インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回はタッグマッチとゴーレムⅢ襲撃回です。
原作とは結構変わった内容になっていると思います。
楽しんでいただければ幸いです。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第21話

~~前回までのあらすじ~~

一夏が箒たちと本当の意味で理解しあった頃、束はスコール達の

依頼で新型ISを作ってほしいと言われた。最初はそれを拒否していた

束だったが、ある考えに至ったためその新型ISの製作を了承した。

一方で、ファントムタスクの幹部会はスコールの排除計画を

進めていた。

更に学園では、機龍と共にトーナメントに出場する事になった簪。

そんな二人の元に楯無が現れ、宣戦布告を行ったのだった。

 

 

やがてやってきたトーナメント当日。そして楯無から発表された

総勢6組のタッグマッチのマッチ表の中で、機龍と簪は……。

 

 

 

 

一回戦から楯無・箒ペアと戦う事になってしまった。

 

 

簪「ッ。最初から、お姉ちゃんに当たるなんて」

と、少し怯えている簪。そんな彼女の手を取る機龍。

機龍「大丈夫。僕が簪を守るよ。絶対」

簪「機龍。……うん、そうだね」

隣に居る恋人の言葉で、何とか怯えを払拭した簪。

 

 

そして、タッグマッチトーナメントの幕は上がった。

 

 

 

今、機龍と簪はピットの中で待機していた。そんな時だった。

楯無『機龍君、聞こえる?』

唐突にプライベートチャンネルで機龍に楯無から通信が入った。

機龍「楯無さん。はい、聞こえます」

楯無、と言う単語を聞いて振り返り機龍の方を見る簪。

楯無『そう。……こんなことを言うのは気が引けるんだけど、

   あなたが戦い嫌いと知ってもう一度言うわ。全力で

   来て頂戴。私も箒ちゃんも、殺す気で、全力で』

その言葉に、沈黙する機龍と驚愕している簪。

  『そして、私たちも全力で行くわ。あなた達を殺す気で』

機龍「……わかりました」

そういうと、通信は切れた。

簪「機龍、大丈夫」

機龍「……なんとなくわかったよ簪」

簪「え?」

機龍「楯無さんはこの戦いで僕たちを試そうとしているのかも

   しれない。……だから行こう。僕たちの、全力で」

そう言って右手を差し出す機龍。それを見た簪は。

簪「うん。……私はもう、お姉ちゃんにだって負けない!」

そう返して機龍の手を握った。そんな彼女の瞳には、闘志と言う名の

炎が燃えていた。

 『私は、もう昔の私じゃない。だから絶対に諦めない』

 

 

やがて、試合開始時間となり、簪は打鉄弐式を纏い。箒は紅椿を。

楯無はミステリアス・レイディを。そして、機龍は……。

 

機龍『3式機龍改!行きます!』

   「KYUAAAAAAAN!」

かつての自分の姿、鈍い銀色の姿、3式機龍改の姿でピットから飛び出した。

着地と共に盛大に砂ぼこりを上げる3式機龍改。彼の本気こそ、覇王と

同じ姿で戦いに臨む事だ。その銀色の顔の黄色い双眸が向かい合う

楯無と箒を見つめる。3式機龍の横に立つ打鉄弐式。

 

   『それではこれより、タッグマッチトーナメント一回戦を

    始めます』

オペレーターの女性の声が響く。それと同時に、周囲の空中ディスプレイに

カウントダウンが映し出され、時を刻んでいく。

   『5、4、3、2、1。START!』

   『ビーッ!』

試合開始のブザーと共に、機龍は飛び出した。

すぐさま右手のレールガンを廃棄。スパイラルクロウを形成し、

楯無に向けて突き出した。

   『KYUAAAAAAAN!』

楯無「はぁっ!」

咆哮と共に突き出される一撃を槍型の武器、『蒼流旋』ではじく楯無。

簪「機龍!ッ!」

機龍の援護に行こうとする簪だが、彼女の眼前を数本のレーザーが

薙ぎ、慌てて後ろに飛ぶ簪。

箒「簪!お前の相手は私だ!」

簪「箒」

 『やるしかない。……私はもう、逃げない!』

 「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

薙刀、『夢現』を取り出した簪が春雷を乱射しながら箒に突進していく。

箒「行くぞ!簪!」

対する箒も迫りくるエネルギーを雨月、空裂で切り裂きながら

突進していった。

 「はぁぁぁぁぁぁっ!」

簪「やぁぁぁぁぁぁっ!」

   『ガキィィィィンッ!』

二人の持つ刃が空中で激突し火花を散らした。

 

一方、地上でも機龍と楯無の戦いは続いていた。

楯無「はぁっ!」

蒼流旋の基部に備えられたバルカン砲が火を噴く。それを咄嗟に

察知した機龍がスラスターを吹かして地面の上をすべるように

左右に回避していく。

   『KYUAAAN!』

逆にお返しとばかりに短く咆哮を上げてから、口の二連装メーサーで

反撃する機龍。

咄嗟に左右に浮かぶパーツ、アクアクリスタルから発生している

水をカーテンのように展開してメーサーを防ぐが、その圧倒的な熱量で

すぐさま蒸発してしまった。

  「くっ!?言っといてなんだけど、君の本気って恐ろしいわね」

そう言って一旦距離を取る楯無。それに対して左手のレールガンを

連射して追撃する機龍。

 

そのころ、簪と箒も戦い続けていた。

簪「やぁぁぁぁぁぁっ!」

   『ガキィン!』

紅椿めがけて突進してきた簪の夢現の一撃を、剣をクロスさせて防ぐ箒。

箒「ぐっ!この!」

   『ブォンッ!』

そしてカウンターの一撃を繰り出すが、それを食らう前に簪、打鉄弐式は

後方にジャンプして回避し、逆に春雷による砲撃を行った。

 

速度を生かして突進。夢現の一撃。攻撃される前に離脱。牽制の春雷。

と、弐式の機動性。夢現のリーチ。ハンズフリーの春雷の即応性を

十分に生かして箒と渡り合う簪。

 「成程。機体の性能をフルに引き出しているのか。だが、私とて

  負ける気はさらさらない!」

楯無「行くわよ、機龍君!」

簪「私はもう、諦めない!だから!」

機龍「僕はもう、逃げない!だから!」

 

