インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回で一応京都編は終わりです。次はワールドパージに変わる閑話を
上げた後、オリジナルの決戦編に突入します。
後、これの中で少々BL的展開があります。ご了承ください。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第27話

~~前回までのあらすじ~~

新たなる力を顕現させ、ファントムタスク幹部会の傀儡である

D・ゴーレムの集団と戦う一夏と機龍達。新たなる力、

エクストラアビリティの力もあり難なくこれを退ける事には

成功した。が、それでも戦いをやめようとしないマドカ。

そんな彼女の心にもぐりこんだゴジラは精神世界で彼女と

対話を果たし、彼女の説得に成功したのだった。

 

 

その後、合流した一夏と機龍、スコール達16人はモノレールで移動し、

突然ではあったがスコールと束達も極秘裏に一夏達と同じ旅館へ

泊まる事になった。

もちろん、一般の生徒達はそれを知らず、知っているのは一夏と機龍達

専用機持ちと千冬、真耶の少数だけだった。

 

 

で、今は一つ空き部屋の中に集まっているスコール、オータム、マドカ、

レイン、フォルテ。そんな5人の前では……。

 

 

 

機龍「あの時は、本当にすみませんでした」

そう言って、機龍が『土下座』をしていた。その事に顔を見合わせ、

肩をすくめるレインとフォルテ。と言うのも……。

スコール「クスッ、あなたはすっかり『元』に戻ったみたいね」

そう言って笑みを浮かべるスコール。

元、と言うのは普段の大人しい状態の機龍の事だ。つまり、

先ほどまでの機龍は文字通り『コンバットハイ』とでも呼べる

状態になっていたのだった。

 

で、元に戻った時彼は自分の言っていたことが恥ずかしくなって

こうしてスコール達の元に謝罪に来たのだった。

機龍「そ、その。あの時は僕が僕じゃなかったと言うか。

   感情が高ぶってて、あのような」

と、顔を上げて真っ赤にしながら謝罪する機龍だった。

その様子に笑みを漏らしているスコールやレイン。やれやれと

言いたげなフォルテやオータム。今はムスッと無表情のままのマドカ。

機龍「とにかく、ごめんなさい」

スコール「まぁ、良いわ。結局私たちはあなたに助けられたわけだし。

     何より、オータムを助けてくれたわ」

そう言って、横に座っていたオータムを抱き寄せるスコールと

顔を赤くするオータム。対して機龍もどこか顔が赤かった。

と、その時思い出したようにハッとなる機龍。

 

機龍「と、そうだった。実は、マドカちゃんに渡したい物が

   あるんだ」

そう言って、ポケットの中から何かを取り出す機龍。

彼は立ち上がってマドカの前に移動してから座り、彼女にそれを

差し出した。

マドカ「……。なんだこれは」

差し出された物を見てから機龍の方を睨みつける。

機龍が彼女に渡そうとしている物は、言ってしまえばデジタル式の

腕時計のようだった。

中央には小さな四角いディスプレイらしき物がある黒い時計のようだった。

 

機龍「通信機だよ。とりあえず巻いてみて」

マドカ「………」

そう言われたマドカは、無言でそれを受け取ると左手首にまいた。

   「何だ、これは」

機龍「右側にあるスイッチを押してみて。きっとどういう物か

   わかると思うよ」

と言われると、マドカはスイッチを押した。すると、ディスプレイが

点灯し、そこに映し出されたのは……。

 

 

