の中に夢で見た『奴』の姿が思い起こされた。

同時に、機龍は迷っていた。夢で見た事を一夏達にも話すべき

なのかを。

機龍『……いや』

心の中で首を振った機龍は意識を現実世界に戻し、一夏達との

会話に戻った。そんな中で。

  『もし、これが僕のような『怪獣』のせいなのだとしたら、

   この世界に、僕やモスラ以外の怪獣を呼び寄せてしまったの

   だとしたら、それは僕がケジメをつけなきゃいけないんだ。

   人を、世界を壊そうとする怪獣が現れるのなら、

   僕が倒す……!それが、僕の戦う理由なんだ!』

と、機龍は心の中で誓ったのだった。

 

己が戦う理由を。そして、守りたい者たちを守るために。

 

 

そして、今、ゆっくりと赤い悪魔たちは暗い海の中を

進んでいた。その黄色い複眼の見つめる先。遥か彼方に

あるのは、IS学園。そして、その沿岸には……。

 

 

  「僕は、戦う」

IS学園制服姿の機龍が居た。そして、彼もまた本能で

直観していた。

戦いが近い事を。あの夢は、それを暗示している事を。

 

そして、その敵が、これまでになく強敵である事を。

 

 

決戦の日は近い。

 

その舞台となるのはここ、IS学園だ。

 

 

 

紅蓮の悪魔、『デストロイア』と。

 

鋼鉄の銀龍、『3式機龍』。

 

 

今、二つの強大な力がぶつかろうとしていた。

 

果たして勝つのは、悪魔か?銀龍か?

 

今まさに、この世界最大の死闘が始まろうとしていた。

 

     第29話 END

 




今回はちょっと短めに終わりましたが、楽しんでいただければ
幸いです。

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