機・簪「「僕(私)達は絶対に負けない!!」」

 

二人の叫びが響く。

各々が相手を見定め、突進していく。

   「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」」

 

彼女たち4人の叫びが重なる。

 

 

 

 

だが、次の瞬間。

 

 

 

 

   『ズドォォォォォォン!』

 

唐突に学園全体に爆音が響く。

機龍『何が!?……っ!』

慌てて周囲を見回した機龍は、ピットの上に立つ謎のISの姿を捉えた。

  『IS?まさか……!』

次の瞬間、機龍が見つけたIS、『ゴーレムⅢ』が両肩に備えられた

ビーム砲をからビーム発射してきた。

  「危ない!」

楯無「ッ!全機散開!」

機龍に続いてゴーレムⅢに気付いた楯無が咄嗟に命令を出し、それに

従って機龍達3人と楯無が別々の方向に飛ぶ。

 

と、その時、今度は別方向からビームが飛来し、それを回避した4人。

見ると、彼女たちを取り囲むように数機のISが空中に浮遊していた。

その数、3機。最初の攻撃を仕掛けてきた機体を入れれば4機にも

及んだ。

 

互いに背中をカバーするように、機龍、簪、楯無、箒が一か所に

集まって背中を寄せ合ったまま武器を構えていた。

  「あらまぁ、何とも珍しいお客さんじゃない」

機龍「あの機体には生命反応がありません。無人機のようです」

簪「無人機が4機も!?」

驚く簪。そもそもISの無人機などどこの国も開発には成功していない。

それが4機も現れれば驚くのは当然だろう。だが。

箒「いや、4機じゃない」

ゆっくりと首を振る箒。疑問に思った簪が声をかけるより先に、

無数の画像が紅椿から送られてきた。それは……。

 「12機だ」

 

 

 

一夏や鈴、シャルロットやラウラ、セシリアやモーラ、更に他の

専用機持ち達と戦う同型の機体たちだった。

 

 

 

 

一夏「クソ!?なんなんだこいつら!」

後ろから追いすがり、緑色のビームを放ってくるゴーレムⅢを

振り切ろうと逃げる一夏。

鈴「はぁぁぁぁっ!」

と、そこへゴーレムⅢの背部に鈴が切りかかり、牙月の刃を

その背中に叩きつけた。大きく態勢を崩すゴーレムⅢ。

 「一夏!いまよ!」

一夏「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

そこへ反転した一夏が零落白夜を発動しながら突進し、ゴーレムⅢの

機体装甲を切り裂いた。

鈴「やった!」

一夏「いや。浅い!?」

そう。ゴーレムⅢは咄嗟に体を引いて傷を最小限にとどめていたのだ。

そこへ別の機体のビームが襲ってきた。

慌てて回避する一夏と鈴。

 

斬られた方のゴーレムⅢは距離を取り、もう一機と合流した。

そして、一夏達の方を向くなり、右手をクイックイッと動かして、

まるで『掛かってこい』とでも言っているようだった。

鈴「何よ。無人機のくせにいっちょ前に挑発?どうすんの一夏?」

一夏「へへ、決まってるだろ。……上等だぁっ!」

鈴「やっぱそうよね!」

雪片を構えた一夏が突進し、それに続く鈴。

 

一方、別の場所では。

ラウラ「ぐあっ!!」

ゴーレムⅢのブレードとプラズマブレードで斬りあっていたラウラが

一瞬の隙を突かれて蹴とばされ、地面を転がった。

シャル「ラウラ!」

咄嗟に倒れたラウラの追撃を予想したシャルロットのリヴァイヴが

シールドを構えてフォローに入るが、シャルが相手していたゴーレムⅢも、

ラウラが相手していたゴーレムⅢも追撃はしてこなかった。

   「え?」

疑問に思ったシャルだが、彼女の後ろでラウラが立ち上がり、武器を

構えると、まるでそれに合わせるかのように武器を構えるゴーレムⅢ達。

   『この無人機、まさか僕たちを試しているの?

    いや、それ以前に、何て言うか、殺気を全然感じない。

    殺す気がないの?』

と、疑問を浮かべていたシャルだが。

ラウラ「何をしているシャルロット!行くぞ!」

シャル「あ!うん!」

ラウラの言葉で現実に引き戻され、戦闘に集中した。

 

他にも、セシリアやモーラ。更に他の専用機持ちであった

ダリル・ケイシーやフォルテ・サファイヤがゴーレムⅢに

襲われていた。

 

 

一方、某国の某所では。

 

 

オータム「あれ全部無人機なのかよ」

薄暗いどこかの部屋の数少ない光源である大型のモニターを

腕を組みながら見ていたのはオータムだった。

その横にはスコールとマドカの姿もあった。

束「そうだよ~。あれは私が以前作った試作機のゴーレムⅠを発展改修 

  した機体なのだよオータム君!」

オータム「……。人の事をどこぞの助手みたいに言うな」

マドカ「……なぜこんな無人機を投入した?」

画面を見つめながら束の方は向かずに静かに呟くマドカ。

束「少し前にリュウ君から面白い反応があって、ちょっとね~」

スコール「面白い反応、ですか?それはいったい」

束「あくまでもこっちで反応をキャッチしただけだから無人機達が

  無駄になる可能性はあるけど、でももしかしたらこの戦いで

  その反応が姿を現すかもね」

と言う束の言葉にスコールはオータムの方を見るが、彼女も

首をすくめるだけだった。

 

 

そして、戻ってアリーナ、IS学園では、未だに戦闘が続いていた。

だが、数は互角な上に戦闘力も相手の方が若干上とあり、一夏達

12人は一方的に押されていた。

(しかも、ダリルとフォルテは戦う気がないようだ)

 

そして……。

一夏「ぐぁっ!」

ラウラ「ぬあぁぁぁっ!」

セシリア「きゃぁぁぁぁっ!」

 