マドカ「お前は、ゴジラ」

ゴジラ「よう」

そこにディスプレイに現れたのはゴジラの顔だった。

機龍「一応、僕は、いや、僕たちは一つの体に二つの人格が

   あるから。でも、その都度人格を変えるのは不便だから

ゴジラと話すためにちょっとした端末を束に頼んで

作って貰ったんだ」

そう言われるとマドカはディスプレイに映るゴジラを見てから機龍の

方に視線を移した。

マドカ「どうして、こんなものを」

機龍「……。多分、僕じゃないから」

マドカ「え?」

機龍「あの日、夜に君がIS学園に現れた時、僕は君を笑顔にしたい

   って思った。でも、あの戦いでよくわかったよ。それは僕の

   役目じゃない。君を笑顔に出来るのはゴジラなんだって。

   それに、『好きな人』とはいつだって話したいでしょ?」

マドカ「ッ!?」

と、ここで機龍は図らずも爆弾を投下してしまった。

   「すす、好きな人とはどういう意味だ!?」

明らかに狼狽しているマドカがこれまた珍しく顔を赤くして

立ち上がりながら叫ぶ。

機龍「え?だって、モノレールに戻ってくるときゴジラに頭を

   撫でてもらって笑ってたから、てっきりそうなのかと思ったんだけど」

マドカ「なっ!?み、見てたの、か」

と、更に顔を赤くするマドカ。

機龍「一応、体を共有してるから見た事とか記憶とかはね」

そう言われると、顔をトマトの用に真っ赤にするマドカ。その横では

スコールとオータムがニヤニヤとにやけていた。

マドカ「わ、笑うな!」

スコール「あら?良いじゃないマドカ、恋をしてみるのもいい経験よ?」

マドカ「なっ!?」

オータム「日ごろっから戦い戦いって言ってたから

丁度良いんじゃね~のか~?」

と、マドカを茶化すスコールとオータム。対してマドカは恥ずかしさと

怒りが半々になってプルプルと震えていた。

機龍「と、とりあえず、皆さんがご無事でよかったじゃないですか!

   これからの当てもある事ですし」

と、咄嗟に喧嘩になりそうな場の雰囲気を鎮める機龍。

 

 

こうして、京都での戦いは意外な結末を迎え、波乱万丈の

修学旅行を終えたのだった。

 

今、一夏と機龍達は帰りの新幹線に乗っている。が、そこに

スコール達5人の姿は無い。D・ゴーレム達との戦闘があった日の

翌日。スコール達の使用していた部屋に彼女たちの姿は無く、

どうやら束と共に一足先に帰ったようだった。

 

機龍『そう言えば、束がスコールさん達を雇ったのって、

   腰を落ち着けるため、とか言ってたけど、どこかに家でも

   建てるのかな?』

と、機龍はそう思いながら帰りの新幹線の車窓から流れる景色を

見ていた。

 

 

そして、それはいろんな意味で裏切られた。

 

 

   『ポスッ』

一夏達は学園の寮に戻ってきたのだが、あと少しで寮と言う所で、

一夏が肩に掛けていたバッグを落とした。

が、彼はすぐにそれを拾おうとはしなかった。一夏と機龍、箒達、

更には大勢の生徒達が呆然と寮を、正確にはその隣で行われている

事を見つめていた。

そこでは……。

 

 

   『カーン!カーン!カーン!』

束「あぁそれはあっちね~!あ!それはそこじゃないって~!」

と、今現在進行形で一夏達の学生寮の横では、束がヘルメットを

被りながら数十機の『ゴーレムⅢ改(土木作業用)』に命令を出しながら

何やら『工事』をしているのだった。

そして、一番に復活した機龍がハッとなって束の方に走り寄って行った。

 

機龍「束!」

束「およ?お~リュウ君にお帰り~。早かったね~」

機龍「う、うん。ただいま。……じゃなくて!束は何してるの!?」

束「うん?あ~これ?これは増築だよ増築」

機龍「増、築?……あ!まさか、束が言ってた腰を落ち着ける場所って」

と、ここに来て半ば確証に至った機龍が問うが……。

束「うん!このIS学園の事だよ!」

と高らかに宣言するようにハイテンションで叫ぶ束。

そんな彼女を他所にポカーンとしたままの生徒達。と、その時。

 

   『ドドドドドドドッ!』

呆然とする彼女たちの耳に、校舎の方から地鳴りがしてきた。

一瞬、何だと思った生徒達だったが、振り返えってその音源を

確かめるなり、納得してまた回れ右した。

千冬「た~~ば~~ね~~!!!!」

地鳴りの正体は般若の如き形相の我らがブリュンヒルデ、その人だった。

そして、生徒達はそんな彼女に恐怖しつつ半泣きで回れ右したのだ。

束「おうっ!?ぎゃ~~!ちーちゃん来たぁぁぁっ!!」

千冬の声に振り返った束の顔が真っ青になる。咄嗟に逃げようと

するが、時すでに遅し。

束の眼前まで千冬の剛腕が迫っていた。が。

   『ビシッ!』

束の頭を鷲掴みにしようとしていた千冬の指が、束の頭から

僅か数センチの所で止まった。

まるで、束が見えないヘルメットをかぶっているかの用だった。

千冬「何?」

束「よし!見たかちーちゃん!これこそこの天才篠ノ之博士が作り出した

  対ちーちゃんアイアンクロー専用ヘッドシールド!名付けて

  クリアヘルメットなのだ!ブイ!」

と言って右手でVサインをしているをしている束と密に舌打ちをする千冬。

千冬「……。折角その髪色を真っ赤に染めてやろうと思ったのにな。

   貴様の血で」

束「ちょぉっ!?ちーちゃんそれは教師として教育上どうかと

  思うよ?!後ろにみんないるんだからね!?」

と言ってワーワーと口喧嘩を始める千冬と束。千冬の後ろで呆然と

する一夏達とタブレット片手に束の後ろでため息をつくクロエ。

そんな時、機龍がハッとなったこっそりとクロエに歩み寄って耳打ちした。

数回頷いたクロエは、そのまま手にしていたタブレットを機龍に

差し出した。

それをピピッと操作した次の瞬間。

   『パリーン』

束「……。はえ?」

いきなり束の頭を覆っていたシールドが、割れたガラスのように

砕け散って消えた。ギギギと振り返る束。

 「リュ、リュウ君?」

機龍「とりあえず、と言うか一応まずは先生から一撃貰った

   方が良いかなと思って」

と言う機龍に束は……。

束「リュ、リュウ君の裏切り者ぉぉぉぉぉぉっ!」

 

と、そんな彼女の絶叫の後に続いて更に悲鳴がIS学園に響くのだった。

 

数分後。

頭から煙を出したまま倒れている束を介抱するクロエと機龍。

千冬「全く。貴様はまた勝手に、それもこんなデカい物を学園に

   無断に建ておって」

束「む、無断じゃないよ~。ここに、許可証だってあるんだから~」

と、弱弱しく差し出された書類を見ると、それを取って読む千冬。

千冬「ほう?ちゃんと委員会のお墨付きとはな。あのボンクラ共が

   よく許可をしたな。……取引でもしたのか?」

束「ん~?」

そんな質問を聞きながら体を起こす束。

 「ちょっとね。許可したら各国に一個ISコアを追加してやるって

  言ったら喜んでサインしてくれたよ」

それを聞くと、目を見開いてからため息をつく千冬。

千冬「お前、ここに居座る気か?」

束「居座るだなんて人聞き悪いな~」

千冬「如何に貴様が天才だろうと、ただ飯食らいを置いておいては

   生徒に示しがつかんだろうが。ここで生活するならそれ相応

   の事をしてもらわなければ困る」

束「わかってるって~。まぁ、ISの整備とか、新装備とかは

  提供するよ。これでどう?」

と言って、千冬の前で首をかしげる束。

千冬「……。ハァ、まぁ良い。お前の突発的行動は今に始まった事じゃ

   無いしな。なら、あと一つ追加だ。もし生徒達にISに関して

何かを聞かれた際にはそれなりに教えてやれ。良いな?」

束「りょうか~~い!」

そう言いながら敬礼をする束。それを見た千冬は生徒達の方に向き直った。

千冬「と言うわけだ。急ではあるが、この馬鹿が学園で生活する事になった。

   こんなだが正真正銘ISの生みの親だ。ISで分からない事や

   アドバイスが欲しかったら教師と、そしてこいつに聞け」

そう言うと、千冬はため息をつきながら戻って行った。

 

で、結局それから数時間後には束の『新居』の建築が終わり、

夕食の時に一夏達がそこに招かれた。

完成したその新居は、大きな中世の館のようだった。

白塗りの壁にシンメトリーな作り。そして機龍はイギリスに

行った際のセシリアの屋敷を思い出していた。

 

一夏「うわ~。すっげ~な~ここ」

楯無「まさに中世の貴族って感じね」

重厚な扉を潜った先は正に王侯貴族の住まう豪華な屋敷にも似た玄関が

広がっていた。

束「や~や~よく来たねみんな!」

と、その時、玄関の真正面にあるT字階段の上から束が現れた。

 「さ~さ~こっちだよ~!」

そう言って束は一夏と機龍達10人を大きな屋敷の中を案内し始めた。

機龍「束、どうやってこれだけのものを?と言うか、工事始めたの何時?」

束「ふふふ~ん。現代の魔術師たるこの束様に掛かれば、この程度の

  お屋敷なんて数時間で完成させられるんだよ~。スゴイでしょ~?」

と、自慢げに屋敷の中を案内する束。

 「しか~も!スゴイのは外見だけじゃないよ!中には数十機のISを

  保管し尚且つ自動整備を行うファクトリーや新型装備開発室!