機龍「ッ!一夏!ラウラお姉ちゃん!セシリアお姉ちゃん!」

機龍達4人の戦っていたアリーナの方に、他の6人。一夏やラウラ、

セシリア達が吹き飛ばされてきた。

咄嗟に周囲全体にレールガンとメーサー、ミサイルを牽制射して

ゴーレムたちを散らす機龍。

箒「一夏!それにみんなも!無事か!?」

機龍が牽制している間に箒や簪、鈴たちが倒れた一夏達を起こした。

 

一夏「イテテ、あいつら、相当強いぞ」

ラウラ「同数な上に奴らの機体、我々の専用機と同等。或いはそれ以上の

    性能を有している。厄介だぞ」

モーラ「悔しいですが、向こう側の連帯も見事です。個別に襲ってきたかと

    思うと巧に相手と武装を変えて攻撃してくる。切りかかってきた

    かと思えば離れて撃ちあいに持ち込む。剣で来たかと思えば砲で。

    一体で来たかと思うと二体で」

楯無「並の相手じゃないってことね」

9人の顔に冷や汗が浮かぶ。その時。

機龍「ぐあっ!」

 

数機からの一斉砲撃を食らった機龍が吹き飛ばされてきて、一夏達の

近くに倒れた。

簪「ッ!機龍!」

咄嗟に彼に駆け寄る簪と、二人の周囲に円形の陣を築く8人。

 

見ると、彼ら10人の周囲を12機のゴーレムⅢが取り囲んでいた。

ダリルとフォルテは近くの建物の上からその様子を見ていたが、

一夏達に加勢する気はないようだ。

一夏「10対12か。ハハ、絶望的ってやつか?」

鈴「何よ。この状況で諦めてるわけ?」

一夏「んなわけあるかよ。……こんだけ仲間が居るんだ」

そう言って箒や鈴、シャルロット、モーラ達を見回す一夏。

  「なのにこの程度でビビってたら男じゃねえだろ!」

そう言って雪片を握りなおす一夏。

鈴「ったく。あんた昔から妙なところで男出すんだから」

シャル「まぁ、一夏らしいけどね」

そう言ってクスクスと笑うシャルロットや箒たち。

 

 

と、その時、倒れていた機龍が立ち上がった。

機龍「そうそう。一夏お兄ちゃんってたまに変なところで

   緊張したり、かっこよかったりするよね」

スピーカー越しだが、少し笑みを含んだ声が聞こえてきた。

一夏「お、お前もそれ言うのかよ!?」

箒「あ。あとは妙に考えが古臭いとか」

鈴「ギャグが寒い」

シャル「主夫スキルが高い」

機龍「あるある」

一夏「ほ、ほっとけ!」

楯無「あ~でもマッサージは上手い」

シャル「ですね~、って一夏!?まさか生徒会長さんにマッサージ

    したことあるの!?」

一夏「それ今気にすることか!?」

と、圧倒的不利な状況にありながら笑い出す箒や簪たち。

 

機龍『そうだ。僕には、守りたいものがある』

  「僕は、こうして、みんなと笑っていられる日常を

   守りたい」

その言葉に、表情を引き締める9人。

  「誰かに命令されたからじゃない。僕自身の意思で」

ゆっくりと握りこぶしを作る3式機龍。

  「僕自身の力で。みんなとの毎日を守りたい。だからこそ、僕は」

俯いていた顔が上空のゴーレムたちを見据える。

  「僕はもう、逃げない」

足を少しだけ開き、3式機龍が踏ん張るような姿勢となる。

  「僕はもう、戦う事を恐れたりなんかしない……!

   今って言う時間の先にある未来を僕たち自身の手で……!」

3式機龍が大きく息を吸い込む。その銀色の背びれが、僅かに

青い光を放ち始める。

  「掴み取るために……!」

溜めていた物が吐き出される寸前のように、機龍は天を仰ぐ。

  「僕は、戦うんだぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

 

  

 『GAOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

裂ぱくの気合と共に、大ボリュームの咆哮がアリーナ中に響き渡る。

 

ビリビリと覇王の咆哮がアリーナを、いや、IS学園のある人工島を、

否、世界さえも震わせる。

 

その日、IS学園に居た全ての人間は、その咆哮を一生忘れる事は

無かった。

それほどインパクトのある咆哮だったのだ。

 

王の魂の叫びが世界を震わせる。

 

その時、彼の体から青白い波動が波のように断続的に放出された。

 

その波動が一夏達のISに当たる度に……。

 

 

一夏「これって!?」

シャル「機体のエネルギー残量が、回復していく!」

楯無「わ~お。これはすごいわね~」

今、一夏達の白式のシールドエネルギーやウェポンエネルギーの

メーターが凄まじい速度で回復していった。

 

と、その時、今度はその波動を受けている一夏達9人の前に、

新たなディスプレイが投影された。そこには……。

 

 

 

 

 

 

———友軍機より支援行動を確認———

 

 

 

 

———友軍機アビリティ:『激龍咆哮』確認———

 

 

 

 

簪「激龍、咆哮。これって」

一夏「力が漲ってくるのが分かる……!」

モーラ「覇王の気迫が、仲間を激励し、加護の光となって仲間を、

    すべてを包んでいく」

ラウラ「この力なら、行けるぞ!」

 

9人が武器を構える。機龍も目の前の3機のゴーレムⅢを見据える。

 

一夏「行っくぜぇぇぇぇぇぇっ!!!」

一夏が気合と共に突進していく。それに合わせて8人が別々の方向に

飛び出した。

   『GAOOOOOOOON!!!!!』

機龍も再び咆哮を上げながらスラスターを吹かして突進していく。

 

 

そして、束達もその様子を見ていた。

束「来た来た来たぁっ!」

スコール「あれは……」

束「あれはリュウ君の新スキルだよ~!いや~まさか本当に発動する

  なんてね~!」

そう言いつつもパソコンを凄まじい速度でタイプしながらデータを

集めている束。

そして、例えモニター越しであってもあの咆哮は十分にそれを聞いた人間の

体を、魂を震わせた。

スコールは平然としているが、オータムは右手で左腕の二の腕を

押さえつけていた。マドカも表情こそ崩してはいないが、驚いていた。

 