  各種難病にも対応可能な高度医療施設!万が一各国のIS部隊から 

  襲撃を受けた時のために無人ISゴーレムⅢが何と100機付き!」

一夏「か、各国の襲撃って」

束「いや~、これでも私一応有名人だからさ~。念には念をって事だよ 

  いっくん」

そんな話を聞いていると、やがて一夏達は大きな広間へと

案内された。

その部屋の中央には大きな長方形のテーブルがあり、それに沿うように

これまた豪華な椅子が並べられていた。

そして……。

 

機龍「スコールさん。それにオータムさんやマドカちゃん。

   レイン先輩たちも」

その椅子の一部に、スコール達5人が腰かけていた。

スコール「こんばんは機龍君。あなた達もそろったようね」

そんな5人のテーブルを挟んだ向かい側に座る機龍達10人と

スコールの正面に座る機龍の横に座る束。

それに合わせるように、束が作ったメイドさん姿のアンドロイド

が入ってきて一夏達、スコール達、束の16人の前に料理を置いた。

やがて食事をした機龍達は男と女に分かれて別々の風呂に入った。

 

一夏「しっかし、束さんも相変わらず突飛だよな~」

機龍「アハハ、まぁ、それが束らしいって言えばそうなんだけどね」

と言う二人は今、夜空が見える露天風呂に浸かっていた。

タオルを頭の上に乗せている一夏と、それをまねている機龍。

しかし頭の天辺の癖っ毛が邪魔になってうまく乗せられない様子だった。

乗せようとする度にタオルが崩れてワタワタとしている機龍

を見て苦笑する一夏。

 

そして、一夏が体を洗うために一度湯船から出ようとしたときだった。

機龍「あ、あの。お兄ちゃん」

一夏「ん?どうした機龍?」

不意に声をかけられたので、立った姿勢のまま振り返る一夏。

対して、顔を少しばかり赤くしてモジモジしている機龍。

機龍「そ、その。お兄ちゃんが大丈夫なら、なんだけどね。

   お兄ちゃんの背中、僕が、その、洗って良いかな?その、

   あ、憧れって言うか、やってみたい、と言うか、えっと」

と、言い淀む機龍に一夏は笑みを漏らした。

一夏「んじゃ、頼もうかな?」

機龍「い、良いの?」

一夏「あぁ、背中は一人じゃ洗いづらいからさ。頼むぜ」

機龍「うん!」

と、機龍は笑顔で頷いた。

 

そして、機龍は濡らしたスポンジにボディーソープをつけ、それで一夏の

背中をゆっくり、優しく洗い始めた。

  「痛くない?大丈夫?」

一夏「全然平気だって。お前の好きなようにしていいからさ」

機龍「うん」

それからしばらくは、機龍が一夏の背中を洗うゴシゴシと言う音だけが

響いていた。そんな時だった。

 

一夏「何か、ホントの兄弟みたいだな」

機龍「え?」

唐突な一夏の言葉に手を止める機龍。

一夏「機龍がIS学園に来た時はホントびっくりしたな。

   どっからどう見ても小学生だしさ。俺最初はホントに

   男か?って思うくらい皮膚も白いし。………けど、

   今にしてみれば、お前からはお兄ちゃんってよく呼ばれるし、

   ここじゃ俺たち以外男なんていないし。

   機龍みたいな弟が居ても良いかなって、思ってさ」

機龍「僕が、一夏お兄ちゃんの家族?」

一夏「家族、か。それも悪くないかもな」

その言葉を聞きながら機龍は密に笑みを漏らしたのだった。

 

   『バシャ~~』

背中を洗い終わった機龍が、最後に桶にお湯を汲んで、それで一夏の

背中の泡を洗い流した。

機龍「はい、終わったよお兄ちゃん」

一夏「ありがとな機龍。……あ、せっかくだから機龍の背中は俺が

   洗ってやるよ。洗いっこだな」

機龍「じゃ、じゃあ。お願い、しようかな」

そう言って機龍は一夏の方に背を向けるのだった。

 