 

そして、アリーナでの戦いは一変していた。

一夏「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

白式・雪羅が零落白夜を発動している雪片で切りかかる。

ゴーレムⅢは右腕の展開式ブレードでそれを受け止めるが……。

  「まだ、まだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

雪片を押し込む一夏。すると、エネルギーの刃がゴーレムⅢの

実体ブレードを少しずつ溶かしていった。そして。

  「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

   『ズババッ!』

ゴーレムのブレードを切り裂き、更にそのままゴーレムⅢの機体を

斜めに、真っ二つに切り裂いた。

   『バゴォォォォン!』

一拍置き、一夏の背後で爆発が生まれた。

 

箒は……。

箒「はぁぁぁぁぁぁっ!」

雨月・空裂の双剣による連撃がゴーレムⅢを襲う。それをブレードと

左手で防ぐゴーレムⅢだが、防戦一方だった。

だが、何とか隙を突いて背部のビーム砲で箒を牽制し、

距離を取るゴーレムⅢ.

 「待て!っ」

と、その時、追いかけようとする箒だが、突如として彼女の前に

ディスプレイが現れ、何かの説明文が現れた。

 「これは!……行けるぞ!」

すぐさま、自分の新たなる武器が生まれた事を直観した箒は

その新たなる武器、出力可変型ブラスター・ライフル、『穿千』を

両腕に展開する。

それを見たゴーレムⅢが反転、紅椿めがけて突進してきた。だが。

 「その両腕!貰ったぁっ!」

次の瞬間、両腕の穿千が煌めき、高出力のエネルギーの矢が放たれた。

それは寸分違わずゴーレムⅢの両腕を切断するように弾き飛ばした。

何とか態勢を立て直そうとするゴーレムⅢだが、遅かった。

 「終わりだぁぁぁぁぁぁっ!」

そこへ、双剣を構えた箒が突進してきた。もはや防ぐ術を持たない

ゴーレムⅢの体を、X字の斬撃が襲った。

二体目のゴーレムが倒され、爆発した。

 

セシリアは……。

セシリア「そこですわ!」

ブルー・ティアーズの持つ、スターライトmkⅡが火を噴き、近接戦を

仕掛けようとしていたゴーレムⅢの肩に命中した。が、それでも止まらずに

加速して突進してくる。そして、その右腕のブレードをセシリア

めがけて彼女の真上から縦に振り下ろす。が。

   『ガキィィィンッ!』

それを、セシリアは左腕部の0式レールガン改の基部から『ブレード』を

伸長させてその攻撃を防いだ。

    「自分の弱点くらい、重々承知していますわ!」

次の瞬間、ゴーレムの腹部にスターライトの銃口が押し付けられ、

連続でレーザーが放たれた。

腹部から濛々と煙を吐き出しながら後ろへ下がるゴーレムⅢ。だが、

次の瞬間四方からビット、『ブルー・ティアーズ』のレーザーが

ゴーレムを襲い、その四肢に突き刺さった。

どうやら、今の攻撃で駆動系がやられたからか、地面に落下した

ゴーレムⅢは動かなくなった。

 

鈴は……。

鈴「やぁぁぁぁぁぁっ!」

箒の戦法と同じように、二振りの双剣となった牙月で切りかかり、

ゴーレムⅢを圧倒していた。が、一瞬の隙を突かれて牙月の刃を両腕で

掴まれ、攻撃を止められてしまった。

それでも、僅かに笑みを浮かべる鈴。

 「残念!本命は、こっちよ!」

次の瞬間、牙月を放した両腕の衝撃砲と両肩の衝撃砲。

合計で4門もの衝撃砲の砲口が一斉にゴーレムⅢに向いた。

 「行っけぇぇぇぇぇぇっ!!!」

何十発もの見えない砲弾がゴーレムⅢの体に命中し、その体を抉った。

そして、ついにゴーレムⅢのコアが露出した。

 「そこだぁぁぁぁぁっ!」

そこに、手放していた一本の牙月を構えた鈴が突進し、コアめがけて

刃を振り下ろした。

鈍い音と共に、コアにひびが入り、水晶のようだった輝きが

失われると、ゴーレムⅢは停止し、アリーナの地面へと落下していった。

 

シャルロットは……。

シャル「ふっ!」

襲い来るビームの雨をひらりひらりと回避してくリヴァイヴ。

   「ほらほら!こっちだよ!」

ガルムやレイン・オブ・サタデイで牽制をしながらゴーレムを

誘き寄せるシャル。だが、イグニッションブーストを駆使して

急加速したゴーレムⅢの実体ブレードがシャルの背中に迫った。

だが。

   「それくらい、予想できるよ!」

唐突に停止し、まるでそこに壁があるかのように空間を蹴った

シャルのリヴァイヴが急加速していたゴーレムⅢの股下を

潜り抜けていく、ゴーレムの背後に出たシャルロットはそのまま

弧を描くようにゴーレムの頭上に上昇。そして、ゴーレムは

シャルロットを追って後ろに振り返ったが、既に後ろには

シャルロットの姿はなかった。ゴーレムⅢがシャルロットを探して

周囲を見回している間に、振り返っていたゴーレムⅢの背後を取った

シャルロットのリヴァイヴの最強武装とも言える武器、

グレー・スケール。通称、シールド・ピアースが姿を

現した。

   「後ろが、がら空きだよ!」

その声にゴーレムⅢが振り返った時には、遅かった。

振り返ったゴーレムの体に突き刺さる杭。そして。

   『ドゥンッ!ドゥンッ!』

リボルバー式の炸薬カートリッジが作動し、強烈なインパクトを

ゴーレムⅢの体内へ叩き込む。撃ち込まれる度に体が震える

ゴーレムⅢ。そして、シャルがピアースのカートリッジを

使い切った頃には、ゴーレムⅢの腹部に大穴が空き、動かなく

なっていた。

 

ラウラは……。

ラウラ「行けっ!」

彼女の短い命令に従うように、レーゲンの各部に内蔵されていた

ワイヤーブレードが意思を持った蛇のようにゴーレムⅢに

襲い掛かった。

それを内蔵されていたシールドビットで防ぐゴーレム。

だが、数で言うならばラウラのワイヤーブレードの方が上であった。

一瞬の隙を突き、一本のブレードがゴーレムⅢの首に巻き付いた。

   「そこだぁっ!」

その一本の根元を右手で掴んだラウラが、力任せに

ワイヤーを振り回した。

振り回されたゴーレムは、次の瞬間地面に叩きつけられた。

その衝撃で出来た砂埃の中からラウラめがけて飛び出してくる

ゴーレムⅢ。実体ブレードがラウラに迫る。だが。

   「ふっ。甘い!」

次の瞬間、ラウラはAIC、停止結界でゴーレムⅢを受け止めると、

強靭な脚部でゴーレムⅢを真下から蹴り上げた。

それによって顎が跳ね上がるゴーレムⅢ。

   「ついでだ!これも持っていけ!」

更に、上下に体が伸びた事でがら空きになった胴体に、レーゲンの

レールカノンの砲弾が数発、突き刺さった。

吹っ飛び倒れ、腹部から煙を出しながらも、ギギギ、と機械的な音を

させながら立とうとするゴーレムⅢ。だが。

   「はぁぁぁぁぁぁっ!」

動けないゴーレムⅢにとどめを刺すべく、ラウラのレーゲンの

右手のプラズマ手刀がさく裂。ゴーレムの頭部を貫き、粉砕した。

ガクガクと震えたゴーレムⅢだったが、その体はすぐに動かなく

なってしまった。

 

モーラは……。

モーラ「はぁっ!」

機動性を生かしてゴーレムⅢの背後に接近した蹴りの一撃が

ゴーレムの背中に突き刺さる。それを振り払うように腕を

振り回すゴーレムⅢだが、その腕はモーラのアイギスに命中する

事なく、空を切っただけだった。

   「さぁ!こっちらですよ!」

アイギスに向けてビームを連射するが、そのどれもがモーラに

命中せず、避けられるかイージスに防がれ、有効打には

なって居なかった。

だが、それはモーラも同じで、もともと攻撃系の武装が

貧弱とも取れるアイギスの武装ではゴーレムにまともな攻撃を

入れる事も出来ていなかった。だが、ゴーレムⅢは気づいて

居なかった。モーラのツインウイングスのレーザーが、

先ほどから同じ一点、ゴーレムⅢの胴体に集中していることを。

そして、更に一発、レーザーがゴーレムの胸に刺さった。次の瞬間。

   『ビシッ!』

その装甲に、僅かだがひびが入った。

   「今!」

それを、元怪獣と言う圧倒的な視力で確認したモーラがゴーレムⅢ

めがけて突進していった。

襲い掛かるビームの雨の中をヒラリと回避しながら突き進む。

そして。

   「そこです!」

右手に持っていたツインウイングスの銃身下部に備えられていた

銃剣が突き出された。

   『ビシシッ!』

ひびの部分に切っ先が突き刺さり、ひびが僅かに広がった。

だが、装甲を貫通するまでには至らず、ゴーレムⅢのマスクが

モーラの方を睨んだ。それでもモーラは笑みを浮かべた。

   「確かに、私の兵装の破壊力は最低限です。が、戦い方を

    知らないわけじゃありません!」

   『ビシュビシュビシュゥッ!』

次の瞬間、ゼロ距離から数発のレーザーが放たれ、更にゴーレムⅢの

装甲を穿った。そして……。

   『ビシシシシシッ!』

   『バギャァァァァンッ!』

とうとう装甲部分が限界を迎え、砕けた装甲片が周囲に飛び散った。

そして、そのひび割れた中から現れたコードが配された、

人間で言うところの内臓の部分に、モーラは手刀を叩き込んだ。

ガクガクと震えながら、貫かれた部分から小さくスパークを

発しながら、ゴーレムⅢは動かなくなった。

 

そして、簪と、楯無は。

簪「やぁぁぁぁぁっ!」

楯無「はぁぁぁぁぁぁっ!」

それぞれが1機のゴーレムⅢを相手にしていた。だが、その時

機龍の相手をしていた3機の内の1機が楯無の方へターゲットを

変更してイグニッションブーストで突進していった。

だが、楯無は『ある理由』で一瞬だけ、反応が遅れた。

簪「ッ!危ないっ!」

楯無「はっ!?」

彼女が気付いたときには、既に眼前まで接近されていた。

  「くっ!?」

咄嗟に蒼流旋で防ごうとする楯無だが……。

   『ガキィィィンッ!』

音を立てて宙を舞う蒼流旋。

  「やってくれるじゃない!」

咄嗟にもう一つの武器、蛇腹剣であるラスティー・ネイルで応戦する

楯無。が、そもそもラスティー・ネイルは副武装と言った意味合いが

強い兵装だった。

 

何とかゴーレムⅢ達の攻撃を防ぐが、それでも防戦一方に追い込まれていた。

 

その様子を見ていた簪。

簪「待ってて!今——」

彼女の元に駆け付けようとする簪だが、その進路をゴーレムⅢのビームが

薙ぎ払い、行く手を遮る。

 「くっ!?」

 『このままじゃ……!』

次第に焦りの色が簪の顔に浮かぶ。

 『何か、方法は。……ダメ、何も思いつかない。やっぱり、私じゃ』

 

と、その時、彼女に視界に微かに過った者が居た。

   『GAOOOOOOOON!!!!!』

 

それは、ゴーレムⅢを相手取り、いくら被弾しようとも戦う

銀龍。彼女の想い人の姿だった。

 

 

簪『そうだ!こんな簡単にくじけてちゃダメだ!私はもう、

もう……』

 「もう二度と、目の前の事から逃げ出したりはしない!」

 

夢現を握りしめた簪が、自分の進路を塞いでいるゴーレムⅢに

向かって突進していく。

 

と、その時。

 

 

 

 