そして、一夏が機龍の背中を優しくスポンジで洗い始めたのだった。

機龍は優しく洗われる事でこそばゆく感じていたが、一夏はある事を

思っていた。

次第にゆっくりとなって行った一夏の手の動きがとうとう止まった。

  「?お兄ちゃん?」

その事を疑問に思った機龍が振り返ろうとしたとき、不意に一夏の右手が

後ろから伸びて機龍の右手に触れた。

  「一夏、どうしたの?」

自分の腕に触れる一夏の右手に左手を重ねながら、静かに機龍が問う。

一夏「……機龍は、こんなに小さいのに、今までたくさん、

   死にそうな戦いも、たくさんの苦しみも何度も

経験してるんだなって、思ってさ」

機龍「……」

今、一夏の中では機龍の記憶が呼び起こされていた。

 

ゴジラへの突然変異。人間との戦いと死。死した体を利用された事。

家族と命を懸けた戦い。別れの果てに選んだのは、死と同義の眠り。

そして、二度目の生を受けたこの世界でも、機龍は傷つき、それでも

立ち上がった。福音との戦いの時も。京都の時も。

 

一夏「そんなお前を見てると、弱い自分が情けなくなってさ。

   ……悪い、お前にこんな」

その時、一夏の腕を機龍が優しく抱き寄せた。

  「機龍」

機龍「そんな事ないよ。お兄ちゃんは強いよ。まだ分からないけど、

   多分、僕にできなくてもお兄ちゃんになら、出来る事があるよ。

   それに、たった一人で強くても、意味なんてない」

不意に、暗い表情となる機龍。

  「例え強くても、その力を振るうだけじゃ、誰とだって友達に

   なる事なんてできない」

やがて、機龍はそっと後ろの一夏に体を預けた。

  「覚えてる?初めて僕が来た時、一夏と握手したの」

一夏「あぁ、そんな事もあったな」

機龍「僕は、今でもはっきり覚えてるよ」

そう言って、自分の右手を見つめ、それを自分の胸に抱くように

引き寄せた。

  「あの時の一夏の手の温かさも。……でも、だからだよ」

そう言いつつ、体を回転させて一夏の方を向き、彼の胸に頭を

預けるようにもたれかかる機龍。

  「きっと、一夏やみんなが、お兄ちゃんやお姉ちゃん達が

   居てくれたから、僕はこうして、今みんなと居られる気がする

   んだ」

一夏「機龍」

不意に、一夏の手が機龍の銀色の髪を撫でた。

機龍「もし、お兄ちゃんが自分の事を弱いなんて言っても、僕は

   信じない。だって、僕がここに居られるのは、一夏お兄ちゃん達が

   居てくれたから。そんなみんなが、僕にとっての、大切な仲間で、

   友達で、英雄だから」

そう言って一夏を見上げる機龍の目には、一滴の涙が浮かんでいた。

それを見た一夏は、機龍をギュッと抱きしめた。

一夏「俺が、絶対お前を守るから」

機龍「なら、僕も、絶対みんなを守るよ」

 

しばらく、二人で抱き合う一夏と機龍。やがて、どちらとなく

抱擁を緩めた。のだが。

  「一夏、あのね。僕、今、その」

と、言い淀む機龍。

一夏「ん?どうした?」

機龍「あ、あのね。その、変、かもしれないけど、その。

   ……。僕、今、一夏と、キスが、したい」

一夏「え?」

機龍「あう///その、ごめん。今のは忘れて。その、変、だよね。

   男同士でなんて」

と言って、顔を赤くしつつそっぽを向いて弁解する機龍だったが、次の瞬間。

   『ギュッ!』

離れようとしていた機龍を一夏が抱き寄せた。

一夏「全く、お前はホントに男らしからぬ可愛さだよな」

機龍「え?」

疑問符を浮かべた機龍だったが、次の瞬間、一夏の唇が機龍の

唇に重なった。

最初は驚いて目を見開いた機龍だったが、すぐにその瞳はトロンとして

一夏の体を抱きしめたのだった。

 

 

数分後、湯船に浸かって胡坐をかく一夏とその足の上に座る機龍。

しかし、二人ともあんなことをした後だからか、妙に顔が赤かった。

そんな時だった。

機龍「ふ、ふふ」

不意に、機龍が笑い出した。

一夏「ど、どうした機龍?」

そんな機龍に恐る恐る声をかける一夏。

機龍「もしかしたら、僕箒お姉ちゃん達に怒られちゃうかなって、思って。

   お兄ちゃんは、ファーストキスは済ませたの?」

一夏「う!?そ、それはまぁ、その、機龍のおかげで、箒達が、

   その、告白した時にな。あの時は、3人全員とキスした後、

   色々あったんだぜ?」

機龍「そうだったんだ」

そう言って、一夏の胸に頭を預け、頭上に広がる夜空に目を向ける機龍。

  「綺麗だね」

と言う機龍の言葉に一夏も彼の視線を追って夜空を見上げた。

一夏「あぁ、そうだな」

しばらく、二人そろって夜空を見上げていた。

 