——WEAPON・CREATE——

 

 「え?」

唐突に簪の前に新たなディスプレイが浮かび上がった。

 

かと思うと、彼女の左手付近に唐突に黄金の粒子が現れ、

やがてそれは一つに集まり形となった。それは……。

 

 

 「夢現が、もう一本……?なんかわかんないけど、でも!」

簪は『二本』に増えた夢現を握りしめ、更に加速した。

自身の頭上に二本の夢現を掲げるように構える簪。

 

そこには論理的な剣道や剣術などない。だが、それでも……。

 「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

同時に夢現を叩きつける簪。

ゴーレムⅢはそれを右腕のブレードで受け止めようとした。だが、

真上からの打ち下ろしに耐えきれず、大きく弾き飛ばされた。

そして、簪は視線を楯無の方へと向けた。大きく息を吸い込む簪。

 「『お姉ちゃんっ』!!!!」

 

アリーナ全体に反響するほどの大声が響く。その声に楯無が

振り返る。

 「これ、使ってっ!」

右手に保持していた夢現が全力で楯無に向かって投げられる。

左手に持ち替えたラスティー・ネイルに水を纏わせ、鞭の

ようにしならせてゴーレムⅢ達を弾き飛ばした楯無の

右手が飛んできたもう一本の夢現をキャッチした。

 

 

——使用承認——

 

簪と楯無の前にそのディスプレイが現れた瞬間、夢現の刀身部分が

煌めいた。

と、その時、楯無の背後に一体のゴーレムが迫った。が。

   『ズバッ!』

振り向きざまに繰り出された一撃がゴーレムⅢを弾き飛ばし、

地面に打ち付けた。だが、

次の瞬間もう一機の方のゴーレムⅢがブレードを片手に突進してきた。

 

だが、この時ゴーレムⅢは気づいていなかった。楯無の左手の

ラスティー・ネイルの先端から僅かに水色の糸のような物が

垂れていた事に。

 

ゴーレムⅢの刃を右手の夢現で防ぐ楯無。そのまま、鍔迫り合いに

持ち込まれたように思われた。だが。

楯無「ふふふ、お姉さんを舐めると、痛い目に合うわよ?」

唐突にそんなことを言い出した楯無。その時。

   『ズガッ!』

ゴーレムⅢの体を衝撃が襲い、後ろに弾かれた。ゴーレムが視線を

戻すと、楯無の左手には先ほど弾き飛ばされたはずの蒼流旋が

いつのまにか握られていた。

 

実は、彼女は先ほどラスティー・ネイルの先端から水を糸のように

細く長く形成し、ロープのように使用して地面に落ちていた

蒼流旋を回収していたのだ。

 

夢現と蒼流旋と言う二本の長物を構える楯無。

  「はぁぁぁぁぁぁっ!」

そして、ゴーレムⅢめがけて突進した。

繰り出される夢現の上段からの斬り下ろしを右手のブレードで防ぐ

ゴーレム。だが、すぐに左下方からの蒼流旋の一撃で防御を

破壊され、更にがら空きの胴体に夢現の刃が斜めに斬り付ける。

そこからは楯無の一方的な攻撃だった。

連続でゴーレムⅢを斬り付ける楯無。そして、蒼流旋の一撃が

ついにゴーレムの胴体装甲に穴をあけた。

  「これで、終わりよっ!」

一閃。簪から譲り受けた夢現の刃が深々とゴーレムⅢの体に

突き刺さった。

先ほどの一機と同じように、刺された部分からスパークを上げて

動かなくなり、落下していくゴーレムⅢ。

 

簪「やった!」

姉の連撃に見惚れていた簪。だが、その彼女の背後にブレードを

構えたゴーレムⅢが迫っていた。

   『ビーッ!ビーッ!』

 「っ!しま——」

弐式から放たれたアラートでようやく気付いた簪。だが、

完全にブレードの距離まで接近されていた。この距離では、

逆にリーチの長い夢現では防御がしにくい。

 

距離を取ろうとする簪だが、遅かった。

あと数センチでブレードが届くかと思われた。だが。

箒「はぁぁぁぁぁっ!」

   『ガキィィィンッ!』

その時、簪とゴーレムの間に箒の紅椿が滑り込み、雨月と空裂で

ブレードを防いだ。

 「簪!今だ!」

簪「っ!うん!」

箒の言葉の意味を即座に理解した簪は、箒の後ろから

横へ飛び出し、鍔迫り合いでがら空きになっていたゴーレムⅢの

脇腹部分へ夢現を突き出した。

   『ザシュッ!』

ゴーレムⅢの左わき腹部分に突き刺さる夢現。

僅かに震えたゴーレムが、空いている左手で簪を

押しのけようとしたが。

セシリア「私もいましてよ!」

   『ザシュッ!』

今度は右わき腹の部分に、セシリアの左腕部のレールガン基部から

伸長していたブレードが突き刺さった。

ガクガクと機体を震わせるゴーレムⅢ。そして。

箒「これで、終わりだぁぁぁぁっ!!」

右腕のブレードを弾く箒と、同タイミングで離脱するセシリア、簪。

そして、既に動かなくなったゴーレムⅢの胴体を横一文字に

切り裂く箒。

上半身と下半身が泣き別れしたゴーレムⅢは落下していく中で爆発。

内部パーツの雨がグラウンドに降り注いだ。

 「よし。これで後は……」

そう言って箒やセシリア、簪、更に近くに集まっていた楯無や鈴の

視線が機龍の方へと向けられた。

 

 

機龍「はぁぁぁぁぁぁっ!」

  『GAOOOOOOOOON!』

咆哮を上げながら右手のスパイラルクロウを構えて突進していく

機龍。スラスターから大量の白煙を吹き出しながら突き進む様は

まさに銀色の砲弾とでも呼べるだろう。

 

そして、3機の内の1機が機龍と向かい合い突進してきた。

二機のドリルとブレードがぶつかり合う。だが、パワーでは

機龍の方が上だった。

すぐにブレードの各部にひびが入り始めた。

距離を取ろうと下がろうとしたゴーレムⅢ。だが。

   『ガシッ!』

機龍の左手がゴーレムⅢのお腹を抑え込んで離さない。

  「逃がさない!」

空いている左手で機龍の腕を叩くゴーレムⅢ。だが、それでも機龍の

腕はびくともしなかった。

そこに、仲間の危機を感じてか機龍めがけて残りの二機が

ブレードを構えて突進してきた。だが。

   『ガキガキィィィィンッ!』

3式機龍の背中に向けて繰り出されるはずだった刃を、

一夏の雪片と、モーラのイージスが受け止めた。

一夏「機龍は——」

モーラ「やらせませんよ!」

 

二人の醸し出す覇気に僅かにゴーレムが震えたように見えた次の

瞬間。

二機のゴーレムを横合いから衝撃が襲い、弾き飛ばした。

それはラウラのレールカノンと鈴の衝撃砲による砲撃だった。

そして、その間に機龍はじりじりとゴーレムⅢのブレードを

押し込んでいった。と、次の瞬間。

   『ビシシシッ!バリーンッ!』

ついに音を立ててブレードがへし折れた。そして、機龍はがら空きに

なった胴体にスパイラルクロウを突き立てた。

機龍「はぁぁぁぁぁぁっ!」

鋼鉄のドリルがゴーレムⅢの装甲を削り、火花を散らす。そして、ついに。

   『ボガァァァァンッ!』

装甲を食い破った機龍のクロウが貫通。腹部に大穴を開けられたゴーレムⅢは

爆散したのだった。

 

そして、残った2機の内の1機を簪と楯無が相手していた。

楯無「はぁっ!」

蒼流旋の一閃がゴーレムの装甲に傷をつける。しかし、すぐに態勢を

立て直したゴーレムⅢの実体ブレードが楯無に迫った。だが。

簪「やらせない!」

横合いから伸びた夢現の刀身がゴーレムⅢのブレードを受け止めた。

楯無「もう一発!」

今度は、真正面から蒼流旋を突き出しゴーレムを突く楯無。

   『ビシシッ!』

その表面にヒビが走った。

  「簪ちゃん!今よ!」

ゴーレムの体を蹴って距離を取る楯無。そこへ。

簪「単一ロックオンシステム起動!全弾、目標、敵IS、腹部!」

次の瞬間、打鉄弐式の背部装備、『山嵐』の発射口が開き、

無数のミサイルの弾頭が姿を現した。

 「山嵐、一斉射撃!」

   『ドドドドドドドッ!』

白煙を吐き出しながら飛び出した無数のミサイル。

それはゴーレムⅢの腹部に次々と命中。殺到していった。

大きな爆炎に包まれるゴーレムⅢ。ゴーレムは何とか

攻撃を耐えきることができた。

だが、その体のあちこちには大小様々なヒビが走り、後一発でも

攻撃を受ければ壊れるだろうと言う所だった。

 

そして、その最後の一撃。とどめを刺すものが居た。

楯無「これで!」

蒼流旋を構え、突進する楯無。

  「終わりよ!」

   『ズガガンッ!』

突き出された一撃は、見事のゴーレムⅢの腹部を貫いた。

そして、瞬時に切っ先を引き抜く楯無。ゴーレムⅢはバラバラと

パーツを脱落させながら落ちていき、数回スパークが瞬いた、

かと思うと爆発した。

 

そして、最後の一機は一夏と戦っていた。しかし、それもまた、

既に勝敗は決していたと言えるだろう。

一夏「ふっ!はぁっ!」

繰り出される雪片の連撃に、ゴーレムⅢは防戦一方に追い込まれていた。

だが、覚悟を決めた、とでもいうべきか。ゴーレムⅢは左手で

雪片を受け止め、既にボロボロとなっていた右腕のブレードを振り上げた。

 

だが、次の瞬間。

   『ビィィィィィッ!』

   『バギャッ!』

唐突に下方から黄色いビーム、機龍の二連装メーサー砲による砲撃が

飛来し、ボロボロだったブレードをへし折った。

機龍「一夏!」

一夏「あぁ!やるぞ機龍!」

そう言ってゴーレムの胴体を蹴る一夏。

 

そして、蹴とばされたゴーレムは何とか空中で態勢を立て直した。

だが、その眼前には既に。

機・一「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

左右前方、ゴーレムを基点にV字を描くように突進してくる二人。

 

一夏の手には零落白夜を発動している雪片が。

機龍の手は轟轟と轟音を轟かせながら回転するクロウが。

 

それぞれ握られ、形作られていた。

そして、ゴーレムを基点に、二人の刃が、力が交差した。刹那。

   『ズルッ。バゴォォォォォンッ!』

ゴーレムの上半身と下半身がズレたかと思われたその時、

その二つが爆発したのだった。

 

 

やがて、着地するのと同時にISを解除する一夏達10人。

彼、彼女たちは肩で息をしながらも、大した傷もなく無事に

敵の襲撃を乗り切った。

お互い顔を見合わせる少年少女たち。

一夏「ハァ。……やったな、機龍」

そういって片手を上げる一夏。そして。

機龍「うん!」

   『パァン!』

それに答えるように、機龍が一夏とハイタッチをした。

 

心地よい音がアリーナに響く。そして、それだけではなく、

他にも箒やセシリア達が、近くに居た仲間と、戦友たちと

ハイタッチを交わしたのだった。

 

そして、簪も、楯無と。

 

 

それから数時間後。

 

今、簪は機龍と夕暮れに染まりつつある校舎の屋上に来ていた。

そして、二人の前には楯無が立っていた。

あの戦いの終了直後、楯無から3人で話がしたい、と言う事で

ここに呼び出されていた。

楯無「まずは、私から言わなきゃいけない事があるの。

   機龍君」

機龍「はい」

 

緊張した面持ちで楯無の言葉を待っていた機龍と簪。

 

しかし、二人の予想は裏切られた。

 

楯無「ごめんなさい!!」

そう言っていきなり頭を下げてきた。

 