  「あ、そう言えば機龍、お前清水寺行ってないだろ?」

機龍「あ。そうだね」

一夏「他にも金閣寺とか、春日大社とか。二条城とか。

   折角だ。冬休みにみんなで京都行こうぜ」

機龍「良いの?」

一夏「良いも何も。……みんなと色んなとこ行って、思い出作って、

   一緒に飯食って、夜更かしとかして、遊んで、笑って。

   それが友達だろ?だから行こうぜ。俺たちと色んな所

   巡ってさ。もっともっと、たくさん思い出作ろうぜ」

機龍「お兄ちゃん……!うん!」

と、機龍は一夏の言葉に満面の笑みを浮かべながら頷いたのだった。

 

 

それから数分後。

お風呂から上がった一夏達は寮に戻る事にしたのだが……。

機龍「あ、そうだ」

と、束の屋敷を出た帰り道、ふと立ち止まる機龍。

簪「機龍?どうかしたの?」

そんな彼に気付いて立ち止まり振り返る簪たち。

機龍「うん。僕ちょっとスコールさん達に、お礼したい事が

   あるんだ。ごめん、先に帰ってて」

と言うと、機龍は屋敷へと戻って行った。

 

やがて、案内のメイドロボットに教えてもらったスコールの部屋に

やってきた機龍。

   『コンコン』

機龍「スコールさん、機龍です。こんな時間にすみません。

   今って大丈夫ですか?」

スコール「あら、機龍君。こんな時間にどうかしたのかしら?」

機龍「実はその、京都の事でお礼を言いたくて。あ、お忙しいん

   でしたら、また今度にします」

スコール「良いのよ。気にせず入っていらっしゃい」

と言われた機龍はドアを開いて中に入って行った。

オータム「ちょっ!スコール!」

すると、部屋の中からオータムの声が聞こえて来た。

対して、機龍はドアを潜って中へと進んだのだが……。

 

 

そこで驚いた。

声を頼りに部屋の中を進んでいくと、寝室でスコールとオータムが

裸の状態で抱き合っていたのだった。

それを見てしまった機龍は口をパクパクとさせながら、顔を真っ赤に

した。

    「み、見んなバカッ!」

機龍「あ!ご、ごめんなさい!」

と、オータムの声で我に返った機龍が寝室のドアを閉めようとしたのだが…。

   『シュルッ!』

いつの間にか部分展開されていたスコールのゴールデン・ドーンの尻尾の

ような第3の腕に掴まれ……。

   『クイッ、ポスッ』

ベッドの上にUFOキャッチーの景品のように落とされた。

いきなりで呆然としていた機龍だったが、その時スコールが

彼の頭を自分の胸に抱く形で抱き寄せた。

結果、今の機龍の顔はスコールの豊満な胸に押し付けられる形に

なっていた。

 

  「え、えっと。あの、スコール、さん?」

スコール「ふふふ、京都ではあなたの心意気を試したし、今度は

     こっちの方も」

と、言いながら機龍の下腹部をパジャマの上から人差し指でなぞるスコール。

機龍「ん!」

スコール「試させてもらいましょうかしら?」

そう言って、スコールは妖艶な笑みを浮かべながら機龍を抱きしめたのだった。

 

※ ここから先はR18の方に投稿します。

 

   

で、スコール達と『色々』した後、結局機龍は寝てしまい、寮に戻ったのは

翌日の早朝だった。

 

 

運命のうねりは大きく変わり、更なる変化をもたらす。

だが、今はまだ、誰も知らなかった。

 

この世界の命運を分ける死闘が、もうすぐそこに迫っている事を。

 

     第27話 END

 




閑話の方は機龍、簪、楯無を中心にした話を上げるつもりです。
けど、全然R18の方の筆が進みません。一応、今は束とクロエとの
話を書いてますが、まだ終わりません。
出来たら、ゴジラとマドカのR18シーンも書くつもりです。
何時になるかわかりませんが、ご期待ください。

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