機・簪「「え??」」

と、いきなり謝られても、と言いたいように訳が分からない二人。

やがて、ゆっくりと頭を上げた楯無が、視線をチラチラと

機龍の方へ向けてきた。

 

楯無「わ、私、その、あの時、その」

と、何やら機龍に言いたい事があるようだったが、機龍はその意味を

予想し、質問した。

機龍「記憶を、見たんですか?」

 

その言葉に目を見開く簪と楯無。やがて……。

楯無「あの時、機龍君が吠えて青白い波動を浴びた時。

   一瞬、一瞬だったんだけど、君の事が、頭に流れ込んできて」

機龍「僕とゴジラの過去。そして、僕の素性を知った。そういう事

   だったんですね?」

楯無「………。そう、みたい」

 

と、バツが悪そうな楯無。

今の彼女はかつて自分がしたことを後悔していたのだった。

以前、一夏のコーチの件の時に興味本位から機龍の力について

聞こうとしていた。だが……。

  「君の、ゴジラとしての過去を見ちゃったら、自分があの時

   した事が、許せなくて、恥ずかしくて」

知ってしまった以上、過去にやってしまった自分の行いを悔いていた。

  「私は君の過去を知らずに、あんなことを……」

簪「お姉ちゃん……」

 

機龍「良いんです」

楯・簪「「え?」」

唐突にそんなことを言う機龍に疑問符を浮かべる簪と楯無。

機龍「過去は変えられないから過去なんです。それを楯無さんが

   知ってしまった。それ自体ももう過去の事ですから。

   それについて謝る必要はありません。それに、その記憶を

   見せてしまったのも、結果的に僕の力のせいですから」

楯無「機龍君」

機龍「ただ、一つだけ、僕を元怪物と、知った上でお願いがあります」

 

その言葉に、緩みかけていた表情を引き締める楯無。

機龍のそのお願いとやらを、心臓をバクバクとさせながら

待っていた楯無。

だが、彼女の予想もまた、大きく裏切られた。

 

 

 

 

  「妹さんを、簪を、僕に下さい」

 

 

 

 

ぽく、ぽく、ち~ん。

 

 

楯・簪「「へ?………えぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」」

姉妹二人の絶叫が響く。が、それでも機龍の表情は引き締まっていた。

機龍「知っての通り、僕は人間ではありません。もし、僕が簪の

   傍に居れば、それだけで簪を不幸にするかもしれません」

その言葉に再び表情を硬くする楯無と、驚愕した表情の簪。

簪「機龍!それは——」

機龍「確かに、簪や一夏は僕の事を知り、それでも受け入れてくれた。

   でも、人間がそれだけじゃない事は、僕自身よくわかってるよ。

   もし、何も知らない人間たちの間に僕の情報が出回れば、僕は

   社会から弾き出されてもおかしくない。そして、人間は僕を

   『滅ぼそう』とするはず」

簪「ッ!」

機龍「人間は自分より強いものを恐れ、その存在を排除し、自分たちの

   存在を確かな物にしたがる」

今、機龍の黄色い瞳は僅かに赤く濁り始めた。それはゴジラの意識が

少しづつ現れていると言う事だ。その時、機龍の横に居た簪が

機龍をギュッと抱きしめた。ゴジラの意識を奥底に戻した機龍は

僅かに振り返った。

 

そして、簪の目に涙が光っている事に気付いた。

  「だからこそ、簪や僕の周囲に居る人たちは不幸になるかも

   しれない。……でも」

と、続けながら拳を握り締める機龍。

  「僕にはみんなが、簪が必要なんです」

その言葉に、僅かに顔を上げる簪。

  「だからこそ、例え、僕が汚名を被ることになったとしても、

   彼女を、簪を全力で守ります。だから」

楯無「二人の仲を認めてほしい。そういう事なのね?」

機龍「はい」

 

機龍の意思に楯無は……。

 

 

楯無「機龍君。それに、簪ちゃんにも。私も言わなきゃいけない事があるの。

   ……機龍君、私と簪ちゃんの家系、更識家は代々日本の外部、

   つまりは諸外国からの裏工作。スパイ活動や破壊工作といった

   暗部に対しての暗部。わかりやすく言えば、対スパイ用の

   カウンター組織の家系なのよ。そして、その現在の当主は、

   私。今は私がその17代目なのよ」

機龍「………」

話されている事実に機龍は黙ったままだが、彼の横では簪が

驚愕した表情を浮かべていた。

楯無「そんな血まみれの、汚い私から言えるかどうか、わかんない

   けど。……簪ちゃんの事、守って、幸せにしてあげて。

   どうか、妹を、よろしくお願いします」

そう言って、彼女は機龍に向かって頭を下げた。

機龍「僕の命と力にかけて、必ず、簪を守ります」

 

簪「お姉、ちゃん」

やがて、ゆっくりと楯無に歩み寄る簪。それに対して、楯無は

頭を上げ、かつてのように、仲の良かった子供頃のように、

ゆっくりと、優しい声で告げた。

楯無「彼と、幸せになりなさい。自分の好きなように生きて。

   更識の名なんて忘れて、ね」

簪「ッ!!」

   『ダッ!ギュッ!』

その言葉に、感極まった簪は涙を流しながら無言で姉の胸に飛び込んだ。

楯無「ほ~ら。抱き着く相手が違うんじゃないの?」

そっと簪の頭をなでる楯無。

簪「ありがとう。『お姉ちゃん』」

楯無「そう呼ばれるの。なんか懐かしいな~」

そう思いながら天を仰ぐ楯無。彼女の視線の先では、

夕暮れの空の上に輝く一番星があったのだった。

 

 

こうして、二人の姉妹は無事に仲直りを果たせたのだった。

 

     第21話 END

 




と、言うわけで作中ではいくつかの変更点やら付箋が
出てきました。それと、ゴーレムⅢ12機には本編で
あったシールドのジャミング装置はありません。
あくまでも束に彼、彼女たちを傷つける事を目的に
していないからです。
また、12機も出したのは一夏達全員の活躍を描きたかった
からですね。結果的に一万字を超えましたが、
楽しんでいただければ満足です。
コメント、評価など、お待ちしております。

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